
総合評価
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powered by ブクログ内容はとても重いのに アサイラムの生活が静かでだいぶ好みでした。 心に傷を持った人たちで暮らしていくなんて 理想的かも。私も住みたい。 性被害ではなく性加害、 言葉一つとっても違うものですね。
0投稿日: 2025.11.05
powered by ブクログ登場人物の複雑な心境が細かく描写されていて分かりやすかった。主人公の気持ちとリンクするように、物語が進むにつれて描写が鮮明になっていっていたのが個人的に好きだった。
0投稿日: 2025.10.21
powered by ブクログ最後まで読んだけどー うーん 興味を持てなかった。 女性が男性に求められることは誇らしいことだという意識がどうしてもある。 魅力的ってことではないの?
0投稿日: 2025.10.20
powered by ブクログ見えない傷を抱えている人は時間と受け入れと治癒に時間がかかる 見えないからこそ厄介で調子が悪くなると一気に穴に落ちてしまう アサイラムで過ごして少しずつ前へ向く彼らがこれから少しでも安寧な日を過ごせるように祈りたい
0投稿日: 2025.10.12
powered by ブクログ自分の日頃のおこないを振り返ってしまいますね。今までもたくさん傷つき、傷つけてきたであろう過去までも振り返ってしまいます。ツラい。 本作は、性加害(あえて性加害と言います)にあった主人公スミレが行政の支援によって支えられている市に住んでいます。 昔からの住人もいますが、虐待やいじめなど様々な被害者の方々が移り住んできていて、傷つかないためのルールのもとに暮らしています。 むやみやたらに相手の過去を聞かない。 その場にいない人の話はしない。など、当たり前であるような、でも実はそれでコミュニケーションをとることが普通になってしまっているような、うー、考えさせられる。 人は怖い。他人と関わらなければ、平和に穏やかに暮らせるのに。生きるって難しい。
0投稿日: 2025.10.08
powered by ブクログ加害行為により傷ついたひとたちの再生への話です。深く考えさせられるため、読後感はかなり重めです。 被害者への支援の必要性が、今になってやっとクローズアップされてきたように思います。その究極系とも言えるのが、作中に登場する街です。行政がここまで取り組むことは十中八九ないので、実現することはないのでしょうが。。 この話の中で難しいと感じたのが、二次的な加害行為についてです。性加害では特に、そんなの大した事ないしいつまで引きずっているの、と言ってしまいそうになる自分に気付きました。被害者をただただ追い詰めてしまう言葉です。 街でのルールとして、他者に深入りしない、噂話をしない等がありました。それはすなわち、それらの行為が二次的な加害行為になりやすいということだと思います。誰も傷つけることなく生きていきたいものですが、少なくとも不用意な一言をなくす努力を続けていきたいと思います。
18投稿日: 2025.09.19
powered by ブクログアサイラム=避難所という意味らしい。アラブの国のご挨拶かと勘違いしていた。 街全体が避難所になっているこの場所では、性加害や虐待に遭った人々が暮らす。 過去に何があったか、お互いに話す必要はない。仕事も体調をみながら自由に休める。金銭的な公的サポートもある。理想的な場所にみえるけど、どこか宗教的な雰囲気もあって…できることならお世話になりたくないなと思った。 なるほどと思った表現は、性被害≒性加害。 加害者がいることで被害者が生まれるというのはその通り。だから、「性加害に遭った」という表現なのだと。日本では加害者がばかりが優遇されていると感じてるので、アサイラムほどまでいかないまでも、もう少し被害者が守られるといいなと思う。
43投稿日: 2025.08.24
powered by ブクログ性加害、いじめ、虐待、DVなどの被害者のために作られた街のお話です。 こんな街が現実にあったら救われる人は多いんじゃないかな…というか、現実がこの街みたいに優しい世界だったらいいのになぁと思います。 日本にはまだまだ性加害やいじめなどの完全に犯罪なのに犯罪となかなか認定されず被害者が泣き寝入りするしかない事件が山ほどあって、本当に暗澹たる気持ちになります。 被害を受けて仕事を辞めざるを得なくなったり、転校したり、なぜいつも被害者ばかりがこんなに苦しまなければならないのか…。 主人公のスミレは大学時代に同じサークルの男性からの性加害に遭います。数年後サークル同窓会で、同じサークル仲間が全員そのことを知っていたことを知ります。更に、サークル仲間たちは、その事件を男性側の片思いが成就した甘い恋愛事だと思っていたと知り、強いショックを受け仕事に行けなくなります。 友人女性から「みんなが(そういう体験が)あること」「気にしすぎ」「自意識過剰」などと言われるのが最悪のセカンドレイプで…。 でも、セクハラや性暴力を容認し、女性の人権をないがしろにする社会にその友人も順応させられてるんだよなぁ。 被害者たちの街で心と身体を回復させ社会に復帰するのにも、当然その人その人でハードルは異なる。 スミレのまわりにはスミレと同じ性加害の被害者もいるが、同じような経験をしていても、人それぞれにバックボーンは異なる。スミレのように比較的良好な親子関係で学歴が高く仕事ができる女性もいれば、中卒で家族仲が悪く彼氏の家を転々としていたような女性もいる。 人によっては辛い経験を乗り越えるのではなく、被害を無化して以前と同じような環境に戻ろうとする人もいる。 なんで?と思ってしまうが、本人には避難する原因となった被害の他にも周りが気づかないようなコンプレックスやトラウマがあって、優しくて正しいこの街で疎外感を深めてしまうこともある。 被害者の救済や社会復帰は本当に難しいものだと思いますが、主人公がなんとか前向きに新しいことに挑戦するラストに少し希望がありました。
4投稿日: 2025.08.16
powered by ブクログこんな町が現実にあればいいのに。批判はあっても行政の支援は必要だと思う。自分が家族や友人だったら何ができただろうか。
0投稿日: 2025.08.10
powered by ブクログ優しいってやっぱり優柔不断ということだと感じてしまった。気を遣って、相手にあわせることばかりしなくてもいいのに。
0投稿日: 2025.07.16
powered by ブクログ心に傷を負った人たちの街。優しくて穏やかで、でも少しだけ息苦しさもあって。 面談で、加害者側の視点で事件を語った被害者に対して担当者がかけた言葉「あなたはあなたが見たことを信じればいい。そしてそれを話せるようになってください」に、ハッとした。自分視点で物事を語るのは、主観的であまり良くないことのように思えてしまうけど、そんなことはないのかもしれない。 すごくがんばっていて、がんばりすぎて周囲から心配されていて、その心配の通りくじけてしまった留美ちゃんを見ていて寄り添うことの難しさを痛感した。留美ちゃんが街を出た後どうなったのかわからないままなのが気がかりだけど、人生ってそういうものだから。畑野さんの作品はいつも、人と人の関わりは人生のほんの通過点だと教えてくれる。 雪下くんが街を出て行ったのはどんなに前向きな旅立ちであっても寂しさが大きくて。 いつか、元気で再開してほしいな。
0投稿日: 2025.07.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
アサイラム(asylum)とは、英語で「避難所」や「保護施設」といった意味を持つ言葉である。 様々な加害行為を受けた心に傷を負った被害者が安心して暮らせる街を税金で賄っている。この世界は、彼女たちの理想郷だなと感じた。 様々な問題から、現状だと実現は難しいと思う。 しかし、私も、アサイラムのような避難所のような居場所を見つけたいなと思った。
0投稿日: 2025.06.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2025/05/03予約 24 アサイラムとは避難所、保護、亡命などの意味。 心に傷を負った被害者が安心して暮らせる街を 税金で賄っている。税金の使い道として理解してもらいにくいとは思うが刑務所は莫大な税金で運営されている。そう思えば被害者は自力で立ち直れというのは公平ではない。考え方のひとつとして、なるほどと思った。ただ体の傷を負った人、病を得た人の事も考えたいと思う。働きたいけど働けない、そして福祉からもこぼれ落ちる人は必ずいる。全ての人に同じように、と思うが言うは易しなんだろう。理想郷ではある、そんな国になればいいな。
0投稿日: 2025.06.15
powered by ブクログこんな街が現実にもあったらいいのに。 「そんなこと」と言われても、それを嫌だと感じたなら、それは「被害」でいい。 社会的には相手を慮るのも大事かもしれないけど 自分を一番大切にできる生き方をしたい。 もっとキツイかなと思ったけど 比較的マイルドな濃度で読みやすかった。
0投稿日: 2025.06.15
powered by ブクログタイトルの意味通りの物語。 現実にこの物語の舞台となる街は存在してるのか?と考えてしまう程度にはリアリティはあります。恐らくそこに集う人々が現在の社会が形成する歪みの被害者だから。 しかしながら最近の著者の物語はデリケートかカテゴリーかつピンポイント的に誰かに発信されてる気がします。
69投稿日: 2025.06.04
powered by ブクログいじめや何らかの犯罪被害者が避難して庇護下で生活できるという架空の街。本人だけではなく家族で住むことができる。 被害者ではなく「加害行為に遭った」という表現に違和感があったが読み進めるとなるほどと思えた。 加害者は刑務所や更生施設で税金によって暮らしているのに被害者にはそのような制度がないのは確かに矛盾している。 犯罪被害者でなくても心を壊してしまう人が増えている昨今このようなコミュニティが必要だと感じた。
0投稿日: 2025.06.01
powered by ブクログちょっとSFっていうか不思議な話だった。 なんか心がゾワゾワする。ずっと闇って感じだった。 留美ちゃんみたいな結末の子がこの作者さんの本にでてくることに驚いた
0投稿日: 2025.05.15
powered by ブクログアサイラムとは避難所のような意味合いがあるらしい。主人公のスミレは大学生の頃に受けた性暴力により、仕事を辞めざるおえない状況に陥ってしまう…。そんなスミレがたどり着いたのが、性暴力のみならずDVや虐待、いじめなどの被害者を集め心のケアを受けられる地域だった。被害者同士やカウンセラーとのつながりを得ることになったスミレは…。 罪を犯した人には刑務所がある、でも被害を受けて心に傷を受けた人たちの救済の場は?って考えるとないんですよね…!この作品では、被害者の心の負担を最小限にできるよう行政サービスを行き届かせています。実際にあったらどうだろう?とか、ちょっと考えちゃいました。こんな地域があったなら、いけないこととは思いつつも偏見の目で見ちゃう気がします。 被害を受ける人がいなくなれば、それが一番いいことなんだと思います。それに必要なことはなんだろう?教育かな…??被害を未然に防げるシステムとかもいいかも…!いずれにしても、この作品は、読んでいてキツイ作品でした。
66投稿日: 2025.05.11
powered by ブクログ加害に遭った人たちの街が本当にあるのかと思って思わずネット検索してしまった。実在はしないよう。世の中にこういうコミュニティがあってもいいと思う反面、コミュニティ内で全てが完結してしまうのもこわい。 当事者にならないと本当の辛さはわからないけれど、自分がニ次加害を無意識に加えないように、自分の物差しを常に疑うようにしたい。 自分が我慢すればいいみたいな風潮はやっぱり無くなってほしいし、自分自身もやらないようにしていこうと思う。 読みながらあっちこっち思考が飛んで、色んなことを考えさせてくれる本。というより、考えざるを得ない状態になってしまう。
27投稿日: 2025.05.06
powered by ブクログ7年前に性加害にあったことが少しずつメンタルを壊していく。その生きづらさが丁寧に描かれている。加害者の自己中心の暴力、時には善意や正義に読み替えられていることの不条理。 この被害者に寄り添ったコミュニティ、税金の無駄遣いではないし、実際にあれば本当に素晴らしいと思う。
0投稿日: 2025.05.02
powered by ブクログ他の方の感想で「この作者は登場人物たちを甘やかさない」とあったが、読んでいて確かにその通りだなと感じた。 何らかの加害にあった被害者たちが前と全く同じように生きていくことは難しく、人生の再構築を行わなければならい辛さがある。 皆幸せになってほしいけど…実際には遠くで、あるいは近くで見守り/見守られながら祈ることしかできないのがもどかしい。
1投稿日: 2025.04.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
大学時代にサークルのメンバーから性加害を受けたスミレ。それに蓋をして頑張って日々の生活を送って居たのに、その加害者がその事を良い思い出の様に話して居た事を知り、心が壊れてしまう。 辿り着いた場所は、行政が心のケアを必要としている人達を支援する街で… 誰もが傷を抱えている街で、苦しみから立ちあがろうともがく様子が痛々しく、そんな簡単に癒えるものではないのが現状でした。 加害者が自分のした事に気づかず、青春の一ページの様に語るのが許せませんでした。スミレの謝ってきたら許さなくてはいけないと言う言葉が重かったです。 スミレもその街をいつか出ていくのかと思いましたが、そこに止まり支援する側に就こうとするのは前向きになれて良かったです。
4投稿日: 2025.04.26
powered by ブクログ「優しさ」の基準や価値観が同じだったので、安心して読むことができた。 情景の描写が綺麗で、見たことない街並みが頭の中に浮かび上がってくるようだった。 本当にアサイラムが存在していたら良いのになと思う。
2投稿日: 2025.04.25
powered by ブクログこういう街あるのかな?と調べたくなるほど、個人的にはとてもいい税金の使い道で、いいなと思ったけども。そこまで直接的な表現がなかったので読みやすかった。留美ちゃんが…気になる。元気じゃなくてもいいから、生きていてほしい
1投稿日: 2025.04.22
powered by ブクログいじめ、DV、犯罪、ハラスメントの被害に遭って心が壊れた人が行政の支援を受けて暮らす架空の街を舞台に、性加害に遭いこの街に来たスミレの回復の過程を描く物語。 人の心って壊れやすく、ひとたび壊れたらなかなか修復していかないものなんだなとしみじみ思う。 この街は街全体が「避難所」。ある意味理想のサンクチュアリ。徹底したルールの下に、経済的な不安もなく安心して暮らせる街は被害者に優しく、ともすればずっとここにとどまりたくなるだろう。それは決していいことではないと思う。 だからこそ、外に出て生きていくことを選択した雪下君を応援したいし、ここで自分を変えることに苦痛を覚える留美ちゃんの気持ちもわかる。 一方スミレ。他者の気持ちを優先しすぎるあまり、必要以上に傷ついて、その人を断罪する。こういう思考過程の“繊細な人”が本当に苦手。 エレベーターのエピソードを男性優位の象徴のように取り立てるのも違う気がする。さっさと乗り込まないから先を越されただけじゃんって思うけど。 登場人物で一番好感を持てたのは役所の新川さん。彼の方が心壊れそうだと思うんだけど、被害者ヅラしないで冷静に任務を全うしようとする姿がいい。
1投稿日: 2025.04.21
powered by ブクログP73 〈ここは、被害者のための街だ〉 傷ついた人たちが住む。 独自のルールがあり、セキュリティも厳しい。 ある意味、安全に暮らすことができる街だ。 ここに住む多くの人は 計り知れない痛みを抱えている。 行政が管理し、不自由なく生活することができる。 見えないバリアで守られている。 読んでいてそう感じたが どこに住もうが傷が浅くなることはない。 慎重に、街の住人に寄り添うように 畑野さんは、心を砕いて書かれたんだということが伝わってきた。 タイトルも装丁も素敵で、気持ちの籠った一冊。
0投稿日: 2025.04.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
シェルターのような役割を担う架空の街が舞台となっている。 いじめ、虐待、DV、ネグレクト、性暴力。さまざまな要因で深く傷を負っていたり、精神的に弱っていたりする住人たちが、行政やのサポートや助けを受けながら、自分の身に起こったことをゆっくり癒やしていく過程が描かれる。 登場人物の一人一人が、それぞれ自分なりの方法で過去と向き合っていく描写がとてもていねいだった。 主人公である真野スミレは7年前、大学の同じサークルだった男子から一方的な好意を寄せられていた。 やがて留学することになった彼を送りだすために開かれたお別れ会の後で、彼は友人の協力でまんまとスミレの家に上がり込み、そして同意なくスミレのからだを踏み躙った。 それを青春の1ページだと表現したり、もう何年の前のことでしょと言ったり、同じようなことはみんなあるよと簡単に宥めたりするスミレの周囲の人間には呆れてしまったが、現実でも案外そんな人が多いのかもしれない。 「多くの人が言っていたし、わたしも自分は性被害に遭ったと思っていました。けれど、それでは、そこには被害者しかいないみたいに聞こえます。加害者はいるのですが、顔が失われていくように感じるんです。被ると遭うで、意味も重なっている。他のことでは、あまり使わない表現です。交通事故に遭ったといえば、被害者であることはわかる。詐欺に遭ったとかも同じです。そこに先に存在していたのは加害行為や性暴力であって、被害ではないのに、性被害に遭ったとばかり言われる。これは、被害者を閉じこめる言葉だという気がします」 スミレのこの解釈は、性暴力がいかに軽く扱われているかを言い当てているのではないかな。「加害者がいたから、全てが起きたのであって、被害者が起こしたわけではない」。 タイトルの“アサイラム”とは、避難所や保護、亡命という意味をもつらしい。 人々が安心しておだやかに暮らせるそんな街が、現実にもあるといいなと思った。選択権は、常に本人だけにある、と確信していられるような場所が。
2投稿日: 2025.04.14
powered by ブクログ辛かった。 アサイラムは避難所を意味する。 困難な状況にある人をケアする目的で行政が創り上げた街。 この街では性加害に遭った人やいじめ、DVを経験した人達が生活する。 文中に何度か宗教という言葉が登場するが、そんな空気感があった。 最も辛く感じたのは、性加害に遭った人への心無い言葉。 自分を責める当事者に追い打ちを掛ける言葉の数々。 責められるべきは加害者だ。 仮に自業自得だと思ったとしても声に出す必要などない。 居場所があることは心の支えになる。 だがアサイラムが無くても安心して生きていける社会になって欲しいと心から願う。
7投稿日: 2025.04.09
powered by ブクログ読んでて苦しくなった。 大なり小なり日々暴力にさらされても、なんとか我慢して、順応することが良しとされる、そんな世界に確かに私たちは生きてるんだということをこれでもかというほど見せつけられた気分。 そして悲しいのが、自分もその鈍感さゆえに、人を傷つけてきただろうことにも思い至ってしまうことだ。
5投稿日: 2025.03.25
powered by ブクログはじめに「この小説には、性暴力に関する描写があります。」とある。 行政が作ったいじめや虐待、性暴力などの加害を受けた人たちを受け入れる街。 言われてみれば確かに、加害者には刑務所や更生施設など、税金が投入されているのに、被害者にはなんのケアもない。 興味本位や良かれと思って踏み込んだり意見したり、そうじゃなくても噂を鵜呑みにしてしまったりもする。 良いことばかりではないけれど、こんな街に辿り着いたら、出られなくなりそう。
1投稿日: 2025.03.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
今のところ今年読んだ本の中で一番好きです。 畑野智美さんの著作は作中の登場人物を甘やかさないので読んでいて辛くなるけれどもその分大好きになる作品が多いのですが本作も登場人物をとことん甘やかさず、でも帯にも書かれているとおり現代女性の寄る辺なさに真摯に向き合ったすごい作品だと思いました(語彙力)。 性別や世代を問わず困難な状況にある人たちとその周りの人たちを丁寧に、ときに残酷なまでに描いていて苦しさとハラハラを行ったり来たりしながら読んでいました。 ココアちゃんのお母さんが出てくるところ、留美ちゃんが変貌していくさまや、レナとのやりとりのくだりはひゃっとなったけれども、それがスミレの心の変化やエンディングにつながっていく。 新川さんは最初のうちはつかみどころがない感じだったのに最後にはこんな人になりたいと思わせられました。 本作の登場人物と読者の心が少しでも平穏になるように願ってやみません。
10投稿日: 2025.03.25
powered by ブクログ犯罪に遭った被害者が保護される場所はあるのだろうか。まだ加害者の方が刑務所に入っていたりと世間から隔絶されており、守られているような気もする。 一方、被害者は誰も守ってくれない。特に性被害に遭った人は、世間からなぜかバッシングを受ける。被害者の態度、見た目が相手の性欲を煽ったのではなどと。これには納得がいかないが、残念ながら世間は被害者に厳しい。 "アサイラム"はそんな被害者を保護してくれる場である。外部の世界に出なくても、そこで生活が完結するようなコミュニティである。 そんな場所でも、なぜか世間からの視線は冷たい。税金使ってそんな場所作って…という視線だ。私も実際アサイラムのようなコミュニティがあったら、あえてバッシングこそしないものの、素晴らしい取り組みだとは思わない気がする。 コミュニティの内部がどうなっているのか分からないからだ。この本の主人公のスミレも、アサイラムにいることを宗教と言われたりしているが、これはもうどんなに説明しても、分かってもらえないと思う。 結局、被害者の気持ちは、被害者にしか分からない。私が唯一、ハッとしたのは、加害者に謝ってほしいかと問われたスミレが、「謝ってほしくない、許さなくてはならないから」と答えたところである。 そこだけが、被害者ができる最後の抵抗なのかもしれない。
9投稿日: 2025.03.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
大学生の時に友人からの性暴力にあったスミレ。限界に達した心を抱え、困難な状況にある人たちをケアする街に辿り着く。 『怒りや暴力は、人を支配するために、とても簡単な手段だ。』p197 『加害者がいたから、全てが起きたのであって、被害者が起こしたわけではない。』p216 『日本が「努力と根性」を美しいこととしてきたことにも原因があると思う。襲われないようにする努力、襲われた時に逃げる根性、自分にはそれらが足りなかったのかもしれない。足りない自分は、駄目な人間なのだ。』p226 『多少の暴力やハラスメントに、笑って返せる方がかわいがられるし、生き方として賢いのかもしれない。でも、その世界で、楽しく生きていける人は、誰なのだろう。』p233 『わたしの人生なのだから、最優先するべきは、わたしなのだ。』p314 加害者と被害者。 その認識の違いや、その後の人生が、あまりにも違いすぎて、読んでいて心が痛かった。。。 被害者は目に見えない一生の傷を背負い、日々懸命に生きている。あの事件さえなければ、全く違う人生を生きていたはずなのに。本来の自分は、違うはずなのに。 大きな事件に限らず、日常的に似たシチュエーションにでくわした人も多いはず。 わたしもなぜだろう。親からそう教わった記憶はないのに、我慢したり、笑って返したり。自分であきらかに心に傷がついたとわかっているのに。どうしてなんだろう。 そしてその痛みを知っているはずなのに、加害者側にたったことはないだろうか。無意識にだとしても。 すごくすごく、苦しいお話でした。 でも、わたしはこの作品がだいすきで、宝物です。
5投稿日: 2025.03.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「性暴力」を描くのは難しい。どんな描き方をしたとしても過去に被害に遭った人に対して新たな暴力となる可能性があるから。 読む側にも覚悟を求めることになる。本当にこれを読むのか、という自分への確認。 テレビで盛んに取り上げられている問題でもあり、どんな形であったとしてもこの「性暴力」と全く無関係な人はいないのでは、と思える。 男だろうと女だろうと、性的に「被害」というところまではいかなかったとしても「嫌悪」を感じたことはあると思う。日常的に何らかの形で性暴力に触れている。 ただ、それをよくあることとして、あるいはなかったことにして、心にふたをして生きていけるかどうか、で道は分かれる。 主人公スミレが大学生の時に友人から受けた性暴力。 「友人」というところがこの被害の困難さにつながる。もしこれが知らない相手だったら、迷いなく「事件」として訴えることができたかもしれない。 学生生活のその後を無事に過ごすため、傷を矮小化しようとする。自分にも落ち度があったから、と被害の責任を請け負ってしまう。 本当は許せないことなのに。許すべきではないことなのに。 被害の大小にかかわらず、それをなかったこととして、平気なふりして蓋をしている人がたくさんいるだろう。そうしなきゃ生きていけなかった人もたくさんいるだろう。 そういう性暴力だけでなく、さまざまな問題で「普通の生活」ができなくなった人たちのために行政がケアを目的とした「街」を作っている、という。 実際にあるのだろうか。この小説ほど大規模でなかったとしても成り立たなくなった生活を成り立たせるために、ケアしてくれる街があるのだろうか。 住人同士で相談事は禁止、過去について問うことも避けて、「今、ここにいる自分」という現在だけのつながり。 心を殺された人たちにとって、それは最小で最大の砦なのだろう。 スミレの心は何度も殺されている。性暴力の加害者に、それに加担した友人たちに、その噂を広めた知り合いに、そして、なかったことにしようと目をふさいだ自分自身に。 身体の傷は消えたとしても、心の傷は消えることはない。ケアによってふさがれたとしても、その傷を受けたという事実とともに残り続ける。 傷ついた心を抱えたまま、それでも普通の暮らしをしていくための時間を与えてくれる街。本当にあったらいいのにと思う。その街に救われる人がどれほどいるだろうか。 心のケアに勇気はいらない。心の傷に手を当てながら、砂時計を何度もひっくり返す時間が必要なんだ。 スミレや同僚の留美の、店長の、仕事上の付き合いの雪下くんの、傷との向き合い方、絶望という檻から一歩踏み出す準備、それぞれの明日が今日より少しでも明るいことを祈らずにはいられない。
5投稿日: 2025.03.07
