【朗読付き電子書籍レーベル YOMIBITO第5弾配信】声優・永塚拓馬さんインタビュー。こだわりは女性の声の演じ分け

――今回は「怪談特集」ということで、永塚さんには『世界怪談名作集 鏡中の美女』を読んでいただきました。朗読をしてみていかがでしたか？

岡本綺堂先生が翻訳されているということで、きれいな文体の作品だなと思いました。怪談といっても、恐怖より幻想的部分にフォーカスされた文学的な作品ですよね。なので、聴いていて心地よくなる朗読になったのではないかと。ただ、途中で急に叫ぶ場面もあるので、そこには気を付けてほしいです（笑）。

――そんな場面もありましたね（笑）。『鏡中の美女』なんですが、実は今までのYOMIBITOのなかで最も文量がある作品でもあるんです。

そうだったんですね。でも、その分たくさん聴いていただけるので、とてもいいんじゃないでしょうか。朗読は一定のテンポで読んでいくのも大切だと思うんですが、テンポが速くなってしまったときには、ディレクションでしっかり調整してもらったので、とてもいいものに仕上がっていると思います。

――ちなみに、怪談作品はよく読まれたりしますか？

ミステリーはよく読むんですけど、怪談はあまり読まないですね。映像作品もなんですが、ホラーやスプラッターのような刺激的な描写がある作品が苦手で……。

――本作のことを「恐怖よりも幻想的」な作品と言っていましたが、怪談が苦手な永塚さんでも問題はなかったということでしょうか。

そうですね。自分のようにホラーが苦手でも触れられる作品だと思います。海外の作品ということもあってか、表現も詩的で美しいですし、岡本綺堂先生がそういう部分もしっかり詩的に翻訳してくれているので、そういう意味でもぜひ読んでいただきたいです。

――今回の朗読で特に聴いてもらいたい部分はありますか？

女性の声の部分ですね。同じ女性でも、例えばヒロインの美女は上品で高貴な感じの声を意識して演じたりとか、町娘でもお姉さん系と妹系で分けてみたりとか、ハイトーンのボイスで演じ分けるのはかなり難しかったんですが、こだわって朗読しました。

――個人的には、主人公・コスモの長いモノローグ部分も印象的でした。感情的な独白でしたよね。

はい。ただ、あの分量を本息でやってしまうと、朗読を聴かれる人は疲れてしまうと思うんですよね。なので、地の文に寄せつつ、聴き疲れない芝居をすることを意識して朗読しました。

――そこまで考えていたんですか。

ほかには、コスモが会う古道具屋の店主を演じたとき、最初はちょっと不気味な老人くらいで考えていたんですけど、もっといやらしい感じでというディレクションをいただいて、癖のあるいやらしい老人に仕上がったんじゃないかなと思います。

――今回は朗読の収録中に動画の撮影も行いましたが、いかがでしたか。

今までにない経験だったので、正直どうすればいいかわかりませんでした（笑）。最初はきょろきょろしていたかもしれませんけど、普段はあんな感じで収録しているので、リアルな姿をお届けできたのではないかと。特にブースに入るところは今まで撮られたこともなかったですし、これが最初で最後かもしれません。

――レアな映像になりそうですね。朗読劇などでもカメラはあるかと思いますが、今回の撮影と比べてみていかがですか。

朗読劇はカメラとの距離があるのに対して、今回はカメラが近いので、聴いているお客さんが数十センチくらい間近にいるような感覚なんですよね。なので、読み始めると大丈夫なんですけど、やっぱり恥ずかしさが出てしまいました（笑）。