
総合評価
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powered by ブクログ最初にひとこと言わせてもらう。「どこが『世界一わかりやすい』ねん!!」です。以上。 と、これではレビューにならないのでもう少し。著者は実験物理学者で、2022年にノーベル物理学賞を受賞している。 本書の肝は「量子もつれ」「量子テレポーテーション」「ベルの不等式の破れ」であると、私は解釈しました。「量子もつれ」に関しては、私は一応存じ上げているつもりなのですが、後の2つについては正直よくわかりません。いや、「ベルの不等式」がそもそも知らない。 それぞれの言葉の説明については、本書を読めば書いてあるのですが、私の理解の範囲を今のところは超えています。著者が実験物理学者なので、実際に行った実験をモデルに仮想のキャラクターを用いて小説のように解説しているのですが、基本的に物理学と量子物理についての基礎知識があることが前提で書かれているといってもよいでしょう。ほとんどが対話形式で書かれているのはガリレオの「天文対話」を彷彿とさせて、興味深かったです。 「世界一わかりやすい」かどうかはおいといて、本書に数式は全く出てきませんのでご安心を(ちっとも安心できない)。量子物理学が実用の域に入りつつある(過去には原子爆弾を作った基礎科学であるという事実はあるにせよ)、方向性を見出している、ということがわかっただけで、私は読んでよかったと思います。 今年開かれた関西万博で量子コンピューターの体験イベントが開かれていたのですが、私はその当日に行っていたにもかかわらずまったくそのことを知らなかったので、後で大変ショックを受けました(笑)。量子もつれのアートとか、なんじゃそりゃなのですが、見てみたかったなあ。量子コンピューターの仕組みにはいろいろなタイプがあるそうですが、それぞれまだまだクリアしなければならない問題を抱えているそうです。現在のスーパーコンピューターの一億倍速いと言われている量子コンピューター、本書が書かれたときより事態は幾分進んでいるようですが、本で得られる知識としては今のところ最良ではないかと思います。一日も早い実用化が期待されますね。 巻末には付録と用語集が載っているので、それを読みながら読み進めることをお勧めします。
0投稿日: 2025.11.15
powered by ブクログ私たちが量子という言葉を作り、発見し、研究し、実用可能な現代(2025)まで長い月日を経過した。これもひとえに量子力学視点からすると量子という存在が発見して確定した時から今日や未来の先までが創られているのだろう。 本著はとても図解を通してわかりやすく教えてくれる。量子力学とは何か、それがどういうことが出来るのか。私たちが知っている通常のパソコンとは次元が異なる演算能力を持っていることは確かだろう。 本著を読んで思ったことは、量子や量子もつれという存在は人間に似ているなと思った。量子力学では観測した瞬間に確定するという。人間も何か意識して行動した瞬間に確定すると似ていると思うのだ。私たちは120年前前という、ついこの間まで量子という存在すら知らなかった。それから、たった120年後には量子コンピューターが完成しつつある。現時点では2030年までに研究が形になり、それ以降は消費者の私たちにも量子コンピューターの恩恵を受けられるだろう。もし完成したその時はある種のシンギュラリティ(技術的特異点)を突破出来る未来が来るかも知れない。AIも指数関数的に進化するし、社会システムも変革が訪れるだろう。戦争という形も変わるだろう。 自然が生み出すものも、人が手を加えるものも全てには絶対は無い。メリットデメリットは必ずある。これから10年後の2035年までには私たちに何かしらの形でその用途が明確になることも必然。 私たちもまた量子力学的視点として観測者であり、確定する存在なのかも知れない。 これからの時代で量子という存在を知るだけでもあらゆる選択肢の中で思索出来る内容であると言えるだろう。
0投稿日: 2025.11.11
powered by ブクログ量子力学は、電子や光子といったミクロな粒子のふるまいを説明する理論である。古典物理学では、物体の位置や速度は常に明確な値をもつと考えられていた。しかし、量子の世界ではそれが成り立たない。粒子は「波動関数」と呼ばれる確率的存在として記述され、その振る舞いは確率振幅によって表現される。これを端的に示すのが、ハイゼンベルクの不確定性原理である。位置を正確に測ろうとすれば運動量が曖昧になり、逆もまた然り。つまり、自然そのものが「確率的構造」をもつという認識へと転換したのだ。 一方、ボーアのコペンハーゲン解釈は、観測行為そのものが物理現象を確定させると主張した。電子は観測されるまでは波であり、観測によって初めて粒子として現れる。ここに、観測者と世界の切り離せなさが露わになる。量子力学は、世界が客観的に「そこにある」というニュートン的世界観を崩壊させたのである。 この波動的性質を数学的に定式化したのが、オーストリアの物理学者エルヴィン・シュレディンガーである。彼は1926年にシュレディンガー方程式を発表し、電子などの粒子を「波動関数」として表すことで、量子現象を連続的な波の運動として記述することに成功した。シュレディンガーの理論は、従来の粒子像に代わる「波動としての実在」という新しい視点を与えたが、その波動が観測によって突然一つの結果に収束するという「波動関数の収縮(collapse)」をどのように理解すべきかが、大きな哲学的問題となった。 シュレディンガー自身は、ボーアやハイゼンベルクの確率的・観測依存的な解釈に批判的であった。彼が提示した有名な思考実験「シュレディンガーの猫」は、その皮肉を象徴している。密閉箱の中の猫は、放射性原子の崩壊(量子的確率事象)によって生死が決まるが、観測されるまでは「生きている状態」と「死んでいる状態」が重ね合わさって存在している。これは、量子力学の原理を日常的なスケールに拡張したときの不条理さを示すものであり、シュレディンガーはこの思考実験を通じて、量子論が「現実とは何か」という問いにいかに奇妙な形で挑むかを示した。 この問題をさらに深めたのが、1935年のアインシュタイン、ポドルスキー、ローゼンによるEPR論文である。彼らは「量子力学的記述は完全ではない」と主張し、量子もつれ(entanglement)と呼ばれる相関に注目した。二つの粒子が相互作用した後に遠く離れても、一方の粒子を観測した瞬間にもう一方の状態が決まるという現象は、光速を超える情報伝達があるように見える。アインシュタインはこれを「spooky action at a distance(遠隔作用の不気味さ)」と呼び、量子力学が局所性と実在性を破っていると批判した。 シュレディンガーはEPR論文を読み、この奇妙な相関現象に対して「Verschränkung(もつれ)」という言葉を初めて用いた。彼はこの「量子もつれ」こそが量子理論の本質であり、単なる異常現象ではなく、世界の構造そのものを映し出すものであると考えた。つまり、シュレディンガーにとって量子力学は、個別の粒子が孤立して存在するのではなく、関係的・全体的なつながりによって現実が構成されることを示す理論だったのである。 この問題は1960年代にジョン・ベルの不等式を通じて実験的に検証可能となり、1980年代のアラン・アスペらの実験で、量子もつれが実在することが確認された。こうしてアインシュタインやシュレディンガーが抱いた哲学的懐疑は、むしろ量子力学の「非局所的実在」という新しい実相を明らかにする結果となった。 哲学的に見れば、量子力学は「存在とは何か」「部分と全体はどのように関係しているのか」という問いに新しい光を投げかける。観測者と対象の境界は曖昧であり、世界は局所的な因果律によってではなく、全体的な相関のネットワークとして構成されている。これは、東洋哲学の「縁起」や「空」の思想とも共鳴する。存在は固定的な実体としてではなく、他との関係のなかで立ち現れる。量子論的世界観は、この関係性の哲学を物理学の言葉で再構築しているともいえる。 量子力学は、科学としては自然の最も正確な記述でありながら、哲学としては世界の不確実性と人間の有限性を突きつける鏡でもある。われわれが見る「現実」は、確率的な重ね合わせのなかに一時的に現れる秩序に過ぎない。したがって量子力学とは、単に電子の理論ではなく、存在そのものの確率的構造を描く試みであり、人間と世界の関係を再定義する思想でもある。科学と哲学の境界を越えて、それは「観測すること」と「存在すること」の同義性を語る――すなわち、「われ思う、ゆえに存在する」という近代的確信を、「われ観測する、ゆえに世界が立ち現れる」という新たな命題へと書き換えるのである。
15投稿日: 2025.11.03
powered by ブクログ物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。 東大OPACには登録されていません。 貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください 返却:物性研図書室へ返却してください
0投稿日: 2025.08.27
powered by ブクログ量子テレポーテーションを中心として、量子もつれの基礎的な原理を数式を使わずに解説している。物理学の常識的な世界の理解を捨てて、実験の結果のみをもとにした仮説を重ねて証明してゆくという姿勢を、実際の実験を追体験してゆく。物理学の理論は世界を構築する概念を統合してゆくことであり、量子力学は、世界と情報という概念の垣根さえも取り払った認識をしているという点が腑に落ちた。
0投稿日: 2025.08.20
powered by ブクログ数式を使わずに、最新の量子力学の、解明されている部分まで解説されていると思いました。ちょっと最後の辺りの理解が追いつかず。もう、かなり哲学の領域に入ってます。とりあえず、ベルの不等式が破れている事は理解できました。あと、タイトルは、原題をもう少し素直に訳してください。ちょっとタイトル詐欺。
0投稿日: 2025.08.06
powered by ブクログ著者は2022年ノーベル物理学賞を受賞。 著者がノーベル賞受賞者というと、内容は難しいと思いがちだが、意外にもこの本はそうではない。むしろ、「えっ」て思えるほど面白い。 本文中にやたら出てくる「量子のもつれ」。1935年シュレディンガーによって命名されたが、これはとても不思議な現象。素粒子の世界で普通に起こる現象で、お互いに衝突した2つの粒子が、遠く離れてもなお緊密に結びついている。そして一方を観測すると、もう一つの粒子がどんなに遠く離れていても影響を与えるという現象。 これ、理解できるだろうか?あのアインシュタインでさえこの現象を「不気味な遠隔作用」と言い、気に入らなかったようだ。 でも、この本では、ビリヤードの球に例え説明する。この辺の説明が上手くて、分かり易くしているんだなあと思う。 この現象を利用したのが、量子コンピューターであり、量子テレポーテーションらしい。こんなこと思いつくなんて人間でホントに凄い! この本に書かれていることを100%理解しなくてもよい。むしろそんなことできっこない。1割程度の理解でいいと思う。「量子のもつれ」。この言葉さえ理解できたら、この本を読んだ価値は十分にあるといえるだろう。 ノーベル物理学受賞者に不思議な世界を案内してもらおう。税抜き1,480円で。
14投稿日: 2025.07.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「サルでもわかる量子力学」だったら、邦題詐欺だと叫べたのに。 内容が理解できないので、邦題の示す通り本書が「世界一わかりやすい量子力学」の名に恥じないかどうか評価できない。理解できるならば、深く考えずに「世界一わかりやすいかも」という評価できるかもしれない。理解できないのであれば、他にもっとわかりやすい本がある可能性や、世界にあふれる量子力学の本はすべて難解であるがその中で最もわかりやすいのが本書である可能性を考慮せねばならず、実態が観測されるまでは本書は量子状態にあることになる。 つまり、本書の邦題タイトルは二重にうまいことやってる。量子状態であるがゆえに邦題詐欺を叫べない。 どんな感じの語りなのかというと。 図示して図中にAとかBとか記号を割り当ててる。記号で示せばよいところを言葉で説明しようとする場合があり、不必要にわかりにくい。 キャラにしゃべらせても難解な内容が簡単になるわけではないのに、よくある「漫画でわかる◯◯」みたいなノリで文章のコントが進行していく。図が足りず言葉で説明するので非常にわかりにくい。 実験に用いた検出器では、光子のおよそ三〇パーセントしか検出されない。四種類のもつれ状態のうち二種類しか同定できない。全体の五〇パーセントでしか機能しないという。そういう姿勢で許される学問なの?という感想しか抱けない。 なお、原題は"DANCE OF THE PHOTONS"。 監修者解説によると、著者の業績の自伝ともいえる内容で、著者自身の試行錯誤の過程をなぞったかのように感じられたという。巻末の用語解説からして業界人に諧謔を披露するような書きっぷりも感じられ、どのみち門外漢など眼中になかったということが知れる。 『三体』一巻、科学の根幹を揺るがそうという着想は量子力学の直感的ではない性質から得たのかなとか、ふと。当時は政治的なアレの婉曲表現なのかなとか思ったりもしたが。著者のお国は工作がお得意らしいので。
0投稿日: 2025.07.15
powered by ブクログツァイリンガー先生ともあろう人が一般人の視点に降りてここまでわかりやすく量子力学を説明できるなんて何事!?という気持ち。読んでて楽しめる工夫も多くて、ちゃんと量子力学の面白さもわかって、理論的な説明も上手く噛み砕いてくれてて、最高。
1投稿日: 2025.06.08
