作家インタビュー:中村貞裕

作家インタビュー:中村貞裕

2017.05.03 - 特集

※本記事は2012.8.3時点のものとなります。

話題のスポットの裏にはこの男アリ!いまだ行列の絶えない人気店「bills」の日本上陸やデザインホテルの先駈け「CLASKA(クラスカ)」の企画、東京スカイツリーのカフェの運営に渋谷ヒカリエのレストランのプロデュース運営etc.これらすべてを手がけたプロデューサー、「TRANSIT GENERAL OFFICE」代表の中村貞裕さんの初の著書『中村貞裕式 ミーハー仕事術』が待望の電子書籍化!中村さん流“ミーハーのススメ論”を語っていただきました。

飽きっぽい、ストイックになれない自分がコンプレックス

飽きっぽい、ストイックになれない自分がコンプレックス 30歳で独立し、「TRANSIT GENERAL OFFICE」を立ち上げてからはや10年。あっという間という気もするけれど、夢中で楽しんできた記憶しかなくて、細かいことは全然覚えていません(笑)。ケータリングからカフェやホテル、オフィスビルのプロデュース、「bills」の運営、東京スカイツリーや渋谷ヒカリエのカフェやレストランなどを手がけてきて、世の中的には“ブームを生み出す仕掛け人”なんて言われていますが、僕はずっと“何をやっても続かない僕”というのがコンプレックスでした。

10代のころは、たとえば部活ならバスケやサッカー、高校生になればスケボー、ギターやDJ、テニスetc.新しくて格好よく、ブームなものが登場してはなんとなく飛びついて、ちょっとかじって飽きたらまた次へ。何かを地道に続けたことなんてなかったんです。それで、ハッと気づいたら、スケボーに夢中だった友達はセミプロっぽくなっていたし、DJに夢中だったヤツはイベントに呼ばれるような人気DJになっていた。僕は、と言うと、何も誇れるものがない。深い知識も得意分野もない。それまでは若いからまぁいっか、なんて思っていたけれど、さすがに自分の中で、初めてネガティブな感情が芽生えてきて…。だんだん、ストイックじゃない自分、飽きっぽい自分がコンプレックスになっていきました。それが、ちょうど20歳のころ。

僕の個性、武器ってひょっとして…?!と気づいた瞬間

ヤバいな、と思っていたけれど、性格ってそう簡単に変えられるもんじゃない。モンモンとしつつも、どこかで、しょうがないよな、とも思ってた。そんなあるとき、「今話題の店ってどこ?」「ドライブ行きたいけどおすすめの店、教えて」「今流行ってるものって何?」とか、やたらといろんな人に聞かれる自分、それに熱心に応える自分に気づいたんです。熱しやすくて冷めやすい、新しいものが大好きで自分の目で確かめないと気がすまない性格のおかげで、いろんなことを聞きかじり、薄っぺらかもしれないけれど、旬の情報やネタだけは豊富な自分。そうか、これって僕の武器かもしれない、つまり「ミーハーって僕の個性?!」と気づいた瞬間でした。

そう考えれば、唯一、僕がやり続けていたこと。それは、「新しいものを探すこと」。何かひとつのことだけをずっと続けることはできなくても、新しいお店や情報を探しだしては、必ず足を運び、自分で体験、体感し、周囲に伝える。いわゆる「ミーハーな性格」は、僕に多くのネタのストックをもたらしてくれたんです。

ミーハーと“スーパーミーハー”の違いとは?

ミーハーと“スーパーミーハー”の違いとは? ただし、僕のミーハーっぷりは、自分では気づかなかったけれど、周囲に言わせれば、ハンパない“スーパーミーハー”らしい(笑)。睡眠時間を削ってでも、話題のスポットには行きたいし、それは地方や海外に行っても同じ。時差ボケでも寝不足でも、行きたい店は片っ端から行かないと気が済まない。どうしても見たいものがあれば、直前でエアだって変える。

ミーハー歴が長い僕が思うに、ミーハーとスーパーミーハーの違いは、一番は行動力。知識だけではなくて、実際に足を運んだ者しかわからない情報は、やっぱり説得力がある。それから、意外かもしれないけれど正直であること。知らないことは知らない、知っているけれど深くは知らない、とハッキリ言うことで、逆に知っている人が正しい情報をきちんと教えてくれる。つまり、知らない、という会話のとっかかりを持っているかいないか、これが大切なんです。

続かない筋トレは続けなくてもいい

と、なんだかエラそうにミーハーについて語ってしまいましたが(笑)、ミーハーであり続けることは、筋トレと一緒だと思います。鍛えているうちに、情報の取捨選択、自分なりの法則やコツ、弱点や強みを見つけることができる。ただし、間違えてほしくないのは、頑張って続けようとしないこと。僕の場合、“ミーハー筋トレ”はまったく苦じゃない。むしろ、ものすごく楽しいんです。ダイエットでジム通いが苦痛なのに無理して通い続ける人や、ホントは興味がないのになんとなく習い事に通う人。それってものすごくストレスだし、一見、「続けている風」かもしれないけど、実際は何も鍛えられていないと思うんです。そりゃあもちろん、自分にぴったり合った、たったひとつのこと、続けられる得意なことを見つけ、その才能が花開き、成功することは一番幸せです。でも、そこに至るまではいろんなことを試せばいい。頑張っても続かないなら、次を試せばいい。そう思うんです。

ここ最近、高校生に講演をする機会が多くて、先日、「やりたいことがなければ、やれることをやればいい。ひとつのことが続けられないなら、いろんなことを試せばいい。焦らないで、いろんなことにチャレンジすれば、必ず1つは、続けられるものやことに出会える。やりたいことは必ず見つかる」って話したんですよね。「勇気が出ました」っていう感想をたくさんもらって、ひとりで金八先生気分に浸りましたが(笑)、これって、高校生だけでなく、すべての世代に言えると思うんです。

「1×100=100×1」。そのココロは?

「1×100=100×1」。そのココロは? 何ひとつ続けられなかった僕は、ミーハーである自分を受け入れ、それを鍛えることで、ビジネスに結びつけることができました。これはとてもラッキーなことだと思う。会社設立から10年たって、ひとつの区切りとして初めて手がけた本『ミーハー仕事術』には、僕なりのミーハー道の極め方、そのノウハウを隠すことなくすべて書きました。それが皆さんにとって、少しでも仕事や人生を楽しくするヒントになれば、こんなうれしいことはありません。

最後に。最近、僕が気に入っている言葉を紹介します。「1×100=100×1」。そのココロは、「1の知識を100個もっている人と、100の知識を1つもっている人は同じだ」ということ。詳しくは本の中にも書きましたが、この数式、とても気に入っています。何も極めることができない僕みたいなミーハーは、100の知識はないけれど、1の知識を100個集めることができる。これからも、100と言わず、1000、100000と、ミーハーならではの旬で面白いネタや知識を集めそこからビジネスを発想できたらと思っています。

Text / Miho Tanaka(staff on)

話題のスポットを多数手がける時代の仕掛け人・プロデューサー中村貞裕氏の初の著書。なんのスペシャリストでもないけれど、圧倒的な“ミーハー力”で多くのブームをつくってきた著者ならではの、仕事術とは? ミーハーを武器にして仕事につなげるワザから、ミーハー力を鍛え、ミーハー力をブランドにしブームをつくる方法まで、具体的かつわかりやすくまとめた究極のビジネス書。

Profile

中村貞裕 (なかむらさだひろ) プロデューサー

「TRANSIT GENERAL OFFICE(トランジットジェネラルオフィス)」代表取締役社長。1971年生まれ。慶應義塾大学卒業後、伊勢丹を経て2001年、トランジットジェネラルオフィスを設立。カフェブームの立役者として「sign」、「GUCCI CAFE」などの人気カフェの他、「bills」など話題の店を多数手がける。また、デザインホテル「CLASKA」や大阪「堂島ホテル」、シェアオフィス「the SOHO」など話題の施設もプロデュースするほか、ファッションブランドのブランディングなど幅広い分野で活躍中。

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中村貞裕さんプロデュースの空間

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