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受け手のいない祈り
受け手のいない祈り
朝比奈秋/新潮社
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総合評価

38件)
3.6
6
12
15
2
0
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    このレビューはネタバレを含みます。

    壮絶な救急外科医の話。医療崩壊した現場で働いている人の過酷さがこれでもかというほど連ねられた渾身の一作。2日寝ない(最後は4日不眠労働になる)、残業300時間(≠労働時間)、過労死する同期、麻薬シールで眠気と辛さを飛ばす同僚…主人公・公河もそんな職場でまち全体から流れてくる患者たちを次々に受け入れ、何日も眠らずに手術し、血尿や高血圧を患いながら働いていく。 人間が一番狂うのは眠れないことだと聞いたことがあるが、この主人公公河はまさしく仕事のために眠れないことを強いられており、そのために発生する「普通に暮らしている人」への怒りや嫉妬、幻覚などはリアルさを通り越していっそ恐ろしい。だがここに書かれた過酷な話は決してフィクションに留まらず、現実と地続きなのだろうとも思う。配属される科によって全然状況が違うというのもまたリアルというか…私も看護婦の親戚である叔母から各科については似たような話を聞いていたので、やはり一口に「医療」といっても状況は様々だなと。 そしてこんなギリギリの精神状態、現場でありながら、そこに外科医として「人を切ること」への抵抗感や許しを求める様などを入れてくるのは文学的であり、同時にタイトルの「受け手のない祈り」を象徴しているにも思えた。公河が最後にたどり着く境地である「死人でも麻酔を打っていても、人を切ることは許されない」という外科医の背負う業と、そこから自らの死や眠りをもって解放を望む様、何より同僚たちの不義(健康な虫垂の切除、堕胎手術など)を糾弾しながら自分はそれをしていない、許されるべきだと考える思考などは、まさしく「祈り」に他ならない。途中で奥内が麻薬シールで暴れてるところを見ながら「もう死なせてやろうと思った」などと思ったのは、一見非情に見えながらも同僚ゆえの慈悲のような気さえしてくる。(このシーンの迫力が本当に凄まじいので、映像になったら軽くトラウマになりそうである) 私たち何でもない人間が、医者に掛かり、悪いところがあったら手術してもらえるということにありがたみを感じるのに十分すぎるほどの重さを持つ小説。今後、医者にかかる機会があったら存分に感謝せねばならないと思った。

    0
    投稿日: 2025.11.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    しんど過ぎて途中何度も挫けそうになった でも極限状態の人間の狂気的な描写はかなりリアルなんだと思う 私の父も外科医で、幼い頃はそれこそ当直もあり、論文書きながら、手術もこなし、幾度となく夜呼び出されて、家族旅行の思い出なんてほぼないし、学校行事に来たことなんて一度もない…結局急逝する2年前、79歳まで医師として仕事を続けたけれど、父が読んだらどんな感想言うだろうなぁ〜とふと思った

    0
    投稿日: 2025.10.27
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    1日で読み終われそう、と思ったけど、とんでもない。読み進めていくと、どんどん胸が苦しくなって、休憩を挟まずにはいられない。 小説とはいえ、救急の現場は実際にこのような状態なのだろう。睡眠もとれずに連続4日間の勤務。精神的にも肉体的にもあまりに過酷。ラストシーン、主人公は生きているのか?明日は?明後日は?

    12
    投稿日: 2025.10.12
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     現役医師が書いたこの小説、フィクションではあるがエピソードは事実に基づいていると想像すると、医師の労働条件とはなんて過酷なんだろう。連勤中の心理描写は、ただただ泣かせる。  後半、主人公の意識が拡張し、デフォルメした描写があらわれる。私にとって、これは不要な描写だ。写実に近い表現の方が、長時間労働と命に関わる重責につぶされ派生する狂気を表現できたのではないか。  BSテレ東で放送されている『あの本読みました』に出演されている著者を観て、本書を手に取ったが、現在、著者がパートタイムの勤務をされている理由がわかる気がする。

    0
    投稿日: 2025.09.23
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    読書記録25-45 『受け手のいない祈り』 芥川賞を受賞された『サンショウウオの四十九日』を読んでその文体の虜になった朝比奈秋さんの作品 現役医師であり作家である作者が描く救命現場 魂を殺して命を救う 患者を救う為ならば医師の命は、魂は 蔑ろにされてもよいものなのか? 一日の区切りのない医師達の背骨が 横たえられる日々であるように願う トークイベントでお会いした朝比奈秋さん 「小説が頭に浮かぶようになってから、仕事や人間関係などが崩壊した」 「頭に浮かんでくるものを書いているだけで、自分は通路のようなもの」 「散歩が気分転換」 今この瞬間も朝比奈秋さんの頭の中は小説が溢れるように湧いているのだと思う

    3
    投稿日: 2025.09.20
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    ただひたすらに救急医の凄まじい勤務実態~長時間の連続勤務~を描いた作品です。 著者は消化器内科医だそうですから、作品に登場する小谷という内科医が著者の分身かもしれません。 私も若い頃、結構な長時間勤務をしました。休みは月に1日だけ、休出の土曜も含め毎日終電近くまで残業、日曜日くらいは「定時で帰ろう」、そんな数カ月。肉体的にはしんどかったけど前は向いて居れました。期限は見えてたし、ある種の達成感も有りました。そして不足気味とはいえ毎日一定時間の睡眠は取っていた。それに比べると無茶苦茶ハード。しかも終わりが見えない。 内科医で作家の南木佳士さんは、末期癌患者を見送り続けてパニック障害に陥ったそうです。南木さんもハードな勤務もったようですが、何となく感じるのは精神的な「静かな死」・鬱。それに対しこの救急医は、他の救急病院や仲間が一人一人と過労死で倒れるなか、まるで太平洋戦争中の日本軍の兵士の様に物資もなければ支援もない中、ただ前に進むしかない肉体・精神両面での壮絶な戦闘死(死んでは無いけど)。不眠不休によって思考は完全に混乱しながらも手は手術を続ける主人公。凄まじい表現が読み応えがある。このあたり、流石に芥川賞作家。 ただな~、私の様なヤワな読者としては、物語として、もう少しサイドストーリーや救いが欲しいな。

    3
    投稿日: 2025.09.10
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    この主人公は、作者ご自身であると決めつけている。 テレビで観た朝比奈さんの印象そのものだった。 医療現場の労働環境がここまで来ているとは。同情なんて申し訳なさすぎるほど。 「一日」という単位の繰り返し。睡眠がその単位を区切っている。 その区切りなく、人の生死に関わらざるを得ない人間。その人たちがいるから安心して「一日」を生きている俺。治してもらわないと困るけど、当たり前と思ってはいけないな。勝手なもんだ。 「何十時間も横にならんかったら、縦に連なった内臓がな、重みで潰れていくんや」

    36
    投稿日: 2025.09.07
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    コロナ禍で地方のいくつかの病院が崩壊した現実があった。今でも、地方では医師不在、救急病院不足の現状がある。 舞台は大阪近郊の総合病院。近隣の病院が次々と夜間救急から撤退、この病院でも医師が次々といなくなり、青年医師の公河は徹夜に次ぐ徹夜で70時間を超える連続勤務で肉体、精神ともに蝕まれていく。 限界を過ぎても断れない救急。患者の命は救われるが、医師の命は捧げなければならないのか。医療との免罪符を手に無数の患者の生命と向き合い続けた罪悪感が精神を追い詰めていく。 私たち全員が向き合うべき現実がここに存在している。衝撃の問題作。

    0
    投稿日: 2025.09.01
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    はじめは、あまりに過酷な労働環境に、お医者さんて大変だなあ、たまに行く総合病院のお医者さんも、皆疲れていて、お休みあるのかなあ、なんて思っていたので、同情するような気持ちで読んでいましたが。 だんだんとみんなが狂ってきて、怖くなってきて、これからどうなるの?と気になって、あっという間に読み切りました。こんなに早く読んだのは久しぶりです。 確かに、医者が昼も夜も働き続けるドキュメンタリーやドラマって、医者をヒーロー化して、医者は特別な人として捉えていて、こんな働き方おかしい!って思ったこと無かったかもしれません。 私が年老いた頃には、もう医者が少なすぎて診てもらえなくなるかも、と怖くなります。 どうしたら良いんでしょうかね? 朝比奈秋さんの本はたぶん全部読んでいますが、1番読みやすいと思いました。

    0
    投稿日: 2025.08.31
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    背骨を立てて浴室で死ぬ。光が眩しい 何日寝てないか分からない。過労死とは。絶え間なく搬送される患者に真摯に対峙する医師たち。医者なら当たり前なんだろうか。ニュースで過労死した若い医師を知らせている。小説を超えた臨場感。

    0
    投稿日: 2025.08.25
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    地域の基幹病院に掛かっているが、ほぼ予約診療でありながら、待って待って…ものの2、3分で終わる診察。もっと話ししてほしい、聴いてほしい、と不満だが、医師のワークライフバランスに思いを馳せると言えない。 救急医療の大変さは、それどころではないようだ。いっそ病に倒れた方が、死んでしまった方がマシじゃないか、と医師が思うのが不思議ではない過酷な勤務状況の描写。重く苦しい読後。 関西弁がナチュラルで、そこが救いなところ。

    0
    投稿日: 2025.08.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2025/05/17予約40 本当の話なのか、と思うほど過酷な労働、連続72時間勤務…救急医療をする側のほうが病んでいる。本来の仕事である医師を真っ当な精神、健康状態で行える環境を整えてほしい。もしかすると救急搬送患者を選別することにつながるのかもしれないが、暴走族やヤクザの救急医療を一般の患者と同じように扱うのが正しいのか考える時期に来ているように感じた。 最後まで救いのない本。

    0
    投稿日: 2025.08.14
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    読んでいたただただ辛かった。 ここまで追い詰められた状況をこれでもかと表現できる凄さ。 受け手のいない祈り・・・深刻だ。

    9
    投稿日: 2025.08.13
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    ※ 過酷すぎる救命医療の現場。 患者の命を救うために自らを削り、 身を守るために抜け出すことも許されず、 膿んで壊れていく様があまりに生々しくて 読んでいてとても辛くて苦しかった。 『誰の命も見捨てない』という創設者の院是。 そこに医師たちの存在が含まれていない衝撃。 医師や医療従事者、多職種の医療人たち 治す側にとっては、当たり前に頼る患者たち として一括りにされ、弱さを振りかざすと 記されていた箇所は身につまされた。 (精神崩壊しつつある主人公視点だからだけど) 常に手の届く所にある医療の存在、その内側に 生と死の狭間で朝と夜の境目のない一続きの 時間を、1日を超えて働き続ける人たちに もっと想像力を働かせなければならないと 強く感じた。 学びはとても多くあった、でもそれ以上に 読んでいて頽れていく精神と肉体が切々と 綴られていてしんどかった。

    6
    投稿日: 2025.08.11
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    読んでいてずっとしんどかった。救急医療で人の命を救うために自分の心も体もぼろぼろにして。 文章が私には合わないと感じたし、とても疲れた。

    7
    投稿日: 2025.07.24
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    受け手にとっては天国、担い手にとっては地獄とも言える日本の医療現場をこの作品以上にリアルに描写した作品は今後も出てこないのではないでしょうか。 概要解説は他の方にお譲りしますが… 希望を心ごとすり潰されても立ち止まれない。立ち止まることが許されるのは自身の肉体あるいは精神の死を迎えた時という極限の状態で見るのはどんな光景なのだろうかと、静かな気持ちで読了しました。 作品全体を通して過重労働の描写が出てきますので、過去に働きすぎて心身を著しく疲弊した経験のある方はメンタルの調子が良い時に読むことをお勧めします。

    8
    投稿日: 2025.07.21
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    「あの本、読みました?」にゲスト出演していた、 朝比奈秋さんの話を聞いて図書館で借りました! 誰も断らない救急医療の現場 地域に3つあった救急医療が2つ崩壊し、残された1医療機関に患者が押し寄せる。僅かな睡眠すら削られ辞めていく医師たちの中、残された医師にかかる負担は心身を蝕んでいく。 辛くしんどい読書でした。

    6
    投稿日: 2025.07.19
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    想像を絶する、医師達の超暗黒勤務実態を如実に描写していながら、タッチがドライな筆致なのでドロベタしてなく読み易かったです

    1
    投稿日: 2025.07.17
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    朝比奈秋、ハズレが無い! やりがいに搾取され、逃げ場のない労働者が、睡眠をもぎ取られるとどうなってしまうか。 それを医師という職業で、表現してくれた、ということだ。 追い詰められた人間がどうなっていくか、公河の内面を追うことで読者に見せてくれる。 恐ろしや恐ろしや。 医師って、子どもたちが目指すいい仕事のはずなんだけど…。直美(ちょくび)もわからなくはないね。

    26
    投稿日: 2025.07.04
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    行き場のない絶望感が伝わってきました。 自分がぼろぼろでも、立ち上がり、治療に臨まなければならない状況に、やるせない気持ちになりました。 読み進めるにつれて、どんどん追い詰められてゆく感覚があり、突然訪れるラストシーンでふと置いていかれるような感覚を抱きました。  命を守る人の命も大切にされる世の中でありますように、と願わずにはいられない物語でした。

    2
    投稿日: 2025.06.23
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    予備知識なしで読み始めたのだが、、、つらすぎる。 医師の芥川賞作家が、救急病棟の医師の過酷な労働環境をひたすら綴っている。 仮眠、徹夜、過労死、退職、廃業、 街に救急病棟がなくなる、でも急患はなくならない。 地獄だ。 若い医師を犠牲にする今の医療体制。 この小説を読んで思う。 日本でトリアージが当たり前になる日は近い。 いや、もう始まっているのかもしれない。 119で救急車を呼んでも助からない急患はこれから増加することだろう。 自分の命は自分で守らなければならない。 健康でいなければいけない。 事故に遭ったら後は運任せだ。 若い医者は圧倒的に足りない。 増える見込みもない。 老人は増え、若者は減る。 老人には諦めてもらえばいいが、出産のトラブルで母子が危険になっては本末転倒。 ますます若いものが減る。 今の日本はそれを知っていながら手を打たない。知らぬふり。 自分だけよければよい。 トリアージしかない。

    6
    投稿日: 2025.06.21
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    芥川賞受賞作家が医師としての経験を元に描いた、受賞後初の単行本。 先日「あの本、読みました?」に出演していた著者、朝比奈秋さんの作品への思いや、「著者が作家になるまで文学作品をほとんど読んでこなかった」というエピソードを聞き、読んでみたくなり借りてきた作品です。 ズバリ、読んでいる側の私まで苦しくなるような内容でした。 救急患者の対応や内臓の外科手術の描写は、医療ドラマも多いので大丈夫と思ってましたが、現役の医師が描く描写は悪く言えばエグいです。 この作品のテーマだと考える、医師の超過労働についても凄まじいです。 残業時間は月三百時間を超えていた。そのあたりから、ほぼ毎日血尿が出た。今もじっとりと湿った気持ち悪さが体にまとわりついて、しかし、体のどこにも汗をかいていない。皮膚ではなくて内臓が汗ばんでいる。そんな感覚がする。胴体の中心が淡く燃えるようなこの微熱に解熱剤は効かなかった。不快で耐えがたいこれの唯一の解決方法は物理的に背骨を冷やすということだった。  本文p112抜粋 原因はどこの総合病院でも同じかと推測しますが、救急病院としての責務を果たすために必要な医師等の慢性的な不足が原因です。 しかし私たちは医療従事者に対して、「命を救う」という使命を当たり前と考えています。 「先月の残業時間が過労死ラインを超えてましたって電話したらな、超えてますが、医者は例外なので違反にあたりません、やって。(中略)おれらのは労働ちゃう、奉公や、奉公。国民のために死ぬまで働けっていう制度やから同じやろ」 本文p135抜粋 解決を見出せないこの作品のクライマックスで、主人公が悟りを開いたような感覚に陥っていきます。 自らの、心を殺し、欲望を殺し、本能を殺し、あらゆる自分を滅して、かわりに救った命は数千をゆうに超える。自我と内臓を捨て、地球の自転の束縛を超え、睡眠と覚醒の狭間に入ったのなら、それは聖人だろう?  本文p231抜粋 こんな医師生活を送りながら、著作活動を行っている著者にはただただ頭が下がるのみです。 そして日本の医療、特に救急医療の現場に対して公的支援の手を伸ばさねば私たち国民自身の首を絞めることになる、そう感じています。

    2
    投稿日: 2025.06.19
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    最初から最後まで重苦しかった。 救命救急の現場の過酷さが、一人の外科医目線で描かれる。 近隣の総合病院が救急から撤退する中、外科医の公河が務める病院は「誰の命も見捨てない」を院是に掲げ、患者を引き受け続ける。 公河らは70時間以上の連勤を余儀なくされ、心身共に極限に達している。 そして他病院でも、公河と医学部同期だった産婦人科医の過労死。誰の命も見捨てないという“命”に、医師の命が含まれていない現状。 医師はどんどん辞めていき、病院は赤字経営、現実に起こっている地方中核病院の撤退や、たらい回しが頻発する救命医療の崩壊は今後加速度的に進んでいくのだろう。 人の命を救うのが仕事とはいえ、医師の命を犠牲にして成り立つ医療って何?と思う。 救急車を呼べば当たり前に助けてもらえる救急医療がなくなる未来はすぐそこに来ているのかもしれない。 全体として良かったけど、ユカリの手術シーン以降の公河の行動や思考過程にはどうにもついていけなかった。まあ、この部分が芥川賞作家による作品たらしめているのかもしれないけど。

    12
    投稿日: 2025.06.18
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    一つひとつの描写が息が詰まるほど重い。救急医療の現場で救う側の医師の命が磨り減り破綻に向かっていく様は、コロナ禍が収束した今日という日にもなお存在する壮絶な矛盾の地獄である。命は尊いという疑うことすら許されない言葉によって、むしろ積極的と言って良いほど蔑ろにされ犠牲となる命を前にして、祈る先を持つ者の中でその尊さは大きく揺らぐ。

    0
    投稿日: 2025.06.16
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    救いがなく感じられて読んでいて辛かった 現実と虚構が混ざり合ってわからなくなる感じに主人公の疲労の深さを感じて怖かった フィクションなんだろうけど どこかであることなんだろうか? あるのか…やはりそうなのか…

    0
    投稿日: 2025.06.08
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    医療現場の過酷さは、想像を絶するものだった。ここまでに、医師が命を削って、心身共に病んでしまうとは。 内臓や手術の表現が、映像よりも生々しく、ちょっと抵抗はあったものの、この表現が医師の心の中を写しているようでもあり、気分は良くないながらも惹き込まれてしまった。 これが現実に近い医療なのか‥。

    0
    投稿日: 2025.06.03
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    どこの医療現場でも医者不足、看護師不足はよく耳にするけれど、ここまで切迫した医療現場を覗かせてもらう体験は初めてだった。 いや、覗くというよりも、主人公に憑依してその現場に居るような感覚で読み進めてしまっていた。 朝比奈さんの作品は初めてだったけど、これだけ読者を引っ張り込むことができる文章表現は、現役の医者だけが理由じゃないんだろう。

    1
    投稿日: 2025.06.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    本の帯につられて読んだが、あまりにも重く、苦しく、悲しい。この本を手に取るには相応の覚悟が必要に思うが、それでも、この世のすべての人が一度は読むべき本と感じたし、こういった本を本屋大賞に選出すべきと感じた。 本作では、救急医療の現場の実態やそこで働く医師の苦悩がリアルに描かれているだけでなく、所謂カスハラ患者や地方医療の姿、対照的な働き方をする皮膚科女医の様子など、多くの医療現場の要素が詰まっている。その中でも、公河の過労に向かう心境や体調の様子がどうにも苦しく、たびたび読み飛ばしたくなる。また、手術や患者の病態の描き方も細かく(この辺はさすがに著者が医師なだけあると感じる)、医者からの見え方がよく伝わる。 私自身、労働は対価のために行われるものだと信じており、本作はここに尽きると思うのだが、良心や使命感から搾取する労働、本作における医師をはじめとした職業(ほかにも学校教員や官庁職員などが挙げられるか)は、早く労働環境を改められてほしいし、そういったことを行える立場に立って是正していきたいと強く感じる。公河からは節々に医師としての使命感が読み取れるし、医師を志す人の多くはそういった利他的な想いを持っていると思うが、その点を国も患者もそれ以外のすべての人々も理解して、お互いに尊重し合い、守り合える社会にしていかないといけないと思わされる。利他的な精神だけでは世界はまわらない、皆が相手のことを想像して、思いやって生きる、そんな社会になったらいいし、したい。

    0
    投稿日: 2025.05.27
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    救急受け入れの減っている現状,残っている病院にかかる負担の過酷さに言葉が無い.同期の過労死や自分も仮眠すら取れない状況で神経を蝕まれていく. 背骨が持つ熱や爛れていく内臓描写に気持ち悪くなりながらも惹き込まれた.

    0
    投稿日: 2025.05.27
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    他人の命を救うためとはいえ、自らをここまで犠牲にしなければいけないとは。医師の経験を持つ朝比奈さんなので、リアルな体験を踏まえて書かれたものなのだろうけど、想像を超えた過酷さだった。 そもそも、医師にはこれまで残業規制がなかったことも初めて知った。働き方改革で規制ができたけど、そのラインが960時間!普通に多いわ。 これだけ長時間、しかも神経を使う仕事をやり続ければ、身も心もおかしくなってしまう。 内臓のグロテスクな描写が、医師の心の中を表しているようで、こちらまでちょっと気分が悪くなりながら読んだ。

    48
    投稿日: 2025.05.11
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    タイトルの意味にはわりと冒頭で気づけるが、その意味はあまりにも虚しい。途中から現実なのかそうでないのかがわからなくなってくる。この作者はその描き方が絶妙で、その感覚が好きで本作品も手に取ったが、今回は心があまり揺れ動かなかった。現実味がありすぎたからだろうか。

    0
    投稿日: 2025.05.04
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    救急救命がある病院で働くあまりにも忙しい外科医たち。48時間、72時間眠れずに働き続ける。つらい現実。途中から内容がわからなくなってしまった。

    2
    投稿日: 2025.05.03
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    過酷すぎる医療現場で心身をすり減らし、少しずつ体にも精神にも異常をきたしていく医師たち 祈りは誰のため、何のため 「背骨がたったまま」と繰り返し使われる 背骨を立たせて生活するのは人間だけ、背骨を横にして眠る時間は死に近づくのか、原始に戻っているのか 治療する側が健康でなければ、というのがおためごかしなのが分かる そうしたいわけでもないのに、自分を犠牲にして患者を受け入れる虚しさ 医師である作者の実体験なのかもと思うと苦しい

    0
    投稿日: 2025.04.27
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    医師で小説家の朝比奈さんらしく医療小説。 過酷な労働を強いられる医者という立場。 何日も寝ずに働き続け、体を壊して、それでも患者を救わないといけない。 内容は良かったけど、描写がリアルでグロ過ぎてちょっと苦手だった。 作品は良いけど私は好きではない。 この書き方だから内容が生きるのだと頭では理解できる。 よくできた人間が主人公では、この作品の良さはなくなるし、伝わらない。 分かるのと自分が好きかは別問題。

    1
    投稿日: 2025.04.19
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     コロナ禍で救急を受け入れないことに決める病院がある中、地域で唯一救急を受け入れる救急病院で働く医師公河。  ある日、同期で産科に勤めていたヤナザキが過労死したということを聞く。  ヤナザキの過労死、連日救急の受け入れで不眠の主人公の公河や同僚たち。  これは、命を救うために命を捧げる医師たちの物語である。  実は、血とか内臓とか手術とかのシーンがとにかく嫌いな私。  作者が医師ということもあり、描写がリアルすぎて、登場人物の医師がメスを入れているシーンや腸をもつシーンなどが生々しく想像できてしまい、想像力との戦いとなりました。  そこは本当に読んでいてしんどかったというか、お酒なしでは読めないくらいに生々しすぎました。  そんな、本作品ですが、毎日毎日途切れなく救急車で運ばれてくる患者たち。  不眠で、過労死するんじゃないかくらいの医師達からすると患者の命よりも自分たちが休みたいくらいのはずなのに、まさに寝る間を惜しんで患者を救おうとする医師達。  そんな彼らを突き動かしているのは、目の前に救えるかもしれない命がある以上は救いたいという医師としての使命感や義務感なのか?  何が、彼らをそこまで動かすのかということを読んでいる途中で考えました。  仕事をやっているときに、やりたくない仕事もあれば仕事をする気になれない時というのが私にもありますが、やりたくない仕事であっても、生活のためだからとかいろんな理由で奮起してなんとかやりこなすということはあります。時には手を抜いたりしてしまうことやさぼりたいと思うことだってあります。  本作品に登場する医師達も人間ですからそういうズルい面を見せたりするのですが、いざ救急の患者を目の前にするとまさに自分の命を犠牲にしてでも目の前の患者を救おうとしている。  そんなブラックな職場を続けたいわけでもないのに、救おうとしなければ自分は休めるはずなのに。  おそらく、この究極の状況でも医師という生き物は自分の命を削っても患者を救おうとする生きものなんだろうなと思いました。  そういう意味では、自分があるいは家族が病気になった時、私たちが祈る相手というのは医師達で私たちには祈りの受け手というのが確かに存在している。  しかし、治療する側の医師達の祈りの受け手というのはあるのか?そもそも祈りすらないのではないか。  そんなことを思ってしまった作品です。

    4
    投稿日: 2025.04.16
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    芥川賞作家。激務のために肉体も精神も病んでしまう若い医師の話。 周りはなぜ気が付かないのだろうか。人手不足の職場だと、誰もが自分のことで手一杯になってしまうのか。 誰の健康も害することなく回っていく仕組みが作れたら良いのに。

    53
    投稿日: 2025.04.16
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    総合病院で医師として働く公河は、別の医院で産科医だった同期が過労死したことを知る。 公河もまた、昨日と今日の境目がわからないくらいに働き続けていた。 近隣の病院が夜間救急から撤退し、公河の病院が最後の望みであるためか、徹夜での治療や手術が寝る間もなく延々と続いていく。 外科手術の様子が仔細にある場面や睡眠がとれなくて麻痺している状態がこれでもか…と。 あまりにも過酷すぎる救命の現場に人の命よりも自分の命は考えられないのか、とさえ思ってしまう。 ここまでくると限界を通り越して、考えることすら停止してしまう怖さを感じた。 医師としての経験があるからこそ、すべてがリアルに思えて余計に衝撃の度合いが増した。

    63
    投稿日: 2025.04.14