Reader Store
ヴァンパイドル滾(1)
ヴァンパイドル滾(1)
島本和彦/小学館
作品詳細ページへ戻る

総合評価

1件)
3.0
0
0
1
0
0
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    何気に島本和彦作品を読むのは初めてだったりする。それが藤田和日郎と共演というか競作のような形で連載始まった「ヴァンパイドル滾」というのは、奇縁なのかしら。 読んだことはないけど、周囲からこんな作風ということは伝わってくるので、いつの間にか知ったような気になっていた作家さんです。 1話のオーディションに落ちた際の滾を見た翼が思わず感じたもの。 「悔しい!悔しいけど確かに自分の負けだ!」 「だが勝ったと思うなよ!次を観てろフハハハ」 そのままこれが、島本和彦自身がこれまでの人生で壁にぶち当たった挫折の感情と、そこから立ち上がり奮起するための心意気なんだろうな。 作者の経験したものがどんな表現方法であれ、創作されたものには投影されているものだと思うのですが、誤魔化さず茶化さず赤裸々に色濃く曝け出しているのが、島本和彦の作風なのだと思います。 自分自身が発する熱量を爆発させずに抑え込む。爆発寸前まで暴走寸前までいったエネルギーを、限界ギリギリで抑え込む。回帰不能点に行き着くまでのチキンレースを見せつけてくる漫画なのかな、と思います。その危うさと同居する興奮。それが『怖い+カワイイ=怖イイ』という言葉につながるのでしょうね。 いつの日か回帰不能点を超えて自分自身が発する熱量に押しつぶされる時が来るのだろうか。それは巨大な重い恒星の最後のようなもので、超新星爆発後にブラックホールができる現象が滾にも起きてしまうのではないかしら。ファンだけでなく、民衆全てを魅了して虜にして、全てを飲み込んでゆくのだけど、それに自身が耐えきれなくなってゆく、というような。 1話冒頭の「つくりものじゃない光属性」という翼のセリフが、滾の輝きは月や星でなく太陽であると言っているように感じました。 夜にしか生きられないヴァンパイアになってしまったのも、お天道様のもとに戻れないという我慢を強いるもので、太陽の存在であった滾への枷なんだろうな、 藤田和日郎との共演競作で始まった「ヴァンパイドル滾」。 こちらもどこまで滾の熱量についていけるのか、作品の滾りに負けずにいられるのか、の勝負が始まったわけですね。 サンデー編集部にまんまと乗せられている。 いいぜ、乗ってやろうじゃん。

    0
    投稿日: 2025.09.24