
総合評価
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powered by ブクログ76冊目『きりぎりす』(太宰治 著、1974年9月 初版、2008年11月 改版、新潮社) 1937年から1942年までの間に発表された作品で編まれた短編集。著者の得意とした女性告白体小説と随筆的作品が中心となっている。 文才が大きく開花したとされる中期作品群が揃っているだけあり、どの短編も恐ろしいほどの完成度を誇る。 過剰なまでの自省心と鋭い観察眼が生み出す彼の作品は時に人の心を抉るが、その根底に深い優しさがある事をこの短編集は教えてくれる。 〈この薔薇の生きて在る限り、私は心の王者だと、一瞬思った〉
18投稿日: 2025.10.18
powered by ブクログ学生時代に心酔していた太宰治、ちょうど読む本が尽きたので、本棚からふと手に取ってみて、うわ!やっぱりいい!と思った。 今回特に好きだったのは以下三編。 『燈籠』 口に出したくなる「言えば言うほど、人は私を信じて呉れません」というキラーフレーズ、 そして「それに違いはございませぬ。いいことをしたとは思いませぬ。けれども、ーーいいえ、はじめから申しあげます。私は、神様に向かって申しあげるのだ。私は、人を頼らない、私の話を信じられる人は、信じるがいい」という毅然としたスーパーキラーフレーズ、 極めつけのラスト、蔑まれていても別にわびしくない、逆に美しいと思うというカウンター。 世間的にどう思われていようが、明るい電灯の下で仲良くしているのだけで特に何もなしとげていなかろうが、幸せでいいし、誇りを持っていいのだと晴れやかな気持ちになる。 『皮膚と心』 女の、気分でころころ移り変わる感情の解像度が高すぎる。思ったことを思ったまま、その場で書いているようですごい名人芸。 吹き出物でどんどん大袈裟に落ち込んで、勝手に鬼や悪魔になった気分になり、もはや「私は、お化けでございます」「このまま死なせて下さい」とまで思うのは滑稽で、でも共感できる。 『佐渡』 太宰のギャグセンスが爆発している作品だと思う。 自分をさむらいに例えるくだりがすごく好き。 美化せず、佐渡のつまらなさをそのまま書いている正直さがいい。
34投稿日: 2025.08.24
powered by ブクログ『皮膚と心』という短編を読みたくて図書館で借りた。女性の一人語りの文体を中心にいくつかの短編を読んだが、太宰治の女性心理を捉えた表現の巧みさに驚いた。男性では推測も理解もできないような女性独特の思考、それが一人称の告白という形で、繊細な言葉遣いで、人物の性格を浮かび上がらせている。見事だ。
4投稿日: 2025.07.03
powered by ブクログ年代の違いを埋めるほどの魅力を感じる。 もう一度改めて読みたくなる。 ※記録「きりぎりす」、「風の便り」 「風の便り」が特に良かった 自分はバンドマンで、歌詞を書く。芸術家としての何たるかを知らしめられた。芸術なんてない、人生、事実、もっとリアリズムのこと。誰かの頭の中で実際に存在する。想像と現実のどちらがリアリティがあるのかなんて、なんとセンスのないこと。 とにかくやり続ける事、辞めないっていう才能。 努力の矛先が注ぎ込めるほどの大きな器を持っているのなら、幸せな事だと実感した。
1投稿日: 2025.05.29
powered by ブクログ1939-41年に発表された短篇から14篇を抽出。どれも文句なくおもしろい。その掴みと語りの巧さ。そして言いようのない読後の余韻。とくにユーモアとペーソスを湛えた「畜犬談」、「きりぎりす」、「佐渡」がいい。 「佐渡」は、旧制新潟高校で学生相手に講演した翌日、単身佐渡に行く様子が描かれている。11月中旬、そぼ降る雨のなか、近づいてくる佐渡の島影の描写がみごと。(2時間45分の航程だったが、いまもカーフェリーだと同じだけの時間がかかる。雨などで天気が悪ければ、太宰の描写を追体験することができる。)
3投稿日: 2025.05.08
powered by ブクログ太宰治の女性目線オンリーの 話し。 後半になり自分との価値観のズレが目に付くようになり、最後は あっさりだが、 オーラスにきりぎりすが 例えで出て来たのは、 いくら考えても分からず、 太宰の頭の中の答えを知りたいと思いました。
1投稿日: 2025.02.08
powered by ブクログ青森県五所川原市 エルムの街 くまざわ書店にて購入。 太宰治の故郷、青森へ旅に出ると本が買いたくなる。今年は きりぎりすにした。 好きな物語がたくさん入っている。 「燈籠」のどんでん返しは痛快。 この女の子の目線から見ると、自分を正当化し凄まじく善人として描いているが、男の子側から見ると、迷惑な勘違い女にしか思えない。 このギャップがとても愉快だ! 姥捨は、太宰の自殺衝動へのプロセスかと思えてしまう。 「黄金風景」はもう圧巻。 嫌がらせをした相手から優しさで仕返しされる。 親切さで報復されるのが一番堪えるのだ!! 女中お慶がキラキラ輝く、その様はまさに黄金風景!! まーぶしーいっ! 「皮膚と心」 もう大好きだー! このご主人、キミは一体どれだけデキタ人なんだ! 女心分かりすぎ!大正のモテ男かよ! 全く!カッコよすぎるぜ! コンプレックスを「俺は好きだよ」なんて言ってのける。優しさ。 見栄っ張りなら肝を冷やしちゃうな。 きりぎりすは、これも太宰の作家像の変遷を描いたのか!?と思ってしまう。 大衆のための書き手か。 それとも己のための物書きか。 島間違えをしてしまう 「佐渡」 東京から離れて離島に来たのに、都会かぶれている女中に出会ってガッカリする場面はニヤニヤ止まらん! ダメな兄を家族ぐるみで殺害する 日の出前。 盲目的に兄を慕い、傀儡のように付き従う妹が最後、ものすごいひと言を放つところもこの話の醍醐味。 そうか、お主も悪よのぉ。
2投稿日: 2024.11.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
些細な日常を皮肉やユーモアを感じさせる言葉選びで表現しており、クスっと笑ってしまう。 佐渡と畜犬談が好き。 どの話も割と好きに言いたい放題でコンプラ等存在せず自由で良い。 畜犬談の犬に対して、 「日に十里を楽々と走破し得る健脚を有し、獅子をも斃す白光鋭利の牙を持ちながら、懶惰無頼の腐り果てたいやしい根性をはばからず発揮し、一片の矜持無く、てもなく人間界に屈服し、隷属し、同族互いに敵視して、顔つき合わせると吠え合い、嚙み合い、もって人間のご機嫌を取り結ぼうと努めている。」 と表現しており、今まで犬に対して、憎らしい思いをストレートに緻密に書く人間はいただろうか。 愛犬の話の起承転結もわかりやすくてよい。憎しみだったものから次第に愛が芽生えていく様子は面白い。
1投稿日: 2024.10.26
powered by ブクログ太宰治は若いときに読むべき小説なのかな。 自意識や羞恥心、承認欲求といった塊が、ものすごい熱量で作品にぶつけられているようで、もっと若い頃なら共感できるところもあったのかもしれない。 秀でた文章で書かれる自虐的な内容。それでも、しょうもないなぁと思いながらも、懸命に生きている姿が、滑稽であり、人間らしくもあり、愛おしさみたいな感情を引き起こさせる。 本来なら隠したいと思う、自分の"恥"や"欲"をさらけ出す行為には、なんとしても作家として成功したいという覚悟を感じる。って、それも欲…? 私のなかで、夏目漱石は博識で成熟した大人、太宰治は常に愛情を欲求している子ども、な印象である。 特に今作は、人間の羞恥心や承認欲求を感じる内容が多かったように思う。そんななかで「おしゃれ童子」や「畜犬談」は、恥もあるが可愛らしくもあった。 表題作「きりぎりす」が一番印象に残ったかな。自分だけのものが皆のものになってしまったような淋しさ、才能を買いかぶっていたことへの気づき、そして、周囲の評価に惑わされず自分を信じる彼女は強いなと思った。
49投稿日: 2024.10.09
powered by ブクログ『きりぎりす』の最後のところで床下で鳴くこおろぎが、彼女の心のなかでなぜタイトルのきりぎりすに変わるのか、その意味について考えている。
2投稿日: 2024.09.22
powered by ブクログ「女生徒」よりも様々な角度の物語が含まれている短編集。人々の不変的な心情をここまで描けるのはさすがとしか言いようがない。何度読んでも新しい発見がある。
1投稿日: 2024.09.22
powered by ブクログ同じ作者とは思えないほど、様々なバリエーションの話があって面白かった。 じっくり何度も味わいたい作品が多い。長編や純文学が苦手な人にも一度読んでもらいたい。
0投稿日: 2024.09.16
powered by ブクログこれ読んで自分は太宰治が好きなんだなと思った。自分の中のネガティブな波長が合うというか。 世間的に手紙小説といえば「こころ」なのだろうけど自分にとっての手紙小説はこの作品だなぁ。
1投稿日: 2024.03.19
powered by ブクログ燈篭 スピードが速い。量ではなく思いの。女性目線のモノローグという太宰らしさ。 姥捨 心中物。絶望した描写がよい。どれほど愛し、どう裏切られたかが書かれてないので、そこに至る曲折は想像。結果生きてしまうことによって、いろいろな後始末が面倒 黄金風景 目をかけるというのは多義?感謝される振る舞いの記憶は抜け落ちたのか、奉公していた家への義理が強く、水に流していたところも「負けた」と言わしめたのか 畜犬談 ユーモア小説。Twitterで漫画化されてそう おしゃれ童子 これもユーモア。意にそぐわなくてやけくそになるファッションも思春期 皮膚と心 待合室で妄想膨らむあたりで色が随分変わった。前半の、自虐と不満のないまぜのあたりが女性らしくて 鴎 退廃的で太宰っぼくて。まだそこまで荒れてないけど、自己を悲観するところが。まだ水たまりという美しいモチーフが残っているだけ 善蔵を思う 善蔵って誰やったん。読み飛ばしたかな。これも切ない太宰らしさ。でも乱れて迷惑かけた描写がないのが新鮮。弱いとこだけ出てる。やっぱり誰でも故郷に錦を飾りたいという思いはあるもの。故郷に錦は比喩的だとしても、それくらい立派で、世間から認められるような立ち位置でいたいと思うのが人の性。取り払えたらずいぶん楽なのに、と今の自分のメンタルに重なる刺さる疲れる。一旦積読に戻そうかな。 と思ったけど次作が表題作。 きりぎりす 多分自伝的なメタ作品なのか。そんな天狗になるような時代が太宰にあったのか。良人の根っこに惚れ、名声と共に夫をけいべつする。まさにカエル化現象! 佐渡 佐渡には何もない、けれども来てみないうちは気がかりなのだ。 この人生でさえも、そんなものだと言えるかも知れない。見てしまった空虚、見なかった焦燥不安、それだけの連続で30歳40歳50歳と、精一杯あくせく暮らして、死ぬるのではなかろうか。 千代女 読みやすい。わかりやすい。切なくて怖い。 せっかくその気になったのに、不十分なのは根気か、才能か、若さか、タイミングか。お見捨てなさるなと書く心情は確かに狂ってしまいそう。 風の便り 恥ずかしい、痩せた小説を、やっと三十篇ばかり発表しました 往復書簡形式。途中その必要あるかと思ったが、終盤意味をなしてきた。ある意味好き同士の二人、なぜこんなにも噛み合わないものか。偏屈で自尊心と謙遜のバランスが取れてない人間はめんどくさい。身近にもいる。言葉面だけ慇懃で行動その他が伴わないやつ。 水仙 女が狂う、という自分の中では珍しい太宰。とはいえ狂わせたのは周りの男と遠回しの貧しさなんだけど。芸術的に生きるというのはすなわちストイック、と言うのを、太宰は肯定したいのかそれとも鼻で笑っていたいのか。あまりに今回の短編集はそこへのフォーカスが強い。 日の出前 湊かなえみたいなやつ。オチまで冒頭に来たからあとは落ちていく様を追う。そういう楽しみ方をする作家ではないのだけど。これと水仙は解説によると本格小説というジャンルらしい
0投稿日: 2024.01.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「いいお仕事をなさって、そうして、だれにも知られず、貧乏で、つつましく暮らして行く事ほど、楽しいものはありません。私は、お金も何もほしくありません。心の中で、遠い大きいプライドを持って、こっそり生きていたいと思います。」 この文章にはとても勇気付けられる。
0投稿日: 2023.11.26
powered by ブクログ太宰治の作品は、冒頭がいい。『人間失格』は「恥の多い生涯を送ってきました」で始まる。 この本では、「おわかれ致します。あなたは、嘘ばかりついていました」で始まる。なぜか、私が言われているような気にもなる言葉だ。 私は、19歳で、家族の反対を押し切って、売れない画家のあなたと結婚して、はや5年。25歳になった。私は、「私でなければ、お嫁に行けないような人のところへ行きたいものだと、ぼんやり考えていた」。あなたの画は、「小さい庭と日当たりのいい縁側の画で、縁側に白い座布団が一つ置かれていた」。それを見て、どうしてもあなたのところへお嫁に行かなければ、と思った。 私を必要とする男性のところに嫁ぐ。そして清貧な生活を続けたいと思っていたが、どういうわけか、あなたの画が売れて、お金が入りはじめて、窮屈な淀橋のアパートから、三鷹の家に住むようになって、変わってしまった。 死ぬまで貧乏で、わがまま勝手な画ばかりを描いて、俗世間に汚されずに過ごしていくと思っていたが、今の俗世間に汚れたあなたは、はずかしくして仕方がない。だから、別れるのです。 ふーむ。太宰治の世界の中には、恥ずかしいという言葉がよく出てくるが、お金儲けできる絵描きになって、言うことが他人を批判したり、面と向かえば、褒めたりで、全く一貫していない人格。それが恥ずかしいという。女性の視点から見る世界と世俗にまみれる画家の有り様があまりにもかけ離れた人になった。 やっぱり、別れるべきだね。でも、夫婦って一体なんだろう。利他的でありながら自分中心なんだね。夫婦の価値観は共有できにくい。画を描いて何を表現するかであり、あくまで画は手段。そこを見ないとねぇ。何を妻は支えるべきだろうか。
0投稿日: 2023.11.26
powered by ブクログ電子書籍『きりぎりす』を読む。 短編ですぐに読めてしまう。 お金が入ってくると、別のものを失っていく寂しさ、悲しみ。もう戻ってこないのだなと思った妻はお別れする。 きりぎりすの声が聞こえてくるようだ。
0投稿日: 2023.09.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
表題作、「きりぎりす」を聴き読書。最近暑すぎて散歩ではなく自転車なので自宅で。わたし(24歳の女性)は19歳の時にとある画家と結婚した。絵を見て身震いがするほど絵に共感する。しかし夫は口下手で展覧会など興味を持たず好き勝手な絵を描く画家だった。そんな夫との結婚生活が心地よく、貧乏でもハリを感じた。しかし、個展を開いてから、夫は人が変わる。お金に固執し、成功者と一緒にいるようになり、夫への魅力、関心が無くなる。このわたしの寂寥感が夫には伝わらず、別れることを決意する。妻が思う過去の夫への未練が伝わった。⑤
42投稿日: 2023.09.03
powered by ブクログ28〜33歳、中期の作品集。 自虐と自意識の強さを、笑いながら差し出せる強さが太宰にはあったのだろう。
13投稿日: 2023.07.11
powered by ブクログ物語の世界に没頭したい質の私はあまり短編集は好んで読む方ではない。しかし、本書は素晴らしかった。 太宰治の執筆活動による中期に書かれた作品集なので、晩年のとことん破滅的、反逆者的な側面は少々なりを潜めており、所々普通に笑かしてくる。 特に「風の便り」ではお笑いコントのような軽快さで偏屈な貧乏作家と毒舌なベテラン老作家の手紙のやり取りがなされていく。突然の「馬鹿野郎」は声に出して笑った。 だからといって、やはり太宰治なので一貫して厭世的でありネガティブである。 太宰治は「人間失格」で完成されてしまっているので、作品順に読んでいくのもまた一興。
3投稿日: 2023.05.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
女性目線で語る『燈籠』『皮膚と心』『きりぎりす』『千代女』の4作は角川文庫の『女生徒』で既読。 『畜犬談』がとび抜けて面白い。この作品に出会えただけでも読んでよかった。(毒を盛るのはどうなのかと思ったがポチは結局ケロッとしている) 太宰氏が自分を投影していると見られる、時にかっこ悪くダメな男が出てくる作品が多かった。しかしそこがよい。 『佐渡』の勝手に一人で焦っている感じとか。これは偏見かもしれぬが太宰ファンはダメンズ好きが多いような気がする。解説の奥野健男氏いわく太宰作品は6(7)つに大別されるようだ。
0投稿日: 2023.01.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
きりぎりすのみ読了。 売れない画家の妻となった女性の語り短編小説。 売れた夫の変わり身に嫌気がさす… 売れないバンドマン、売れない芸人の彼女や妻って こんな気持ちなんだろうか。 売れて「あなたはこんな人じゃなかった」と 思うことがあるのはよくわかるけど… 夫がラジオで「わたしの今日あるは…」の続きは、 きっと「妻のおかげ」と言っていたでしょうに。 それを聞いていたら何か変わっただろうか。 コオロギだとわかっているのに 「きりぎきす」と言い換え、それをそっと仕舞う気持ちはわからないけど、そこに凛とした強さを感じます。
3投稿日: 2022.10.20
powered by ブクログオーディブルにて、きりぎりすのみ読了(読み聞かされ了) 最初の一文から作品に引き込まれる。 語り手=婦人は、自分にしか愛せない人を愛そうと思った。 結婚した相手は、最初はただの絵描きだったが、次第に売れ始め成功を収める。 富を得ることで人は変わってしまう。 夫も、夫を取り巻く人も変わってしまった。 婦人が言っているように、夫のような生き方が正解なのだろうか。婦人の考え方はおかしいのだろうか。 貧しくたって、家族に見放されたって、なんとかやっていける。そんな時に二人で食べる食事が一番美味しかった。裕福になってから飲食店で食べるご馳走なんてちっとも美味しくない。そんな思いは夫には少しも通じない。 きりぎりすは、ちょうど自分の真下で鳴いていて、自分の体の中から響く声のよう。自分の思いを、背骨の奥から発するこの微かな声を、一生忘れずにいきていこうと決意する。 世間的には間違っているのだろうが、どこが間違っているのか、自分にはまったく分からない。 お金・成功がテーマの一冊だと感じた。
3投稿日: 2022.04.23
powered by ブクログ言いたい事はなんとなく分かる。 綺麗事ばかりでは生きていけないよなとか思うけど、誰しも一度は考えたことがあるんじゃないかな。 キリギリスととコオロギの違いをネットの記事で調べたけど、コオロギというのは総称らしい。 「きりぎりす」には個々人が持つ特性や信念が埋没することを表現していると思った。 太宰はそんな事を感じてたのかな。
2投稿日: 2022.04.12
powered by ブクログ昭和57年9月15日 18刷 再読 太宰治中期の14編 戦時下の作品なので、各作品とも社会生活の貧しさや不便さは表現されているのですが、どこかコミカルであったりピリッとアイロニーを感じたり粒揃い。 女性の一人称で語られる作品が、深層心理まで描けていて戸惑うほど。これは、モテたでしょうね。 「きりぎりす」は、売れない画家に嫁いだ女性が、著名になっていくにつれ俗物的になっていくご主人に別れを告げる物語。この女性の気持ちは共感できる。とは言っても、好きなのは「ヴィヨンの妻」の底知れぬ強さ。 「日の出前」は日大生殺し事件をモチーフにした作品。太宰本人をも投影させ悲哀さが増されている。イヤミスの原型のよう。
7投稿日: 2021.11.15
powered by ブクログ日中戦時下に書かれたとは思えない、不思議な明るさというかユーモアを含んだ作品が多い。 太宰治自身の経験にも重なるはずなのに、滑稽に心中失敗をえがいた姥捨、犬に嫌われる自信をもって実際犬がキライで生きているのになぜか子犬に好かれてしまいハッピーエンドな畜犬談、吹き出物に悩む肌自慢の妻の憂いと妻を思いやる夫のやりとりが素敵な皮膚と心、中国戦線から慰みで投稿される兵隊たちの小説を読みながら平穏な場所に住む自分の存在をおしの鳥になぞらえて自虐する鷗、百姓女に押し売りで買わされた薔薇が値段の割にはかなりの良い出来だと褒められ当惑する善蔵を思う、売れない画家の夫が不本意にも売れて俗物になりかえって没落を妻が望むようになったという少し歪んだでも皆目理解できないわけでもない価値観のきりぎりす、佐渡島を何も見る価値がないとバカにしてかかったが実はという佐渡、綴り方を絶賛されたことでかえって創作を怯えるようになった女性文体の千代女、お金持ちの女性にお追従でおべっかをならべて絵を書かせその女性の人生を台無しにしてしまったことの象徴であるよくできた水彩画を破った水仙、日本最初の保険金殺人と称されている日大生殺し事件をモチーフに親による子供の偽装殺害事件をそれほど暗くもなく描いた日の出前、こんな感じだが、どれも太宰治の短編群の中では水準以上の出来だと思う。
1投稿日: 2021.08.29
powered by ブクログ太宰にとって、報われぬ人生こそ表現者として最も大切で、美しいものであり、それを無理やり華々しくしてしまうことは全てを汚し破壊する行為なのだろう。 そんな太宰の価値観は己の生き様や人間性を自分で受け入れ肯定する為に生まれたのだろう。 太宰が狂人に成り得なかったのは妻子の存在があったからこそなのであろう。 狂人になり得ぬ表現者は時に世界一つまらぬ人間にもなってしまう。 太宰も、きりぎりすの画家も、報いるべき存在によって狂人に成り得なかった。 そんな自分の、表現者として必要のない、大切な人に報いる気持ちを自虐するかのように書かれているようだった。 失敗作の人生を与えられた人間にとって、陽の光を浴びることは俗欲にまみれた行為でしかなく、脚光を穢れとして永遠に苦悩の中で生きなければならないのかしら。 諦めることを肯定も否定もせず世の理としてするっと飲み込ませる感覚は、太宰の亡霊に足首掴まれて彼の生きた世界へ引きずり込まれるよう。 きりぎりすは、「おわかれ致します。」の一言で始まった。その固い意思が宿る切れ味のある一言に引き込まれる。 あなたは、嘘ばかりついていました。私にも、いけない所が、あるのかも知れません。と。 そして、「この世では、きっと、あなたが正しくて、私こそ間違っているのだろうとも思いますが、私には、どこが、どんなに間違っているのか、どうしても、わかりません。」で終わる。 世間の価値観に一切鑑賞されることなく二人の間にあった幸せ。 ひとつの出世から濁流のように世間が二人の間へ入って来る。 表現する者は、干渉されてはならないのだ。 表現者としての成功は、大衆から喝采を浴びることかもしれないが、表現者としての幸せは、誰にも邪魔されず、大切な人のためだけに、贅沢もせず、醜い見栄も張らず、ただ純粋に表現することなのである。
2投稿日: 2021.06.03
powered by ブクログ現代の24歳と言えば遊び盛りであろうに。昔の人は大人だなあと感じる。今の若者は子供が背伸びしてるからませてるって言われるわけだ。どっちにしても、24歳で世の中を語るには早すぎるのではなかろうか。おわかれは別として。
0投稿日: 2021.01.19
powered by ブクログ「きりぎりす」 こういう芸術家気取り、居るよなぁという感じ。 妻が、芸術家の夫の欺瞞に満ちた本質を暴く。 そこには時代を超えたリアリティがある。 好きです。
3投稿日: 2021.01.10
powered by ブクログ14編の短編集。 昭和12年から昭和17年までに書かれた太宰文学の中期に属する作品。 【きりぎりす】 お金で人が変わる所を私は見た事がない。 周りにも、親戚にもお金持ちなんていないし、唯一知っているお金持ちのお家は元々お金持ちだから。 でも仕事で成功して人が変わるのは普通のこと。 付き合う人間の質も変わってくるし、仕方の無いこと。 でも、奥さんは旦那さんとの代わり映えのしない毎日を望んでいた。 貧乏を生活の軸置く生活。 貧乏好きがいるなら裕福好きもいる。 「私」はまだ24歳なんだし、そんなに苦しいならさっさと離婚するべきだと思った。 あと、個人的に「私でなければ、お嫁に行けないような人のところへ行きたい」はちょっと怖い。 よほど尽くすのが好きなのだろう。 【燈籠】 「私」は余程水野さんが好きだったんだろう。 5歳も年下なら尚のこと世話したなり、つい出来心で水着を盗んでしまったんだろう。 だがこれは犯罪だ。 そこまでしても水野さん喜ばない。 その前に水野さん金持ちだ。 これを母性と呼ぶのかストーカーと呼ぶのは髪一重。 面白かった。 【姥捨】 誰にでもある経験ではないとは思うが、この人を支えようとか一緒に居ようと思って覚悟しても、ふとした瞬間に「あ、もうどうでもいいかも…」っと思うことはないだろうか…? さしたる理由はないのに、この人と一緒居るのは心地よくない…といった様な。 だから、嘉七は酷い奴だが、ちょっと気持ち分かる。 かず枝もかず枝でちょっと重い感じだし。 でもあんな風に捨てられたんじゃかず枝の最大の悲劇は生き残った事だ。 嗚呼、明日は我が身。 【畜犬談】 結局はポチのこと大好きなんだな。 醜く見えていた所は実は自分を見ていたんだろう。 だから嫌いだったのだろう。 【皮膚と心】 人を学歴、見た目などで選ばなくても、幸せになれるんだなと思った。 自分がどんなに醜くても、変わらず傍にいてくれるって嬉しい。 【水仙】 面白かった。 見抜けなかった才能 才能への嫉妬。 八つ当たり。 悲劇のラスト。 実話。
2投稿日: 2020.05.11
powered by ブクログうーん、やっぱり太宰治はおもしろいなぁ。 著者中期の14の短篇を収録した本書では、どの登場人物も貧しくて自虐的な性格なため、正直読んでいてうんざりすることも少なくなかったのですが、それでも(むしろそれだからこそ?)全ての作品を楽しむことが出来ました。 とりわけ、クスッと思わず笑ってしまいつつ、最後はちょっとほっこりした「畜犬談」には著者のユーモラスな一面を感じ取れたり、「鷗」や「風の便り」といった作品からは著者の考えのようなものを学び取れたりしました。 しかし、強く印象に残ったのは最後の2編。「水仙」と「日の出前」です。どちらも後味の悪さが醍醐味かと。とりわけ後者のラストには人間の不気味さを感じられて、なんだか単純でないその言葉の意味を考えてしまいました。
2投稿日: 2019.12.13
powered by ブクログ数十年ぶりに読み返す。NHKの朗読の時間で石田ひかりの読みっぷりがよくて、キリギリスの入ったこの本を再読してみた。確かに面白い。
0投稿日: 2019.12.07
powered by ブクログクスッと笑えるものからちょっと考えさせられるものまで様々な物語が入った短編集。 個人的には畜犬談、きりぎりす、風の便り、水仙、日の出前あたりが面白かった。 太宰の作品は人間失格から入ったのでああいう系統の作家なのかと思っていろいろ読んでみたが読むたびにその引き出しの多さに驚かされる。 それぞれが今の作家にはない面白さがあると思う。
2投稿日: 2019.08.31
powered by ブクログ「おわかれ致します。あなたは、嘘ばかりついていました。……」名声を得ることで破局を迎えた画家夫婦の内面を、妻の告白を通して印象深く描いた表題作など、著者の最も得意とする女性の告白体小説「燈籠」「千代女」。著者の文学観、時代への洞察がうかがわれる随想的作品「鴎」「善蔵を思う」「風の便り」。他に本格的ロマンの「水仙」「日の出前」など、中期の作品から秀作14編を収録。
0投稿日: 2019.06.18
powered by ブクログ北村薫「太宰治の辞書」に、この短編集に収録中の「水仙」についての奥野健男の解説が「明白な勘違い」であると書いてあったのが気になって読んでみた。 「水仙」は収録作品中でも印象的な作品で、確かに奥野のいうように「善意や社会良識がある人間を根本的にだめにしてしまう」わけではないが(善意や社会良識は「水仙」にも「忠直卿行状記」にも出てこないような…)、北村が言うように必ずしも忠直卿の「裏返し」ではなく(そもそも「善意」と「悪意」の対立項が成立しないので)、おべっか(忠直卿及び水仙の取り巻きによる)にせよ恨みから来る無視(水仙の主人公による)にせよ、相手をいい加減にあしらう在り様は、無意識下に「天才」など存在しないことにしたい俗人の浅ましさがあるようで怖ろしかった。 太宰はメロスやお伽草子を読んだくらいで、『斜陽』も『人間失格』も読んでいなかったのだが、思ったより面白かった。しかし、女性1人称ものは苦手。特に「きりぎりす」は、語り口だけでなくその内容がウザかった。売れっ子画家になって俗物化した夫をひたすら非難する妻の一人語りで、実際俗物化しているのだが、それ以上に、勝手に枠決めて、それに合わないと許さない妻の身勝手さのほうが不快だった。
0投稿日: 2019.03.10
powered by ブクログ太宰治の小説を読めば読むほど、不器用で、 実に愛すべき人だなと思えてくる。 そして、又吉直樹さんは太宰治に傾倒してるんだな と改めて実感。文の書き方が非常によく似てる。 『佐渡』を読んでると船旅がしたくなった。 犬好きな私としては『畜犬談』が面白く読めた。 初めのうちは犬を邪険にしていたのに、何だかんだで、 最終的には犬を大事に扱ってる。 『風の便り』では、木戸一郎と井原退蔵が 書簡のやり取りをしていて、思わず私も 文通を始めたくなってしまった。
0投稿日: 2018.12.29
powered by ブクログ自分の過去や罪業を達観とまではいかなくとも、客観視できるようになっている時期の作品。『姥捨て』『鴎』『善蔵を想う』は煩悶するような過去の内省もあるだろうが外連味なく纏まっている。ここに見られる作家としての成長が“人間失格”に結実されたと思う。太宰の十八番である女性一人称語りの作品が数編あるが、『千代女』が一番好き。『佐渡』は、これも太宰が得意とする分野である見聞記だが、その中でも傑作ではないだろうか。本当に引き出しの多い作家だと思う。
0投稿日: 2018.07.24
powered by ブクログ今年もうかうかしてゐたら、既に桜桃忌も過ぎてゐました。今さらですが、まあいいでせう。良いものはいつ読んでも良いのだから。 かつて筒井康隆氏は、「いい短篇集は長篇数冊分の読みごたえがある」と述べましたが(『みだれ撃ち瀆書ノート』)、この『きりぎりす』もまさに同じことがいへるでせう。 解説の奥野健男氏が編んだ14篇が収録されてゐます。ちなみに文庫版の太宰全集といへば、ちくま文庫版が有名ですが、この新潮文庫も実は、全部揃へると実質的な全集となつてゐます。但し書簡集とか初期習作・雑纂は除きますが。 太宰が最も安定してゐた時期(昭和12-17年)の五年間に執筆された珠玉の作品群であります。得意とする女性の一人称語りの作品がまづ目につきます。 哀切にして心温まる「燈籠」、何かと自信を失つてゐる女性が吹き出物に悩む「皮膚と心」。これは夫婦愛の物語でもあり、佳作と存じます。夫の出世を喜べず、却つて心が離れてゆく「きりぎりす」、当時流行つたといふ「綴方教室」を題材にした「千代女」.....いづれも、冒頭の一行目から読者の興味を惹き、一気に結末まで読ませます。本当にうまい喃。 ほかにも、自殺未遂のカップルを描いた「姥捨」、幼少時の心の闇を抱き続ける「黄金風景」、犬嫌ひを標榜しながら迷ひ込んだ野良犬に愛情を注ぎ「芸術家は弱い者の味方だつた」と悟る「畜犬談」(これは有名な作品で、わたくしは太宰の全作品中五指に入る傑作と考へます。この一篇の為だけに本書を購入する価値あり)、幼少時以来おしやれ好きを自認してきた語り手の恥かしい過去「おしゃれ童子」、衣錦還郷を目論んで出席した同郷会で醜態を演じた「善蔵を思う」、佐渡への紀行文を装つた(と思はれる)「佐渡」(『津軽』といひ、太宰は紀行作家としても一級品ですね)、新進作家と、彼が憧れ続けたヴェテラン作家との緊張感漂ふ往復書簡「風の便り」、「水仙」「日の出前」では、太宰のストオリイテラアとしての実力が遺憾なく発揮されてゐて、私小説的作品しか知らぬ人が読むと、眞に新鮮に感じるでせう。 久しぶりに一冊通して読みましたが、やはり「ご馳走」といふ言葉がぴつたりの豊穣な作品群であります。太宰はとつつきにくいと感じる人には、絶好の入門書とも申せませう。 http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-755.html
5投稿日: 2018.07.09
powered by ブクログ水仙が読みたくて買ったのだけど、心に残ったのは「善蔵を思う」と「日の出前」だった。 善蔵を思うは、ちょうど薔薇を育てているときに読んだので余計。 『この薔薇の生きて在る限り、私は心の王者だと、一瞬思った』 この文に泣いた。しかし私は薔薇が咲き誇り枯れたあと、それを捨ててしまった。庭のある家に住んでいないので、ゴミ袋に入れて捨てた。花の枯れた薔薇を育てる気になれなかったからだ。何日も水をやり忘れ、枯れ、捨てた。私は心の王者ではなくなった。 日の出前はラストが良かった。 途中何度も勝治てめぇこの野郎とワナワナしたんだけど、ラストは…。 こうなるしかなかった。あのときチベットに行かせてやればよかったのかもしれない。もしくは親の反対なんか押しきって、勝治はチベットに行けば良かった。結局あの子は度胸がないのだ。 あと大好きな皮膚と心。 太宰作品は出版社バラバラで集めているので、同じ話を違う本で、何度も読んだりする。短くて読みやすいし。最近は外でいきなり太宰作品が読みたくなっても青空文庫がある。便利だ。 でもやっぱり紙が好き。文字が美しく見えるから。
0投稿日: 2018.03.24
powered by ブクログこれも自分語り的な話が多い感じがするけど、面白く読めた。 『畜犬談』『佐渡』は笑えるシーンがちらほら。 太宰治で笑えるとは思わなかった…。 どちらの話も当人は真剣に悩んでるのかもしれないけど傍目にみてるとシュールなギャグにみえる。 最後の方はなんだか切ないのだけど。 一番良かったのは『日の出前』。 『水仙』も好き。 人の底の部分を描き出してて救いはない、後味のよくない話だから読んでて辛くもなるけどそのぶん印象に残る。 特に『日の出前』のラストの妹の発言…。
0投稿日: 2018.03.24
powered by ブクログ太宰文学の中期に属する14編の作品を収めてあります。 巻末の解説によると中期の作品は文学的、芸術的才能がのびのびと発揮され豊かに開花しているとのこと。 精神上、安定していた頃のようです。 私がこの14編の中で1編選ぶとするなら「日の出前」でしょう。 この作品は世間的に、かなりの地位を得た洋画家一家の一人息子(勝治)が学生の身でありながら、金遣いが荒く、どうしょうもない放蕩息子で家族の生活が滅茶苦茶にされてしまう話。 実はこの話、太宰が現実事件をモチーフにしていたという事に驚いた。 1935年に日本で初めての保険金殺人事件とされている「日大生殺し事件」。 この事件の概要をウィキで調べてから、再び「日の出前」を読んでみると、モチーフにされた方と作品とを対比せずにはいられない。 どこか太宰の作品の方に上品さを感じる不思議さ。 最後には息子を殺してしまうというのに。 一家は逮捕され、勝治の妹の言い放った、「兄さんが死んだので私たちは幸福になりました。」は名台詞だ。
8投稿日: 2018.01.15
powered by ブクログ14編のうち表題作の「きりぎりす」が別格のおもしろさだがそれ以外に、 「善蔵を思う」(津軽人の集まりに出席する話) 「水仙」(松平忠直の乱心に例える話) もなかなか良かった。 全体を通して画家が良く出てくる。太宰治は小説家というより芸術家という意識なのが伝わってきた。
0投稿日: 2017.07.16
powered by ブクログ私は、太宰治さんのファンになりました。笑える楽しさをもつもの、恐ろしいほどの冷たさをもつもの、それぞれ作品に、それぞれの凄みがあります。 でも、私は太宰治さんの「作品の」ファンである、という点を保持したいと思っています。 ご本人の生い立ちや生涯については、あまり踏み込みたくはありません。 私は、文学作品をあくまでも消費しているのであって、文学者のように作品の成り立ち等を研究云々することには、決して目的を見出していません。 太宰治さんに限った話ではないですが、殊にこの方の作品の語られ方には、背景のようなものと強固に結びつける向きがあったり、ときに背景が全面に強調されていたりすることがあるような気がします。 したがって、太宰治さんが各作品をどのような境遇と心境の下で紡いでいったか、ということは、あえて知らずにおきたいと願います。 そのほうが、純粋に物語が楽しめると思うのです。 <目次> 燈籠/姥捨/黄金風景/畜犬談/おしゃれ童子/皮膚と心/鷗/善蔵を思う/きりぎりす/佐渡/千代女/風の便り/水仙/日の出前
4投稿日: 2016.05.28
powered by ブクログ太宰の女性告白体の小説は本当細やかで大好きだ。本書に収められているのは太宰が落ち着いていた中期の作品。佳作揃いです。特に「畜犬談」が筒井康隆ばりのユーモアとペーソスに満ちていて笑った。そりゃ犬好きの川端さんとは仲が良くないよなあ〜なんて思っていたらホッコリさせられるラストが意外だった。この話だけでも読んでいただきたい。
0投稿日: 2016.05.21
powered by ブクログこれも面白かった!! 太宰の短編集だがどれも興味深いテーマが魅力な小説たち。 無理して生きなくてもいいんだとメッセージを感じた。 特に良かったのは「燈籠」 教養があり知的なある男に呆けた無学の女は、その男のある一言のために、男に海パンを与えたいがために「盗み」を冒してしまう。 それを知った男は呆れ返って「君には教育が足りない」と女に手紙を書く… 確かに、無知な女は感情に流されやすい…と自分の経験上納得した。 特に若いころはそうだ。 そんな女は情けなく、みっともない。 女たるものいつでも凛としていたい、というのが本心。
0投稿日: 2016.01.01
powered by ブクログユーモアたっぷりの、短編集。細やかな心情のうつろいや情景などに、思わずため息をついてしまうけれど、やはりどこか憎めず、じわりじわりと心に染みいる。この季節にピタリとはまった気がする。
0投稿日: 2015.11.14
powered by ブクログ新潮文庫の太宰の短編集では「きりぎりす」がNo.1!ちなみに角川文庫ではダントツ「女生徒」。太宰は書き出しがすさまじく上手な作家だけど、「きりぎりす」はしめの一文が素晴らしい作品が多い。とくに「黄金風景」と「善蔵を思う」!何度も読んでるがやはりいい。 太宰はキリスト教徒だったのだろうか、と前々から疑問。
2投稿日: 2015.09.29
powered by ブクログしまっておきたいような事柄とお腹いたいわ!ぐらいに笑える事柄を綴ってまとめた短編集。 黄金風景、畜犬談、きりぎりす、佐渡、風の便り、など。
0投稿日: 2015.08.20
powered by ブクログ中期のやや生活が安定していた頃の作品が中心。相変わらずの私小説もあるが、女性が主人公の「燈籠」「千代女」が短くも印象に残る。そして漱石風の「畜犬談」がいい。話のテンポも良く書かれ、ポチのその後が気になる傑作。
0投稿日: 2015.07.23
powered by ブクログ中期の心身が安定した時期の佳作揃いという触れ込みだけど、やはり太宰は太宰じゃないかと思う。めくるめく文体という意味で[きりぎりす]は[女生徒][駈込み訴え]だし、紀行文の巧みさで[佐渡]は後の[津軽]に繋がってる。[水仙][日の出前]ときて、去年読んだ[人間失格]を思い出させる。どうせ呑んだくれなんだから体だの金だの言い訳がましいことをグダグダ言わないで!と思うのだ。[罪と罰]のマルメラードフの様に長編の中の一筋にするのではなく、短編で中心に据わる為に、女々しさ満点の、まるで自分の実影に見えるんだろうな。
0投稿日: 2015.05.08
powered by ブクログ太宰自身のことと思われる、自虐的な滑稽話と 特に自身には関係ないけれど、どことなく悲しいような雰囲気の話が多い短編集。 秋の日のような、少しおセンチな気分で読むとぴったりハマると思う。読み終わったときにため息が出るけれど、なぜか深呼吸をしたあとのように胸がすっきりする。 読んでいて心がじわっと暖かくなれるのは、人生そんなもんさ!と、ちょっぴり悲しそうに笑って励まされてる気がするからだろう。
0投稿日: 2014.07.21
powered by ブクログ再読した。 太宰作品=暗いというイメージを払拭する短編集だと思う。 特に、畜犬談と皮膚と心がおすすめだ。
0投稿日: 2014.01.18
powered by ブクログ最高傑作の短編集 水仙のしじみの話や日の出前のラストシーンは秀逸ですね 畜犬談もユーモアと哀愁を感じさせるもの
0投稿日: 2013.12.01
powered by ブクログ太宰治の中期短編集。表題作のみ再読。 どの話も実に実に面白く、太宰治の「物語作家」としての才能を存分に感じた。 よく太宰作品は冒頭が面白い、素晴らしい、と言われる。本当にそうだと思う。どれも平易でありながら、ぐいぐいと読者をひきつける。 けれど私は、太宰作品は締めこそ天下一品だと思う。甘くなりがちな「おとぎ話」を、「物語」として見事に昇華する手腕は素晴らしい。 私はそんなに太宰作品を読んでいるわけではないが、もしこの世に物語の神様がいるならば、太宰はその神様に愛された人なのではないかと思う。
0投稿日: 2013.10.21
powered by ブクログ人がもつエゴイズムが垣間見える短編集。一方その中に収録される「黄金風景」は人生を再出発する決意が描かれる名作。表題作は生々しくて、「人間失格」とともに読まれてもいいのではないだろうか。「佐渡」は紀行文みたいけれども好きだった。「日の出前」は太宰にしては暗すぎて驚いた。
0投稿日: 2013.09.02
powered by ブクログ表題作ほか女性の1人称で書かれた短編をメインに全部で14編の作品が収められた新潮文庫です。 太宰さんの作品は、本当に読みやすいね。 今回は『畜犬談』という作品が、とても良かったです。 とても短い作品なので、動物好き(特に犬好き)の人はぜひ読んでみてください♪ 基本的に太宰さんの本は浅田次郎さんと同じで、徹底的な悪人が出てこないのが良いんだよなぁ…。
0投稿日: 2013.07.25
powered by ブクログ太宰中期の作品集。 どうしてこうも女性心理が分かるのか。Aと言ったけど心の底ではB、でも本当はCになってほしいことは知られたくないからやっぱりA…みたいな、あっちへ寄り道、こっちでつまずき、無駄に考え悩みフラフラする様子が見事に描かれている。それでも、登場するどの女性も誠実に生きているので、どれほど面倒くさいことを言ったりやったりしていても、読み進めるのが苦ではない。むしろ読み終わった後、またすぐ読み返したくなる。
0投稿日: 2013.07.07
powered by ブクログ世の中、騙して騙され、嘘も嘘と思わないで生きることが結局本当なのだろうか? それに耐えるのが生きるということなのだろうか?
0投稿日: 2013.05.01
powered by ブクログ前に読んだ 走れメロスと違い 作者の作家としての自己批判がところどころにあらわれる作品集です。面白かったのは「黄金風景」「蓄犬談」「きりぎりす」「佐渡」。文体も意外に読みやすく他の作品も読んで見たいとおもった。
0投稿日: 2013.04.20
powered by ブクログ『ヴィヨンの妻』の余勢でそのまま中期の短編集を読んだのだが、 とても良かった。気に入った。 この年になって、この良さが感じられるようになったのだと思うが、 またあと10年ぐらいしたら読んでみたいと思う。 『燈籠』 「私は、水野さんが、もともとお金持の育ちだったことを忘れていました」というところ、おっと思った。 『姥捨』 太宰の心中は趣味のような一面もあったような気になるが、 それぐらい、淡々としている。 最後の一行がとてもいい。 『黄金風景』 6ページの短編なのに、やられたと思った。 見事な切れ味。 『畜犬談』 主人公は最後に思い出した希望をまた忘れるかもしれない。 しかしこの一瞬だけでも、泣けた。 『おしゃれ童子』 健気なところが哀しくもおかしい。 『皮膚と心』 「だって、女には、一日一日が全部ですもの。男とちがう。死後も考えない。思索も、無い。一刻いの、美しさの感性だけを願って居ります。生活を、生活の感触を、溺愛いたします。女が、お茶碗や、きれいな柄の着物を愛するのは、それだけが、本当の生き甲斐だからでございます。」 『鴎』 『善蔵を思う』 切実。 しかしどちらも、やはり作家としての才能に感嘆する。 『きりぎりす』 とてもいい。すごくいい。 『佐渡』 最近は町中では砂利道というのはめったにない。 まれに砂利道を歩くと道を踏みしめるザク、ザク、という音がやけに心地いい。 北海道と本州とでは土の感じが全然違うと作者は言う。 確かめてみたいが最近では道はアスファルトなのでどこも同じである。 『千代女』 主人公が小学生の頃に書いた2編の作文にホロっときた。 最後、とてもよかった。 『風の便り』 なんか読んでるのがつらかった。 僕ならこんな手紙をもらったら泣く(笑) 文学者(強烈な自我)は強いものだ。 『水仙』 これもつらい話だ。 悲しい話でもある。 『日の出前』 虚しい読後感。
0投稿日: 2013.03.17
powered by ブクログ太宰が28歳から33歳の時に書かれた14の短編小説。 この作品集を前回読んだ時はあまり心に ひっかからなかったが、今回は、 とても美味しいチョコレートの詰め合わせを ご馳走になった後のような満足感。 どの作品も主人公や登場人物が 太宰の分身であることが強く感じられる。 彼は、作品中の人物に自分の想いを、 読者という「社会」に向かって、 吐き出させる。 本当にどの作品も好きだけど、 特に「鷗」「きりぎりす」「畜犬談」「水仙」が 良いなと思う。 「鷗」で己の価値について過小評価する際に 使われる言葉は一つ一つ、 不思議な輝きを持っている。 「きりぎりす」を以前読んだ時は 夫が嫌なヤツだと思っていたが、 再読してみると、 いやいや、妻もこれでなかなか 強烈な自我やエゴを持つ。 女って、妻って生き物は、 へちまの棚一つ作ってくれなくても、 相手を許せなくなるところがあるかも。 よくわかっているな、太宰氏。
0投稿日: 2013.03.17
powered by ブクログ短編はあまり好きな方ではなかったが、太宰の短編を読んで、その考えがひっくり返された。 それは、太宰の卓越した心理・情景描写、言葉の選び方が、写真のように一場面を切り取る短編という文章のかたちに、ピタリとはまったからだと思う。それはもう、読んだ後に鳥肌が立つような「切り取り方」だ。 特に、始まり方の表現がすごい。 http://preciousdays20xx.blog19.fc2.com/blog-entry-427.html
0投稿日: 2013.03.12
powered by ブクログいくら文章を書くのが好きだとしても、誰もが物書きになれるわけではない。才能がないとそれで食べていくことはできない。文章で食べている、という事実だけで才能は認められているのに、芸術は数値化することができないから太宰を苦しませる。「わたしには文章を書く資格などないのです」と至るところに書いてある。太宰は、何を拠り所に自分の価値をみつけたらいいのかわからず苦しんでいるように感じた。でもそれは、わたしが常に感じていることだと思う。 自分ははたして価値のある人間なのか?自分の価値とはなんなのか。他人に評価されなければ自分には価値がない? わたしは、自分はこのように偉そうに感想を述べるに値する人間ではない、と本気で思っている。
2投稿日: 2013.01.15
powered by ブクログ太宰治にしてはあっさり感があるけれど、どれも読み易く面白かった。 特に『きりぎりす』『畜犬談』『水仙』『佐渡』が印象に残った。 俺って本当にダメな男なんですよ、と言いつつも、どこか自信ありげなところにコノヤロウ、と腹が立つが。
2投稿日: 2013.01.10
powered by ブクログ作家太宰治の中期作品を収録。このころの太宰さんは健康的でよかった・・・。作家としてスキルアップすべく試行錯誤のあとも見られる。 初期・後期の退廃を極めた作品が好きなひとにとっては少しものたりないかも?
0投稿日: 2012.12.18
powered by ブクログ情けないほど卑屈だけど実はプライドが高くて、 自分はだめなんですよ…といいつつ 拘りとカッコつけを纏った男たちがわんさか。 でも、なんだか憎めない人たちがほとんどだったりする。 そんな中、「きりぎりす」は珍しい女性視点。 そこに登場する男性は、何でも究極。 「風の便り」は本当にダメなんだけどこういう接し方、 物凄く共感してしまう。 同じような行動をとってしまう(もっと軽度だけど)ときの 酷い自己嫌悪も思い出して頭痛が…。
0投稿日: 2012.11.17
powered by ブクログ今まで、太宰は絶望的なストーリーが多く、どの話も大体同じようなことを言っているイメージだった。しかしそれはわたしの中に凝り固まった固定観念でしかなかった。この短篇集「きりぎりす」はそんなことはなく、様々な角度から小説を考察している太宰の姿は、とても好意的に見れた。中期は安定して小説に打ち込めていた時期らしく、それが如実に現れていたと思う。わたしは中期の作品が太宰の中では一番好きかもしれない。
0投稿日: 2012.09.27
powered by ブクログ短篇集。太宰治の作品は暗いという印象を持っている人が多いかと思う。収録されている作品の中には死に関する話も幾つかあるのだが、私はそういった作品に暗さというものはあまり感じなかった。むしろ、優しさのようなものを感じた。
0投稿日: 2012.09.07
powered by ブクログ独白調、書簡ものでまとまった短編集。一人称ものは嫌いではないけれど、続けて読むと辛いところがある。でもやっぱりうまいなあと思う。
0投稿日: 2012.08.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
おもしろい 太宰治ちゃんと読んだことなかったけどこんな多様な短編を書いてそれも一つ一つ面白いなんて伊達じゃないのねーとみょーなトコに関心してしまった 決して明るい話ばかりではないんだけどどこかユーモラスで懸命なのに悲壮感とか出過ぎなくてこの感じはけっこう好き 女生徒読みたい
0投稿日: 2012.07.30
powered by ブクログ皮膚病になった女の人の話の、私もうこんなんじゃやっていけないわ、という心情の書き方は、この人にしかできないのだと思う。大したことはないのだけれど、ぶりっこに感じることもなく、慌て過ぎだと感じることもなく、ああ、この人は本当にこの状況が耐えられないのだな、と自然に思わせる力がすごいと感じた。 自殺しようとする夫婦の話の、旦那さんの心情、奥さんの動き、そのコントラスト、夫婦と世間のコントラスト、宿の夫婦と死のうとする夫婦の対比と交流、その全てが悲しくてきれいで、印象的でした。 本当に、ああもうどうしよう、という状況の悲しげな気持ちの表現は、たまらないです。 言葉の選び方、たとえの仕方が印象的で驚きと共にしっくりと来て良いです。あと旦那さんはいつも親切でいいです。 様々な視点から自分を客観的に見て、自分を冷酷に追い詰めていく描写は、たくさん出てくるけれど、飽きずたまらないです。 しかし解説文が私と合わなかった。少し軽薄にさえ感じてしまった。
0投稿日: 2012.07.12
powered by ブクログTVでピースの又吉さんがお薦めしていたので読んでみました。 他の割りと有名な話は読んだことがありましたが 短編は予想以上に良かったです。
0投稿日: 2012.06.23
powered by ブクログ太宰治が書く、女性の一人称の告白体は天才的。切々とした感じがこんなにも言葉で表現できるものかと思う。その他、こんな事訊いたら言ったらこう思われるかもしれないって一人で煩悶するくだりが本当に多い(笑)きりぎりす、日の出前、水仙がすごく好き。あと畜犬談も面白かったなぁ。
0投稿日: 2012.05.07
powered by ブクログ大学の教材で今日買ったのを読んだけどかなり面白かった。 美術やってたし、美術高校だったから知り合いに画家とか画家になりたい人とかが多くて、そんな人たちに読んでくれって思う作品だった。
0投稿日: 2012.04.24
powered by ブクログ太宰治はこの短編集が初めてでした。 「黄金風景」が個人的に好きです。 主人公の葛藤が、自分自身にもなんとなく重なる部分がありました。
0投稿日: 2012.03.16
powered by ブクログ太宰初体験。 そんなにいじいじしてどうするの、というお話しも多かったが、意外にユーモアたくましい小品も。 嫌いだ、嫌いだと避けていた犬に見込まれてしまう「畜犬談」はかなり笑えます。
0投稿日: 2012.01.13
powered by ブクログ太宰治の中で一番好きな短編集。じめじめした精神は唾棄したいくらい嫌いだけど、とにかくこの人は文章が巧い。から何度も回帰する。
0投稿日: 2012.01.05
powered by ブクログ貧乏くさい、ものすごく貧乏臭い。十四篇全てが貧乏くさい。フェラーリを乗り回し、ドンペリを浴びるように飲めとは言わないが、小市民の大道をまっすぐとぼとぼと歩いている風だ。娯楽として、この小説を楽しめというのは無理がある。文学とは実に深いものだとつくづく思うのである。だからこそ、面白いのだろう。
0投稿日: 2011.10.25
powered by ブクログ個人的に素敵だと感じたのは「黄金風景」と「日の出前」。 日の出前は実際にあったある事件を元にして書かれているらしく、全体的にドロドロとした雰囲気が漂っているし、後味もあまり良くないですが、好きです。最後の一文がかなり衝撃的でした。
0投稿日: 2011.08.10
powered by ブクログ太宰のお顔は好きですが作品は毛嫌いしている私。でも、彼の短編に文豪太宰治の偉大さが露呈される、と思ってて、結局太宰はすごいと思います。 この文庫の中にある『畜犬談』を家族の前で音読してみたのですが、みんなしてお腹を抱えて笑いました。一文一文に無駄がない。言葉のセンスもお見事。 爽快な一冊。この夏に是非おすすめしたい本のひとつです。
0投稿日: 2011.08.04
powered by ブクログ「嘘でないものを、一度でいいから、言ってごらん」―善蔵を思う― 再読。 短編がどれも味わいがあって、人間味があって良かった。
0投稿日: 2011.07.31
powered by ブクログ新潮文庫から出ている太宰中期の短編集『きりぎりす』を読みました。 まず最初の、女性の独白体小説「燈籠」、特に結び方が素晴らしいので、 ぐぐっと読む者の気持ちがつかまれます。 それで、だだーっと読んでいくと、 どうもこの時期の(?)太宰はまるで自分を卑下するように、物語の主人公を卑下して、 卑屈とさえ思わせられるくらい徹底的に、自らを人間の屑だと自認するんです。 それを読んでいても決して、僕なんかにしてみたら太宰は屑になんか思えないわけです。 自分を屑とする太宰以下なのが、それを読んでいる自分だなということに、 個人的に気付かされるので、しょんぼりして寝付くという事態に陥ります。 しかし、しかし、最後から三番目の短編、「風の便り」というのがそういう読者を救うような 手立てとしての作品になっています。このあたり、編集者のうでが素晴らしいっていう ことなのかな、しっかり理解しつくしている人が本を編んでいることが身を持ってわかりました。 「風の便り」はこの作品群の中では、世代に関する論、創作に関する論、言葉自体に対する論などが、 作家同士の往復書簡という形で弁証法的に語られています。 すごく面白かったです。 特にですね、たとえば世代に関する話ですと、上の世代に大物がいるときの下の世代の息苦しさ、 それゆえに芽を摘まれるように、才能が伸びていかないことが明らかにされています。 これはたぶん、この時代(戦前の昭和の時代)の描写ですから、そのスケッチではあるにしても、 今の時代にも十分に言えることだったりしますね。 そういうところは、その大物たる人物のせいなのです。かれらとて、そういう部分でいえば、 失敗者であり、自らの成功しか…それはそれですごいのだけれど、し得なかった、 直後の世代からエネルギーを搾取してしまったかのような存在であると言えるんですよね。 考えてみると、そういう大たる人物たちは、その作品の力によって、 「どうだ!」と同時代のクビ差、アタマ差届かない 同業者を抑えつけてねじ伏せてしまうとところが、望まぬにしろ、あります。 そして、20歳と30歳では、経験も知恵も違うものです。 30歳と40歳でもそうです。 それなのに、ハンディキャップマッチではなく、同じ条件でレースをすることになるのですから、 下の世代は不利も良い所なんですよねぇ。 いやいや、あてこすってるわけではないですよ、あげつらってるきらいはありますけどね。 そこらへんの、世代間の条件の悪さ、有利不利を言語外のところで感じて、 世代間の亀裂っていうのが生まれるのかもしれないです。 みんな、言葉でなかなかうまく言えなくても、そういうことは肌で感じていて、 とやかく論じたてても理屈がついてこないから、とりあえずつらーっと「上の世代とはつきあわねー」 とかなるんじゃないですかね。 この場合、上の世代と付き合うことによるメリットよりもデメリットが大きいと計算されたことになりますし、 そう計算された上の世代は悲しいものです。 まぁ、身一つでやっていこうという人は、へんにメリットを考えないでしょうから、うまくデメリットも回避されて、 成功するっていうパターンもなきにしもあらずな気がしませんか。 ちょっとわかりにくいかもしれない話です。 さて。 この『きりぎりす』では、今述べた「風の便り」のほかにも太宰(?)が佐渡を訪れる旅行記「佐渡」も 面白いですし、女性一人称独白の「千代女」も、真を突いていて妙っていうような佳作です。 中期の太宰治はなかなか面白いです。僕は以前に読んだ「女生徒」がお気に入りですが、 この短編集にも先にあげた作品たちが実に心を揺さぶってくれます。 まぁ、「太宰治って面白くないね」っていう人もいますけれど、 「なんでもかんでも、してもらうのがエンタテイメント」と思っている人以外には、 まあまあ高確率で「面白い!」と言ってもらえるんじゃないかなぁ。 ほんと、太宰さんは、入水などせずに、老いてからも小説を書いてほしかったものです。 それは無茶なことだったのかもしれないけどね、彼の心の中はわかりません。
2投稿日: 2011.07.19
powered by ブクログ前半の方が面白かったなぁ。基本暗いのに最後だけちょっと明るいの。 文学観を述べてる話は少し退屈。最後の方はまた面白い。 がんばったけどダメなんだと言った切なさが好き。
0投稿日: 2011.06.22
powered by ブクログこの作品集にある「待つ」という作品が太宰作品の中で一番好き。あんなに短いのに読者の心を引っ張り出す作品はあまりないのでは? 「犬畜生」は太宰治=暗いというイメージを持っている方に是非読んでもらいたい作品。 きりぎりすは女性が主人公の話が多いのですが、太宰治は女性のいいところも悪いところも描くのが非常にうまい方だと思います。
0投稿日: 2011.06.19
powered by ブクログたとえば電車の中でギャグマンガを読んでいたとして。 メッチャ面白いギャグとかにぶち当たると「うっ・・・くっ!」みたいなことになるじゃないですか。 笑いをこらえるのに必死になっちゃって。 予期せずかわいくないアヒル口みたいな口元になっちゃったりとかしてね。 電車の中で『忍空』を読んでいたときはホント、そんなのの連続でしたけど。 で、まさか太宰を読んで、そうなるとは思わなかった! というくらいに「畜犬談」はギャグ要素満載だと思うんだ。 全体を通しての流れも秀逸だし、よくできたショートムービーみたいな作りです☆ そして、「風の便り」は名言のオンパレードだな! 【目次】 燈籠 姥捨 黄金風景 畜犬談 おしゃれ童子 皮膚と心 鷗 善蔵を思う きりぎりす 佐渡 千代女 風の便り 水仙 日の出前 解説 奥野健男
0投稿日: 2011.05.02
powered by ブクログ太宰治の作品の中で一番好きな作品集の「きりぎりす」です。この中でどうしても触れておきたいのが「畜犬談」。笑ってしまいます。人間失格が最も有名な太宰ですが畜犬談のような作品も書いていたのかと思うと、ますます親近感がわきます。
0投稿日: 2011.05.01
powered by ブクログ太宰文学の中期の作品だそうです。 太宰は古臭い「日本人の美徳」を愛する、という感じ。 何度も何度も再読したい作品でした。
0投稿日: 2011.03.30
powered by ブクログ表題作のきりぎりす。 寡黙な人だと思ってたら語るべきことがないだけだったり、自分を守るために外に異常に攻撃的になったり。 結構こういう男の人って多いきがする。はじめて太宰おもしろいと思った。
0投稿日: 2010.08.24
powered by ブクログ読むのに時間がかかりすぎて最初の方の感想は忘れてしまいました(汗) 尊敬とは、所詮…身勝手な感情なのでしょうか?ならば、一生伝えまい。見返りなんて求めたくはない。うん。
0投稿日: 2010.07.18
powered by ブクログ太宰の短編集はリズムがあるからなのか、すぐに読めてしまうからいいなぁ。あと、女性が主人公の作品は男の人が書いたものと思えないのもいいなぁ。(女性がみると違うかもしれないが)
0投稿日: 2010.07.14
powered by ブクログ表題作は、無名の画家と結婚した女が語る。次第に売れっ子になる夫、その俗の方向に傾きだした芸術家としての転落を許せなかった。
0投稿日: 2010.06.05
powered by ブクログ「電気を消して、ひとりで仰向に寝ていると、背筋の下で、こおろぎが懸命に鳴いていました。」きりぎりすなのにどうしてこおろぎ?昔はこおろぎときりぎりすを区別していなかった、という事実をこれによって知った。
0投稿日: 2010.05.07
powered by ブクログ後半に収録されてる作品(「日の出前」とか)が特に面白かった。ただ、太宰は面白いけど好きな作家ではないなと改めて思った。 「水仙」はゼミでの発表作品。今までで一番評価していただいた発表となって、すごく嬉しかった。
0投稿日: 2010.04.29
powered by ブクログ初めての太宰作品。とにかく退廃的で陰気なイメージがあったのですが、こんなにユーモラスだなんて!驚きました。すごく面白くて、声を出して笑ってしまうシーンも・・・。 そしてこれを読んで、なぜ太宰が近年改めて人気が復活したのか納得しました。むしろとても現代的な目線のように感じられます。
0投稿日: 2010.04.13
powered by ブクログ太宰治というと人間失格とかを評価されがちだけれどもこの「きりぎりす」はそれとはちょっと雰囲気が違って此方のほうが私好み。
0投稿日: 2010.03.26
powered by ブクログ会社の先輩が太宰治を好きと言っていて、それをきかっけに久しぶりに太宰治作品を読みました。 「太宰治の作品は、思春期に熱狂的に支持し、青年期になるとその甘さに嫌気がさし、甘さを許せる中高年になってくるとまた面白くなる」 昔読んだ新聞のコラムにこういった内容が書いてありましたが、久しぶりに太宰治の作品を読んで、この言葉に改めて納得。 以前読んだのはもう10年近く前でしたが、その頃には「こんな恵まれた環境で、何を甘えたことを言っているんだろう」と腹が立ちましたが、今回読み直してみると、自己肯定と自己否定がせめぎ合っている様子が伺えて、また新たな見方で読むことができました。 自分がこの短編の中で気に入ったのは、「千代女」と「鴎」、あとは「皮膚と心」です。 個々の作品に対する感想はありますが、自分の太宰治の作品に関する総評としては、「怖い」です。 すごく、不安定さが伝わってきてしまいます。 実際に太宰治は自殺してしまった訳ですが、文章を読んでいて「自殺してしまいそうな人が書く文章に見える」と思ってしまいます。 しかもそれに対して共感も出来るものだから、それが引きずられていきそうで一層怖い。 先ほど「自己肯定と自己否定がせめぎ合っている」と」書きましたが、太宰治のそれの場合は、『自己否定』が「こんな馬鹿な自分が安穏と生きている資格があるのか。どうにかして変えなければならない」で、それに対する『自己肯定』が「それでも自分は自分だし、変えようがない」であると思います。 ただその自己否定と自己肯定が噛み合った瞬間、「こんな馬鹿な自分は生きている資格がない。だが、自分は自分で変えようがない。なら死ぬしかない」という連想に繋がっていきそうで、非常に怖い。 一回目に読んだ時は、単なる自虐ギャグだと思って面白く読めたんですが、二回目に読むとその怖さが際立ってきて、さらっと読めなくなりました。 面白くて印象強い作品なのは確かなのですが、やっぱり太宰治作品を続けて読むのは自分には難しいな、という感想です。
0投稿日: 2010.03.14
powered by ブクログ今太宰治の作品がかなりピックアップされているけど この作品には太宰のユーモアがたくさん入っていて大好きです。 これを読むと、人としてなんだか作者に愛着がわきます
0投稿日: 2010.02.06
powered by ブクログ太宰による女性を描いた作品。どれも太宰の色が表れていて印象的。私は特に、姥捨、黄金風景、皮膚と心、きりぎりすが良かった。女性の情緒不安定な心情や些細なことに一喜一憂する気持ち、そうかと思えば自分を反省する気持ちが共感する部分もあり、良かった。自分と照らし合わせながら、自分の心に正しく生きて行きたいと思った。
0投稿日: 2010.01.26
powered by ブクログ表題作含む14編収録。 女性の独白の形を取っている表題作の「きりぎりす」や「燈籠」「皮膚と心」「千代女」などは自己憐憫または自己否定をしながらもなんとか自己を肯定しようとしていく心のありようが描写された作品が多い。 自己を貶しながら、でも・・・と言ってしまう気持ちはとても生身の人間像を描き出していて心に刺さる。 上手いなあと思いながらも、そんな内面を読むとこちらの気分も沈んだりしてしまうのは正直なところ。 だが、そんな心動かされるところが名作たる所以なのだろう。 なんにしても一番始めに入っている「燈籠」からして名作だし、どれを読んでも・・・と思える短編集。 また上記の作品とはおもむきが異なるが「黄金風景」は不思議と繰り返し読んでも目頭が熱くなり、好きな作品の一つとなったし「畜犬談」もついついにやけたりと様々に楽しめた。
0投稿日: 2009.11.26
powered by ブクログこころの傷の表面からにじむ、虚しさの甘露が ぴりぴりと染み入る。 そんな感覚を、あなたは知っていますか?
0投稿日: 2009.10.29
