岩波書店児童書編集部推薦!ついに電子書籍化!ミヒャエル・エンデの世界

岩波書店児童書編集部推薦!ついに電子書籍化!ミヒャエル・エンデの世界

2017.07.20 - 特集

ついに、ミヒャエル・エンデの作品が電子書籍で読めるようになりました!世界中の人々に愛されてきた、ミヒャエル・エンデの世界。岩波書店児童編集部の須藤建さんに改めてその魅力を紹介していただきました。

「あたし、ちっとも知らなかった。人間の時間があんなに……あんなに大きいなんて」――モモより

時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子モモのふしぎな物語。人間本来の生き方を忘れてしまっている現代の人々に〈時間〉の真の意味を問う、エンデの名作。

ミヒャエル・エンデは『モモ』や『はてしない物語』の作者として知られているかと思うのですが、筆者が子どもの頃に夢中になったのは、何といっても『ジム・ボタンの機関車大旅行』『ジム・ボタンと13人の海賊』の二冊でした。何がきっかけで手に取ったのか、もう覚えていませんが、繰り返し繰り返し読んだ本です。

小さな島国フクラム国に、ある日とどいたなぞの小包。中にはなんと黒人の赤んぼうが入っていました。赤んぼうは成長して、ジム・ボタンと呼ばれるようになります。ジムは親友の機関士ルーカスと、機関車エマにのって冒険の旅に出かけ、さらわれたリーシー姫を助けるために、竜の町クルシム国へと向かうのでした。エンデの傑作。

なぜそれほどまでに夢中になったか。一つには、それまで読んできた本にはまず出て来ない世界が描かれていたからだと思います。主人公のジム・ボタンからして、児童文学にはまだまだ珍しい黒人の子どもでした。そしてジムのいい友だちになるリーシー姫は、細い眼、黒い髪をしたアジア人です。ジム・ボタンと相棒のルーカスが旅をして最初についた土地は「マンダラ」。そこに住む人たちはちょうちんを灯し、箸をつかって食事をするので、なんだかとても身近に思えたものですが、いっぽうでエンデが描き出すこのマンダラの風景は、ものすごく風変わりで魅力的です。たとえば、透き通るような紫の老木、陶器の橋がかけられた川、屋根にぶらさげられた銀の鈴、赤と白の縞模様の山脈……。
ヨーロッパ人であるエンデが「アジア」への憧れをこめて描いている、と簡単にいうこともできるのですが、ここに描かれている「空想上のアジア」には、たんなるエキゾチシズムをこえた魅力があると思います。どこかシュルレアリスム的というか、エンデのひねりのきいた想像力の豊かさと美しさには、他の追随をゆるさないものがあるからです。それは、物語が進むにしたがって、爆発的といってもいいほどの広がりをみせていきます。ちょうど、物語のなかでどんどん膨張していく「フクラム国」のように……。

ジム・ボタンは、見かけ巨人のトゥー・トゥーさんをフクラム国に迎えるため、ふたたび機関士ルーカスとともに、冒険の旅に出ます。船が難破する〈オソロシノ海〉の秘密をとき、砂漠や山脈を機関車で乗りこえ、ついに宿敵、海賊〈荒くれ13〉と対決する二人。そこでジムは自分の出生の秘密を知るのでした……。

『モモ』に「時間の花」が登場する場面があります。時間をつかさどるマイスター・ホラが、モモを案内して「時間のみなもと」を見せにいく場面、くらい水の底から花が一つ一つ浮かび上がっては消えていき、音楽がきこえてくる……。この場面の美しさは到底、筆者に書きあらわせるものではないので、ぜひ本編をお読みいただけたらと思いますが、「時間」を描くのにこれほど詩的で美しい表現を、ほかに知りません。希有な作家だと思います。私は『モモ』がいまも広く読まれているのは、時間に追われる現代人や現代社会を風刺しているからではなく、こうした天を駆けるような想像力の魅力にあるからだと思っているのですが、どうでしょうか。 
そうしたエンデのエッセンスは短編集『魔法の学校』(2016年に岩波少年文庫として刊行)でもぞんぶんに味わうことができます。『モモ』は2005年に、『ジム・ボタンの機関車大旅行』『ジム・ボタンと13人の海賊』は2011年に岩波少年文庫になりました。子どもの頃に愛読していたこれらの作品が、次の世代へ、また次の世代へと読み継がれていくことを願っています。 
 

岩波書店児童書編集部 須藤建

「望みの国」の魔法の学校は、ちょっぴり風変わり。ここでは、魔法のつえや呪文は使いません。先生は子どもたちに、一番大切なのは自分のほんとうの望みを知って、きちんと想像することだと教えます。表題作のほか「レンヒェンのひみつ」「はだかのサイ」など、エンデならではのユーモアと風刺に満ちた、心にひびく10の物語。

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