
半径5メートルの野望 完全版
はあちゅう
講談社文庫
鍵は半径5メートル
「日本一のブス」とネット検索すると自分の顔がでてくる…等、様々なコンプレックスに苛まれながらも、作家になりたいとずっと思っていて、〇△賞へ応募したり、出版社へ持ち込んだりしても全然手ごたえがなかったところへ、ブログを書き始めたら、わずか1ヶ月で本の出版が実現した著者によるビジネス・自己啓発書である。 著者の実現は、それだけにとどまらない。学生時代に協賛者を募って世界一周を実現し、大企業・ベンチャー企業で会社員生活を送りながら、課金ネットマガジン、オンラインサロンなどを手掛け独立し、念願だった小説の出版も実現させた。 某通販サイトで、かなりボロクソ書かれていたので、買うのを躊躇したが、書かれていることは示唆に富み、与謝野晶子もびっくり!というようなものすごいエネルギーに貫かれている。 どういう人に役立つ本かといえば、ありきたりな言い方をすれば、夢を叶えたい人、現状に迷いを持っていて、これを変えたい気持ちがある人に役立つだろう。 特に、ブログなどを中心としたネット表現活動に興味がある人や、ビジネス的な野心がある人とかに従来書にはあまりない示唆を与えてくれる。現状を変えるという意味では、直接それには触れてないが、恋愛などで迷っている人にも応用が効くだろう。 ただ、どの自己啓発書にも言えることだが、それを読んで奮い立った読者の人生が変わるかどうかは、主に読み手の方にかかっている。 著者はブログを書くという、半径5メートルのことに本気を1ヶ月出して、それまでかすりもしなかった本の出版を実現させた。著者は言う「1ヶ月本気をだせば人生は変わる!」 これを読んだ読者のうち、たとえば10年後に、どれくらいの人が、自分の人生局面を打開できるかまでは分からない。 ほとんどの人は、明日も先週のその曜日と9割5分似たような選択をしてしまうものだろう。しかし現状に迷いを持って尚一歩踏み出せないでいるなら、現状に抗って数々の達成を実現させた著者の提言は、何人かの人にきっと意味を持つだろう。 著者は、きっと明日も、いつもと似たような選択をするだろう読者に、鍵は「半径5メートル」のところに実はあるという。
0投稿日: 2016.11.25
作家の収支
森博嗣
幻冬舎新書
作家という仕事はいくらになるか?
本書は、活動期間19年で約15億稼いできた、マイナではあるが成功した作家森博嗣による、主にこれから作家になろうとしてる人に向けた作家生活収支報告書である。 マイナではあるがというのは、著者が、本書の中でそう自称しているからというのもあるが、私も、この、既に19年も活動し、その間に15億も稼いでいる著者の名前を本書で初めて知ったくらいであるからだ。 収支報告は多岐に渡り、印税から、解説、講演、出演、TV化、アニメ化、キャラクター使用料等が具体的にどの位の額になったのかが書かれている。 とりわけ印象に残ったのは、2005年から2008年までの3年間、ウェブマガジンに掲載されたブログの仕事で、執筆に1日あたり15分を要し、当時の本業、国公立大学の助教授の収入とほぼ同額の収入があり、さらにその上、そのブログは文庫化され、それがまた相当な収入になったというはなしだ。大学の仕事は、1日12時間を要し、かなりのストレスだったというはなしで、執筆がいかに割のよい仕事かということが語られている。もちろん、マイナではあるが成功した作家森博嗣の場合である。 単位時間あたりの労力と、それに対する報酬で、割のよい方をとろうとするのは純粋ではないという考えもあるかもしれない。 しかし、私たちは、歳をとるにつれて、気力体力は、普通衰えるのだから、割に合わない事柄は、畳んだり断念したりするかもしれない。 著者の場合は、幸運にも、ストレスの多い、かつ割に合わない大学助教授の仕事の方を畳むことができた。 終章は、これから作家になろうとする人への提言、アドバイスであり、著者は「無料で奉仕は思い上がりだと思う」「金を払ってでも読みたいものをつくるのが仕事」「最初から奉仕では、一流にはなれない」と語っている。 作家みたいなことをやりたいと思う人は、「金にならなくとも」とかいった考えを持ったりすることもあるが、作家に限定せずとも、あることを仕事にするとはどういうことなのかについて考えさせれた。
2投稿日: 2016.07.29
作家になれる人、なれない人(きずな出版)
本田健,櫻井秀勲
きずな出版
作家になれる人、なれない人
本書は、もともと作家ではなかったが、のちにベストセラー作家になった本田健氏と、作家志望で、出版社入社直前に、松本清張と五味康祐の芥川賞候補作を読んで、編集者一本で生きることに決めたが、しかし、のちに独立して作家になった櫻井秀勲氏との対談形式の作家志望者啓発書である。 櫻井氏は、編集者として松本清張・三島由紀夫・川端康成等、多数の、また錚々たる面子を担当してきた経験から、作家になる人の条件や資質を述べている。 たとえば、「作家として大成する人は、奥さんを見ればわかる。それは……」というように、作家をかたちづくる内的資質や外的環境などについても述べている。(別に、配偶者がいないと作家になれないとか、そういう奥さんを持たないとダメだと述べているのではない) 本田氏は、まだ一行も書けてない人が、また、書き始めたばかりの人が、どんなことに留意すべきかを「売れる本」「売れない本」の特徴を参考に挙げてのべている。また、それに補足する形で、櫻井氏が、自費出版本に見られがちな傾向を挙げて注意点を述べている。 最後に、両氏が、作家が、編集者を始めとする、応援してくれるまわりの人たちとどう関係していくかを述べている。 本書は、作家になりたいが、まだ一行も書いてない人から、書いたものはあるのだが、まだ、稿料らしきものは得ていない、まだ作家とは言いにくい段階の、作家の卵の人に役立つとおもいます。
0投稿日: 2016.01.08
