【春のブックフェス2020 特別企画】若者から熱狂的な支持を受けるSNSのポップアイコンにしてイラストレーター・原田ちあきさんがスペシャルゲストで登場♡

【春のブックフェス2020 特別企画】若者から熱狂的な支持を受けるSNSのポップアイコンにしてイラストレーター・原田ちあきさんがスペシャルゲストで登場♡

2020.03.27 - 特集

「Reader Store 春のブックフェス2020」には各界から選りすぐりのゲストが登場!
最後のゲストは、SNS発の最新作『手から毒がでるねこのはなし』が話題のイラストレーター・原田ちあきさんです。

【Reader Store 春のブックフェス2020 特別企画】
若い世代から絶大な支持を得る、イラストレーターの原田ちあきさん。ツイッターの関連アカウントのフォロワー数は今なお増え続け、近頃ではWEB連載の影響で飼い猫の“いちまつ”の人気も急上昇、SNSのポップアイコンとしてますますの活躍を見せている。


今回ご紹介する新刊『手から毒がでるねこのはなし』も、ツイッターに漫画を投稿したのがはじまりだ。タイトル通り、手から毒が出るために大切な誰かと手を繋げない、そんな孤独な猫“もうどく”をめぐる切なくも優しい物語。そこには、本当の幸せってなんだろう?  という読者への問いかけが内包されていて、あたたかくもピリッとした読後感をもたらすのだ。

そんな今作に込めた想い、そして過去から今に至るまでのあれこれを、原田さんご本人にたっぷりとうかがった。

孤立している人とか、自分のことが嫌いな人に向けて作品を届けたい

──原田さんは日頃から電子書籍を愛用されているとか。

めちゃめちゃヘビーユーザーですね。昔から引っ越しが多くて、紙の本は手放さねばならなかったり、あと何巻のあそこが読みたい! みたいなときにすごく便利なので。

──一番最近買った本は?

『青野くんに触りたいから死にたい』の6巻です。切なくておすすめです!

──原田さんといえば2年前に出版した作品集『誰にも見つからずに泣いてる君は優しい』(大和書房)が話題になって、知名度も一気に上がったと思います。その後、生活に変化はありましたか?

どうでしょう? 本を出したから変わったというのはないかもしれないですね。それこそSNSのフォロワーが若干増えて、企業さんから声をかけていただく機会が増えたかな、ぐらいですかね。いつもと違うことをするとき、私は自分で意識的に行動を変えることが多いので、本を出したことはあんまり関係ないのかも。

昔はアクリル絵具でキャンバスにイラストを描いて、個展を開いて来てくれたお客さんとよく喋っていたんです。今はコミュニケーションの場所がツイッターやインスタグラムになっただけで、原田の絵を好きだと言ってくれる人たちとの距離感も変わってないですね。


──今作の“手から毒がでるねこ”というキャラクターは、どんなところから着想を得たんですか?

小っちゃいキャラクターを作りたくて。自分のキャラクターでぬいぐるみを作るのが夢だったんですけど、私がもともと描いている泣いている女の子の絵は、ぬいぐるみにはできないだろうから(笑)、もっと簡単で哀愁のある小っちゃいキャラクターを作ろうと思ったんです。最初は80年代のイラストっぽい猫の絵を描いていたんですが、どんどん簡略化していった結果、現在の“もうどく”になりました。

ただ、作品に込めた思いは『誰にも見つからずに~』と一緒なんです、自分の中では。孤立している人とか、自分のことが嫌いな人に向けて作品を届けたいなと思って描いたんですけど、ちょっとまろやかな感じになりましたかね(笑)。“もうどく”なら、もっと多くの人にアタックできるかな!? って描き始めたのが最初かもしれないです。

もっとクセのない絵だったらよかったのかもしれないけど、どうしてもクセのあるものが好き

──以前は自ら個展を開いていて、もっと知名度を上げて絵を売るにはどうしたらいいかと考えた結果、現在の独自の色使いになり、SNSを活用することにしたと言っていましたよね。さらに多くの人に知ってもらいたくて“もうどく”が誕生!

です! 承認欲求強い感じがひどいですね、言葉にすると(笑)。

──原田さんのその欲が尽きないところが好きですよ(笑)。

ありがとうございますっ。でも、今でもずっとそうで、承認欲求が強すぎて、見て欲しくてたまらないんです(笑)。というのも、私の絵は、人によって好き嫌いが激しいんですよね。『誰にも見つからずに〜』を出したとき、私の絵は人を選ぶということが5年越しぐらいに発覚したわけです。もっとクセのない絵だったらよかったのかもしれないけど、どうしてもクセのあるものが好きで。


©原田ちあき(『誰にも見つからずに泣いてる君は優しい』より)


──実際、原田さんの絵で心が救われた人だってたくさんさんいるわけだし。

そうだといいなぁ。ただ、『誰にも見つからずに〜』は今まで応援してくれた人たちへのお礼みたいな作品集にしようというのが、そもそものコンセプトだったんです。新たな読者を得ようとは考えていませんでした(笑)。だから、あの本は原田ありきで見てくれた人が多かったんですけど、今回の『手から毒がでる〜』は“もうどく”というキャラクターから入って見てくれている人が多い気がします。作者抜きで、キャラクターありきの漫画にしたいと思っていたし、作者の意図はにじまないようにしたかったので、すごく嬉しい受け取り方をされているんじゃないかなって思ってます。

──ストーリーには、原田さんの猫愛が滲みでていますよね。猫って、たとえ飼い猫であっても基本ひとりで生きているつもりでいるでしょう。さみしいような、さみしくないような、そんな世界観にキュンとします。

うわぁ、うれしいです。確かにもうどくは一匹狼ですからね。それに最初からひとりだと、それが当たり前の状態だから、さみしいっていうことがわからないのかもしれないなって。他人がじゃれ合っているのを見ても、いいなぁとは思わずに、別の生き物だと認識しちゃうというか。

私が小学生の頃に住んでいた地域は母子家庭とか父子家庭が多くて、でも小さい頃からそこにいたから、みんな自分が苦労しているとかかわいそうだとか思わないんですよね。片親がかわいそうっていうのは、世間の偏見なんじゃないかなって。もうどくのことを「ひとりでかわいそう」とか「もっと幸せに描いてあげて」とか言ってくれる人がたくさんいるんですけど、私は実はそんな不幸じゃないよねって思って描いてます。

働くのがそんなに好きじゃなかったので、自分の得意なことでお金が稼げるようになったらラッキーだなって

──原田さんご自身も母子家庭で育ったんですよね。何歳から?

小学校高学年か中学校ぐらいかな。あんまりちゃんと覚えていないですね、うちの父、フニャッといなくなったんで(笑)。もともとそんなに距離感が近くなかったので、一人グループから抜けたわ、ぐらいな感じでした。だからすごくぬるっとしてますね、当時の記憶。めっちゃ反抗期だったから、お父さんいなくなっても別にいいし! みたいなのもあったのかな。

その頃、母親が入院して、一週間ぐらいひとりで暮らしてたんですよ。それは楽しかった記憶があります。頂いたお見舞いのメロンとかをチャリに乗せて帰って、風呂に入りながら半分をひとりで食う! みたいな楽しみ方をしてました(笑)。周りの大人が当たり前に心配してくれたし、出て行った父親すら電話をかけてきたりするんだけど、なんでこんなに心配されるんやろう? と思ってました。一人遊びが得意なので、ひとりでいることがそんなにさみしくないってことも、あるのかな。

──絵はその頃から描いていたんですか?

描くのは好きでしたね。でも、絵を描いているせいで勉強しないと思われていて、家で絵を描くのを禁止されていたんです。だからノートの端っこに描いて、ぐしゃぐしゃにして、ティッシュで包んで捨てていました。

───画家になりたいとは?

全然、今までの人生で1回も思ったことなくて(笑)。漫画家になろうと思ったこともなかったです。ただ、承認欲求が人一倍強いので、何か認められる職業に就きたいとは思っていました。あと、働くのがそんなに好きじゃなかったので、自分の得意なことでお金が稼げるようになったらラッキーだなって。

何をやったとしても、どんな作品を描いても、それがすべての人に受け入れられるわけじゃない

──では、人に絵を見せたきっかけというのは?

高校が造形の学校だったんです。普通の勉強が半分、絵画とか陶芸とかの造形半分みたいな学校で。でも私、進路を決めるときに特にやりたいこともなくて。友達になんとなく「芸人になろうかな〜」って言ったら「いいんじゃないの」って返されて、2年ぐらい養成所に通ってたんです。

周りは美大に進んだ子が多くて、その中のひとりがキュレーションの授業で企画展示をやるということで、私にも声をかけてくれて。描きためていた絵を絵本みたいにして出展したら、感想ノートにたくさんの書き込みがあったんです。それがめちゃめちゃうれしくて。もしかしたら芸人よりも絵描きの方が向いてるかもと思って、そこで養成所をフニャッとやめました(笑)。

──ああ、フニャッと行動する血が流れているんだ(笑)。

そうそう、父親譲りのフニャッと感があって(笑)。さらに、たまたま当時付き合っていた人がバンドマンだったので、そのつながりでライブのフライヤーにイラストを描くようになって、そしたらそれをDIR EN GREYのボーカルの京さんが見つけてくれたんです。それで、sukekiyoという京さんがもう一つやっているバンドのTシャツのイラストを描くことになりました。

京さんとは実は今もまだお会いしたことはないんですけど、マネージャーさんとお話させてもらったときに「これ、京に渡すんでお願いします」と色紙にサインを求められたことがあります(笑)。原田が色紙にサインしたのは、もしかしたらあれが初めてだったかも?

──すごいエピソードをお持ちですね(笑)。でも、原田さん自身がオープンだから、各方面から声がかかるんでしょう。

無理のない範囲で、面白そうなことはやっぱりやりたいじゃないですか。何をやったとしても、どんな作品を描いても、それがすべての人に受け入れられるわけじゃないですよね。だからこそ、受け取る人それぞれに、こっちは無理やけどこっちはイケるみたいな、勝手に選んでもらえるような幅広いものを用意しておきたいと思うんです。承認欲求、本当に強いので(笑)。

自由にやれるのが本当に最高ですよね、インターネッツ!(笑)

──実際、『手から毒がでるねこのはなし』は、今まで以上に幅広い年齢層の読者に受け入れられていると聞いています。他の猫とは違う自分を肯定して生きている“もうどく”の姿に、自身を投影している人も多いのかもしれません。

そういうのをちょっと実感することがあって。過去に2回、大阪のメイド喫茶・メルカフェさんとコラボをさせていただいたんです。今回は『手から毒~』の世界観をテーマに「喫茶もうどく」と題してカラフルなメニューを出させてもらいました。

お店の常連のお客さまには、40代以上の男性の方も多いんですが、今回のコラボカフェでは、『手から毒~』の本をわざわざ買ってくれて感想をくれたり、人に薦めてくれたりと、心に届けられた実感があって。キャラクターの形が変わったらここにも届くんだ〜って、感激しましたね。

───実は、“もうどく”が一人ぼっちになってしまった理由など、本には収録されていないエピソードを、すでにツイッターで発表しているんですよね。

そうなんですよ。そのへんは、出すタイミングとかもあんまり気にせず。この先のエピソードが本にならないとしても、描きたいことがある限りはヌルヌル続けていきたいなと思ってるんです。そこはだから、自由にやれるのが本当に最高ですよね、インターネッツ!(笑)

インタビュー・文:斉藤ユカ
撮影:河上 良(bit Direction lab.)
撮影協力:melcafe(メルカフェ)※2020年3月29日閉店

【profile】

原田ちあき(はらだ・ちあき)

1990年、大阪府生まれ。イラストレーター、漫画家。2014年「よいこのための悪口メーカー」を名乗り、悪口イラストを本格的に書き始める。独特のタッチのイラストと共感を呼ぶメッセージで若い世代から絶大な支持を受ける。アーティストやアイドルとのコラボも多数。著書に『原田ちあきの挙動不審日記』(祥伝社)、『誰にも見つからずに泣いてる君は優しい』(大和書房)など。最新刊に『手から毒がでるねこのはなし』(ソニー・ミュージックエンタテインメント)がある。

【profile】

■ 3/27(金)配信 原田ちあきさん最新作!

可愛くてせつなくて泣けちゃう、世界一やさしいねこのはなし。もうどくは手から毒がでるから友達と手をつないだことがありません。みんなとちがうへんな色の毛を隠すためシーツをかぶっていて、石を投げられたって誰も困らせたくないから痛くても泣きません。さみしくなったら、そっと電柱を抱きしめて、「誰かに抱きしめられるってどんな感じ?」と想像してみます。もうどくはとても優しいねこです。Twitter掲載時から「一生分泣ける!」と感動の声、続々!共感を呼ぶメッセージで熱狂的な支持を受ける原田ちあきの大人気猫マンガを【電子限定描き下ろし付き】で電子書籍化。

【原田ちあきさんおすすめマンガご紹介】

【原田ちあきさん推薦コメント】

楳図さんが初めて描いた恋愛漫画と言われていて、SFホラー恋愛漫画みたいな感じです。意識を持つコンピューター・モンローと少年少女との不思議なお話で、小学生の頃の自分の気持ちを、楳図さんって全部覚えてるんだろうなっていうのを端々から感じるんですよね。こんな遊びかたをしてたなっていうこととか、主人公の男の子と女の子の二人の間だけで通じるあだ名をつけていたりすることとか、まかり間違えるとどっちかは私!? って思っちゃうぐらい共感しました。主人公の二人は離れ離れになって「いつか大人になったら探して会いに行くから待ってて!」というシーンがあるんですけど、その次のページの見開きがとにかくすごい。めちゃめちゃ切ない。うまく言語化できないんですけど、そこを読んで、原田、心斎橋の動く歩道の上で崩れ落ちました。

【原田ちあきさん推薦コメント】

友達がいない思い込みの強すぎる女の子が主人公で、学校で青野くんとぶつかって「ごめん!」って言われただけで、わたし彼氏ができちゃうかもって思っちゃう(笑)。実際付き合うことになるんですけど、なんとその数ページ後で青野くんが死んじゃうんです。それで、女の子は手首を切って死のうとするんだけど、そのときお腹からビヨーン! って青野くんの幽霊が出てきて止めて。最初はギャグかなと思うんです、なんとも言えないシュールな感じで。でもどんどん怖くなってきます。青野くんがたまに豹変して、彼女や他の人の体に乗り移って、そうするとその人の体が少しずつ傷ついたり。それがどうしてなのかは、まだわからないんです。二人がこの先どうなっていくのかがすごく楽しみ!

【原田ちあきさん推薦コメント】

舞台は終末の世界で二人の女の子が主人公です。大きい戦争の後で、人がほとんどいないので、登場人物は彼女たちを除いて4人ぐらい。この子たちは戦争が起きてる最中に生まれて、食べ物の事もよく知らないんです。カロリーメイトみたいな高栄養バーがいっぱい出てきて、そのチョコ味を見つけて食べるんですけど、彼女たちは本物のチョコに出会ったときに、それをチョコだと認識できないんです。“チョコ味の何か”だと思ってしまう。それが無性に切ない。案外楽しそうに暮らしてるんですけど、世界が終わった後ってきっとこんな感じなんだろうなって思うし、片方が死んだら残された方はどうなるんだろうって想像しながら読むと、たまらなくなるんです。そして登場人物の誰も夢を叶えられません。だけど絶望しない。絶望に食われないように生きてる感じが、かわい切なくて。私も終末の漫画描きたい! って思ってしまった、印象深い作品です。

【原田ちあきさん 関連書籍】

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