【Reader Store特別ゲスト企画】マンガとホラーと踊り場と!? 谷山紀章さんがスペシャルゲストで登場!

【Reader Store特別ゲスト企画】マンガとホラーと踊り場と!? 谷山紀章さんがスペシャルゲストで登場!

2021.01.08 - 特集

Reader Storeでは、各界選りすぐりのゲストの方々にご登場いただき、本に関してお話ししていただいています。今回は、声優、そしてアーティストとして大活躍中の谷山紀章さんです。

『進撃の巨人』のジャン・キルシュタイン、『あひるの空』の夏目健二、『文豪ストレイドッグス』の中原中也、『うたの☆プリンスさまっ♪』の四ノ宮那月、『天元突破グレンラガン』キタン・バチカ役など、幅広いジャンルのアニメ作品で、長年に渡り唯一無二の個性を演じている人気声優であり、KISHOW名義ではアニメソング界を代表するロックユニット・GRANRODEOのボーカリスト/作詞家として大活躍中の谷山紀章さん。そんな谷山さんは、自宅では紙の書籍、仕事場や移動中にはタブレットで電子書籍を愛読する読書家でもあります。電子書籍との付き合い方や過去の読書遍歴、オススメの本について語っていただきました。

自宅の踊り場が大好き。そこでワインや焼酎を飲みながら本を読むのが至福

――谷山さんはお仕事場の休憩中などにも、タブレットでマンガなどの電子書籍をよくお読みになっていると伺いました

はい。こういう取材で言ってしまうのは申し訳ないけど、僕は携帯電話も今だにガラケーを愛しているアナログ派なので、電子書籍も最初は否定派だったんです。でも、たしか3、4年ほど前かな? とある企画で初めての電子書籍体験というのをさせてもらったら……なんとも便利でね!(笑) 当時、既にタブレットは持っていたので、そこからですね、電子書籍をポチッとしていろいろ読むようになったのは。

――紙派の谷山さんも、やはり便利さには敵わなかったですか

そうなんですよ(笑)。ただし、僕の場合は電子書籍版だけを買うことはなく。ちゃんと家に書籍があって、移動中や仕事の空き時間にも読めるように、一度読んだ本、好きな本を電子書籍でも買い集めている感じですね。だから電子書籍のラインナップも古いものから最近のものまで、種々雑多なんですよ。

――ちなみに、ご自宅での読書スタイルは?

僕、自宅の踊り場が大好きでね。階段に本をたくさん並べて置いてるんですよ。ゆっくりしたい時は、リビングからあえて踊り場まで行って、ワインや大好きな焼酎の“いいちこ”を飲みながら、本を読むのが至福ですね。なので、電子書籍は出先で読む感じかな。この御時世で今年は少なかったですけど、新幹線の移動中だとか、GRANRODEOのライブの楽屋だとか(笑)。

――そこでどんな本を読まれているか、今までどんな本を読まれてきたかが気になりますね。子どもの頃からの本の記憶で印象に残っているのは?

保育園時代か小学校時代かは忘れちゃったけど、子どもの頃、家に昔話とかグリム童話とかがずらっと並んでたのは覚えてますね。動物図鑑や宇宙の本のシリーズなんかを見て、子ども心にワクワクしてたり。
読んでた本の記憶がちゃんとあるのは、マンガ以外だと中学時代からかなぁ。いろんな友達がいた中にファンタジー好きのマニアックな子がいましてね。そこで教えてもらったものは多いかな。僕も小学生から「ドラゴンクエスト」をやり始めたこともあって、中世ファンタジーの世界は好きだった。ファンタジー RPGのルーツである『ダンジョンズ&ドラゴンズ』や『ウィザードリィ』のことを知ったのも、その頃だった気がしますね。

――正統派ファンタジーがお好きだったんですね

 そのうちに『ロードス島戦記』(角川文庫)というのが現われるんですよ、水野 良先生の。クラスメイトに読書家がいて、「何読んでるの?」と近寄っていくと……さらにいろいろ知ることになった。『ロードス島戦記』は90年代に入ってアニメ化されたんですけど、その時は待ってました! だったな。富士見ファンタジア文庫なんかもよく読んでた。テーブルトークRPGの『ソード・ワールドRPG』のリプレイ集とかね。同時期だとゲームブックも印象に残ってて。テーブルトークRPGを一人で本で楽しめるっていう。『ルパン三世』のシリーズ(双葉文庫)とか、ファンタジー系のゲームブックも遊んでましたね。

 ――高校生になると?

ファンタジー好きが高じて、(ハワード・フィリップス)ラヴクラフトに行きましたね。高校生くらいだと、楽しみ方も素直ですよ。異形の者が闊歩する世界をこれすごい! これ怖い! みたいな。文体も重いし、難しい表現がたくさん出てくるところも高尚な感じがして、その雰囲気を味わっていた感覚がありますね。大人になって思うと、ちょっとイタかったかなと(笑)。ラヴクラフト、クトゥルー(クトゥルフ)神話の流れで、映画『サイコ』の原作者のロバート・ブロック、『コナン・ザ・グレート』の原作を書いたロバート・E・ハワード、オーガスト・ダーレスという作家も知りましたしね。そういう本を嗜むマニアックな友達もいたし、ロックバンドをやっているような今でいう陽キャ?(笑)な友達もたくさんいたし……考えてみると不思議な高校時代だった気がするな。

 ――日本の作家はあまり読まれなかった?

そうですね、いわゆる純文学というのは、今もあまり読まないかな。ただ、折に触れて人にすすめられたりしたもので、ハマっていくことはありますね。それこそ、坂口安吾の『堕落論』は、たまたまいただいて面白かった本の筆頭だし、僕は弟が二人いるんだけど、下の弟が熱心なハルキストだったから興味を持って、『ねじまき鳥クロニクル』とか、代表作を本棚にそろえてみたり。志賀直哉の文章が素晴らしいと聞いて、短編集を読んだり。自分でも自覚したんですけど、文学書は、長編より短編のほうが自分に合ってるみたい。サキ短編集なんかも面白いし。今は、なんとなく読み損ねていたオー・ヘンリーの短編集を読もうかなと思ってます。

――谷山さんと言えば、アニメ『文豪ストレイドッグス』で中原中也のキャラクターを演じられています。アニメで役を演じられる前に、ご自身が作詞されているGRANRODEOの楽曲「SUGAR」にも中也の名前を引用されていたというエピソードも、ファンには有名。何かとご縁が深いですね

そう、本当にたまたまなんですけどね(笑)。中原中也は音楽家からもアート系の人たちからも、じつに愛されている詩人ですよね。伝わっているエピソードも興味深い。僕が演じさせてもらっている『文スト』の中也も、小柄だけどヤンチャなところが愛されているキャラクターだと思うんですけど、中原中也本人も本当に小柄だったそうですね。奥さんが一緒に写真を撮る時にすごく気を使ったらしいとか。

 ――さすがお詳しいですね

いやいや、僕もご本人のことは後から勉強させてもらった感じです。僕が中原中也の詩のフレーズや存在を知ったのは、実はマンガがきっかけなんですよ。それこそ学生時代、「月刊少年ジャンプ」で『BADだねヨシオくん!』(浅田弘幸)というコメディマンガが連載されていたんですけど、それが毎話、中原中也の詩を引用してた。だから印象にあったというのはあるかな。浅田弘幸先生はその後、路線もシリアスになって『テガミバチ』がアニメ化されてさらに有名になられたけど、僕は『眠兎』という作品も好きですね。

超ギャグを書ける人は、シリアスを書いても面白い

――谷山さんが愛着を持たれている出演作のひとつに『pet』(三宅乱丈)がありますが、三宅乱丈先生もギャグマンガからシリアスな作風へと転換し、名作を生み出しているマンガ家のおひとり。そういうタイプの作家がお好きなんでしょうかね

あっ、確かにそうかも知れないですね。三宅乱丈先生もギャグマンガの『ぶっせん』時代から大好きだし天才。だから『pet』に出演できた時は、ホントに嬉しかったです。僕の持論として、超ギャグを書ける人は、シリアスを書いても面白い、というのはありますね。だから今は『ピューと吹く!ジャガー』のうすた京介先生が、本気でシリアスなストーリーマンガを描いてくれないかな! と思ってます。他にもマンガは大人になってから読んだものにも、印象的で個性的な作品はたくさんあって。三宅乱丈先生はもちろん、『ザ・ワールド・イズ・マイン』(新井英樹)だとか、柏木ハルコ先生『いぬ』『花園メリーゴーランド』だとか……まぁ僕が電子書籍で一番よく読むのもマンガだし、マンガの話になるとどうも止まらなくなっちゃうんですけどね(笑)。

恐怖を自分から遠ざけるためにあえてフィクションの中に近づいていくのかな

――マンガ以外での最近の谷山さんの読書傾向というと?

そうですね。マンガも映画もその傾向はあるんだけど、やっぱり最終的にはホラーが好きなんだなと。特に小説や文章化されているものは、怖いものを僕は求めていることを、自覚しますね。

――学生時代にラヴクラフトに惹かれてからずっと

そうそう。薄々は感じてたけど、はっきり自覚したのは、貴志祐介さんの小説がきっかけかも知れない。その衝撃たるやすごかった。『黒い家』を最初に読んで、震えるほど怖くて面白かった。その後の『天使の囀り』『クリムゾンの迷宮』の三部作は今でも最強だと思ってます。一番怖い『黒い家』、一番面白い『クリムゾンの迷宮』、一番すごい『天使の囀り』。 その後の『新世界より』も貴志祐介節が素晴らしく、上・中・下巻一気読みさせる筆力がある。『悪の教典』もそうですね、買って一気読みしました。貴志祐介さんの小説は、人の怖さが描かれているのがいいですね。貴志作品はたくさん映像化もされてますが、コミカライズもけっこうされていて。最近も『天使の囀り』のコミックス1巻が出て嬉しかったですね。

――なぜホラーに惹かれるんでしょうか

僕はもともとすごい怖がりなんですね。こう見えて神経が細くて(苦笑)。自己分析すると……恐怖を自分から遠ざけるために、あえて自分からフィクションの中に近づいていくのかなと。そういう心境ですね。自分は、真っ当に死んでいきたいんですよ。何かに巻き込まれて死にたくない。だからこそ、虚構の中の恐怖みたいなものを経験しておきたいのかなと思うんですね。先日、音声配信番組の仕事で、ホラー作家の平山夢明先生と直接お話しする機会があって、僕はそういう人なんですと話をしたら、「そういうことってあるね」とお墨付きをいただきました(笑)。

――平山夢明作品も、ホラー好きには堪らないですよね

好きですよ、前から僕も。『独白するユニバーサル横メルカトル』をタイトルに惹かれて読んだり、友人の金子ノブアキくんが出演している映画『ダイナー』も平山先生の原作本を書店で見かけて、面白そうと買ってみたら、本当にすごくてね。拷問シーンのすごさに、「これを書いた先生は、絶対ヤバい人だと思ってました」と伝えたら、すごく喜んでくれました(笑)。その番組は、実在の猟奇殺人事件を扱っている音声配信番組なんですけど、通常回でも平山さんが事件に対する考察や分析もしてくださっていて、その考察力もすごいんです。じつに素敵でヤバいおじさまでしたね(笑)。

――マンガのほうでは、最近電子書籍で買った作品などはありますか?

つい先日も、昔からコミックスで愛読していたのを、電子書籍で買い足しましたね。あだち充先生の『ラフ』と、河合克敏先生の『帯をギュッとね!』を全巻。あとは『カメレオン』(加瀬あつし)、『酒のほそ道』(ラズウェル細木)、『アオイホノオ』(島本和彦)とか、音楽マンガでハマったのは『BLUE GIANT』だったり。たくさんありますね。昔のマンガは、今ならコンプライアンスを気にして出来ない表現がそのままあったり、作者の主義主張がダイナミックに表現されてるし、御時世も反映されている。そういうのも電子書籍で改めて感じることはよくあります。

――電子書籍はいろいろな楽しみ方ができますね

まず思い立ったときにパッと読めるのがいいですよ。それが小説となると、物理的にページをめくることで世界に入り込んでいく感覚があるから、しっかり文章を読み込みたい時は紙の書籍がいいなと思う。だから、ポップに読めるマンガのほうが電子書籍に親和性は高いでしょうね。ただ、電子書籍で読みたいマンガと、やっぱり紙の本で読みたいマンガもあって。作品性や本の大きさにも関わっているのかも知れないけど、例えば僕が好きな『AKIRA』(大友克洋)や『風の谷のナウシカ』(宮崎 駿)を、なかなか電子書籍で読もうという気にはならない。そこは紙と電子を棲み分けながら、楽しむものかなと思いますね。みんなもそうじゃないのかな?

――では谷山さんの愛読書で、電子書籍化を特に望む作品は?

個人的には、井上雄彦先生の作品はごく一部しか電子書籍化されていないので、いつか『SLAM DUNK』や『バガボンド』がデジタル化されたら嬉しいですね。

インタビュー・文:阿部美香

撮影:冨田 望

ヘア&メイク:西田裕美子(Manoa)

【profile】

谷山紀章(たにやま きしょう)

8月11日 山口県生まれ。声優/歌手。代表作は『進撃の巨人』(ジャン・キルシュタイン役)、『あひるの空』(夏目健二 役)、『文豪ストレイドッグス』(中原中也 役)、『うたの☆プリンスさまっ♪』(四ノ宮那月 役),『天元突破グレンラガン』(キタン・バチカ 役)など。ロックユニット・GRANRODEOのボーカル、KISHOWとしても精力的に活動中。

【profile】

Reader Store 10周年へのお祝いコメントもいただきました!

【谷山紀章さんのおすすめ電子書籍】

【谷山紀章さんコメント】

面白さのポイントは、伏線回収の見事さ。貴志祐介さん自身が、誰よりもホラー好きなんだろうなというのが伝わってきますよね。怖がらせ方がめちゃめちゃお上手で、その最高峰が『天使の囀り』だと思うんですね。『クリムゾンの迷宮』はだいぶエンタテインメントでしたけど、『天使の囀り』の境地はすごいものがある。その後も名作は多数残されていますが、僕の中の貴志祐介作品の最高峰はこれですね。怖い、面白い、すごいが三拍子揃ってる。僕の「こういう怖い思いをさせて欲しい!」のど真ん中を撃ち抜いた小説です。

堕落論

坂口安吾 / 新潮社

¥572 (税込)

【谷山紀章さんコメント】

小説ではなく、随筆というか評論というか。戦後のデカダンな雰囲気の中、第二次世界大戦とは何だったのか? を考えさせられますね。安吾は無頼派と呼ばれていたけど、ちゃんとした心眼を持って、あらゆるものを斬っている。宮本武蔵の『五輪書』をボロクソ言ってたりね(笑)。近所にいると厄介だけど、すごく遠くにいる面白い親戚のおじさんの話を聞いている感覚でいると、こんなに面白い人間はいない。坂口安吾の価値感を文字で追うだけでも、すごく面白い本です。

【谷山紀章さんコメント】

徐々に電子書籍化を進めてくださっているあだち作品から、満を持して登場したのが『ラフ』。野球マンガで知られるあだち先生ですが、これは高校競泳の話で、僕が思うあだち作品の最高傑作。80年代後半の作品なので、若い人だと知らない方も多いかも知れないし。ぜひたくさんの方に読んでいただきたいですね。

【谷山紀章さん関連書籍】

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