Reader Store
発達障害&グレーゾーンの中高生の育て方
発達障害&グレーゾーンの中高生の育て方
井上雅彦/すばる舎
作品詳細ページへ戻る

総合評価

2件)
4.0
0
1
0
0
0
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    具体的な対策がためになった。 ⚪︎片付け とにかくわかりやすく、具体的指示を、スモールステップで。 ⚪︎勉強 勉強スペースを遊びスペースと分ける。好きな科目から。ホワイトボードなどで見える化。スケジュール管理や、忘れ物をしない仕組みづくりを。

    0
    投稿日: 2025.08.25
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    まえがき:思春期の発達支援、変化する社会と未来への希望 本書『発達障害&グレーゾーンの中高生の育て方』は、発達障害やその傾向(グレーゾーン)のある中高生の思春期における特有の課題に対し、保護者が理解を深め、具体的な対応策を見出すための実践的な手引書です。監修の井上雅彦氏(鳥取大学大学院教授)は、思春期の子育てにおける将来への不安に対し、まず「今の子どもと自分自身を理解する」ことの重要性を説きます。本書は、発達障害の特性そのものの改善よりも、思春期以降に生じやすい二次障害(精神的な問題)の予防に重点を置き、本人が自らの「強み」と「弱み」を理解し、対処法を習得し、必要な合理的配慮を求められるように支援することの意義を強調します。社会の変化に伴い、合理的配慮は法的に認められ、技術革新による支援も期待される中、学力観も知識偏重から思考力や独創性重視へと移行しつつあり、発達障害が個人の「特性」として捉えられる未来を展望し、子どもと保護者が人生の価値を探求する一助となることを目指しています。 思春期のつまずき理解:発達障害の特性と二次障害予防の重要性 第一章では、思春期に顕著になる発達障害の特性と、それに伴う新たな困り事が解説されます。感情コントロールや環境適応が元々得意でない場合、中高生になると他者の目を気にしたり、性的な関心が高まったり、学習課題が増えたりと、悩みは複雑化します。ASD(自閉スペクトラム症)では対人関係の困難や興味の偏り、ADHD(注意欠如多動症)では不注意や多動・衝動性、LD・SLD(限局性学習症)では読み書き計算の困難、DCD(発達性協調運動症)では運動のぎこちなさといった特性が、思春期特有の課題と絡み合います。診断がない「グレーゾーン」でも困り事が少ないわけではなく、むしろ周囲の理解が得られにくい問題も抱えます。特にこの時期は、周囲の理解不足や失敗体験の積み重ねから自己肯定感が低下し、抑うつ症、不安症、適応反応症、ひきこもり、ゲーム障害といった「二次障害」を発症しやすいため、その予防には家庭だけで抱え込まず、学校や支援者と連携し、本人が受け入れられていると感じられる環境づくりが不可欠であると警鐘を鳴らしています。 家庭での悩み①:生活習慣の乱れとデジタル社会との共存 第二章では、家庭生活における具体的な悩みと対策が提示されます。まず、興味関心の移り変わりやすさや物事の要領のつかみにくさから乱れやすい「片付け・身だしなみ」については、収納動線を見直し「使う場所に使うものを」配置すること、ラベリングで物の定位置を明確にすること、片付けのメリットを具体的に伝えスモールステップで習慣化をサポートすることが提案されます。次に、現代の子育て共通の課題である「ゲームやネットの過剰使用」に対しては、発達障害のある子は特性上没頭しやすく切り替えが難しいため注意が必要ですが、全面禁止ではなく、まず保護者がゲームの内容や魅力を理解し、親子でネットリテラシーを学び家庭内ルールを設けること、そしてペアレンタルコントロール機能を活用しつつ、ゲームやネット以外の楽しみ(プログラミング、スポーツ、自然体験など)を見つける支援が有効であると述べられています。 家庭での悩み②:コミュニケーションと自立へのステップ 異性との接し方やパーソナルスペースの理解が難しい場合、頭ごなしに叱るのではなく、まず子どもの行動理由を確認し、相手と自分の気持ちの違いや関係性に応じた適切な距離感を教えること、そして親子で正しい性の知識を学びオープンに話せる環境を作ることの重要性が説かれます。SST(ソーシャルスキルトレーニング)の活用も有効です。将来の「一人暮らし」への不安に対しては、料理・洗濯・掃除といった家事スキル、金銭管理スキル、社会スキル(例:病院での症状説明)を、経験や練習を通じて段階的に習得させるアプローチが示されます。具体的には、お手伝いに対価(お小遣い)を発生させて生活力と金銭感覚を養う、店員とのコミュニケーションが必要な買い物を一緒に経験する、美容院や病院受診の練習をする、詐欺や悪質な勧誘へのリテラシーを身につけさせる、そして「自分で起きる」ことから始める一人暮らしのシミュレーションなどが提案されています。 学びの壁を乗り越える:学習意欲を引き出す環境と支援 第三章では、中高生の学習内容の高度化に伴う勉強の悩みへの対応策が示されます。「勉強しなさい」という声かけに反発する場合、まず勉強スペースと趣味コーナーを分け、収納を工夫するなど勉強しやすい環境を整え、図書館やカフェなど家以外の集中できる場所を見つけることも有効です。好きな科目から着手させたり、予習中心で成功体験を積ませたり、課題や勉強時間を可視化して達成感を味わわせるなどのモチベーションアップ策も提案されます。授業についていけない場合は、学校外で強みを作って自信をつけさせたり、オープンスクール参加などを通じて勉強する目的を明確化させることが学習意欲向上に繋がります。宿題・課題の未提出が続く場合は、スケジュール管理のサポート、宿題を忘れない・なくさない仕組み作り、そしてレポートのPC作成許可など学校に合理的配慮を求めることも検討すべきです。定期テストや受験対策では、塾や家庭教師など専門家の力を借り、無理のない学習計画を親子で立て、進捗を共有しながら努力を具体的に褒めることが重要とされています。 学校生活の困難に寄り添う:友人関係、いじめ、不登校への具体的対応 第四章では、思春期の子どもが学校生活で直面しやすい様々な困難への具体的な対処法が示されます。クラスで孤立しがちな子には、「友達」のハードルを下げ、学校外のサードプレイスを見つける支援や、校内に一人で過ごせる安全な場所を確保することが有効です。些細なことで友人とトラブルを起こしやすい場合は、まず子どもの言い分をしっかり聞き、担任や専門家に相談して客観的な仲介を求め、感情コントロールの方法を事前に話し合っておくことが推奨されます。いじめのターゲットになっている可能性がある場合は、保護者同士の情報ネットワーク構築、複数の教員や医療機関を巻き込んだ相談、そしてSNS利用制限や一時的な休養を含め子どもが安心できる環境を用意することが不可欠です。合理的配慮を求める際は、診断書や専門家の意見書を提示し、三者面談で本人の意思を尊重しながら短期トライアルから始めるなど柔軟に対応します。保護者は学校と密に連携し、個別の教育支援計画作成や担任以外の教員への相談も活用し、「苦手な先生」とは時間をかけて関係改善を目指します。不登校傾向が見られる場合は、無理に登校させず、心の拠り所を作り、学校や専門機関と連携して多様な学びの環境を用意することが大切です。 未来を拓く進路選択と絆:多様な学びの道と良好な親子関係の築き方 第五章と第六章、そして付録では、中学卒業後の進路選択のサポートと、思春期の子どもとの良好な親子関係を築くためのヒントが提供されます。進路選択においては、全日制普通科だけでなく、定時制、通信制、高等専修学校、高等専門学校、特別支援学校高等部など多様な選択肢があることを理解し、本人の希望と障害特性を考慮して情報収集(学校・塾への相談、ネット検索、学校見学、進路相談イベント活用など)を行うことが重要です。志望校が高望みかもしれない場合は、実習内容の確認や模擬試験受験、挑戦回数の事前決定などが有効です。不登校経験者でも受験可能な学校や「不登校枠」も存在し、進学後のミスマッチには早期の気づきと学校内相談、転校・転学科、第三者の意見聴取といった対応が求められます。良好な親子関係のためには、子どもが耳を傾ける「話し方のコツ」(具体的に簡潔に、穏やかに、待つ時間も大切に)と、子どもが話したくなる「聞き方のコツ」(否定せず聞き切る、一緒に困る、過剰な共感はしない、共通の話題を作る)を実践し、家庭内の空気が悪い時は時間と空間をあけたり第三者に入ってもらったり、保護者が楽しむ姿を見せることが有効です。きょうだい児への理解や合理的配慮ハンドブックといった付録も、具体的な支援に役立ちます。

    0
    投稿日: 2025.05.25