
薔薇王の葬列 1
菅野文
プリンセス
安心してください、キャラ立ってますよ。
のっけからネタなタイトルですみません。 イングランド史の難所「薔薇戦争」および、シェイクスピアの『ヘンリー六世』『リチャード三世』を大胆にアレンジしたダークファンタジーです。 主人公は、のちのリチャード三世ことヨーク家のリチャード。彼の身体は両方の性別を有した、周りと距離のある孤独な少年(少女)です。そんな彼はある日、不思議な雰囲気を持った青年と出会います。お互いどこか惹かれながらも名前も告げることなく別れますが、今後彼とは何度も再会することなるのです。互いの身分と立場を知らぬまま・・・ 白薔薇と赤薔薇、男性と女性のふたつの性別の間で揺れ動く心、共存できないものたちが今後どうなっていくのか、目が離せなくなる作品です。 1巻は序章といったカンジで歴史的事実を追う色合いが強いので、モヤモヤしたまま読み終える方もいらっしゃるとは思いますが、ハマる方はハマります。そんな時電子書籍は便利ですねー 本屋さんに行かずに一気読みできちゃいます。 イングランド史はヘンリー、リチャード、エドワードの名前が吐血レベルに多いのがとっつきにい一因かと思います。この話も現時点でエドワード2人出てますから。でもご安心を。この作品は人物の描き分けがとてもしっかりしているので「この人誰だっけ・・・」的な思いはさせません。キャラ立ってます! 難攻不落な中世史先輩との距離が少し縮まるかもしれない1冊です。
1投稿日: 2016.01.10
VSルパン(1)
さいとうちほ,モーリス・ルブラン
月刊flowers
人の心の数だけ、ルパンがいる。
お孫さんの影響か(?)、日本ではなかなか有名人のルパン。 こちらは、おじいちゃんのほうのルパンのお話です。 続き物ではなく、一話完結のお話が3つ収録されています。 ・プリンセスの結婚(原作では「ルパンの結婚」) ・伯爵夫人の黒真珠 ・王妃の首飾り どれも原作の中の短編です。 さいとう先生の描くルパンは美しい青年です。青年なので年相応に青いです。 今のところ色っぽさは抑えめな気がします。 調度品やドレス、建物の書き込みはやや硬質ですが細やかで、100年以上前の華やかでひんやりとしたフランスの雰囲気が楽しめます。 アルセーヌ・ルパンのマンガというと、『アバンチュリエ』をご存じの方も多いと思います。 どちらのルパンも素敵です。当然の事ながらそれぞれテイストが違います。演出の妙ですね。 同じ題材でも描く人によってこんなに違うものなのか、漫画家って実は演出家でもあるんだなあということに今更気づきました。
4投稿日: 2014.10.05
湯神くんには友達がいない(1)
佐倉準
少年サンデー
ぼっち飯がなんだ! ひとり移動教室上等!
タイトル通り、お友達が一人もいない、作る気がない湯神くんと、ぼっちが嫌いな女子高生を中心にしたラブは入っていないコメディーです。 湯神くんは友人を必要としてない人なので、基本いろいろなことを器用にこなしつつも、とにかくマイペース。誰になんと言われても自分のこだわりは譲りません。 でもその「こだわり」は変なところで社会性を持っているので、どこかで誰かの役に立ってたりして、なんとも言えない生ぬるい優しさのあるストーリーになっています。 転げ回るほどの爆笑はないけれど、小さく笑える、疲れている時には「これでいいんだ」と妙な肯定をしてくれる不思議な味わいのマンガです。 この作者の方は女性なのでしょうか? 少年誌連載とは思えないくらいに絵柄が柔らかくて、読みやすいです。 あと、ちょっとした場面の描写が鋭いです。 偏差値そこそこ良さそうな高校の、平和で、なんだか無気力な雰囲気や、教室で浮き気味のヒロインがクラスメイトに地味にハブられるシーンがとか妙にリアルで、大昔に卒業した学生時代を思い出しました。 でも、イジメとかそういうものはなく、ストーリー上のジメっとした雰囲気は湯神くんが吹き飛ばすか、違った悪いものに変えてくれるので読後感はとてつもなくスッキりです。ご安心を!
4投稿日: 2014.03.31
子爵ヴァルモン(2)
さいとうちほ
月刊flowers
火遊びのツケは、高くつくぞ。
恋愛は「愛して、征服して、棄てる」が1セットの、美しすぎる恋愛ハンター、ヴァルモン子爵の物語第二弾。 前巻はヴァルモン子爵と元恋人メルトイユ侯爵夫人が仕掛ける偽恋愛ゲームと、そうと知らずに翻弄される被害者たちの様子が描かれていましたが、今回そんな一方的な関係にも変化が。 革命前夜の華やかなフランス貴族社会に咲くゲームは、仕掛人も巻き込みながらどんどん転がり、大きく弾けて、いろいろな人に変化をもたらします。 それぞれが別の道を進み、もといた狭く息苦しい世界はほどなく革命によって消えてゆく。 なんだか源氏物語にも似た寂寞感が漂う味わい深い読後感が残りました。 美しさ溢れるさいとう先生の作画は、1巻よりもより官能的。 お肌露出度もちょい高めというのもあるんですけど、登場人物たちが隠していた、もしくは自覚してしまった気持ちが激しく紙面に(電子書籍ですけど)出てくるからなんでしょうね。 きれいに繕っていた貴族らしい表情よりも、愛とか憎悪という言葉では表現できない、いろいろな感情が煮えたぎる人間らしい表情を見せる人物が多く、見応えあります。 キュンと酸っぱい恋の味、ではなく甘くて苦いドローリ濃い人生を覗いてみたい方にとてつもなくオススメの作品です。
2投稿日: 2014.02.25
子爵ヴァルモン(1)
さいとうちほ
月刊flowers
目眩がしちゃうよ、危険すぎて。
原作はフランス革命前に書かれた書簡形式の小説です。 何度か映画化ししていたので、なんとなくご存じの方もいらっしゃるはず。 ストーリーは書籍説明のものはちょっと煽りすぎですかね… 表紙の非ッ常ーに美しい男子、ヴァルモン子爵の視点を中心に、彼と元愛人兼共犯者がそこらで仕掛ける危うい火遊び的恋愛ゲームと、2人に翻弄されるその他の人々の群像劇です。 主要人物、衣装、背景…とにかく美しいです。 主人公ヴァルモン子爵は、そこら中で浮き名を流しまくるだけあって、洗練されまくった色気がありまして、遠く離れた読者まで魅了する勢いの納得のモテオーラを放っています。 子爵の周りの女性陣は、賢く抜け目のない美貌の元恋人、恋に恋する修道院出たてのお嬢さん、心のなかに情熱を隠し持つ貞淑な婦人、子爵を溺愛するかわいい叔母さんーー などなどバラエティ豊かで、描き分けが非常にわかりやすいです。ちなみに、登場人物はほぼ全員貴族。 セリフのないコマにも無駄なものがなく、場の雰囲気にメリハリがあり、貴族社会独特の静かな緊張感とか、ひんやりとした空気などなど、余すところなく入ってます。 静かなのにどこかで衣擦れの音が聞こえてきそうな、奥深い雰囲気が味わえる作品です。 さいとう先生はもう大分前から構想をお持ちだったたそうで、本当によく練り込まれた、感嘆のため息ばかりが出る1巻でした。 自分的にどストレートな容姿のヴァルモン子爵の物語は、全2巻だそうです。早く続きを電子化してくださーい… (H26.2月追記) と思っていたら、ちゃんと続きも電子化してくれました。 貴族たちの危険な火遊びが本格的に燃え広がっちゃう様子は、2巻で見届けてくださーい。
2投稿日: 2014.01.22
殿といっしょ 1
大羽快
KADOKAWA
濃ゆい「殿」たちによる、濃ゆい戦国4コマ
織田信長=燃やすの好き、豊臣秀吉=お笑い好き、伊達政宗=眼帯好きすぎ…… などなど、非常にキャラが濃い殿様たちによる、テンション高い戦国4コマです。 全編軽いノリのマンガですけど、ところどころに史実ネタも入っているので、歴史好きさんもちょびっとニヤリとできるとかできないとか…… 本当に軽くてアホらしさ満載(超褒めてます)ギャグマンガで、合わない方もいるようなので、まずはお試しに1巻からどうぞ。1巻は有名な殿ばかり出るので、「誰?」となることはないと思います。
3投稿日: 2013.11.02
カボチャの冒険
五十嵐大介
バンブーコミックス 4コマセレクション
ワイルド系ネコ好きさんにおすすめ。
山里に暮らす作者と、昔は箱入り娘だったらしいカボチャ(猫)の、野趣溢れる日常のおはなし。ご近所の緑深い森や田畑をフィールドに日帰り冒険をするカボチャの日常を、作者の方と一緒に見ている気分になれます。 家の中外を駆け回り、狩りの腕を上げ、泥だらけで凱旋するカボチャの日常は、今はやりの家猫ブログとは全く違う趣ですが、ワイルドだろー的な猫が好きな方には全力でおすすめします。スリスリ、ゴロゴロ、ツンデレーな都会的(?)お猫様好きの方には……どうだろう。合わなかったらとりあえずスミマセン。
3投稿日: 2013.10.19
