
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
二人の男の壮大なストーリー。 ⭐︎4か5で迷ったが、後半にいくにつれて二人の絆が深まっていくのを感じ、感動したので⭐︎5 探偵小説家江戸川乱歩も命のビザを書いた杉原千畝も、もちろん名前もその功績も知っていたが、いざ二人がどんな人生を歩んだかというと、考えたこともなかった。 早稲田の先輩後輩という関係の二人が、もし蕎麦屋で出会っていたら…これぞ小説の醍醐味!という設定に心が躍る。 大筋としては現実に起きたことに忠実でありながら、二人の人生の重要な局面で、時には外国と日本という離れたところにいながらも二人は影響し合っていく。 全く違う職業の二人だが生き方には通ずるものもあって、その生き様はかっこいいなと思えた。 また、脇を固める幸子と隆子も凛としてかっこいいし、二人の周辺の人物(外務省の関係者、編集者や小説家など…)も味のあるキャラクターが多く、読んでいて楽しい。 戦前、そして戦争に向かう雰囲気、そして戦後と、知らない時代のことなのだが、リアルな空気感も伝わってきて臨場感があった。 実はこの作家は初めて読んだ。 以前「むかしむかし〜」を読みかけて挫折したことがあり苦手意識があったのだが、直木賞候補をきっかけに手に取った一冊。 読んで良かった!
0投稿日: 2025.11.18
powered by ブクログ江戸川乱歩こと平井太郎と「東洋のシンドラー」杉原千畝は同郷で、高校、大学の先輩後輩だった。 この意外な事実のみを手掛かりに作り上げた二人の(架空の)交遊録。 作者の手にかかると、千畝の人生の重大な岐路には太郎が、太郎のものには千畝が関わっていることになっている。 本書は同時に乱歩の千畝の評伝にもなっていて、特に乱歩が日本のミステリー界に残した偉大な足跡は第七話だけでもそれと知れるし、乱歩の破天荒な性格や語学に長けた千畝の生きざまも生き生きと感じ取れる。 作家たるもの、見てきたような嘘をつくものだなあ。
0投稿日: 2025.11.16
powered by ブクログこの本はノンフィクション?と、わからなくなってしまう位、リアリティ溢れる大作。 乱歩と千畝が本当に出身校が同じというのはビックリ。あまりに生きる世界が違う人だから、今までそんな共通点を感じることかなかったので。 2人以外にも作家、歌手など有名人がこっそりと多数登場。それがさらっと出てくるので、「あれ?本当に関わりがあるの?」と感じてしまう。 読み終えて…二人がもしリアルに交わっていたら間違いなくソウルメイトだったのではと思う。 読者にこう思わせられるのは、青柳碧人さんの筆力なんだろうな。 そして、乱歩と千畝にまつわる本が読みたくなってしまった。
40投稿日: 2025.11.15
powered by ブクログもしも江戸川乱歩と杉原千畝が友人だったら? 「日本探偵小説の父」江戸川乱歩(本名:平井太郎)と「東洋のシンドラー」杉原千畝(ちうね)。二人は、旧制愛知五中及び早稲田大学の同窓生だった。若かりし日に二人は出会い親交を深める。やがて時代に翻弄されながらも探偵小説作家として、外交官として大成していく… 20代から晩年までおよそ40年間もの長スパンを描いており、飛び石で進むプロット。 明治末期から昭和中期にかけて、多くの歴史上人物が登場する。このような物語で読むと教科書では学べない因果関係や空気感が学べるので、日本史を勉強している中高生に読んでほしい。 ミステリ(探偵小説)好きな私は、乱歩の執筆史( どの時代にどの作品を書いたのか)が興味深かった。初期の変態的作風から中期の明智小五郎シリーズ、少年探偵団、後期書けない苦しみを経て若手作家育成と変遷していく過程。戦前戦中の混乱期をよくぞ生き抜き、後世に続く探偵小説作家を輩出してくれたもんだ。まさに「日本探偵小説の父」である。横溝、清張、山風、仁木悦ら後続の探偵小説作家との絡みも、さもありなん。久しぶりに乱歩作品を読みたくなった。 杉原千畝のことは、恥ずかしながら知らなかった。この時代に上位方針に背き、人道支援をする信念は誉れ。ロシア語を流暢にこなすなど、語学に堪能なのもリスペクト。 作中に紹介されていたユダヤ人のイズレイル・ザングウィル作『ビッグ•ボウの殺人』も読んでみたい。
31投稿日: 2025.11.15
powered by ブクログ瑞陵高校四天王が2人、江戸川乱歩と杉原千畝がダブル主人公とは贅沢すぎる!(うち1人はヒロアカの堀越耕平先生)各々の史は大体知ってるけれど、重なるところが楽しいね。
0投稿日: 2025.11.14
powered by ブクログ若き日の、杉原千畝と江戸川乱歩が、こんな出会いをするとは、発想が斬新すぎる! え?たまたま風が吹いて、乱歩の顔にかかった新聞から、とんとん話が進んできて、もう目が離せない! 杉原千畝は、歴史上、大勢のユダヤ人を救った素晴らしい外交官としか知識がなかった。 フィクションとはいえ、一人の人間として、生き生きと描かれていて、すごく魅力的に描かれている。 江戸川乱歩は、映像化されたものしか記憶にないが、 松田優作の「陰獣」や美輪明宏の「黒蜥蜴」が印象深い。 いつものごとく、岡本一平や松本清張、横溝正史などなど、有名著名な登場人物たちに、読んでいてほんと楽しかった。 そして、クラウディア、隆子、幸子の素晴らしい女性たちがストーリーに深みと華を添えていた。 戦前、戦中、戦後の日本をとても細かく丁寧に書かれていて、大変な時代を生きた方々だったんだと、ユーモアの中にもジンと来る本だった。 青少年が歴史を知る上でも、偉人を知るきっかけにもなる本。 大河ドラマになったら、うれしい。
49投稿日: 2025.11.08
powered by ブクログ乱歩と千畝。どこに接点が?と不思議だったが、中学、大学が同じだっただけで、すべてフィクション。松岡洋右や横溝正史などとの交流もあったのか、なかったのか。史実と創作がごちゃ混ぜは混乱するが、神谷バーの電気ブランの味、思い出しながら楽しく読了。青柳さん、大河小説も書けるんだ。
0投稿日: 2025.11.05
powered by ブクログ江戸川乱歩と杉原千畝は、愛知五中と早稲田大学の同窓生である事実と、1935年に開催された愛知五中の同窓会で顔を合わせた1枚の写真が存在する、これをもとにしたフィクションらしい。 杉原千畝について、詳しく知らなかったので、志をもって外交官になるも、華々しいキャリアではなく、苦労と努力を続けたことが興味深かった。「命のビザ」も、流れ着いたリトアニアに開いた領事館での出来事だったと。そして、「命のビザ」の功績が表舞台に出たのは、晩年のことだったと。 ヘルシンキでの杉原千畝と妻の幸子のやり取りが印象的。才能があり、それを活かせるステージに立っていること、それは多くの人が支えてくれたからで、それに応えるのが仕事だと。少し納得できない仕事だからと、不平を漏らす千畝にぶつけた本音だった。このあと、千畝はリトアニアへ渡る。そして躊躇いながらも命のビザを発行する決断をしたときは、最初の妻、白系ロシア人のクラウディアから、「迷ったら、優しいと思う選択肢を選べ」と言われたことを思い出していた。こんなやり取りが読めてよかった。 江戸川乱歩の苦難、売れるようになってから、妥協の作品を数多くこなすようになったこと、が描かれる。そして、戦後に再開した少年探偵団が人気となり、いつかはと考えていた大人向けの本格推理小説は、不本意な出来だったよう。
9投稿日: 2025.11.02
powered by ブクログ探偵小説家の江戸川乱歩と、多くのユダヤ人の命を救った杉原千畝。その2人が若きときに知り合い、友となったという設定で書かれた、ノンフィクションとフィクションを合わせた本書。 何者でもなかった2人が、抱いた夢を実現すべく、時に迷い、立ち止まりながらも歩み続ける。その姿、また彼らを支える人々に引き込まれた。 彼らのように歴史的に大きなことを成す人はほんの一握り。天賦の才というものはあるのだと思う。けれど、誰もが経験するように、悩み、迷い、立ち止まり、時に自信をなくす。そしてまた、そんな彼らを支え励ます友がいる。それが清々しい。 読後感がよく、楽しめました。 2人を取り囲む人々も魅力的にあるいは興味を引くように描かれています。横溝正史や松本清張、松岡洋右や広田弘毅。後者2人についてはほとんど知らなかったこともあり、あまり良い印象はありませんでした。でも、本書を通して、少しばかり興味がわきました。
11投稿日: 2025.11.02
powered by ブクログ江戸川乱歩という名前にだけ惹かれて購入。探偵小説が好きなので、登場人物にニヤニヤしながら読み終わった。江戸川乱歩と杉原千畝がもし出会っていたら…という一作であったが、二人の人生を通じて色々なストーリーが見れてとても爽快感のある読後だった。 読み終わった後作者が、昔話シリーズの人としり驚いた。
0投稿日: 2025.11.01
powered by ブクログ江戸川乱歩と杉原千畝は早稲田の先輩と後輩。調べるまでもなくこれは事実だろう。2人はそれぞれの人生の節目節目で影響しあう。その感じが絶妙。乱歩と横溝正史の関係も面白い。大正末期から戦後までの時代を生き抜いた偉人たちの若者らしい葛藤が描かれていて思いがけず、面白かった。また江戸川乱歩(平井太郎)のふざけた感じや、横溝正史をコテコテの大阪のおっさんに描いたのも斬新。
0投稿日: 2025.11.01
powered by ブクログ良すぎた ほぼほぼフィクションなのわかってるけど、そこでこう来るか、の史実や登場人物の織り込みでストーリー巧みすぎる 自分は中高時代にミステリにハマり、江戸川乱歩の作品、初期の乱歩賞受賞作品読み漁り、大学時代に杉原千畝知り『六千人の命のビザ』を読み感銘受けていたので、なおさら琴線揺さぶられすぎてハマった 江戸川乱歩や戦後昭和のミステリ状況、杉原千畝を知って読むと良い 著者、書いてて「ここでこうしたらどうだろう」と色々発想して楽しかっただろうなー
0投稿日: 2025.11.01
powered by ブクログどこまでがホントでどこからがフィクションかわからないけど、知ってる作家がたくさん出てきてキャラクターもみんないきいき描かれていて作家同士の関係性も楽しく、本当にこんなだったらいいなって思いながら面白く読みました。タイトルの2人の切っても切れない深い繋がりもよかった。
8投稿日: 2025.11.01
powered by ブクログこの時代が好きならサブキャラの登場とその名前にニヤリとしながら読めるのだろうけど太郎と千畝の出会いからそれぞれ歩み始めたあたりからのダイジェスト感がどうにも…な感じだった
0投稿日: 2025.10.31
powered by ブクログ江戸川乱歩と杉原千畝という、予想もしない二人の人生の交錯を描いたフィクション 青柳碧人氏の作品を読むのは初めてだったが、読ませる筆力に感心させられた 有名な杉原千畝の話に江戸川乱歩を絡めることで、双方の物語に深みが出たのだろうか
0投稿日: 2025.10.31
powered by ブクログ名もなき若者だったが、夢だけはあった。探偵作家と外交官という大それた夢。希望と不安を抱え、浅草の猥雑な路地を歩き語り合い、それぞれの道へ別れていく…。若き横溝正史や巨頭松岡洋右と出会い、歴史を変え、互いの人生が交差しつつ感動の最終話へ。(e-hon)
0投稿日: 2025.10.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
歩む道は違えど信念を同じくした乱歩と千畝。交錯する2人の人生があまりに面白くて夢中で読んだ。2人が残した功績は果てしなくすごい...。if小説とはいえ、こうあって欲しいとさえ思った。 2人ともいつもどこか孤独だったんだと思う。そんな中絶望の淵に立たされても信念を曲げられそうになってもなんとか立ち上がり向かっていく背中にグッときた。「悩んだら優しい方を選ぶ」ってとてもいいフレーズ。 また有名な作家さんが出まくっていてこれはミステリー好きは必読だな...と思ったり。横溝正史との関係値、最高すぎる。私の知識だと聞いたことはあるけど読んだことはない方も多くて、おかげで読みたい本が増えました笑 寂しさは募るが2人の最期も“らしく”てよかったと思う。面白かった!
2投稿日: 2025.10.28
powered by ブクログ『似てるんだよ。進む道は違えど、似てるんだ。だから私たちは生涯に、数えるほどしか会わなかったとしても、心が離れることはなかった』推理怪奇小説界の巨匠、江戸川乱歩にこう言わせた相手は、何千人ものユダヤ人の命を救った外交官、杉原千畝。 二人の大物たちを作者は繋いでいきます。 こんなこといったい誰が考えるでしょう。作者の青柳碧人さんは「みなが知る人のイメージをずらしたり、語られていない部分に想像を膨らませたりする話を作るのが好きなんです」とおっしゃる。 フィクションなのに、読者もなんの違和感もなく読み進めてしまうのは、“あり得る話”だからでしょう。 実際二人は同じ大学、 同じ中学の出身であり、中学の同窓会の集合写真に二人は写っているのですから。これは事実ですし、年齢は6歳違いますがどこかで出会っていてもおかしくないです。 物語は大正8年、早稲田大近くの蕎麦屋“三朝庵”で二人が相席するところから始まります。乱歩は職の定まらない作家志望の卒業生、千畝は外国語で身を立てたいと思っている学生。まだ何者でもなかった二人は、それぞれに夢を抱えながら、時代のうねりに翻弄されていきます。お互いを思い合いながら。 このお話を読むと、二人とも好きになります。人間的で親近感が湧きます。それぞれが抱えていた葛藤や苦悩も、読者としてはより深く二人を知る手助けになります。フィクションであっても作者は史実をなぞり、整合性を持たせた。それがページを進ませる吸引力となっています。 最後のページを読んで、本を閉じたら、本の裏表紙の挿絵を見てください。それが涙を誘います。 第173回 直木賞候補作
1投稿日: 2025.10.20
powered by ブクログ誰もが知る探偵小説家の江戸川乱歩と、 かつて外交官として、数千人ものユダヤ人の命のビザを発給し続けた杉原千畝。 二人の生涯を描いたこの物語は、決して明るいものではない。 しかしともに信じた道をゆき、迷いながらも心の底から楽しみ、迷い、立ち止まりながらも生きてきた二人にとって、お互いの存在はどれほど頼もしいものだったのだろうかと思いを巡らせる。 生涯数えるほどしか会わなくとも、決して心が離れることはなかったその友情に、心の温まる思いがした。
10投稿日: 2025.10.18
powered by ブクログ乱歩と千畝それぞれの実話を基とした上で、「2人が出遇っていたら」をフィクションとして著されていますが、読了後に調べるまでは、全て実話と思った程の自然さで2人の運命的な交流が進んでいきます。 それぞれのターニングポイントにおいて、それぞれが相手を思い返す感慨深い物語でした。
1投稿日: 2025.10.13
powered by ブクログ愛知五中の同窓会にて、江戸川乱歩と杉原千畝が映っている集合写真を取り上げていた新聞記事を読んだのをきっかけに、手に取って読んだ1冊。 ふたりのことについての知識が教科書レベル程度のものであったので、フィクションとはいえふたりのことを知るいい学びにもなったし、ストーリーもすっきりと仕上がっていてとても読みやすかった。
7投稿日: 2025.10.12
powered by ブクログ同じ中学(愛知五中)、大学(早稲田大学)の卒業生である江戸川乱歩と杉原千畝に交流があったら…という物語。歴史の流れに翻弄されながらも自分の道を突き進み、絆を深めていく過程は胸が熱くなる。
0投稿日: 2025.10.10
powered by ブクログSL 2025.10.5-2025.10.8 実在の人物を登場させたフィクション。 乱歩、千畝それぞれの人生は史実とほぼ同じようだけど、この二人が知り合いだったわけではないらしい。それにしても二人ともなんと波瀾万丈な人生だったのか。 乱歩のチャランポランさと千畝の誠実さがうまく噛み合っていいコンビになっている。 とは言っても、どちらもおのれに真摯に向き合っていて尊敬できる。
3投稿日: 2025.10.08
powered by ブクログ『乱歩と千畝』は、探偵と外交官という異なる二人の生き方を通して、 「信じる力」と「守る勇気」を描いた物語だと感じた。 乱歩の想像力と千畝の行動力が交差する瞬間、 人の心の闇と光がくっきりと浮かび上がる。 歴史の中の真実を見つめ直したくなる一冊だった。
10投稿日: 2025.10.08
powered by ブクログこれは凄い。史実かどうかは置いといて、乱歩と千畝の友情。波乱万丈、壮絶、勇気、優しさなどなど盛りだくさん。登場人物も、推理・探偵小説の大家がどんどん出てくる。 そして、何よりこれは泣ける。 今年最高かな? あのマスクをあの人がもらったのはウケる!
8投稿日: 2025.10.07
powered by ブクログ歴史小説。実在の人物と出来事がベースにあり、フィクションとわかっていても実際こんなこともあったのでは…と思い描くのが楽しい。外交官と小説家、住む世界は違うがそれぞれにどこか似たような孤独ややるせなさを感じ、言葉にせずともお互いに通ずる感情があったのかもしれない。杉原千畝、江戸川乱歩のことがもっと知りたくなり、ちょっと調べてみたら、東洋のシンドラーが近所の岐阜県美濃出身と知ってさらに感慨深くなった。 命令よりも困った人を助けたい、勇気ある行動と功績を知ることができてよかった。
1投稿日: 2025.10.02
powered by ブクログ実在の人物二人を交差させることで、歴史小説に新しい角度を持ち込んでいると感じた。江戸川乱歩は虚構を媒介として人間の深層を描いた作家であり、杉原千畝は外交の現場で現実の命を救った行動の人。虚構と現実という異質なベクトルを同じ舞台に並べることで、物語は単なる伝記的再構成を超え、時代そのものが多層的に見えてきた。 史実にフィクションを重ねる手法は珍しくないが、本作はその揺らぎをあえて前面に出しているように思う。「どこまでが史実か」と問いながらも、“ありえたかもしれない物語”として強い説得力を持ち、歴史が固定化された過去ではなく、想像力によって広がっていく現在的な営みであることを体感した。 乱歩と千畝の関係性だけでなく、横溝正史ら周辺人物が有機的に配置され、個人史を超えて群像劇としての厚みが加わっている点も印象深い。登場人物一人ひとりが時代の声として響き合い、その中で友情や信念の物語が立ち上がるのを追体験しているようだった。まさに「歴史を読む」のではなく「歴史を生きる」感覚だった。 私にとってこの小説は、歴史を事実の集積としてではなく、想像力によって空白を照らし出すことにある。乱歩と千畝という交わらなかった二人を出会わせることで、時代の厚みと不確かさが同時に浮かび上がる。読了後に残ったのは、単なる余韻ではなく、「歴史とは何か」という根源的な問いかけだった。
10投稿日: 2025.09.30
powered by ブクログまさか、このタイトルの本で泣かされるとは… どこまでが史実なのか…なんてことは、もうどうでもよくなるくらい。次々と知っている人物も登場し、それぞれが生き生きと動き回っているのも楽しい。時代に翻弄され、それを乗り越え、ほんの数回会うだけの二人。でも、深いところで繋がっている友情。死を間近に回想するシーンに涙が止まりませんでした。
1投稿日: 2025.09.30
powered by ブクログ江戸川乱歩と杉原千畝 同じ早稲田大学の先輩と後輩。 早稲田の近くにある食堂の三朝庵で、 進路に悩む千畝に、平井太郎(江戸川乱歩)が カツ丼を分けた事から二人は知り合う。 激動の時代を背景に、作家と外交官、 人生の過程において、何度か交差しながら お互い、全く別の人生を歩んでゆく。 千畝の再婚した奥さん、幸子さんが、 仕事の事で愚痴をこぼす千畝に、苛立つ 場面がある、 『あなた方には才能がある。そして、才能を 生かせるステージに立っている。それなのに、 ちょっと自分の納得いかない仕事だからって いじけてみせたりして。贅沢なのよ、 江戸川乱歩も。 才能はあなたたち固有の財産よ。それを磨いてきたのもあなたたちの努力。でも、ステージに立っているのは、多くの人が応援して、支えてきてくれたからでしょう?その人たちに応えなさい。 仕事というものはそういうものでしょう』 幸子さんの言葉に痺れる。 得意とする語学を生かし、人のための仕事を したいという千畝、周囲を振り回しながらも 探偵小説家として邁進しようとする乱歩。 全く違うような二人だけれど、どこか 似通っているところがあるのかもしれない。 その後、自身の信念に従い、千畝は外務大臣、 松岡洋右の命令を無視し、ユダヤ難民に発給した 日本通過ビザ、「命のビザ」を発給する。 乱歩もまた、探偵小説家として大成する。 全くのフィクションだけれど、もしかして 乱歩と千畝、本当にこの二人、どこかで偶然 会ったりしていたのでは?なんて思わせて くれて楽しく読むことが出来た。 乱歩、千畝を取り巻く、松岡洋右、古関裕而、 広田弘毅、川島芳子、広田弘毅、川島芳子、 山田風太郎、松本清張、美空ひばりなど、 実在の有名人が続々と登場してくるのも、 史実のようで、この小説の面白さと なっている。 ちなみに私が気に入っている登場人物は、 いつも江戸川乱歩に振り回される松本清張だ。
22投稿日: 2025.09.27
powered by ブクログ直木賞候補 星3.5 江戸川乱歩と杉原千畝が、愛知五中と早稲田大学の同窓生という共通点だけで、二人が知り合いだったらと作者が作り上げた物語。 ひらひらと飛んできた新聞に載っていた「外務省留学生採用試験」の公告を乱歩が千畝に教え、猛勉強して合格した千畝が外交官になるなど、現実離れしていて、漫画のよう。 また、乱歩の変人ぶりには度肝を抜かれる。 確かに読みやすく、面白いが、直木賞というにはちょっと弱いかも。著者には『浜村渚の計算ノート』『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』など若い人向けの人気シリーズがたくさんあるので、私よりも年齢層が低い人向けなのかも。 戦後、二人とも順風満帆とは言えない人生を送ったようだった。
20投稿日: 2025.09.25
powered by ブクログ江戸川乱歩と杉原千畝が知り合いであったら。江戸川、杉原どちらだけで出来ない面白さと、戦前、戦中、戦後の日本がどうであったか時代の空気感が感じられるエンターテイメント。平井太郎が江戸川乱歩になるまでの人生、杉原千畝の人道的活動が認められるまでの苦しみなど、人間は生きているうちに何ができるのか考えさせられる。また、何を為し得る人は周りに恵まれる運命。
1投稿日: 2025.09.20
powered by ブクログ実話かと思った!「もしこの2人が友人だったら」愛知五中〜早稲田大学という共通点だけから、この構想・空想が始まったらしい。作者すごすぎる、めっちゃ実話だと思って読んでた。 人間、おもしろ!!歴史、すご!!と思える。 人間同士の関わりから新しい文化が生まれ、作品が生まれ、大きな波になる。誰かの小さな言葉が誰かの人生を変えたり、小さな勇気がたくさんの命を救ったり。江戸川乱歩の想いが次の時代のたくさんの才能を光らせたのも史実だし、杉原千畝のおかげでたくさんのユダヤ人が救われたのも史実。2人とも自分の人生に悩み、苦しみ、迷いながらこの偉業を成し遂げたんだと思うと、本当に人間てすごい。 江戸川乱歩は私ももちろん読んだことあって、探偵小説の時代を築いた人で、ただただ天才だと思っていたので、こんなふうに自己評価が低かったり書けない時期が多くあったことに驚いた。 杉原千畝も、評価されたのは彼がかなり歳を取ってからだと初めて知った。杉原千畝についてもっと知りたい。 太郎の死ぬ直前の夢のシーン好きだ。 「知らないものか。私と君は、友人だ。私たちはともに、信じた道を行き、迷いながら心の底から楽しみ、知り合う人に大いに恵まれ、それがゆえ時に自身の力のなさに嫌気がさす」 「はあ・・・・・・」 「戸惑い、憤り、立ち止まり、それでもやっぱり歩みを続ける。その大部分は自分の倍条のため、残りの少しは、自分を倍じてくれる他人のため」 「何を言っているのか、わかりませんが」 「似ているんだよ。進む道は違えど、似ているんだ。だから私たちは生涯に、数えるほどしか会わなかったとしても、心が離れることはなかった」 杉原千畝の元嫁のクラウディアも良かった。 クラウディアだった。 今、どこで何をしているのか。 約束したでしょ、千畝。迷うことがあったら、あなたが優しいと思うほうの道を選ぶの。 あなたは、そういうふうにしか生きられないのだから。 信念があれば人は迷っても正しい方にいける。江戸川乱歩も杉原千畝も、完璧でない不完全な人間だったけど、確かな才能と、自分のやりたいことをやり通した意志と、周りの人たちに恵まれるという最高の運を持っていた。 こうやって、この2人が友人であったら本当に素敵だな。少しの共通点だけでこんなふうに空想を広げられるのがまた人間のおもしろいところだと思えた。全然ありえるかもしれない。 現実がちがうとしても、この作品中の江戸川乱歩にとっての千畝が、千畝にとっての江戸川乱歩が、実はいたのかもしれない。 人がいれば歴史があるんだなあ
3投稿日: 2025.09.15
powered by ブクログ江戸川乱歩と杉原千畝。言うまでもなくどちらも著名な歴史的人物であるものの、二人の組み合わせが新鮮で読んでみたところ、一気読みしてしまう面白さだった。 まだ何者でもなかった若かりし二人が、早稲田の三朝庵という蕎麦屋で出会う。 どこまでが史実に基づいているのだろうと思いつつ、戦前・戦時下・戦後と時代を駆け抜けるように進んでいくストーリーにすっかり夢中にさせられた。 数えるほどしか顔をあわさなかったにもかかわらず、RAMPOとSEMPOとして(放蕩癖作家とエリート外交官、半ば対照的な生活を送りつつ)それぞれの道で活躍し、国を超えて育まれる友情に胸が熱くなった。世界を股にかける偉大な二人だ。 私も大好きな乱歩の言葉——うつし世は夢、夜の夢こそまこと——になぞらえるような、幻想的で感動的なラストまで見事だった。 また、乱歩の妻である隆子、千畝の先妻であるクラウディア、後妻となった幸子、夫を支える三人の女性たちは皆したたかで寛容で、とても魅力的だった。 本作において、一番の読者である隆子のアドバイスで『D坂の殺人事件』という題が決まるシーンや、「優しいと思う選択肢を取るのよ」というクラウディアの最後の言葉、〈命のビザ〉発給のため夫の背中を押す幸子の肝の据わりっぷりなど、妻たちとのやり取りがとりわけ印象に残る。 終戦を告げる玉音放送をきいて「アメリカの探偵小説が日本で売り飛ばされるかも」「これでようやくまた、好きな小説が書けますね」と密やかに喜び合う乱歩と隆子の、似たもの夫婦な関係性は素敵だった。 横溝正史、松本清張、山田風太郎、鮎川哲也、仁木悦子、三島由紀夫、小関裕二……ほかにも実在する人物がたくさん登場して現代へとつづいていく様子に、読みながらワクワクした。 ちなみに本作は、"受賞作なし"という驚きの結果で終わった第173回直木賞の候補作でもありました。こんなに面白いのに……!直木賞って難しいんだな。 とはいえ、逆にこの結果だったからこそ候補作に興味を持ち、そして誰かに薦めたくなる、ということもあるのかもしれないと思う。逆販促というか。 皆さんもぜひ読んでみてください。間違いなく面白いです。
13投稿日: 2025.09.07
powered by ブクログ▼配架・貸出状況 https://opac.nittai.ac.jp/carinopaclink.htm?OAL=SB00559851
0投稿日: 2025.09.04
powered by ブクログ大正のいい時代に出会い、戦争を超えた二人の生き方が本当にあったかのように描かれていました。この小説を読んで鳥羽の江戸川乱歩記念館にも足を運んでみました。 ちょっと作家紹介が多かったような気がしますが、、、最後は泣けるところもあり良かったです、直木賞やったんじゃないかな?
5投稿日: 2025.09.04
powered by ブクログ──それは、肩を並べて歩く、二つの男の影に見えた。 第173回直木三十五賞候補作。先日、今回の直木賞と芥川賞はともに受賞作無しとして、メディアで話題になっていましたね。 物語は創作系歴史小説とでも言いましょうか。旧制中学と大学の同窓生という繋がりをもつ『平井太郎こと江戸川乱歩』と『杉原千畝』 もしもこの二人が歴史上で深い交わりがあったとしたら…。 『日本の推理小説家の大家』と言われ、怪人二十面相といった後世に残る代表作を残した、作家江戸川乱歩。 『日本のシンドラー』と呼ばれ、外交官として赴任していたリトアニアの地で、迫害され続けていたユダヤ人を国外脱出させる為、何千人ものユダヤ人に『命のビザ』を発給し救った杉原千畝。 杉原千畝はアンビリバボーでも取り上げられてましたね。 近代日本史で学ぶ程度のことしか予備知識のない僕でしたが、かなり没入することができました。 『あぁ、こんな史実があったならロマンティックだなぁ』と。 巻末の締めくくりでは、込み上げるものがありましたね。 また素晴らしい作品と出会うことができたことが幸せ。 ・ ・ ・ ・ ・ 大学の先輩後輩、江戸川乱歩と杉原千畝。まだ何者でもない青年だったが、夢だけはあった。希望と不安を抱え、浅草の猥雑な路地を歩き語り合い、それぞれの道へ別れていく……。 若き横溝正史や巨頭松岡洋右と出会い、新しい歴史を作り、互いの人生が交差しつつ感動の最終章へ。 「真の友人はあなただけでしたよ」 探偵作家と外交官。若き二人が友となり……斬新な発想で描く波瀾万丈の物語──。
11投稿日: 2025.08.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
二人の交流(実際にはなかった、と言うことだが)を通してその時代を知ることができ、またその時代の過酷さに恐怖を感じた。 二人のそれぞれの妻が、夫である乱歩、千畝に言った言葉が印象深く、また乱歩の思い、千畝の決断に涙なくしては読めなかった…。 このお二人をこんな風に描くとは…。読んでよかったです!
2投稿日: 2025.08.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
江戸川乱歩と杉原千畝が若い頃に出会って、お互いに成すべきことを成していく。史実として乱歩と千畝に交流があってのかどうかは知らない。お互いがお互いをきっかけにして偉大な功績を残すのは、とても良い巡り合わせたったのだろう。作品としては2人が事を成すサクセスストーリーだが、なぜこの2人なのだろうかというのがよく分からなかった。別の2人でもよかったように思えるが、接点がなさそうな2人だからこその意外性が面白いのかもしれない。個人的に江戸川乱歩や横溝正史の作品は読んだことがあるが、次は松本清張や鮎川哲也にも挑戦したい。
1投稿日: 2025.08.27
powered by ブクログ実際には交流のなかった2人なの?ホントに? となるくらい時代背景もエピソードもリアルで2人の交流の史実をなぞっているかのような内容だった 杉原千畝さんがビザを発行して多くのユダヤ人を救った事は知っていたが、外交官として世界の不穏な動きに左右される日々は本当に激動の時代だったのだなと読んでいてドキドキした 〜迷うことがあったら、あなたが優しいと思うほうの道を選ぶの。あなたはそういうふうにしか生きられないのだから。〜 とゆう1人目の奥さんクラウディアからの言葉が千畝を支えてくれた 世界の誰もがこの「優しい道」を選択すれば、戦争は回避できるのかな、と夢想するけれど、国や環境や立場が違えばその「優しい道」は正反対にすれ違ってしまうのか?と、もどかしくなる わたし的には千畝さんのストーリーに惹かれた 乱歩さんも変わり者でありながら才能の塊の愛すべき人 2人とも幼少期に偶然出会い、最期にまたその日の記憶が蘇るエピソードが素敵でした 背表紙の並んで歩く2人の絵があたたかい雰囲気でいいな 何を話してるのかな〜
21投稿日: 2025.08.24
powered by ブクログ直木賞候補作。史実を織り交ぜ乱歩と千畝目線で語られる物語で、性格も夢も生き方もまるで違う2人だからこその面白さを感じる。特に好きなのは変わり者すぎる乱歩で、横溝正史や松本清張などとの話も楽しくてできるならずっと読んでいたかった。千畝のように海外で自分の生きる意味を見出す人生も、乱歩のように小説をかくことしかできない人生も彼らにしかできないことですごいなぁとつくづく感じる。2人の、全く違う境遇の中で同じように生まれる孤独や葛藤、悩みや嫌悪が強く伝わってきてやっぱりどこか似てるのかも。2人の関係も物語も好き。
25投稿日: 2025.08.22
powered by ブクログ近代史をいかにも接点のなさそうな推理作家と外交官を通して綴る。乱歩の怪人二十面相シリーズは、小学生のころはまった。全巻は読んでないかもだけど、かなり買ってもらって読んだ。乱歩作は成人向けの著作にはまったく縁がございません。ここに紹介される乱歩が真ならば、悩み多き苦労人であると同時に相当こまった人でしょう。作風からは、てっきり少年を喜ばせんと楽しんで書いていらっしゃるやに思うもんね。千畝氏の波瀾万丈な人生にも惹かれる。二人の素敵な伴侶に恵まれた。あの当時においてしっかりと正義の判断を貫いた姿勢に敬服します。
3投稿日: 2025.08.22
powered by ブクログ小学生の頃、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズを楽しみ、大人になってから横溝正史や仁木悦子作品に出会った。 小学生の頃アンネ・フランクを知り、ホロコーストについて学びを進めるうちに杉原千畝を知った。 そんな私にとっては出会うべくして出会った作品に思えた。 これはフィクションだけれど、 2人を並べることで時代背景などがとても想像しやすく、2人が生きた時代の空気を感じることができた。 面白かった。
2投稿日: 2025.08.19
powered by ブクログ●読前#乱歩と千畝 直木賞候補作なのでまずは読む。推理作家の江戸川乱歩と第二次世界大戦中にユダヤ人難民にビザを多数発給し救った杉原千畝、なぜこの二人なんだ? この二人でおもしろい小説なんてかけるのか? 時代小説は好みではないけど読みきれるのか? を確かめたい https://amzn.to/4osIAeW ●読後#乱歩と千畝 乱歩と千畝はともに、わが家から20kmほどのところにある瑞陵高校卒業と冒頭にあり、まずはそこに親近感がわき引き込まれた。その接点から展開していくストーリは、まるで史実と思えるほど現実味があり、今まで読んだ中で一番楽しめる時代小説で一気に読了 https://amzn.to/4osIAeW ●心に響いたフレーズ&目次 https://mnkt.jp/blogm/b250514b/
9投稿日: 2025.08.19
powered by ブクログ読み終えたらカツ丼が食べたくなるでしょう。 * 希代の推理作家と世界を股にかける外交官。同じ時代に生きた二人がもし出会っていたら…。 そんな空想が可能になる、小説とは素晴らしい世界だと思います。 フィクションのストーリーもよかったですが、二人の仕事に対する姿勢は、実際もこうだったのかと思えるものがありました。 それぞれの仕事に悩み、打ち込み、克服していく姿。あっという間に読み終えていました。 * 以下、叶わぬ希望ですが…。 同じ時代に生きた二人といえば、夏目漱石と石川啄木です。 青柳先生、次回は二人のフィクションを書いていただければ幸いです。
13投稿日: 2025.08.17
powered by ブクログ杉原千畝と江戸川乱歩、両者の生き方、いいなぁと思った。 クラウディアが千畝と別れる時に言った言葉、 「この先何か迷うことがあったら、優しいと思う選択肢を取るのよ。」 これには胸がぎゅっとなった。 話の後半からは読むのが止まらなくなった。 読みながら戦前戦中戦後の世界情勢についての理解も自然と深められ、多くの人が読むべき本だと思う。
7投稿日: 2025.08.12
powered by ブクログ早稲田の同窓である江戸川乱歩と杉原千畝が若い頃に出会っていたら、、という架空の話なのだが、登場人物として出てくる実在の作家や政治家、戦争を挟んでのいくつかの歴史上の出来事と相俟ってまるで実話であるかのようなストーリー展開にすっかり引き込まれてしまいました。福岡の進学校の修猷館なんかがシレっと出てくるところもリアルです。 物語の中に出てくる「三朝庵」にカツ丼を食べに行こうと思ったのですが、2018年に閉店されていてがっかり。 今回の直木賞は該当作なしでしたが、本作は受賞に値する出来に感じました。 さて、昔はよく怪人二十面相シリーズを読んだものでしたが、改めて乱歩の探偵小説を読むとしたらどれがいいかな~。
4投稿日: 2025.08.11
powered by ブクログ乱歩は何作かのあらすじしか知らなくて、しっかり読んだことがなかったけど、じっくり読んでみようかと思わされました。私も幸子と同じで乱歩のイメージで読まず嫌いでした 千畝も、大体の事しか知らなくて、こんな背景があってということを初めて知りました。外交官になった経緯とか、奥様のこととか 松本清張や横溝正史、山田風太郎など、他の作家さんたちも出てきて、その話もからめて面白かったです。その時代の作家さんたちの作品も読みたいと思いました。 最後にフィクションと書いてあったけど、読んでる間中、二人の人生をなぞっていけておもしろかったです
1投稿日: 2025.08.10
powered by ブクログ25/08/2読了 あらすじも見ずに買ったので、センポが杉原千畝とは思いもよらず。 個人的には人物像が深掘りされるようなのが好きで、乱歩はもっと読みたかったけど、杉原千畝と江戸川乱歩を結びつけての時代の語りは面白かった。
0投稿日: 2025.08.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
江戸川乱歩と杉原千畝がもし若い時に出会っていたら、という架空の話ながら、第二次大戦前後の実際の日本史とも上手く絡ませながら、コミカルとシリアスの塩梅が絶妙であった。 後半がややお決まりの流れではあったけど、大ホラ吹きの話ながら非常に楽しめた
0投稿日: 2025.08.06
powered by ブクログ人は誰しも他者に影響を与え、他者の人生を変えていっているのかもしれない。 私のちっぽけな存在も、誰かに変化をもたらしているのかもしれない。 そんなことを思った小説だった。 どちらも良く知る人物であるが、共通点があるとは知らなかったし、それを交流があったという設定に組み込んでしまう突飛な大胆さが面白い。 2人が関わる必要などなくても、2人は世の中に影響を与えたのかもしれないが、こんなことがあったのかも知れないと考えると少し愉快である。 しかし、杉原千畝の功績を讃えたイスラエル政府が、今虐殺を行なっているのだと考えると何とも物哀しい。 今一度、正義について考えてほしいと思う。
1投稿日: 2025.08.05
powered by ブクログ杉原千畝の半生、江戸川乱歩の半生は、全く知らなかった。こんな物語があったのか。2人の絡みは、出身中学、大学が同じ事からのフィクションだろうが、軽妙、大胆、洒脱、しかも面白い!これこそ小説の醍醐味。素晴らしい!
1投稿日: 2025.08.04
powered by ブクログ同じ時代や学校を過ごした江戸川乱歩(平井太郎)と杉原千畝の一生がもし交錯していたら…という歴史小説。彼らは実際に愛知県立第五中学校と早稲田大を母校としており、ほとんど海外にいた千畝も「昭和十年に開かれた中学校の同窓会に参加し、集合写真に乱歩と共に写っている」という事実はあるそうです。乱歩25歳、千畝19歳(海外出航時、乱歩との出会いはその5ヶ月前)の邂逅から物語はスタートし、骨太ながらも乱歩のちょっと逃げ腰な生き方が面白みを足してくれる大河的なお話です。 これまで千畝の部分的な伝記しか読んでいなかったのと、江戸川乱歩の生き方は全く知らなかったので、それも含めて面白く読みました。奥さんたち皆魅力的なのも、日本のミステリーの萌芽を感じるのも良かったです。青柳碧人さんの本は良く調べられているけど、軽いという印象あったのですが、これは骨太寄り、でも読みやすかったです。 これを読めれば小学生から大丈夫。通常は中学校から。文豪ストレイドッグス好きな子にもオススメ。 電気ブラン出てきたので、神谷バーに行きたくなりました。
4投稿日: 2025.08.03
powered by ブクログ視点が変わることでそれぞれがどのように影響を受けているか分かりやすく、それぞれの人生がどのようなものだったか客観的なものと主観的なものの両方で読むことで深みがあったのがよかった。
1投稿日: 2025.08.03
powered by ブクログ杉原千畝と江戸川乱歩二人の主人公の物語なのですが、実在した人(横溝正史など)が途中出てきて、これはフィクションなのか事実に基づく話なのか分からなくなりました。
1投稿日: 2025.08.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
江戸川乱歩と杉原千畝、本書にもある通り接点が少なく小説家と外交官という職業の類似性も乏しい。 物語としてはおもしろいけど二人別々の物語にした方がよかったのでは、と思いました。
2投稿日: 2025.07.30
powered by ブクログ杉原千畝さんにも 江戸川乱歩さんにも 興味があったのと 直木賞ノミネートだったので 読んでみた 江戸川乱歩と杉原千畝の 人生が重なったり離れたり 2人と関わる歴史に名を残す人たちの数々も 面白かった 掴みどころのない乱歩と 真面目な千畝の 強弱というのか、直線と螺旋のような 命が感じられた フィクションなのが残念 イスラエルで評価されている杉原千畝さんを 生んだ日本。今世界平和にできることがあるんじゃないかな 「迷うことがあったら、あなたが優しいと思うほうの道を選ぶ」 初めの妻のクラウディアさんの言葉 みんながそういう選択をすればいいのに クラウディアさんとお母さん その後幸せに生きられたことを願う 作中に作風のことが出てきて、 推理小説が似たようなものばかり出てきている、「独自のスタイルを追求すべき」、 という節があったけど 今回は青柳碧人さんの作風を変えてきたのかな 今までは 好きかどうかでしか本を読んでなくて、 作風って考えたことがなかったので 次からは作風も感じながら読もうと思う
1投稿日: 2025.07.27
powered by ブクログ事実と虚構が見事に噛み合い、リズミカルに伏線回収。惹き込まれた。乱歩と千畝、畑違いの二人を主人公に据えた、著者の発想力と想像力に感服。『迷うことがあったら、あなたが優しいと思うほうの道を選ぶの』そう千畝に諭したクラウディアさん。何処かで元気でいて欲しいと祈りながらの読了。
4投稿日: 2025.07.26
powered by ブクログ読み応えありました。 2人の足跡をたどりながら、時間をかけて読了。 同じ高校、大学の縁でここまでの物語を作り上げるとは! 杉原千畝の方は、ユダヤ人を救った人くらいしか知らず、改めて知ることとなりました。 そして、乱歩は初期の作品を改めて読んでみようと。 後半は、ミステリーの大御所が次々と登場、同じく各人の代表作を再読したい。 著者の今までのテイストとは違う作品にある意味、驚いています。作者を含め、早稲田というキーワードで繋がっているのですね。
23投稿日: 2025.07.25
powered by ブクログ2人の激動の人生をうまいこと絡めて興味深い作品にしているなと思う。時代もあって重たい部分もあるけど、思った以上に楽しく読み進めていけました。
5投稿日: 2025.07.24
powered by ブクログいま、もしも私の目の前に、時代小説はハードルが高くてちょっと、というひとがいたとしたら、真っ先にこの作品を差し出すと思います。江戸川乱歩にも杉原千畝のことも全然知らない、というひとでもあまり問題はないはずです。抜群に立ったキャラクター同士の魅力あふれるやり取りに、気付けば一気読みしていることでしょう。 大正八年、のちの江戸川乱歩である平井太郎は早稲田大学近くの三朝庵で、父親の意思に逆らって、英語の道に進もうとする杉原千畝と出会う。のちの探偵作家とのちの外交官は、以来、奇妙な縁で結ばれて(実は過去にも意外な形で繋がっているのですが)、それぞれの道を歩むふたりは決して頻繁に会う間柄ではなかったが、重要な局面に立たされるたびに、お互いのことを思い出すことになる。江戸川乱歩と杉原千畝だけではなく、歴史上の様々な人物が登場して物語を盛り上げていく、サービス満点の作品でもあります。情けなくて愛おしい乱歩と結婚を決めた隆子の際立った存在感も印象的で、夫婦小説としても、とても魅力的な作品だと感じました。 乱歩を主役のひとりにおいていますが、ミステリ色自体はほとんどありません。ただミステリに興味があるひとには絶対に読んで欲しいし、興味がないひとでも、広範のひとが楽しめる物語になっていると思います。しかし、久世光彦『一九三四年冬―乱歩』を読んだ時にも思ったのですが、物語の中の乱歩は、情けなくてキュートで、とても愛おしい。実際の乱歩はどんなひとだったかなんて私はもちろん知らないのですが、こんなひとだったのかなぁ、こういうひとだったらいいなぁ、と思ってしまいます。今年読んだ作品の中で、トップクラスの好きな一冊でした。
3投稿日: 2025.07.22
powered by ブクログ「むかしむかしあるところに、死体がありました。」があまりにも酷い本だったので、青柳碧人という作家を完全に軽視していたが、本書で直木賞候補となったので拝読。(しかし今回(2025/7)の直木賞該当作なしは本当にヒドイ。出版業界のことを考えていないのではないか。どれが受賞作でも問題ない出来だったと個人的には思うが) で、本作で改めて著者を見直した。同時代の外交官と作家のあったかもしれない人生交差をうまく料理しながら、ふたりの生きた時代と矜持を取り巻く人達との交流を交えて紡ぎだす。伝記ではないエンタメ小説としてはゆうゆう及第点。
4投稿日: 2025.07.22
powered by ブクログプロローグ 三連休最終日 日課のRUNに出る 目黒川沿いを走るが、川面からの照り返しが 凄まじい! 走ってる道すがら参議院選挙のポスターを 何箇所か通過する 当選したものもそうでなかったものも 一様に笑顔だ そして、なんだか底しれぬ虚しさを憶えた RUNは、仕事の疲れのみならず、ストレスも 落としていってくれる なんとも言えないカタルシスを得られる瞬間だ そして、毛穴の一つ一つを思う存分解放できる点も Good 全集中ならぬ全開放だ! 私の落とした一粒一粒の汗が 照りつく太陽の光に呼応して輝いた 本章 『乱歩と千畝』★鬼5 途中まで、ミステリー小説と思い込んで 読み進ませていたが、 待てど暮らせど謎解きが出てこず、、、 完全に読み違えをしていた事に気付く これは、江戸川乱歩と杉原千畝の完全なる 友情大河小説ではないか! 幼少期から生涯を終えるまでの2人の激動の 人生を描ききっている 横溝正史、松本清張、三島由紀夫などの文豪や 淡谷のり子、美空ひばりなどのスターも 登場し、小説界のちょっとしたアベンジャーズ的な 側面を楽しめるのも本書の魅力だ そう、この作品は、太陽が地球に光の矢を 放つようにジワジワと感動を呼び起こす 読了感はこの上なく幸せに包まれる そして、日本人として誇れる作品 紛うことなき、直木賞候補の作品であった! あっぱれと云いたい エピローグ いつものように、一人掛け用の安楽椅子 (登場7回目)で本書を読み終えると RUNによるストレス解消と本書の後読感 によって、何とも言えぬ至福の余韻に包まれた 時は黄昏時 滝のような汗と猛烈に燃え上がっていた太陽は とっくに引っ込んでしまったが、 心の涙と熱き想いは、爛々と輝いていた! 完
61投稿日: 2025.07.21
powered by ブクログ半分はまこと、半分は夢物語。。。 素敵な作品だった。 江戸川乱歩と杉原千畝の共通点、同じ中学出身で 早稲田大学へ入学したという軸を元に青柳さんが もし、この二人が出会っていたら。。。 という作品。 残念ながら直木賞は逃したものの、私の中では 受賞作品でもいいのではないか??と思うくらい 読み応えと、読了感のあるストーリーだった。 江戸川乱歩。。。 懐かしいな。。。 子供の頃、病院のキッズルームに『怪人二十面相』が 全巻あって、読み漁ってたのを覚えてる。 それがきっかけで、東野圭吾さんなどのミステリや サスペンスが好きになったのだけど♪ 杉原千畝。。。 アンネの日記を通じて知った。 あの時代、勇気ある行動に感動した記憶がある。 武力で制圧する… その先にあるものは平和などではなく悲劇だ。 江戸川乱歩や杉原千畝が生きていた時代、私が 知らない戦争前後の話をこの本を通じて知ることが できたし、そんな中でも江戸川乱歩の生き方に 思わず笑ってしまう場面もあった。 そして、二人の奥さん。。。 日本女性は強いっ!! 逞しいっ!! 私がその時代に生まれてたら あんな強くは生きられなかった。 現世は夢、夜の夢こそまこと。。。
21投稿日: 2025.07.21
powered by ブクログ主人公の二人はもちろん、作家仲間や家族など、周りの人々も魅力的なキャラクターで、とても晴れやかな読後感。
1投稿日: 2025.07.21
powered by ブクログ個人的にはとても好きな内容だった。 もちろんフィクションであるけれども、彼らが生きた時代が浮かび上がる描写を基に、爽やかな流れで描き切った物語だった。 物語に「悪」はあまりなく、男性的な視点という限定はあるけれども、それもそれで1つの物語で、楽しかった。 他の作品は読んでいないので、なんとも言えないが、直木賞を受賞されてもおかしくはなかったのではないかなと、素人ながらに思った。
2投稿日: 2025.07.19
powered by ブクログ173回芥川賞&直木賞 該当作なしでさびしいですね 史実とフィクションを織り混ぜて 江戸川乱歩と杉原千畝 二人の生きた時代、生き様、交流を描いた話 江戸川乱歩は一作だけ読んだことがあり 杉原千畝はユダヤ人に命のビザを発給したという位の知識で読んでも楽しめた 乱歩は探偵小説を書くこと、千畝は外国に出て日本ために何かを成す仕事がしたいという志を持ち、それぞれの人生、それぞれの道を描写されていく様子は興味深く 二人とも時に惑いながら、周りの人に恵まれ、自分の生きた世界を次の世代に繋いでいた 若い人が新しいことをやらなければ、古いものも継承されないんだと感じました 有名人がぞくぞく登場するサービスてんこ盛り感に「おっ」となり、江戸川乱歩と横溝正史が読みたくなりました! 江戸川乱歩と杉原千畝が出会うフィクションは夢があって素敵だと思います
38投稿日: 2025.07.16
powered by ブクログこの物語は大正八年に二十五歳で早稲田のOBの平井太郎(のちの江戸川乱歩)と早稲田の学生である杉原千畝十九歳(のちに外交官となる)が早稲田にある食堂の三朝庵で偶然出会うところから始まる二人の友情の物語です。 江戸川乱歩は子供のころ少年探偵団のシリーズを読んでもちろん知っていましたが、杉原千畝という人が何をした人なのか知らなかったし、この作品は実話なのか創作なのか知らなかったので、読了してから調べました。 杉原千畝は六千人の命を救った外交官として有名で、杉原千畝のことはドキュメンタリー、映画、舞台などたくさん作品化されていました。ご興味のある方は調べてみてください。人気の俳優さんが千畝を演じています。 私は初めて知りました。 しかし、この作品については全くの創作で、戦前、戦中、戦後の同じ時期を生きた二人がもし友だちだったらという話のようでした。 乱歩は若い頃は職を転々としていましたが、作家となってからの乱歩には大勢の慕ってくる若手作家や、若い頃から仲の良かった横溝正史などがいて、ミステリ好きには楽しい作品だと思います。 今晩、芥川賞、直木賞が発表されますが、この作品も直木賞にノミネートされています。 私はノミネート作品五作読んだ中では好きだったのは『踊りつかれて』ですが『ブレイクショットの軌跡』はやっぱり侮れないですね。 柚月裕子さんは個人的に同じ小説講座の同期生で講座のあとの懇親会(飲み会)にも毎月一緒に参加していたので、三回目の今度こそ、一番書きたかったであろう震災の作品で受賞して欲しいとも思います。 あと数時間後で発表ですね。
152投稿日: 2025.07.16
powered by ブクログタイトルの通り、江戸川乱歩と杉原千畝の友情をめぐる物語。とはいっても本作で描かれている2人の交流や、当時のミステリ作家が次々と登場するくだりは恐らくフィクション。史実との絡め方は自然で違和感もなく、なんだかんだ王道の時代小説といった装いがした。 2人のキャラクター造詣は普通の域を出ない印象だけど、数々のクセのある人物との出会いによって徐々に物語が広がっていくので、読んでいて飽きない。創作者の苦悩と外交官の苦悩がそれぞれ描かれるが、それをあまり感じさせないリズムの良い軽妙な筆致がこの作品の魅力のひとつだと思う。 個人的には積極的に手に取る分野の作品ではないんだけど、重たい話が多かった今回の候補作の中では一番安心して読めた。
2投稿日: 2025.07.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
直木賞候補作。史実を交えたIfもの…なんだろうけど、実際に知り合いじゃなかったとしても、母校が同じで…とかがどこかで何かの支えになってたことがあったりはしたかもしれないよね。面白かった。一番の胸熱は乱歩の批評を読んで〜のところでした。片っ端から作品読みたくなったもん。
2投稿日: 2025.07.12
powered by ブクログ外交官という実、探偵小説家という虚、その本来交わることのない二つの人生を想像力でもって交わらせる試み自体は面白いと思うし、彼らを取り巻く他の登場人物を取っても豪華で賑々しくサービス精神に富んだエンタメ作品ではあるのだけれど、そもそもが史実より創作によって大部分が構築されているので、歴史小説という形式で書かれるという意義自体が薄いように感じる。冒頭の邂逅から始まるシーンからしてかなりの力業に感じるのも、やはりそれがどこまでも頭で考えたものでしかないからだろう。主人公が二人ならば、少なくとも1+1の答えが3以上にならなければいけないのに、本作は2にすらギリギリ届いていない。
4投稿日: 2025.07.11
powered by ブクログ同じ時代を生きた著名な方々が、少しずつすれ違って行くという視点が面白くて斬新で、よい作品でした。 物語の最後があっけなかったなと思いましたが、人の人生の儚さなのかなと妙に納得しました。
1投稿日: 2025.07.07
powered by ブクログ啓光図書室の貸出状況が確認できます 図書館OPACへ⇒https://opac.lib.setsunan.ac.jp/iwjs0021op2/BB50395987 他校地の本の取り寄せも可能です
0投稿日: 2025.07.07
powered by ブクログ173回直木賞候補作との事で読んでみました。 『乱歩と千畝 RAMPOとSEMPO』を読み終え、今もなお、その余韻に浸っています。正直なところ、著者の方の作品は本作が初めてで、「どんなものかな?」とさほど期待せずに読み始めたのですが、その予想は良い意味で裏切られました。第1話「カツ丼とかけそば」を読み始めた瞬間から、物語の世界にぐっと引き込まれていったのです。冒頭から「これはすごい!」と感服させられ、読書への興奮が止まりませんでした。 この小説は、もし江戸川乱歩と杉原千畝が出会っていたら――という“if”の物語。あまりに面白く、すぐに二人のことを詳しく調べましたが、史実では直接の接点はないようです。だからこそ、この小説の描く世界がより一層魅力的に映りました。 レトロでノスタルジックなものが好きな私にとって、戦前の昭和初期の雰囲気はまさにどストライク。早稲田や池袋といった、かつて住んでいた場所の名前が出てくるたびに、「あの辺りかな」と想像を膨らませながら読み進めることができ、その時間もまた格別でした。過去を辿りながら物語に没入できる小説に出会えるのは、本当に稀有なことです。 そして何より、ミステリ界の巨匠、江戸川乱歩が主人公の一人であることに、本好きの私は胸が高鳴りました。彼の性格、小説家としての歩み、戦後の文学界での功績、そしてその生き様を通して、大正から昭和初期にかけての日本の文学界や世相を垣間見ることができるのは、この小説ならではの醍醐味です。 もう一人の主人公である杉原千畝については、正直なところ、この本を読むまではあまり詳しく存じ上げませんでした。しかし、第二次世界大戦下の彼の決断とその功績を知り、深く感銘を受けました。 ロシア語に堪能で、ロシアと縁の深い人生を送ってきた彼。 乱歩と千畝、日本とロシア(とその近郊の国々)――彼ら二人の人生を通して、激動の時代背景が鮮やかに描かれている点も、この小説の大きな魅力だと感じます。 しかし、私がこの本で最も感動したのは、「真の友情」が丹念に描かれている点です。友情とは、毎日べったりと一緒にいることだけではないと改めて考えさせられました。たとえ遠く離れていても、お互いが良い刺激を与え合い、自分が落ち込んでいる時でさえ、相手の顔が浮かんで「あの人も頑張っているのだから、自分だって!」と互いの存在が励みになる関係。それこそが、真の友情なのではないでしょうか。物理的な距離があっても、精神的に深く繋がっている――そんな理想的な友情の形が、この物語にはありました。 戦前・戦後の出版業界の変化と共に、横溝正史、松本清張といったミステリ界の巨匠たちが次々と登場し、彼らが乱歩とどのような関係を築いていったのかを垣間見れるのは、ミステリ好きにはたまらない要素です。そして、読了後もなお心をくすぐり続けるラストには、思わず唸ってしまいました。 小説の時代背景、雰囲気、舞台、登場人物、そして男たちの友情――私の好きなものがすべて詰まった一冊です。この小説に星5つをつけなくて、どうするのでしょう! あの頃の出版業界は、さぞかし活気に満ちていたことでしょうね。この小説が、現代の出版業界を盛り上げる一助となることを願ってやみません。
42投稿日: 2025.07.06
powered by ブクログ★5 何者でもない青年、平井太郎と杉原千畝。夢と希望を胸に抱き、怒涛の昭和を生き抜く #乱歩と千畝 ■あらすじ 平井太郎(江戸川乱歩)が早稲田大学の近所にある蕎麦屋に入ると、同じ学校の後輩と思われる学生に出会う。彼の名は杉原千畝、苦学生ながら国際社会での活躍を夢見る青年であった。 ある日二人が歩いていると官費で留学生を募集する広告を発見、千畝は参加することを決める。前途洋々な千畝に感化された平井は、自らも探偵小説を書こうと奮起するのだが… 何者でもない若い青年たちが、とてつもない夢と希望を抱き、怒涛の昭和初期を生き抜いてゆく。 ■ぜっさん推しポイント ★5 もうこれ大河ドラマでいいじゃないでしょうか、おもろかった! 青柳碧人先生は、浜村渚の数学シリーズ、昔話シリーズが有名ですよね。そして大正昭和の近代歴史の小説も書かれているんです。博学な上に、トリックも発想力に富んでいて、いつもびっくりさせてもらってます。 本作は昭和の戦前戦後を舞台に、江戸川乱歩と杉原千畝という実在する二人のを描く青春小説。まず何がおもろいって二人の人物像ですよ、完全に惚れちゃいました。 ・平井太郎(江戸川乱歩) いつも愚痴ばかり吐いて、逃げることしか考えていないというダメ男。特に隆子さんと結婚するくだりなんかは爆笑ですよ、どんだけ責任感ないんだと。でもこの自信のなさ、度胸のなさが、紙の上で傑作を生みだす秘訣なのかもしれませんね。 そして誰よりも探偵小説を愛し、友人想いのいい人。作中さまざまなエピソードが出てきますが、きっとこんな人が近くいたら、友達になりたいなーと思っちゃう。 ・杉原千畝 気は小さいが夢は大きい、目標のためなら努力ができる真面目な男。困っている人がいたら助けずにいられない優しい人でもある。そのため騙されることもしばしば。 有名なのはユダヤ人の逸話ですよね、本作でもそのエピソードが描かれています。彼のどれほどの葛藤があったのか、読めば読むほど手に力が入ってしまいました。 そしてもうひとつ。声を大にして言いたいのは、二人の奥さんも最高だという点。 ・平井太郎の妻 隆子 いつも平井太郎のケツを叩く隆子奥様、もう爆笑です。そして肝っ玉の据わりっぷりがカッコイイ! 夫の才能を信じて、どこまでもついていく姿が沁みるんですよねー。こんな女性と結婚出来たら幸せだろうな。 ・杉原千畝の妻 クラウディア、幸子 ロシア人のクラウディアは、千畝の一番の強みをよくわかってる優秀な人。 幸子はいつも千畝を支える優しい人。ここぞという時には意見を言えるしっかり者なんです。千畝が仕事に悩んでいた時に叱咤激励する一幕は、涙なしでは読めません。 こんな彼らが戦前戦後にどんな活躍をしたのか、実際におこった史実とフィクションを交えながら描いてく。20代の青年期から、終わりはどこまで描かれるのでしょうか… ぜひ読んでみて下さい。終盤に行けば行くほど涙腺がゆるんできて、マジ涙なしでは読めなくなります。 読み応え抜群の歴史エンタメ青春小説、ぜひ大河ドラマか映画化して欲しい! 直木賞候補作にふさわしい、青柳碧人先生の代表作となるような作品した。 ■ぜっさん推しポイント 本作には実在のミステリー作家が次々と出てくる。横溝正史、松本清張など、ミステリーファンにもたまらない。もちろん彼らとの関係性は創作も多いのでしょうが、なんだか読んでると涙が止まらなくなっちゃうんです。 我が国日本において戦前時代からミステリーを書く作家がいて、それを読む人もいる。さらに次の世代が新しいミステリーを書き、読む人もいるんです。繰り返し繰り返し書かれ、読まれ続けるからこそ、令和の現代でもミステリーを楽しめるんですよね。 ミステリーを読んできて、こんなにも幸せになったことはないよ。心が暖かくなる素敵な作品でした。
127投稿日: 2025.07.05
powered by ブクログあーいつあれが起こるんだーと思いつつ、最後は劇的の怒涛。全く別方面の2人の人生の交錯。奥さんたちがみんな良いなー。
4投稿日: 2025.07.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
江戸川乱歩、本名平井太郎と杉原千畝(ちうね…が読みづらいからセンポと呼ばれることもある)が共に早稲田の先輩後輩で、もし交流があったら…という話。 江戸川乱歩は早稲田を出て転職を20回とか繰り返し、島から文通を経てやってきた人とまさかの結婚をして小説を書く。 センポは乱歩から言われて外交官を目指して、満州で勤務してヨーロッパに渡り、ビザを発行するなど。 なんかちょっと難しいのと史実じゃ無い箇所と史実が混在していて悩ましいと思った。随所に昭和の大スターの子供時代みたいなのが出てくるのも面白いポイント。
1投稿日: 2025.06.29
powered by ブクログ面白い…のか?というのが半ば過ぎまできても正直なところだった。 千畝さんてどんな人だったっけと思いつつも検索もしないで読み進め、「あ!あの人か!!!」となった時は感動してしまった(不勉強ですいません) 2人の交流だけではなくて、同じ時代の作家や政治家たちが様々出てくるから読み進めてみていたけど、時代が暗くなっていったあたりからはスピード上がった。やはり戦争は嫌いだし、関東軍や日本の軍に対する評価なんて底辺でしか無いけど、そこだけではないよねと。 波乱万丈だったなあ。 読んで良かった。 横溝正史と江戸川乱歩の掛け合い、笑っちゃうけどとても良かった。 ほんとにこんな感じだったんだろうか。
1投稿日: 2025.06.29
powered by ブクログ歴史ファンタジー!大河ドラマです^_^ 非常に面白く読めました。。。。。 青柳さんて……………… こんな話書きはるんやぁ………………凄え 沢山過ぎる有名人も続々登場します。 史実通りの話も混ざってて フィクション➕ノンフィクション やはり《命のビザ》のところは泣けますね( ; ; ) この話………………大河ドラマに推薦!!!
18投稿日: 2025.06.27
powered by ブクログ社会に馴染めない人は多い。 毎日出勤が出来なかったり、時間を守れなかったり… しかし、稀有な才能を持っており時に偉業を成し遂げることがある。 乱歩と千畝。 歴史上の2人がちょっとしたことからそれぞれの違う人生の中で交わるというフィクション! 実際にそうだったとあってと言われても信じてしまいそうな話で、この2人を中心に有名な作家達が集ってくるという夢のようなお話だった! 2人とも多くの人を助け、今の日本に大きな影響を与えた人物。それぞれを見ると両極端な性格であるように思えるが、今回のように描かれると実際に似た部分が多いのかもしれない。 江戸川乱歩の転職や放浪癖などまさに今の時代なら社会に馴染めてない人だ。むしろ小説家になるために産まれてきた人物だったのだろう。 杉原千畝はむしろ一つの目標に向かってまっすぐだ。だだ日本に馴染めなかったのかと思う。 冒頭に社会に馴染めない人のことを少し触れたが、きっと馴染めないのではなく、そもそもの本質的なものが違って馴染まないのだろう。 現在はいろいろな働き方があるのでいろんなところで才能を発揮する人が増えて、本誌の2人のように大きな成果を残してくれたらと思う。 1900年代初めからの激動の時代を生きた2人に改めて感謝と敬意を表したいと思った。
35投稿日: 2025.06.24
powered by ブクログ乱歩と正史とのやりとりが面白い❢❢❢ (本文より) 「ずいぶん老けたね。」 「自分の還暦祝賀会て、ようそんなこと言いますね。」 「本当だ。」 「立派にならはったな。」 「横溝君、私は不思議でならんのだよ。これは本当のことかね。」 「なんやて?」 「私は作家になってから何度か書けなくなってから、あちこち逃げ出した。」 「しっとるわ」 「ずっと書かずに迷惑をかけ続けた時期もある。けっして勤勉で誠実な作家とは言えない。」 「知っとるちゃうねん。」 「それなのに今こうして多くの人に囲まれてこんな立派な会を開いてもらっている。そんなに価値のあることをしたかね。」 「ほんま謎やで」 「あんた謎と共に生きとる。江戸川乱歩が尊敬される作家としてここにいれる。謎の中の謎や」 「金田一耕助はこの謎を解いてくれないか。」 「明智小五郎に頼まんかい。」
2投稿日: 2025.06.23
powered by ブクログ同じ時代を生きた早稲田の先輩後輩の二人。 本当に交流があったとしたらこんなに面白い話になるのね。戦前戦後の激動の時代では、この二人に限らず誰しも波瀾万丈な人生だったと想像出来るけど、接点がなさそうなこの二人に着目したところがイイ! 乱歩がらみの有名な文化人も次々に登場して楽しい。 杉原千畝のリトアニアに赴任時の有名なエピソードは胸熱。戦時下の異国で信念を持って行動出来るその姿が素晴らしい。 直木賞ノミネート!本当に面白かった。
2投稿日: 2025.06.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読み終わった直後、この作品の直木賞ノミネートが発表され、熱烈に応援したい♪ ――江戸川乱歩と杉浦千畝は、同郷、同じ出身中学校で、早稲田大学生だった。年齢が離れていることと、千畝が中退したことで、大学で会ったことはなかったが、後に早稲田の前の蕎麦屋で出会い、人生の節目節目にはなぜか立ち会う、ふしぎな友情を培っていく――。 乱歩と千畝は、たしかに知り合いではあったらしく、一緒に写っている写真が残っているそうだ。 青柳碧人さんはその写真を見て、この物語を考えたという。 『名探偵の生まれる夜』でも思ったけれども、青柳さんは、膨大な資料を読み込み、作家のプライベートと時代の事件とをすり合わせるのがべらぼうに巧い。 実は記憶がないほどの子ども時代から2人は邂逅していただの、乱歩の結婚に千畝が協力しただの、絶対フィクション! と分かるのに、リアリティ満載で、 もうこうだったってことでいいよ♪ なんて楽しいのかしら♪ と思わせてくれる。 小説を読む楽しさの大きな要素のひとつを、今回も、豪華メンバーで惜しげもなく提供してくれていた。 杉浦千畝といえばもちろん、第二次大戦中にユダヤ人の「命を救うビザ発行」の人だが、学生時代から外交官員時代の考えをじっくりと追うことで、「その行動」がいかに彼にとって必然だったか、が読者にしっかり腑に落ちる。そして、それが彼にとってはぜんぜん特別なことではなかったことも……。 その後の千畝の不遇・困窮についてはいちおう聞き知っていたけれども、その時期でも淡々と生活する千畝像は、ものすごく説得力があった。 時代設定的に、時代、特に戦争への変遷を描いた歴史ものの側面もあり、 とはいえ、メインは、千畝と乱歩の友情譚で、 かつ、2人のクセのある男性のお仕事小説としても、 ものすごーく!!秀逸な物語でした♡ ―――――マニアのための補足 さて、ここからはミステリマニア向け感想です☆暑苦しくいきます☆ さすが青柳碧人、この作品は一冊まるまる日本の本格ミステリ史ともなっている。 もー楽しくてうれしくて♪ 乱歩の作品はもちろん、横溝正史の『本陣殺人事件』はやっぱ再読しなきゃ!と思ったし、乱歩たちが戦前戦後憧れてやまなかった海外のミステリたちも懐かしく慕わしい。 特に、ザングウィルの『ビッグボウの殺人』の取り扱い方は最高のひと言! これと、アイリッシュの『幻の女』は是が非でも再読せねば! また、木々高太郎(のちの林久策)の『網膜脈視症』『人生の阿呆』とか、遙か昔に読んだ作品も今回思い出した♪ 現在まで至る、「医師で推理作家」の系譜の最初のひとだ。(いや、まあ、森鴎外だっつー意見もあるかもしれないけど、個人的には鴎外はミステリ作家だったとは思えないので) 芦辺拓のステキな名探偵・森江春策の名前は、この人へのリスペクトなんだよねー、とか、もういろんなことを思い出させてくれた。 北里柴三郎が木々高太郎を推薦したこと、乱歩が見出した小栗虫太郎・夢の久作・高木彬光など、綺羅星のごとくのミステリ作家たちが、ぽろぽろまー贅沢に出てくる出てくる!♪ そして、乱歩の影響を受けて、現代にまで続くミステリ百花繚乱期の端緒になった作家たちも。 全員、本名で出てくるので、誰がだれか、当てるのもめちゃくちゃ楽しかった。 中川透さんは有名かな。 ちい兄ちゃんと仲良しの、大井三重子さんとかね。『猫』は絶対再読しようっと。 城地さんとか、松本清張(きよはる)さんなんて、まんまなのよね(〃艸〃) 青柳碧人さんは、日経新聞のインタビューで、 「資料を読んで、大乱歩とかいわれているけど、けっこうダメダメな人だった、ってところも描きたいと思った。超マジメな千畝と並べればそこが引き立つかと思った」 といっていた。 実際、乱歩はかなりダメな若者→ダメなおっさんだったけれども、常に筆に愛情を感じました♡
7投稿日: 2025.06.16
powered by ブクログ探偵作家と外交官、若き2人大学の先輩後輩、江戸川乱歩と杉原千畝が友となりという斬新な発想で描く波瀾万丈の物語。当時の出版事情なども描かれ、その時代に名を残したそうそうたるメンパーが勢揃いしているのも楽しめる。「命のビザ」以外では殆ど知らなかった千畝の生涯も生い立ちから知ることができ興味深かった。
28投稿日: 2025.06.15
powered by ブクログ江戸川乱歩と杉原千畝。まったく接点などなさそうな二人ですが、ともに早稲田大学に在籍し同じ時代を生きた人。ということで、もしもこのような交友があったなら、と楽しめる物語です。 仕事が長続きせず社会不適合者のような乱歩と、勤勉な杉原千畝。対照的とも思える二人の出会いから、時代の流れにそって描かれる物語は楽しくもあり、切なくもあり。決して楽観的な時代ではなく、二人ともそれぞれの生き方に苦しむけれど、この二人でしかできないことがそれぞれにあるのですよね。そしてどちらもとても魅力的なキャラクターとして描かれています。 同じ時代を生きたさまざまな有名人が登場するのも楽しいところ。特に「本陣殺人事件」に刺激されてさまざまな推理作家たちが誕生するところ、わくわくしちゃいました。ミステリファンとしては、やはり乱歩の偉大さは比類なきものとしか思えません。
3投稿日: 2025.06.14
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2025夏 直木賞候補 探偵作家と外交官、江戸川乱歩と杉原千畝を主人公にした物語 読後の印象ののびやかさ、ふところの広さは格別ー門井慶喜 とても面白かった 爽やかですがすがしい。描き出す人物像が生き生きしていてよい。歴史的人物だがそこに焦点が当たってる訳でもなくバランスよい。最初眉唾だったけど、すぐによい作品だとわかった。直木賞もらえないのが残念
1投稿日: 2025.06.12
powered by ブクログこの二人でどんな物語を語るのか?興味深かったが、一人一人の物語はそれぞれおもしろかった。 ミステリー好きには、乱歩の部分はいろんな作家が出できたり、思わずニヤリしてしまう。 日本のシンドラーと言われる千畝の部分は、あの時代の運命に流されて翻弄されている。 読んでいる最中に直木賞にノミネートされたみたいですね。おめでとうございます。 帯に書いてあった通り、それぞれの分野に歴史を変えた2人をふとした所で出会い知り合う。 運命と言うのは摩訶不思議である。 25/06/12 25 冊目
3投稿日: 2025.06.12
powered by ブクログある日、蕎麦屋で偶然相席した平井太郎(江戸川乱歩)と杉原千畝。 探偵を作り出した乱歩とある意味リアル探偵だった外交官の杉原千畝。彼らが出会っていたら? そんなifストーリーを描いた、2人の戦前、戦時中、戦後の物語です。 杉原千畝が好きな私にはたまらないタイトルだなと思いつつ、恥ずかしながら江戸川乱歩はテレビドラマでしか知らない未読の私ですが、この2人を誇りに思いたいなと思った作品。 ifではなくて、実話であってほしいと思うほどにストーリにのめり込みました。 読んでいて、乱歩って、私の知る限り明智小五郎を生み出した小説家ですが、まぁまぁな変人だったんだろうなと感じは出ているのですが、憎めない人だったんだろうなと思うし、千畝も命のビザの話は知っていても、当時の日本の外交官。スパイみたいな任務だっただろうし、そう思うと、リアルな探偵だったんだろうなと感じました。 そんな彼ら2人が青年期に生きた大正や昭和初期、戦争に巻き込まれて、戦後はいろいろありながら立て直す様子を描かれているのですが、この2人をそれぞれ眺めているだけで楽しいと思うし、これが本当にifなのか?と思うほどに、当時を生きたわけでもないのですが魅力的でイキイキしているなと思いました。 特に、私の知っている命のビザの話もこうもってくるのかと思うほどに、本当にこんな話だったら素敵やなと感じる内容だったし、最後のページで、感極まって泣けるくらいに、もともと好きだった杉原千畝はもちろん名前しか知らなかった江戸川乱歩のことが好きになりました。 また、乱歩と千畝以外にもいろんな名前を残した著名人が作中に登場したりして、当時のifストーリーで、何ならファンタジーにも近いはずなのに、2人を通して当時の日本の光景が見えるようなきがする。 そんなことを思いながら、読後は泣いて、明日のお昼はカツ丼にしよう。 そんなことを思ってしまう最高の時代小説でした。
7投稿日: 2025.06.10
powered by ブクログ江戸川乱歩と杉原千畝がまだ何者でもなかった青年の頃、二人は出会い生涯にわたって深い絆を紡いでいく。希望と不安の戦乱の中、二人は己の為すべきことに疑問を持ちながら進み続ける。大御所作家さんなども登場して史実なのかなと思わせてくれるほどの面白さだった。最後は泣けた。面白かった。
2投稿日: 2025.06.08
powered by ブクログ乱歩と千畝 #読了 青柳先生、こんな泣ける小説書けるのか。 日本ミステリー界の父、江戸川乱歩。 東洋のシンドラー、杉原千畝。 この2人が邂逅し、時代を、世を変え移ろいでいく物語。 あの時、あの一瞬で正しい道を歩まなければ出会えなかったかもしれない。 そして、旦那をを支える妻たちも立派な主人公と言えるだろう。 ロシア人妻だったクラウディアの「迷う事があったら、優しいと思う方の道を選ぶの」 この言葉は人生の指針にしていい言葉だ。 横溝正史や松本清張、小栗虫太郎、三島由紀夫、往年の名作家たちの登場も見逃せない。
4投稿日: 2025.06.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
江戸川乱歩と杉原千畝、この歴史上有名なふたりが実は友情を温めあっていたという史実が本当にあったのかとも思えるほど。そしてその他の横溝、松本、仁木、小関ら錚々たるメンバーが勢ぞろいで贅沢な読書の時間が過ごせた。 その当時、外務省を辞めさせられた千畝の生涯も生い立ちから知ることができ、改めて感動が深まる。近代史を知る上で文学界芸術界の上に戦争が落とす影の大きさが、改めて気付かされた。
15投稿日: 2025.05.31
