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泰平を演じる 徳川期日本の政治空間と「公然の秘密」
泰平を演じる 徳川期日本の政治空間と「公然の秘密」
ルーク・S.ロバーツ、三谷博、友田健太郎/岩波書店
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総合評価

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    米国人研究者によるユニークな江戸時代の政治力学に関する論考。精読したわけではないがたいへんおもしろかった。跡継ぎ不在で領主がなくなると、本来は領地没収となるのだが、そこを領地では「生きているかのように」演技し、それを見届ける徳川の大目付としても事情をわかっていてなおその演技におつきあいすることで、互いに秩序を守る=「表」を維持することに協力する姿が描かれる。そこらへん、事前に徳川とは「内証」の交渉をしておくわけだ。ほんとうにあったことは「表」の記録だけではわからない。江戸時代は体面を維持することがなにより重要だったため、この「表」と「内証」の政治が広く行われたが、近代において立憲制と個人の権利という言説の中で正当性を失ったため、「表」と「裏」、もしくは「本音」と「建前」という世界になったという結論も一理あるなと思わせる。

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    投稿日: 2022.10.01