空気の底(1)
手塚治虫(著)
/手塚プロダクション
この作品のレビュー
平均 4.0 (11件のレビュー)
-
1968~1970年にプレイコミックに掲載された短編14作を集めた一冊。
各編に繋がりはないが、
いずれも、国籍にも世代にも関係ない人間の情愛や愚かさが表現されていて、
作品集としてビシッと纏まってい…る。
噛み合わない男女の想い「夜の声」、
許されぬ愛に身を焦がす兄と妹「暗い窓の女」、
閉ざされた人工楽園から踏み出すカップルを描いた「二人は空気の底に」など、
恋愛ネタが思いの外ツボで、ちょっと涙が出そうになった。続きを読む投稿日:2013.06.15
短編集。後味悪く、バッドエンドも多いが、生きていると、ニュースを見ると、いや、もう散歩している時でも。ふと、思い出すシーンが沢山。読んでよかった。精神を病んでいるのか、自分はまともで周りが変なのか・・…みたいな話も、共感も理解もなにも出来ないけど、わからない世界に行けるのが面白くて、数ページの短編にその世界が広がっているのが、面白いんだよなぁ。
作品についての内容は、手塚治虫オフィシャルホームページの作品紹介文より抜粋。()は私の感想、メモ。
〇●ジョーを訪ねた男
1968/09/25 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
ベトナム戦争で戦死した黒人兵のジョーの臓器をもらって生き延びたオハラ隊長は、南部の出身で、人種差別主義者だった。彼は、自分の体内に黒人の臓器がある事を秘密にするために、その事を知っているジョーの家族をハーレムに訪ねるが……。
(実際ほんまにそうなんじゃないだろうか。これはリアルな話なのではないだろうか。)
●野郎と断崖
1968/11/25 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
フランスの西海岸に、「妄想の崖」と呼ばれる切り立った崖があった。その崖は穴だらけで、風がふくたびに古代楽器のような音を奏で、人間にあらぬ妄想を見させる……。監獄から脱走した男が、この崖に逃げて来た。パトカーのサイレンを聞いた男は、通りがかった家族連れを人質に取り、崖下へ逃げるが、崖の上では警官の話し声や、男を説得する警官の声が聞こえる。男は行き場のない崖の中腹から逃げる事も出来ず、家族連れを殺害し、崖の上の警官隊に突入するが……。
(脱走男はひどい。赤ん坊を救おうとするシーンも含めなんやねんコイツ感はすごい(のが面白い)。微笑みながら倒れるんじゃねぇっ!ぷんすか!それにしても、最初から・・全て幻聴、幻覚だったりするのだろうか。)
〇●グランドメサの決闘
1969/03/10 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
西部の町にすむスティーブは18歳になった。そこへ、父を殺したガンマン・マクラウドが町にやってきた。スティーブは、制止する母親をふりきってグランド・メサでマクラウドと決闘をするが、親指をつぶされて、命からがら町に逃げ帰る。銃ではマクラウドを殺せないと知ったスティーブは、東部へ行き、必死で勉強して法律家となって帰ってくるが……。
(おもしろかった!へぇー、そんな展開か!)
●うろこが崎 1967年
1969/06/10 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
取材のため、南紀州の小島の村に行った手塚治虫は、うろこが崎の伝説を聞く。昔、網元の嫁が、村の若い衆とできてしまい、怒った網元がふたりをうろこが崎の穴の中に閉じ込めた。何年か経って、その穴から人間の大きさの魚が2匹釣れた、という話である。そんな時、現代のうろこが崎の穴に、子どもが落ちてしまう。子どもを助けるために、ある会社が機械を提供したが、手塚治虫の調べでは、そのあたりの海にはその会社の工場から毒物が流れ込んでいた。そして……。
(こどもがつらい話はつらいなぁ。)
●夜の声
1974/10/25 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
青年社長の我堀は、やり手で仕事の鬼だったが、だだ一つ風変わりな道楽を持っていた。日曜だけ乞食になって道に座っているのだ。誰にも干渉されず、行き交う人々を見るのが彼の勉強でもあった。ある日我掘は、家出した若い女を助け、女は乞食の我堀のほったて小屋で生活するようになる。まじめで心が美しい彼女が気に入った我堀は、女を自分の会社に入社させ、奥さんにしようと考えるのだが……。
(言葉が変更された箇所あり。)
●そこに穴があった 1968年
1969/08/10 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
ヤクザを殺して森へ逃げこんだ男が、たまたま小型飛行機の墜落事故に遭遇して、怪我人と出会った。男はその怪我人を放置することができず、病院まで運んであげて輸血の血まで提供してしまった。そして一夜明けると、男はマスコミに取り上げられ、有名人になってしまっていた……。
●カメレオン
1969/12/13 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
盛岡化学に勤める月間は、カメレオンのように変わり身の早い男だった。 役員に信頼されていた彼は、ある女から産業スパイを頼まれ、会社から機密書類を盗み出した。 その書類には、動物の知能を上げる新薬の化学方程式が書かれていた。 書類を渡すために、離れ小島に行った月間は、そこで女の意外な正体を知る……。
●猫の血
1969/10/10 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
地方の映画館にフィルムを届けて回る男がいた。ある地方で、化け猫映画が妙に受ける所があった。そこでは猫が信仰されていたのだ。 男はその地方の農家の美しい娘を嫁にもらい、東京で暮らすが、娘は都会暮らしになじめず、ノイローゼ気味になり、東京が火の海になると言いだすしまつだった。 しかし、実はそれは動物的なカンであったのだ。中・ソの対立から東京に核爆弾が飛来したのである。男は旅行に出ていて助かるが、彼女は……。
●わが谷は未知なりき
1969/09/10 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
嵐の夜に、谷に男がやって来た。谷には父と息子と娘の一家3人が住んでいた。 一家はもう何代も谷から出た事が無かった。息子は、自分たちは宇宙移民の実験のためにここで暮らしている、と父から説明されていた。 谷の外から来た男は、その家の娘と恋愛関係に落ちるが、谷を追い出される事になり、それに付き添った娘は、初めて谷の外を見た。そこは……。
●暗い窓の女
1969/07/10 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
大学生の外山は、妹とふたり暮らしで、妹が働いて兄の学資を出していた。 ふたりは兄妹だが愛し合っていた。外山は、妹の勤めている会社のビルの窓から、妹の姿を見つめ、ふたりの間の壁の厚さを実感していた。 そして、妹の会社の専務が、妹を気に入ってプロポーズした時から、外山の精神は危険な状態になっていった……。
●カタストロフ・イン・ザ・ダーク
1970/02/14 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
深夜放送のディスク・ジョッキー田所満男は、ある晩、局へ向かう途中、自分に声をかけてきたファンが、その瞬間、マンホールに落ちるのを目撃した。 しかし田所は、関わり合いになるのが面倒だったため、そのまま放送局へ行ってしまった。 その後、そのファンが死んだというニュースが田所の耳に入り、良心に責められた田所は、放送中も彼女の幻覚に悩まされるようになる。
●電話
1969/11/10 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
大沢優は学園闘争の闘士だ。今もバリケードをはって、仲間と大学の校内にたてこもっている。 そこに、寺山博子という女性から電話がかかる。彼女は自由の無い女子寮住まいで、さみしい女性だった。 大沢は彼女に自由を得るために学校と戦うべきだと言い、デートの約束をした。 ところが約束の日時に行ってみると、代理の女性が来ており、寺山博子は1ヵ月前に死んだという。 だが、寺山博子からの電話は、いまだに大沢のもとへ毎晩かかってくるのだ。そして、彼女と本当に会える日がやってきた……。
●ロバンナよ
1970/03/14 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
大学時代の悪友の小栗を南伊豆に訪ねた手塚治虫は、世間とのつきあいを断った小栗が、メスのロバを可愛がっていることを知る。 その晩泊まった手塚は、小栗の奥さんがロバを殺そうとするのを止めた。 奥さんが言うには、小栗は動物の方が好きな変態だと言う。しかし小栗は、自分の実験の失敗によって、奥さんとロバの心が入れ替わってしまったためだと言うのだった。その実験とは……。
●ふたりは空気の底に
1970/04/11 「プレイコミック」(秋田書店) 掲載
ある熱帯魚の水槽に、愛し合う2匹のグッピーが棲んでいた。だが水槽にタバコの吸殻が落ちただけで、2匹は死んでしまった……。 19XX年、核戦争が起こり人類は滅びる。しかし、万博会場に展示された宇宙旅行用ユニット・カプセルの中で、男女ふたりの赤ん坊がスクスクと成長していた。 ふたりは狭いカプセルの中で大人になり、愛し合うようになる。だが、ふたりはカプセルの外の世界が気になり、外へ出てみたいと思うようになった。続きを読む投稿日:2023.09.21
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