
総合評価
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powered by ブクログNHK のドキュメンタリーの再構成。その番組を見ていたので、若者との対話の雰囲気や生まれ育った場所を訪ねた時の様子などを思い出しながら読んだ。熊本市内の小高い丘にひしめきあって住んでいたのだが、もう今は何の形跡も残っておらず、草が生い茂る藪になっていた。氏の表情と、私自身の生家の行く末への思いが重なり、何とも言い難い寂寥感を覚えたことを思い出した。 ドキュメンタリーの再構成がベースなのでとてもさらっと読めたが、自分自身、台湾の有名人を咄嗟に挙げることができず、アジアのことを本当に知らないんだということを痛感した。
0投稿日: 2025.07.12
powered by ブクログ人を通して国を知ることが大切 姜さんの話はもちろん良かったが、参加者の感想もとても良かった。 このように一人一人が考え、他文化を理解しようと行動していったら平和な世界が実現できるだろうと思った。 中国人参加者の話しが印象に残った。 中国語は大きく発声する言語なのだと。 それを知れば、単にうるさいと思う人が減ると思う。 お互いの文化を知ることが寛容な態度につながるんだと思った。
0投稿日: 2025.04.29
powered by ブクログ本書は、姜尚中氏が行った「最後の講義」を完全版として書籍化したもの。「アジアとは何か」「自己とは何か」「他者とどう向き合うか」「自由とは何か」という根源的な問いを軸に、自身の経験、歴史、現代社会の出来事を織り交ぜながら、ナショナリズム、アイデンティティ、異文化理解、戦争、労働問題といった現代社会、特に東アジアが抱える課題を深く考察し、未来に向けた対話、想像力、共生の重要性を訴える。 第一章「アジアとは何か?」では、私たちが無意識に持つヨーロッパ中心の視点(ウェスタン・インパクト)を問い直す。「極東」などの地域呼称が他者(ヨーロッパ)によって名付けられたものであることを指摘し、アジアの中からアジアを見る視点の必要性を強調。アジアの広大さ、人口・民族・文化の多様性を示し、近代に登場した国民国家という枠組みが世界をどう変えたかを解説。自身のルーツ(在日二世、熊本生まれ)と、アジアへの否定的イメージの中で自己肯定感を持てなかった過去、そして訪韓や西ドイツ留学を経て考えが変わった経緯を語る。サイードのオリエンタリズムを紹介し、他者によって作られたイメージ(心象地理)の影響力を指摘。自文化中心主義を相対化し、他者の視点を持つことの重要性を説く。自身のアイデンティティ・クライシスと、故郷熊本への回帰、そしてアジアとの繋がりを模索する現在の活動(シアター・アジア構想)に触れる。 第二章「自己とは何か?」では、アイデンティティ(自己同一性)の形成と揺らぎを探る。生まれた場所と親のルーツ文化が異なる場合に生じる葛藤(アイデンティティ・クライシス)を、夏目漱石やフランスの移民二世(ブール、ビコ、バンリュー)の例を挙げて考察。自身の西ドイツ留学経験から、多様なマイノリティとの出会いを通じてナショナリティという枠組みを超えた視点を得たことを語る。ハーフ(ダブル)としての自身の経験を踏まえ、二つのルーツを受け入れるプロセスと、第三の場所(ヨーロッパ)での経験がそれを可能にしたと分析。ダイバーシティ(多様性)の重要性を強調し、国民国家への根源的な問いを投げかける。「人を通して国を見る」視点を再度提示する。 第三章「他者とどう向き合うか?」では、「なぜ戦争は終わらないのか」という問いから始め、現代の戦争の深刻さを指摘。一方で江戸時代の東アジアのような比較的平和な時代もあったことに触れる。他者理解の鍵として、日中台の歴史に深く関わる鄭成功を紹介。彼が各国で異なる評価を受ける事実は歴史認識の多様性を示し、『国性爺合戦』のように文化交流の架け橋ともなった。個人を知ることで国への見方が変わる可能性を示唆。江戸時代の日朝間の誠実な交流(雨森芳洲と申維翰、「誠信」)を例に、国家間でも信頼関係が重要であると説く。日朝首脳会談の意義にも言及。他者への無関心に警鐘を鳴らし、「人を通して国を考える」こと、人と人との交流の重要性を訴え、東アジアのネットワーク構築を提唱する。 第四章「自由とは何か?」では、外国人労働者問題(技能実習制度)を入り口に、労働力を「人」として受け入れられない日本社会の課題を指摘。これは過去の出稼ぎ労働者問題とも通じる構造的問題とする。北京の学生からの問いを機に、中国の経済発展と自由の制約(オートクラシー)について考察。リベラリズムなき社会の自由概念、飢餓からの解放と個人の自由のバランスを問う。自由の本質を、ジョン・レノンの言葉を借りて「今とは違う世界を想像する力(イマジネーション)」と定義。日韓関係の理想として「誠信」を再提唱。世界は繋がっており、遠い国の出来事も他人事ではないという認識の重要性を強調する。 第五章「未来へ向けて」では、講義を受けた学生たちの多様な感想や疑問を紹介。異文化理解、ステレオタイプへの気づき、戦争への問い、自由への考察、グローバル人材としての意識など、講義がもたらした学びと気づきが共有される。姜氏は、戦争への問いに明確な答えを出せなかった後悔と、若い世代への期待(負の遺産ではなく未来を切り開く)を語る。若者の中に平和へのリアリズムが芽生えていることを感じ、日々の意志と行動の積み重ねが平和を築くと強調。最後に「いつの日か国境を踏みつぶして欲しい」という強い願いを表明し、講演を締めくくる。
0投稿日: 2025.04.19
