
総合評価
(16件)| 6 | ||
| 7 | ||
| 2 | ||
| 0 | ||
| 0 |
powered by ブクログ出てすぐに読んだのに登録しわすれてた。 表紙も、なかの絵も美しくて、本の姿もすばらしい1冊。 こんど読み返そう。
1投稿日: 2025.10.30
powered by ブクログ『嘘の木』を読んだ以来大好きな作家さん。(そういえば嘘の木をむさぼるように読んだのも真夏の台風の夜。停電に供え枕元に懐中電灯を置いた。おかげで全然台風が怖くなく、それから台風来襲の夜には読書が必至となった)ブクログさんのレビューで知り、ハーディング,フランシスさんの描くファンタジーに期待が高まり胸が躍る。 主人公マイロの父は死者の魂を船に乗せて送り届ける渡し守をしている。島の住人は死者が出るとその靴を渡し守のところに持っていく。どこかにある風習なのだろうが、死者の靴を持っていくという設定に射落とされた。そうしないと靴を履いた死者が島じゅうをさまよい歩いてしまうからだ。ある日領主の娘が亡くなる。ところが領主は娘の死を受けいれられずに、渡し守から靴を取りもどし魔術師の闇のまじないで娘を蘇らせようとする。渡し守であるマイロの父はできないと拒否して領主の手の者に殺されてしまう。後継ぎとされる兄も監禁され、マイロが父のかわりに船を出すことになった。 かねてから父はマイロを他人の気持ちを考えすぎるところがあり、「死者を扱う渡し守には向いていない」と思っていた。私もある意味で父親に同調し頷ける部分がある。こういう仕事は淡々としていた方が送る側も送られる側も楽なのではと考えるからだ。悲しみに打ちひしがれていてもいつか人は振り切って先に進まねばらねばならない。その時にやさしく寄り添われたら、私だったら悲しみの渦に再び巻き込まれて溺れてしまいそう。むしろ冷たく突き放された方が強くなれる。そう思うのは老婆心だろうか? しかし、物語の後半になりマイロの遺族や死人に配慮する暖かい心が、父とは違う渡し守としての長所になって描かれていた。色んな形の葬儀があって良いのだろう。 物語はこれで終わらない。 一見娘を愛していたかのような領主は独りよがりの愛情を注いでいた父親だった。領主にとって、娘は可愛いいお人形のような存在、悲しいことに所有物でしかすぎなかった。実際の娘を真正面から見ずに盲目的な一方通行の愛情を注いでいただけ。 父を亡くしたマイロと亡くなった領主の娘ー、どちらの親子関係が愛情深かったのかと比べるつもりはないけれど・・・。 グラヴェット,エミリーさんの挿絵も素敵です!
16投稿日: 2025.08.28
powered by ブクログ死者の魂を乗せる船の渡し守を父に持つマイロは、父から「お前は渡し守に向いていない」と言われ後を継ぐのを諦めかけていた。ところがある日、死んだ娘を生き返らせようと領主がマイロの家にやってきて、父を殺してしまい、マイロしか船を出せなくなった。父から教わったことを思い出しながら、マイロは初めての渡し守としての務めに出る。 静かな語り口の物語で、言葉が心に染み込んでくるようだった。逃走劇であり、争いや葛藤もあるので動的なシーンはいくつもあるのだけど、印象はとても静かで凪の海のような物語。
1投稿日: 2025.05.17
powered by ブクログ◼️ フランシス・ハーディング エミリー・グラヴェット絵「ささやきの島」 才能の出逢い。死と生の狭間。別れと再生。 考えさせる児童小説。 イギリスで評価の高い児童小説作家と、同国を代表する絵本作家、挿絵画家。2人の女性に編み込まれた作品。人の情に基づいたストーリーとファンタジックな世界観、追跡劇。ふむふむ。 領主の娘が死に、渡し守である父のもとに、娘の母親から死者の青い靴が持ち込まれる。娘と同じ14歳のマイロは父に、渡し守には向いていないと言い渡されており、兄のレイフが主に手伝っていた。死者の魂を、靴とともに船で「壊れた塔の島」に連れて行き昇天させるのが渡し守の役割だ。 領主がマイロの家に来て、靴を返せ、と命じる。魔術師の力で生き返らせようと目論んでいるのだ。領主は力づくで靴を取り上げようとした。揉み合いの中で父は突然死んでしまい、レイフは囚われてしまう。靴を持って逃亡し、初めての航海に出たマイロに、父の霊がピタリと付き添うー。 追跡する領主の船には白と藍の2人の魔術師、首のない鳥を操り、5人の死者の魂を連れて船を動かしているマイロに迫るー。 日本神話のイザナギは、死んだ妻イザナミを追い、黄泉比良坂を越えて黄泉の国に至る。また仏教では三途の川が此岸と彼岸の分かれ目だ。マイロの世界の渡し守の航海はまさに死と生のはざまの旅といえる。霧に覆われた海と島へのアーチ・・物語のテンポの速さとはざまの世界、その掟の想像力に読み手の心を委ねる感覚。 領主は暴力を使う。しかし根底には娘への想いがあり、娘の魂もそれを感じている。マイロには父の魂が寄り添っている。少年の大きな体験、それは不器用な父の仕事を通しての、親子のふれあいでもあった。 やがて島に着き、死者が解き放たれる、その表現もまたどこかで聞いたような、でもああ、と感慨を持って見送るような形だった。近しい者にとって死者との永遠の別れは身体の根っこに堪えるような悲しさがある。死者も生への執着があるだろう。再生の形と、悲しみの中の安堵、その見えるところと見えざる新世界とのあわいの意味深さを想う。 フランシス・ハーディングはオックスフォード大出の英才で「嘘の木」「カッコーの歌」などで数々の賞を受賞している。ググると出てくる、黒いつば広の帽子を被り微笑む写真がいかにもな肖像だなと。絵のエミリー・グランヴェットもまたイギリスを代表する絵本作家で日本でも著書が刊行されているとか。 絵の方は白黒青の3色。版画チックでシンプルにも見えるが、幻想的な世界を実に見事に表している。文章のブロックの間にも、靴やロープや船のマークを入れたりと細かく工夫されていて、気がきいている。 いまショパン国際ピアノコンクールの予備予選が行われている。ショパンは、リストが評したように、アンビバレントな感情をメロディに込める。悲しみと喜び、別れと希望、過去と未来。そしてそのあいだ。 コンテスタントのマズルカやスケルツォをこの作品に重ねながら読み終えた。
1投稿日: 2025.04.27
powered by ブクログ世界の運命を決する戦いに巻き込まれてゆくわけではない。死と生の均衡を保ち世界を救うために旅に出るわけでもない。 渡し守は、霧深い小さなマーランク島で、なすべき仕事を粛々と果たす存在だ。 敬意は払われていても、あくまでも職人として、家業として、死者が島に留まって災いを招かないように、壊れた塔の島へと船で運び続けてきた。 渡し守に向かないと父に告げられた少年が、悲しみや怯えに屈っしそうになりながらも、父のやりかけた仕事を引き継いで船を出すのは職責を全うする意志からだ。 この父と息子の厳しくも認め合う関係性が、死とは何かという幻想的な物語の芯となっている。 死者に思いを巡らし、死者の声に応えることは、仕事に必要ないどころか命取りでもある。 耳を塞ぎ、心を閉ざすのが必然。 感受性や共感する心を持ちながら、渡し守として生きることは、どう考えてもしんどいことに思えてくる。 優しさゆえに死者が残してゆく想いを受け取って生きることは、ときとして重荷を背負っていくことに他ならないのだから。 それでも、人は死に方だけでなく、生き方も選べない。ただ自分だからできることを、ただ自分らしく精一杯にやって、生きる。 決意とも違う、少年の柔らかな覚悟がさわやかだ。
9投稿日: 2025.04.27
powered by ブクログ児童文学の世界は海外と言わずとも、日本でも大家は多い。 が私にとって、ハーディングは第一作から虜にさせられた別格の神的存在。 作2024年12月発刊のこの作品、バタついていてなかなか読めなかっただけに 読み始めると砂地に水が吸い込まれるように脳内に染みわたった。 従来の彼の作品と比したら、かなりボリュームが少ない。 だが、内容、メッセージ共に「作品はボリュームで語るもんじゃない」を如実に体現している。 そして挿絵の素晴らしさ~お初ともいえる画家の肩だが、作風のイメージを見事に体現。 モノクロのトーンは児童文学の世界で宗教画とも言えそうな神的温度を思わせる。 ハーディングはデヴューして20年経つが、児童幻想文学のカテゴリーで捉えていた。 しかし、敢えてYAとカテゴライズした。 絵本でなく、児童文学でもなく 幻想文学でもなく・・広く、これから生きて、伸びて、社会へ飛び立つ人々の心に「生きるとは・・死とは」を単なる感情論ではなく、哲学的に価値も含め、喜怒哀楽の土俵の上で見つめて欲しいと。 生者の辿る白い道、死者の歩む灰色の道の頁がある~交わることなく平行に描かれたそれは毛筋ほどの運命で別れる・・そう言ったものであることを語っている。作品の中で普通のフォントの合間に若干小さいフォントで呟きが綴られる・・これはささやき。。。 父亡きあと、ちっぽけだったマイロが〈夕べの雌馬号〉をあやつり、追いかける〈運命の女神号〉と対峙していく。 白、藍色の魔術師とも立ち向かう。 【請われた塔の島】に辿り着くには必ずくぐり抜けねばならぬ骨片で作られたアーチをくぐり・・この場面の挿絵も絶品だ。青白く光る景色が幻影のように脳内に浮かぶ。 映画でなくても、色付きの大きな絵本でなくとも、自らの想像力がここまであったのかと胸が震え、魂が波打つ時間だった。 ちなみに、こういった感動って人に伝えられるものではないとも痛感。 まずはあうあわないも含め手に取ってみることを。
9投稿日: 2025.04.16
powered by ブクログずっと気になっていた作家さんだったのだけど、どの本も分厚くてなかなか読めずにいたところこの本を見つけたので読んでみました。 装丁がキレイで挿絵もあり、児童文学らしいお話でとても良かった。 ちゃんと他の長編作品も読んでみたいなと思いました。
7投稿日: 2025.03.30
powered by ブクログ絵本・・・ではないのか。児童文学的なものなのかな? 死者の魂を船に乗せて運ぶ渡し守の一家の少年。亡くなった領主の娘を運ぶ際に、領主がやってきて「魔術師に娘をよみがえらせるからすぐさま運ぶのをやめろ」と。 なかなかに魅力的な導入。そんなに長くないお話ということもあって一気に読んでしまいました。おもしろかったですね。とてもよかったです。ほんのりと、さわやかで。普段まったくもって読みなれないジャンルなので新鮮でした。
1投稿日: 2025.03.05
powered by ブクログハーディングの短編 今までで一番読みやすいけれど、しっかり読み応えもある ハーディングらしい子供が主人公のブラックファンタジー 詩と死を通して主人公と思いを残した者が成長する姿と、ハーディングの言葉のオシャレな紡ぎ方を楽しめた 電子書籍で読んだが、電子書籍も絵付きで本文も画像のためにテキストを拾ったりハイライトが入れられないのと文字が小さいのが老眼にはちょっと読みづらい… ピンチがやっかい あと彼女の文章にたくさん挿絵をつけてくれちゃうのは楽しみを半分取られるような気分なので個人的にはいらないです 児童書扱いとするのはちょっと違うかと思う
9投稿日: 2025.03.01
powered by ブクログ魂の渡守。マイロは殺された父の代りに壊塔の島を目指す。無謀にも娘の蘇生を望む領主と闇魔術が迫りくる中,航海日誌に死者の伝言を書続けるマイロが心配でハラハラする。靴が魂の拠。境界は危険。
14投稿日: 2025.02.17
powered by ブクログ死者の魂を乗せる船の渡守の父が殺されてしまい、息子のマイロが父の代わりに渡守になる。 追われながらもちゃんと渡守としての仕事が出来るのか、自分本位で傲慢な人たちとの対峙にハラハラ。マイロは迷いながらも厳しい父とは違って彼らしいやり方で渡守としての仕事を果たす勇気ある姿に胸を打たれた。 絵と物語の融合が素晴らしかった!
5投稿日: 2025.02.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
容赦のない厳しさ その中で彼を導いたもの、父親と渡し守という仕事への誇り 恐怖と絶望の中にあっても失われない尊厳 この短いページの中に織り込まれた著者の世界観には驚かされる
3投稿日: 2025.01.20
powered by ブクログブク友さんのオススメを見て図書館で借りた本。 オックスフォード大出のファンタジー作家さんが好きだ。トールキンの、C.S.ルイスの、ルイス・キャロルの後継者達が続々と育っている。 この、フランシス・ハーディングもその一人らしい。確固たる世界観、主人公の成長、脇役たちのキャラの濃さ、そして格言。ファンタジーの王道のど真ん中、此岸と彼岸を繋ぐ「渡し守」を家業とする家の感受性豊かな次男の話。こんな作家さんもいたんだ。 また、絵が良い。装丁の光る蛾が集まる様子は薄墨桜のよう、見返しの天に昇ろうとする人たちは、笑いながら前方に向かって幸せそう、〈壊れた塔の島〉は月を背景に海の上に道ができたよう。 これが全部、黒・白・藍・灰緑の4色とその彩度違いの色で表現されているのだ。挿絵はページからはみ出し、文章の周りに蛾やら足跡やらをつけ、読み手をその世界に引き摺り込む。凄い。 買おう!英國妖精譚好きにもすすめておこう。 絵本好き、ファンタジー好きにもオススメ。そして私は、この作家さんの他の作品を読もうと思う。
10投稿日: 2025.01.13
powered by ブクログ「嘘の木」の著者フランシス•ハーディングの最新作はイギリスの絵本作家エミリー•グラヴェットの挿画が付いた120ページの短編。この挿画がよくはまっていて素晴らしい。 マイロの父親は死者の魂を船に乗せて送り届ける渡守り。島の住人は死者が出るとその靴を渡守りのところへ持っていく。渡守りの仕事は、兄のレイフが引き継ぐことになっていた。そんなある日、領主の娘が亡くなり、父親は靴を受け取った。ところが領主は娘の死を受け入れず、靴を取り返そうとする… 死とは何か、生きるとはどういうことかを問いかけるファンタジーとして大一級の傑作だと思います。 父親がマイロではなく兄のレイフを後継者に指名したのは何故か。マイロと同じ14歳の若さで亡くなった領主の娘ガブリエルの望んでいた未来とは何だったのか、読み進めるうちに少しずつ明らかになっていきます。少年マイロの成長の物語として読むこともできます。お薦めです。
46投稿日: 2025.01.13
powered by ブクログ魂の息吹と囁きが読み手まで伝わってくる… 夢の中を冒険しているようなファンタジー #ささやきの島 ■あらすじ 主人公マイロの父は死者の魂を島に送りだす仕事の渡し守をしていた。父の仕事に憧れているマイロだったが父からは渡し守には向いていないと言われていた。 ある日、領主の娘ガブリエルが亡くなってしまうが、領主は娘の死が受け入れられなかった。そのトラブルに巻き込まれた父は殺されてしまい、島に死者の魂が放たれてしまう。 マイロは父の任された渡し守の仕事を引き継ごうとするが… ■きっと読みたくなるレビュー いつもファンタジーな世界に誘ってくれるフランシス・ハーディング。今回の作品はかなり短めなお話で120ページ程度、挿絵満載な児童向けの一冊になっています。ただし、内容はいつもの通り濃厚濃密、じっくりと空想力をつかって読むようにしましょう。 もうね、例によって世界観が鬼エグなのよ。夢の中を大冒険してるのかいってくらい、果てしない空間に誘ってくれる。 海、山、島、船、風、空、そして人間と魂。たくさんの息吹と囁きが読み手まで伝わってくるんよ。特に今回はキュートな挿絵も挟まれ、ページをめくるだけでうっとりとしちゃいますね。また表紙や挿絵も幻想的で素敵すぎるんです。ぜひ子どもたちに読んで欲しい!想像力が膨らむこと間違いなし! 主人公のマイロ少年、なぜ彼は父からは渡し守には向いていないと言われているのか。誰もよりも思いやりある優しい子、だからこそ父は死者に隙をつかれてしまうと思っていた。確かにマイロは自分に自信がなかったのですが… 彼の行動、選択を噛み締めていくうちに、父も読者も心を動かされていくのです。 冒険が終わった後、人々がどう慰めを得ていくのか、そしてマイロのこれからはどうなるのか。ページが終わりに近づくたび、しっとりと心が満たされる作品でした。 ■ぜっさん推しポイント 本作のテーマは「生と死」 人間がいかに生へ執着しているのか、その理由や愚かさが描かれています。死というものは辛く悲しいものですが、受け入れるものでもあります。 そしてもうひとつのテーマ「優しさと強さ」 人のために労力を使い、自身を犠牲にすることがどれほど難しいことなのでしょうか。少年の覚悟し、成長していくことで「優しさと強さ」を手に入れていくのです。 我が息子にも読ませたく勧めてみたのですが、まるで興味を示してくれませんでした。ですよねー
100投稿日: 2025.01.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
強く成長する少年少女の冒険譚を書かせたら、右に出る作家はいないのではないか。フランシス・ハーディングの絵本。 死者を正しく導かないと、島中を闊歩することになる。そんな島で魂の渡守をしていた父が死に、後継と思っていた兄が捕まり、半ば無理矢理に渡守になる必要があったマイロ。娘の死を信じたくない領主に追われながらも、死者たちの魂を運ぶマイロの冒険。 首のない鳥、骨でできたアーチ、途中から螺旋階段しかないあの世とこの世を繋ぐかのような塔など、いつもの幻想的、ファンタジックな世界が、挿絵がつくことにより一層引き立てられ、絵本としては非常に満足。 ただやはり、ガッツリと長編で読みたかった。主人公のマイロは追われはするが、自身の力でピンチから抜け出す感じではなく。。。長編だとそのあたりのストーリーも描けたのでは、と思うと星4に。 もちろん、ラストの娘、父の描写は流石のハーディングだなぁと。グッときました。 あと余談だが、この作品は流石に文庫化はないかと思って今のうちに購入したが、本当は全作文庫で集めたかったかなぁ。。。絵と文があまりにもマッチしているので、今のままでも十分家に置いておきたいほどではあるが。
13投稿日: 2024.12.27
