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くろたまさんのレビュー
いいね!された数8
  • 夏を殺す少女

    夏を殺す少女

    アンドレアス・グルーバー,酒寄進一

    東京創元社

    ごくシンプルで、だから安心して読める

    二人の主人公で個別に起こるできごとが次第に一つに繋がっていく。 分かりやすいと言えば分かりやすい話ですが、それゆえに深く考えずに読んでいけます。キャラクターも深すぎず浅すぎず、いいバランス。 サスペンス映画を見ているかのような、最初から最後まで王道な感じがしました。昨今の複雑に入り組んだ小説に疲れている方におすすめ。いまや、こういうシンプルさは本当に貴重です。

    0
    投稿日: 2014.04.29
  • 浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか 仏教宗派の謎

    浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか 仏教宗派の謎

    島田裕巳

    幻冬舎新書

    日本仏教の入門書として

    新書にありがちなタイトルですが、内容は日本仏教の各宗派を紹介するものです。 仏教の予備知識もありませんでしたが、気軽に読み進めることができました。 各宗派が立ち上がり、現代に至るまでの軌跡を簡潔に知ることができます。入門書として楽しめると思います。

    2
    投稿日: 2014.02.12
  • 沈黙

    沈黙

    遠藤周作

    新潮社

    信仰と文化の狭間の苦悩

    切支丹迫害時代の日本へ来た宣教師の話。 信仰が本当に人を救うのか、救われない現実を見たときに何を信じればいいのか。 一方、迫害する日本は日本の論理が垣間見えて、それは決して(当時の価値観では)悪ではない。 信仰と現実を痛烈に描いています。信仰の是非は言いようもありませんが、何らかの示唆は得られると思います。 その示唆は万人に喜ばれるものとも言い難いものではありますが。

    3
    投稿日: 2014.02.12
  • 利休にたずねよ

    利休にたずねよ

    山本兼一

    PHP文芸文庫

    茶の文化を知る

    利休の一生をその死から遡っていく。利休とその時代の予備知識はありませんでしたが、すんなりと読み進められます。 利休が茶の道を進むことになった理由を解き明かしていくのもこの小説の楽しみの一つではありますが、私がよいと思ったのは茶室の雰囲気、侘び寂びの情景、茶を通した人と人との交わりの描写です。茶の道とはどのようなものか、歴史に名を残す人物は茶を通してどのように交流したか、それを追いかけるのも楽しい。 もちろん小説の描写を学問的にそのまま信じるのは禁物ですが、それでも単に小説としてだけでなく、茶の教養、体験としても楽しめる作品です。

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    投稿日: 2014.01.15
  • 限界集落株式会社

    限界集落株式会社

    黒野伸一

    小学館

    夢のある農業と地域再生のお話

    とてもテンポよく進んで、すべてがうまくいく。読んでいて痛快で次へ次へとページが進みます。 農業の描写は、全然知らない私にとっては興味深いものでした。でも経営の話になるとあまりにうまく行き過ぎて、「実際にはこうはいかないよな」と思ってしまうことも。現実的な問題は忘れてとにかくエンターテインメントとして楽しみたい、というときにおすすめです。

    0
    投稿日: 2013.12.12
  • はなとゆめ 電子ビジュアル版

    はなとゆめ 電子ビジュアル版

    冲方丁,遠田志帆

    角川文庫

    枕草子が生まれるまでの物語

    清少納言が宮仕えしていたときの話、枕草子が生まれるまでの物語を、清少納言自身の語り口で明かしていきます。 それは華に惹かれ華を羨み、謀略の渦に飲まれながらも華に忠誠を誓った日々。清少納言はそんな日々を苦しみや憎しみを含むことなく綴っていきました。 今の私たちに華はあるでしょうか。大事に思い抱く日々はあるでしょうか。それは千年の時を経ても変わらない人の幸せだと教えてくれます。

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    投稿日: 2013.12.04