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彼女を見守る
彼女を見守る
ジャン=バティスト・アンドレア、澤田直/早川書房
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総合評価

7件)
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ゴンクール賞。イタリアの20世紀前半激動史を背景に、軟骨無形成症の境遇で彫刻家への道を目指す主人公とパトロン家の少女とが、お互いの人生で交差する時間を大切に描いた作品。ミケランジェロ作品と並び賞されるピエタを頂点とする彫刻家パートがとても面白かった。彼女との接点での一番素敵なクライマックスは、フラ・アンジェリコの受胎告知を見せるシーン。2人の奇特な人生が絡み合う頂点の輝きを感じ取れた。もう一つの頂点は、彫刻家としての矜持を果たした授賞式のシーン。全体に反ファシズムへのメッセージが強く込められている佳品。

    1
    投稿日: 2025.10.22
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    ゴンクール賞(フランスの一番すごい文学賞)と、日本の学生が選ぶゴンクール賞(各国の学生がフランス語で読み、気に入ったを選ぶ賞の日本版。てか、こんな賞があるなんて!)をとったスケールのどでかい小説。舞台は20世紀のイタリア。戦争、貧困、障がい。友情と恋と芸術。名誉、栄誉、夢。あとなんだ、もうかなりの要素が詰まって、そのどれもが大きな意味をなしていて、著者のメッセージも受け取って、物語にもいくつものクライマックスがやってくる。500ページの物語の最後の最後まで、左手にもつページがこんなに少ないのにー、と思いつつもええええーーっ! という展開になる。他国の歴史や文化に触れながら、誰かの一生をどっしりと、ゆっくりとなぞる。やはり時々は、こういう時間が必要で、小説を手に取るのだ、と改めて思わせてくれた。満たされた。

    1
    投稿日: 2025.09.28
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    ヴィオラが語る、『墜落はほんの数秒じゃなかったの。二十六年間も続いたのよ。』ここに彼女たちの怒りがみえた。

    0
    投稿日: 2025.09.22
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    主人公が彫ったピエタは素晴らしい。素晴らしいのだが、何故か皆、少し違和感を覚える。最後に解き明かされるその秘密。そこに至る数多くの伏線。作者のJ.B.アンドレアの構成の才能は素晴らしい。 近代イタリアの歴史や事件を織り交ぜながら、文化遺産の解説までしてくれるので現地を旅しているようだ。権力者と貴族たちの謀略に抗う貧しき人々。目まぐるしい展開は、豊かに描写されている登場人物たちの動画のよう。読者は彼らのうちの誰かのファンにさせられてしまう。エンタメ&教養小説とも言えるが、ジェンダー問題など、現代的価値観もしっかり反映されている。 翻訳は素晴らしく、とても読みやすい。 惜しいのはタイトルが原題の直訳であること。もう一捻り欲しいところ。

    0
    投稿日: 2025.08.15
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    平明な訳文に比して、内容が(特に感情のうねりが)捉え辛く、何度も行きつ戻りつ読み進んだ結果、結構に読了まで時間を要した。 20世紀前半のイタリアを舞台とする「身分差のある感情、恋、愛」と言えば簡単だが、フィクションとは思えない文化芸術の学びを貰えた。 小人症という身体的ハンディを持って生まれ育つミモ、同じ日に生まれた貴族令嬢ヴィオラと不可思議な縁に導かれるように互いに魂が付いたり離れたり。。 ゴンクール賞を得た力の程は「身体的ハンディともって生まれた出生」をものともしないミモの心と彫刻技術の成長とヴィオラの「当時としては」不遇をかこち、批判にさらされ続けざるを得なかった一生が相対する鏡のように描かれた当作品でよく表されている。 ムソリーニの支配でイタリア全土が振り回されナチズムの暗雲垂れこめた中、キリスト教、司祭、歴史ある彫刻界の描写がとても興味深かった。 史実ではないのでミモの死に向かう時間が決してバラ色ではなかったであろう想像が個人的にダークなエンドで締めくくられた。

    5
    投稿日: 2025.06.06
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    読み慣れていなくて何度も戻ったりしながら読む。 (訳自体はとても読みやすい) 彼女がどうなってしまうのかが気になって、ページをめくる。聡明で好奇心旺盛で、自分の信念に忠実で。 でも、女性ゆえ不遇、批判される人生を送り、誤解されるというか輝けない、思い通りに生きられない。 イタリアのファシズム含め時代の暗さと反動の芸術性の対照さも見られる。 彼女が最後にミモに送った手紙がユーモアがあって悲しくてとてもいい。ミモとの友情?愛情?時にねじれたりもするけど、ヴィオラはミモを唯一の理解者と思い時に甘える。そんな関係にミモは自信をつける、そだててもらう。 いつも出てくるオレンジやネロリの描写が香ってくるようなポイントとして明るい印象となる。 彼は、残りの余生どのように生きたのか、濃すぎる半生(前半)に思う。彼女をずっと思いながら。関係ないけど、修道院の臨終の場面が質素過ぎる。

    1
    投稿日: 2025.05.10
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    小説はこのようなものでなければならない。「女性(の……)」をキーとする共時性を持ちながらも、そこから敷衍する視線の広さと深さ。

    2
    投稿日: 2025.03.17