【サマーブックフェス2020 特別企画】EXILE TRIBEを代表する読書家二人がスペシャルゲストで登場!
2020.07.31 - 特集
Reader Storeが様々な企画で夏のおうち読書を応援する「サマーブックフェス2020」がスタート。今回スペシャルゲスト第一弾として登場するのは、EXILE/EXILE THE SECONDのパフォーマーで映画や舞台でも活躍中の橘ケンチさんと、作家としても活動する劇団EXILEのリーダー・秋山真太郎さん。共に違うアプローチでマルチな才能を発揮しているお二人が「読書の魅力」について語ってくれます。抽選で直筆サイン入りチェキが当たるプレゼントコーナーもあります!
自ら愛読書の熱量の高いレコメンドを公開。本を通じてファンと価値観を交換し、共有できるオンライン広場「たちばな書店」の店主・橘ケンチさん(EXILE/EXILE THE SECOND)。2019年7月に初の掌編小説集『一年で、一番君に遠い日。』(キノブックス・刊)を上梓し、作家としても高い評価を集める秋山真太郎さん(劇団EXILE)。役者・アーティストの枠を超え、“本”をキーワードに新たな才能を開花させているお二人が、「Reader Store」にスペシャルゲストとして初登場! 長年の付き合いでプライベートでも仲が良く、最近は電子書籍で本を読む機会も増えたという橘さんと秋山さんに、本との付き合い方、電子書籍ならではの楽しみ方、おすすめ書籍について話していただきました!
■橘が語る、旅行先での衝撃的な秋山の読書姿とは?
秋山真太郎(以下、秋山) 僕が一番最初に本にハマったきっかけは、司馬遼太郎さんの『峠』を、同時期に二人の方にすすめられたからなんです。今から5年くらい前のことですね。じつはそれまでは、本を読むのが苦手だったんですよ。
橘ケンチ(以下、橘) そうだったんだ。
秋山 役者という仕事柄、お芝居の台本をたくさん読まなければならない。家に帰ってまで本はなぁ……と思っていたので(笑)、あまり読んでこなかったんですね。それじゃダメだと思い始めた時期に、同じ『峠』をすすめられて、上・中・下の3巻に挑戦したら、すごく面白くて。同時期に芥川賞を獲られた又吉直樹さんの『火花』も読んでみたら、それも面白かった。そこから芥川賞、直木賞、本屋大賞といった文学賞も気になって、受賞作を読み出したのがきっかけですね。基本は小説好きですが、最近はビジネス書なども読むようになりました。
橘 僕はアキシン(秋山真太郎)とは逆で、もともと雑食でどんなジャンルでも読むタイプだけど……正直、小説はそんなに読んでなかったんですよね。
――「たちばな書店」で紹介されている本も、小説以外のジャンルが多いですよね。
橘 そうなんです。昔から父親に「本だけは読んでおけ」と言われていたんですが、10代はずっとマンガばかりで(苦笑)。20代になってからですかね? この世界に足を踏み入れるようになって、「自分には何かが足りない」と感じたり、悩みや不安を解決するために本をよく読むようになりました。今も、自己啓発にまつわる本やビジネス書、ノンフィクションが中心ですね。だから、アキシンが得意な文学賞とか、全然詳しくないんだよね(笑)。
橘 二人で会うと、こんな本読んだよって教え合ったりするよね。
秋山 面白い本はおすすめし合ったりもしますし。
橘 そうそう。そういえば、アキシンと本といえば、一つすごく印象的なことがあってね。
秋山 え? なんですか?
橘 前に一緒に新潟に旅行したことがあったんですよね。
秋山 はい、ありましたね。
橘 二人で同じ部屋に泊まったんです、もちろんベッドは二つで(笑)。
秋山 (爆笑)
橘 一緒に行った人たちと酒盛りをして、めちゃくちゃ飲んだら、翌朝僕、二日酔いになってしまって。目が覚めたらアキシンがもう起きていて、こう……背中を伸ばしてシュッとした姿勢で、リビングで本を読んでいたんです。わ、すごいなと思いながら、読んでいる本を見たら『蜜蜂と遠雷』(恩田陸・著)だった。
秋山 そうです! よく覚えてますね!?
橘 アキシンはこういうふうに本と向き合ってるんだな、僕とは全然違うなと感心したんです。鮮明に覚えてますよ。
秋山 たしかに読んでました『蜜蜂と遠雷』。ちょうど、直木賞と本屋大賞をダブル受賞した時で、すごく面白かったですね。
橘 言ってたよね。そういう賞のことも、アキシンはちゃんと追ってるんだなと。
秋山 橘ケンチさんこそ「たちばな書店」やインスタグラムでも本をたくさん紹介していらっしゃる。僕の『一年で、一番君に遠い日。』のイベントで解説もしていただきましたし、読書量がすごいです。
橘 そう?(笑) 「たちばな書店」を始めてからもう4年ぐらいになるんですけど、自分でいろいろな本を紹介するようになり、大変だけど良い習慣になってますね。前までは、本を読んでもアウトプットすることなく、自分の中にどんどん埋没していく感じだったから、意外と忘れていることも多いんですよ。
秋山 なるほど。
橘 でも「この本を紹介しよう!」というスタンスだと、読み方も変わるんですね。今は僕のおすすめ本は3~40冊ほどが掲載されていますが、書いた当時に自分が何を考えていたかの記録にもなり、自分自身を振り返ることができる。「たちばな書店」をスタートしてからは、本との向き合い方が積極的になりましたね。
秋山 僕も積極的に本を読むようになってから、新しい発見がたくさんありますね。自然と読解力が培われるので、仕事の幅も広がったように感じます。文学賞を獲った小説も、作家さんによって書き方はすごく自由。“表現”に決まったルールはないんだということが、よく分かりますね。
■紙から電子への書籍の進化は、音楽の変化にもよく似ている
――今回の対談では、お二人のおすすめ本も紹介していただきますが、好きな本を伺ったり、その方の本棚を拝見すると、人となりも垣間見えますよね。
橘 ありますね。僕も知り合いの家に行くと、絶対に本棚は見ちゃいます。そういえば、アキシンの本棚はまだ見たことないな。
秋山 まだ見てもらってないですね(笑)。ケンチさんもそうだと思うんですけど、本ってどんどん増えていくじゃないですか。
橘 そうだね。だから今年の自粛期間中は、本棚を整理していたな。ジャンルごとに並べ替えたりして。たしかに、どんどんスペースが足りなくなってきてる。
秋山 僕も本が棚に入りきらなくなって困ってるんですよ。だから今は、電子書籍に切り替えていっている最中です。
橘 分かるな。僕も紙の本と電子書籍の両方を買うけど、一時期、専用のデバイスで読んでいた時は、『ONE PIECE』(尾田栄一郎・著)50巻を一気買いしたりしてた。そこからまた紙の本に戻ったけど、最近はまた、電子書籍の割合が増えてますね。
秋山 そういう人は多いと思います。なのでこれからの本棚は、装丁のビジュアルも含めて好きな本だけインテリアとして飾っておき、情報としての本、読むための本は、電子書籍でクラウドに保存していく時代になっていくんじゃないかと思います。
橘 電子書籍はいつでもどこでも読めるし、持ち歩くにも便利だしね。
秋山 音楽でもそうじゃないですか? 一昔前は、DJもアナログレコードやCDをたくさん持ち歩いていましたけど、今はパソコン1台。
橘 たしかにそう。本の進化と似てるね。
――ちなみに本の選び方、買い方は、電子書籍と紙の本で違いはありますか?
橘 紙の本を買うときは、書店での出会いというのも大きいですよね。
秋山 ありますね。音楽のジャケ買いみたいに。逆に電子書籍だと、誰かにおすすめされた本をピンポイントで買うことが多いです。
橘 僕もそう。おすすめめされたその場で検索して、「これですね」とすぐ買えるから便利。
秋山 欲しい本が決まっている時は電子が便利ですね。
橘 賞をチェックしたり?
秋山 そうです、そうです。芥川賞、直木賞、本屋大賞が発表されたら、電子書籍ですぐに買います。あと、読んでいる最中に便利な機能も電子書籍にはたくさんありますよね。目次を見て「この章が読みたい」と思ったら、すぐそのページに飛べる。紙の本だと、ページをパラパラめくって探さなきゃいけないですからね。しおりを挟む機能もありますし。
橘 気になったページを、一瞬で記録しておけるのはいいですよね。後から紹介文を書くときにも、役に立ちます。
■「たちばな書店」のレコメンド、橘のこだわりとは?
橘 たしか掲載する前に、「紹介させてもらうよ」と連絡させてもらった気がするな。
秋山 作者としては、作品が世に出たらそれはもう皆さんのもの。自由に読んで、自由に評価していただくものだという覚悟はできているんですが(苦笑)、僕をよくご存じのケンチさんが触れてくださったことだけでもうれしいのに、感想までいただけるなんて、本当にありがたかったです。
橘 紹介文を書く時は、僕が会ったことのない方の作品は、本の内容にスポットを当てるんですが、アキシンや他のメンバーなど知り合いの作品は、その人の人間性から書くようにしてるんです。もちろん本の内容の良さも知って欲しいですけど、「これを書いている秋山真太郎さんは、僕にとってこういう存在です」というのが伝わるともっといいと思うんですね。書評を専門に書いている人からすると、ちょっと邪道かもしれないですが、実際にあったエピソードからも、伝えられることがあると思うんです。
秋山 うれしいですね、そう言っていただけると。
橘 やっぱり小説を書くのは大変だった?
秋山 ショートショートというジャンルが、大変でした。そもそも物語のパターンというのは、20数個しか存在しないと言われているんですけど、その中でも短い文章で構成されるショートショートは、落語のようにマクラがあってオチがしっかりしていないと面白くならない。そのネタが、他の作品と被らないよう、3,000作品くらいを勉強のために読みました。
橘 そうだったんだ。
秋山 他の作家さんとは違う切り口……それこそ劇団の話ですとか、独自のファンタジーを作ることに苦労しましたね。とはいえ、僕が読んでいない作品も世の中にはたくさんあるので、すごく似ているものがあったらどうしようかと、今でもちょっとドキドキしてます(笑)。
橘 そこも音楽に似ているかもね。長い歴史の中で、メロディーのパターンも出尽くしていると言われているし、だからこそカバーやオマージュが生まれたり。
秋山 ヒップ・ホップのサンプリングもいい例ですよね。いい曲と呼ばれる楽曲はコード進行が似ているとか。映画もそう。もう新しい撮り方は生まれないだろうと言われています。
橘 そうなんだね。でもそういう時代だからこそ……例えば読書もそうだけど、自分がインプットしたものから、自分なりの新しさや作家性が生まれてくるのかも知れないね。
秋山 視点の新しさですとか、やはり組み合わせ次第なのかなと思います。
■電子書籍版『一年で、一番君に遠い日。』のアイディア発案者は?
秋山 それでいうと、僕は『一年で、一番君に遠い日。』で一つ叶えたんですよ。でもそのアイディアは最初、ケンチさんから始まったもので。
橘 そうなの?
秋山 本を1冊丸ごとじゃなく1話ずつ買えて、自分で好みの本を作れるといいなと以前おっしゃっていて。それが頭に残っていたから、「Reader Store」さんは、僕の本(全20編)を1編ごと100円で購入できるようにしていただいた。しかも、3編は無料で読めるんです。これは紙の本ではできないことです。
橘 そうなんだ! いいね。
秋山 そういえば、さっき話に出た『蜜蜂と遠雷』も、発売後に小説に登場するクラシック曲を集めたCDが出たんですけど、電子書籍ならページをめくった時に自動で曲を流せたりできそうですよね。
橘 できそうだね。僕があるといい機能だなと思うのは……電子書籍のストアでも読者のレビューや評価の点数のコーナーはありますけど、もっとカジュアルな感想を電子書籍そのものに残せたらいいと思うんですね。それこそ、SNSの「いいね!」のように、読者のいい想いがそのまま、本に反映されていくと面白い気がします。
秋山 ☆で評価をつけるとなると、身構えちゃいますよね。書いている側も、1点をつけられたら相当ショック(笑)。「いいね!」のようなやり取りのほうが、お互いに良いかもしれないです。
橘 実感がこもってましたね(笑)。
■作家・秋山真太郎の2作目の構想と「たちばな書店」の今後
――ちなみに秋山さんは、小説家としての次回作の構想は? 皆さん楽しみにしていらっしゃると思います。
秋山 じつはそろそろ新作のめどもつきましたので、執筆を始めようかと思っています。
橘 今度はどんな小説?
秋山 連作短編にする予定です。それまでの間は、ぜひ「Reader Store」さんで『一年で、一番君に遠い日。』を読んでいただければうれしいですし、投稿サイト「monogatary.com」さんとのコラボレーションで、書き下ろし短編の挿絵を募集する企画(「秋山真太郎 短編小説『星に願いを』挿絵募集」)などの新しい試みも始めました。今の時代に合わせて、僕らとファンの皆さんとで一緒に創作していけるような双方向的な物をこれからは作っていきたいので、楽しみにしていただきたいです。
――橘さんの「たちばな書店」も、双方向で楽しめるコンテンツですね。
橘 はい。「たちばな書店」の活動は、さらに活発にしていきたいと思っています。今はリアルイベントを開催しにくい状況なので、オンライン上で積極的に本好きな人とコミュニケーションを取れる形を作っていきたい。本にまつわる活動だと、最近、書評の話もいろいろいただけるようになったので、「たちばな書店」以外の場所でも、本について書かせていただける機会は、増えるかなと思います。
秋山 本好きな人達とのコミュニティということだと、僕、一つやりたいことがあるんですよ。
橘 なに?
秋山 VR空間でイベントを開催したい。例えば、ケンチさんや僕のアバターと皆さんのアバターがオンライン上に集って、リアルタイムで解説ができたり、サイン会が開ける出版記念イベントができないかと。
橘 VRのアバターで参加するものだと、普通のイベントとは違うこともできそうだね。
秋山 VRの中だけ、腰までドレッドヘアのケンチさんがいたり(笑)。
橘 あはははっ! アキシンの本を解説するのに、全く説得力なくなるけど大丈夫?
秋山 それもデジタル空間ならではですから。いつか実現できたらいいですね。
――デジタルならではといえば、お二人が所属する事務所(LDH)では新たに「CL(シーエル)」という動画配信プラットフォームが立ち上がりましたね。
橘 はい。今年は予定されていたライブが中止になったり、皆さんにはご心配をお掛けてしましたが、7月にはプレサービスとして日替わりでLDH アーティストがオンラインライブをやらせていただき、とても好評でした。「CL」自体は、8月1日にグランドオープンするのですが、ライブやバラエティ番組、メンバー個人の企画も始まるので、期待していただければ。また年内中の開催をめざして、観客数を絞った万全の態勢でのソーシャルディスタンスライブも準備中ですね。
秋山 劇団EXILEのほうも、新しい「CL」を通じて、皆さんと一緒に面白いことを考えながら活動するスタイルになっていくと思います。
橘 「CL」でどんどん僕らのコンテンツを配信していきますので、続報を楽しみにお待ちくださいね。
【profile】
橘ケンチ
(EXILE/EXILE THE SECOND)
神奈川県出身。2007年、新生J Soul Brothersのメンバーに抜擢される。以降、EXILE、EXILE THE SECONDのメンバーとして活動中。さらに舞台、ドラマを中心に役者としても活躍。2017年にはWEBサイト「たちばな書店」をオープンし、本を通じて価値観を交換する場としてファンと交流している。
秋山真太郎
(劇団EXILE)
1982年7月8日生まれ。長崎県出身。2009年、劇団EXILEのメンバーとなる。以降、舞台、映画を中心に俳優として活躍。さらに俳優だけでなく、脚本や映画プロデュースも手掛ける。2019年7月、『一年で、一番君に遠い日。』(キノブックス・刊)で小説家としてもデビューを果たした。短編『星に願いを』の無料での電子配信もスタート。
秋山真太郎さんの著書
秋山真太郎さん、橘ケンチさんから素敵なプレゼント
キャンペーンは終了しました
●プレゼント内容
直筆サイン入りチェキ(3名様)
●応募期間
2020年7月31日(金)00:00~2020年8月14日(金)23:59
●応募条件
「Reader Store」のメールマガジンの受信設定をONにされている方。
●当選発表
当選者の方へは、登録されているメールアドレス宛に2020/8/21(金)にご連絡いたします。
(当選発表日は都合により、前後する場合がございます)
落選された方へのご連絡はございません。あらかじめご了承ください。
●ご注意事項
・お一人様1回のみのご応募となります。
・当選した商品の譲渡・転売等の行為は禁止されております。
※新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当選賞品の発送に遅れが生じる場合がございます。当選されたお客様にはご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。何卒ご承知おきくださいますようお願いいたします。
【橘ケンチさんオススメ書籍ご紹介】
昨年、僕が主人公・中禅寺秋彦役を演じさせていただいた舞台の原作です。マッドサイエンティストと対決するシーンが原作でもとくに印象的ですね。言葉の言い回しが、京極先生はとても巧み。「よくこんなセリフが出てくるな。こういうことを言うのは、彼がこういう人だからかな?」と、登場人物に思いを馳せながら読んでいました。これは、『姑獲鳥の夏』など同じ世界観で描かれる『百鬼夜行シリーズ』の1冊ですが、シリーズ全部おすすめですね。
『シェフを「つづける」ということ』
井川直子/ミシマ社
未電子化
ブックディレクターの幅允孝さんにおすすめされて読みました。井川直子さんが、日本でイタメシブームだった2002年、現地でイタリア料理を修業している日本人シェフにインタビューをされて、その10年後に同じ方々に会いに行き、15人のシェフのその後をドキュメンタリー形式でまとめた本です。今は中国でお店をやってる人がいたりと、料理の世界に携わっている方々の人生の浮き沈み、人間模様に触れられる。とても面白かったです。
『コンクリートに咲いたバラ』
トゥパック・アマル・シャクール /河出書房新社
未電子化
25歳で亡くなったレジェンド、天才と呼ばれたラッパー・2PACのリリック集です。2PACはリリシストで作詞能力がすごいと言われていましたが、音楽を聴いただけでは、そのすごさを理解できていなかった。彼の10代からのリリックが手書きのまま載っているこの本を読んで、彼の発想や英語の表現に驚かされました。文学的な側面を知ることができ、英語表現の勉強にもなりますね。
【秋山真太郎さんオススメ書籍ご紹介】
ライナー・チムニク/パロル舎
未電子化
『クレーン男』
ライナー・チムニク/パロル舎
未電子化
『セーヌの釣りびとヨナス』
ライナー・チムニク/パロル舎
未電子化
3作ともライナー・チムニクのファンタジーで、思わずジャケ買いをしてしまった作品たちです。『タイコたたきの夢』は、一人のタイコ叩きが町をねり歩き、みんなを巻き込んでいくんですが……結局、最後は一人になってしまうという切ない話なんです。3作とも世界観が似ていて、どれも、どこか切ない物語。きっと僕自身が、ただただ明るいお話よりも、どこか哀しみを感じるものに惹かれてしまうからだと思います。お話に説得力があるから。ケンチさんは、「アキシンは、どこか影がある」とおっしゃってくださいましたけど、どうなのかな(笑)。この3冊は装丁も統一されていて、ダンボール生地風なんですね。じつは僕の本も本当は、ダンボール風にしたかったんですが、なかなか難しくて実現できなかった。そういう装丁の可愛さもあって、ライナー・チムニクの本は魅力的。今はなかなか手に入りにくいらしいので、見つけたらぜひ読んでみてください。