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怖くて美しい能の女たち:日本人の美意識の究極のかたち
怖くて美しい能の女たち:日本人の美意識の究極のかたち
林望/草思社
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    怖くて美しい能の女たち 林望 草思社 ちょっと見には恨み辛みの血生臭い嫉妬を 醜いとせずに可愛く哀れと捉えるところに生まれるのが美だということらしい 日本人の美意識の究極のかたち ニホンの美は情念の世界観らしい 板挟みあるいはすれ違いにおける 立ち難い中での心の格闘 西洋で言えば時計の鎖と櫛で有名な 「賢者の贈り物」に見る美意識に通じる話 どうやら調和に満たされた悟りには美を感じないのが人情というものらしい 後ろ髪を引かれる悲しさを分け合うところに 美を求めるのがこの世の定めなのだろう なんとも胃の痛くなるような 不健康な話ではある 面をつけることで即物感を消して 幽玄の世界へ導く芸能は世界中にあるが 能は主役の「して」のみが面を付けあとは素顔なのが特徴である 能面の代表である小面は見せようで悲しげにも哀れにも恥ずかしげにも微笑んでいるようにも見えるクセを消した不思議な表情である 深く暗い穴でしかない目は無限に吸い込み あるいは金縛りに襲うような目力を発揮する そうした魔力が面のおもしろさである

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    投稿日: 2025.09.24