
総合評価
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powered by ブクログ哲学や社会学ではなく、経済の人なので、少し難しい+多忙が続き集中出来ず、間も空いた。最後の現代の資本主義は酸素吸入器を付きと言うのは、延命治療的かと思った。
0投稿日: 2025.11.08
powered by ブクログTPP亡国論で有名な中野剛志氏によるシュンペーター解説。イノベーションを主軸に経済を解釈するアイデアや貨幣及び銀行家の役割に関する考察などシュンペーターの理論自体は非常に独創的かつ説得力があり、そのシュンペーターを解説してくれるのは嬉しいのだが、筆者の思想(反ネオリベ、反小泉竹中安倍)が若干うるさく感じる。 解説自体は非常にわかりやすい。合理的経済人(シュンペーターからすれば快楽主義的な人間)をモデルに置く主流派経済学では経済発展やイノベーションを十分に説明できず、精力的な企業者による非快楽主義的な行動により新結合(新しい財貨、新しい生産方法、新しい販路や市場、原料の新しい供給源、新しい組織や独占の形成と打破)が生まれることで主流経済学が散々研究している"均衡"が崩れ、経済発展がもたらされる。均衡が実現している状況において貨幣の剰余は存在せず、従ってイノベーションを生む非快楽主義的な行動にも制限がかかるが、これを解決するのが銀行による信用創造(貸付)であると。また、こうして均衡が崩れた際には信用インフレが起き、その後実際に生産が始まり貸付が消失するに伴い信用デフレが起きる。 2章で大方ここまでを説明し終えて何が始まるかと思ったら貨幣循環論(これ自体はシュンペーターの話ではない)、そこから不況時の財政・金融政策の話になり、シュンペーターは異常な不況を区別しその際は積極的に財政出動しようと述べていた旨、中小企業と大企業の役割(後期シュンペータは寡占できるような大企業の方が実はイノベーションを起こしやすいと述べていた等)、企業の成長戦略や革新的企業発生の条件(これも主にシュンペーターの話ではない、大企業と中小企業では戦略や役割が違うよ、主流経済学の考えを体現した経営者資本主義から株主資本主義への移行が革新的企業を破壊した、など)、国家や政府こそイノベーションの担い手となれるポテンシャルがあるしなるべきでもある(これもシュンペーターの主張ではない、ここでMMTを援用している)、資本主義に内在する合理主義精神が企業者や政治家、ひいては家族への情愛すらも排除していくことで資本主義は自壊していく、というような組み立て。 シュンペーターを通して筆者が経済構造の最適解だと主張したいのは「終身雇用で経営、専門職、現場作業員が一体となっているような日本的経営」と「必要に応じて躊躇なく財政支出を行える大きな政府」なのだろう。 以下私の雑感 ・たしかに合理的に考えれば当たる可能性の低いヤマを張るのは馬鹿かキチガイのすることで、「ただ好きで楽しいから」というようなコストや利益を度外視した変人の情熱がなければ主流経済学派の考えるように戦争や気候変動などの外部要因からしか均衡は崩れない。当たる可能性の高いヤマ(期待値が正である状態)があれば合理的経済人は当然すでに張ってるのでね、これも均衡に既に含まれてるはずなんですよ。まあ馬鹿かキチガイは主流派経済学にとっては外部要因そのものなのかも笑 ・政府を超大企業と見做すならばイノベーションの担い手として大いに期待できるはずなのは分かるのだが、ハズレの政策ばかり目に付くからなのか、役人に大企業と同等の遂行能力ないしは優秀な銀行家としての判断能力があるとは到底思えない。なにより民間勤めと比較して彼らの「家族動機」が強いようには全く見えない。 ・MMTとリフレは似ているように見えるが、考えてみればMMTにとって信用創造を通して通貨流通量を増やすことは公共事業を始めとした生産のための手段であるのに対し、リフレ派にとって通貨流通量というのはインフレをコントロールすることで失業率を安定させるための手段ともいえるから、まあ似て非なるものなのか。どちらの派閥からも怒られそうな雑な説明だが
0投稿日: 2025.09.02
powered by ブクログ新書としてシュンペーターの功績(著作の論旨)を積極的に紹介しようとする本。 一見すると分厚いかもしれないが、太字を中心に読み進めるので苦にはならない。とくに重要な用語や(難解な古典的言い回しの)引用文についてのまとめが一目で判別できるようになっている。学習参考書の要点に則った文章という印象。 第一章から第四章は、平易な図と解説のおかげで『経済発展の理論』『資本主義・社会主義・民主主義』の要旨が把握できる。第五章から先は、その理論的な応用としての展開を辿ることができる。 ここではとくに入門の意味合いが強いと感じる第一章から第四章の感想。 重大な問題ではないけれど、構成上の整理が物足りなく感じた。たとえば、シュンペーターの理論から日本経済政策への批判という順番で、幾度も議論が展開される。 私の場合は(肝となる図の順番を一旦無視してでも)、日本経済政策批判に相当するであろう第三章を読んでから第一章へと戻って読んでみたが、本来の順序より現代日本でシュンペーターを読む意義づけが明快だと思う。 その意味では(各章で項目を立てているとはいえ)第一章を使って日本経済政策についての批判をまとめた上でシュンペーターの理論を落とし込むと「失われた三〇年」解決の糸口がつかめる、と展開してもよかったと思う。 また議論の前提になるのであれば、主流派経済学・異端派経済学という慣れない用語について、意味、イメージ、使用例、歴史、その看板を掲げる書籍なども含めた章を立ててほしかった。 主流派経済学は経済を市場均衡理論(疑問:市場原理主義が静態的な数字の移動だから会計モデルの理論と見なしてよい?)で分析し、異端派経済学は経済を信用創造やイノベーション(疑問:資本主義が動態的な貨幣の循環だから有機体の理論と見なしてよい?)などの理論で分析する。 だから尺度が違う物差しだということになるはず。それにも関わらず著者がいうように、市場均衡理論が主流派経済学において理論的な相互補完性・相互非補完性を不明確にしたままでありながら万能の物差しだと考えられているなら、経済学史という視座が(意図的にせよそうでないにせよ)欠落しているという気がする。あるいは経済学史に、理論やモデルが更新されうるという視点が欠落しているという話になるのかもわからない。 この点は私自身の興味の開拓になった。 最後に、重要な事柄でいえば、シュンペーターが「経済発展に伴う通常の不況と、そうではない異常な不況」を区別していたとする読み込みがとてもよかったことを挙げる。 これは『資本主義・社会主義・民主主義』での主張だったが、三十年前に出版した『経済発展の理論』の理論的主張から変化・進化していたらしい。 だから、その差異と共通をきちんとふまえて学ぶのは大切。そのような態度を踏まえて第四章から先へ読む進むと、ペンローズ、ラゾニック、マッツカートの著書を通じてシュンペーターの解像度が上がる。「企業者」がイノベーションを生み出す過程を描いているわけだが、組織的な新結合の要素、経営的戦略、経済支援政策の重要性を描いたそうだ。 こうして思うのは、正確に読むという行為は面白いということ。そうして読んだ結果、著者の射程がケインズや現代貨幣理論へ延びていく過程は、『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』の手続きとは異なる手法と目的だったが、着地点は近いところにあり面白かった。 ただ本書のまとめとして、シュンペーター理論への入門に適した素人(対象読者像ではない気がする)でも読める参考文献があれば、紹介してほしかった。その問いに答えてくれるような本は改めて探してみたい。 以下、引用。 言い換えれば、私たちは、『経済発展の理論』をじかに読んでいなくても、間接的には、シュンペーターから学んでいるというわけです。 ですから、シュンペーターの言っていることが当たり前に聞こえるのも、当然ではあります。 しかし、私たちがシュンペーターの影響を受けているからと言って、シュンペーターを正確に理解したとか、あるいはシュンペーターのレベルに達しているということにはなりません。 というのも、シュンペーターの真意が誤解され、その誤解が広まって、私たちに影響を与えているのかもしれないからです。 それでは、シュンペーターの真意とは、いったい何だったのでしょうか。 (44~45頁) シュンペーターは、「創造的破壊」という表現を通じて、主流派経済学の市場均衡理論を完全に否定しました。 ところが、二〇〇一年の「骨太の方針」は、市場原理主義(新自由主義)にのっとった構造改革、つまり、シュンペーターが否定した政策を、「創造的破壊」と呼んでいるのです。 もちろん、「『創造的破壊』という言葉の使い方がシュンペーターと違うというだけで、構造改革が間違いだと言うのは乱暴だ」という反論もあるかもしれません。 ですが、実際、その後の日本経済は、二十年にわたりほとんど成長せず、停滞し続けました。構造改革が失敗に終わったことは、明白です。 (162~163頁)
0投稿日: 2025.08.10
powered by ブクログ今年読んだ中では一番かもしれない。これほど短く要点をついてシュンペーターをまとめてある本はないのではないか。イノベーションに関する研究者の1人として学ばされることの多すぎる本であり、シュンペーターについてきちんと勉強して来なかった自分を恥じた。
0投稿日: 2025.08.01
powered by ブクログシュンペーターの思想を解説した入門書。 解説が分かりやすいだけでなく、フレッド・ブロックやウィアリアム・ラゾニック、マリアナ・マッツカートなど現代の思想家への影響力を示すことで、「古い=役に立たない」という偏見を否定するなど、構成も考え抜かれている。 資本主義の自壊的な死を予言したシュンペーターは間違いなく天才だが、その思想を平易な言葉で解説する中野氏の能力も驚嘆に値する。 日本の衰退を招いた主流派の経済学者たちではなく、中野氏のような人物に所得倍増計画を主導した下村治氏の役割を担ってもらうことはできないのだろうか・・・。
7投稿日: 2025.07.29
powered by ブクログ確たる解答が存在するのかは於いておくとしても、現行の資本主義経済の是非に疑問を持ち、なんとはなく非主流派経済学の議論などを読み漁っている身からすると興味の尽きない議論が続く。 ひとまず理解を深めるべく、本著の再読やシュンペーターの著作をあたりたいところだが、一般的な理解とシュンペーター理論との乖離という点では、骨太の方針における創造的破壊の誤用問題などは最たる例か。著者の解釈を一方的に信奉するつもりはないが、思考を練り上げるという過程で考える題材として非常に面白いと思う。
1投稿日: 2025.06.28
powered by ブクログ日本論として読めました。少し俗っぽく断言しているのも、キャッチーにポジションを取っていると解釈され、特定のカラーを押し付けているとまでは言えないという感じに、洗脳されると思います。ごちそうさまでした。
0投稿日: 2025.06.23
powered by ブクログ資本主義が発展し、人々に合理主義的な精神が蔓延すると、短期的な視点で物事を考えてしまう傾向になり、資本主義が発展していくために必要な長期的視点での投資が難しくなる。資本主義は成功するが、成功するが故に崩壊するだろうという言説が興味深く感じた。
12投稿日: 2025.06.06
powered by ブクログシュンペーターは経済学史において独自の位置を占めており、フリードマンやハイエクに代表される自由市場・新古典派的ないわゆる「右派」と、ケインズやサミュエルソンに代表される政府介入・総需要管理的な「左派」のいずれにも完全には収まらない、ユニークな存在だ。 〝創造的破壊“みたいな厨二病をくすぐる、強いインパクトの言葉が象徴するが、どのアプローチでもいずれ膠着していくはずの経済活動を動的なものにするのが、日々の努力が生むイノベーションである。 本書はそんな基礎的な部分から解説されるが、何だか必要以上に分かりやすく、しかもシュンペーター以上の主張が濁り、それがまた面白いのだが、それは著者が中野剛志だからだ。この人の論理に異論はないが、言説が必ずMMT理論に吸い寄せられていく。本書も例外ではない。 ー 「静態的」な経済とは、経済発展が起きない経済のことです。これに対して、「動態的」な経済とは、経済発展が起きる経済のことです。ただし、前者の、経済発展が起きない「静態的」な経済システムというのは、静止した状態にあるということではない、とシュンペーターは注意を促しています。動きがないのではなく、生産や売買などの動きはあるけれど、既存の商品やサービスが取引を通じて経済システムの中を循環しているだけで、新しい商品やサービスが生み出されて経済社会変化するようなことがない。このように、自ら変化することがない経済が「静態的」なのです。ですから、仮に、何らかの理由で人口が持続的に増加して、そのことで経済の規模が大きくなったとしても、経済システムの性格が変化していない限り、それは「経済発展」とは言いません。単に「静態的」な経済が大きくなっただけです。シュンペーターは、まずは「静態的」な経済とは何かを明らかにし、次に、それとの比較で、経済発展が起きる「動態的」な経済について論じました。 ー もし「企業者」のような人間がいると、主流派経済学が想定するような市場均衝は達成されません。むしろ、「企業者」は、市場の均衡をぶち壊してしまう存在です。ですが、市場均衡から逸脱した動きこそが、経済発展というものです。したがって、もし、主流派経済学がイノベーションを理論に導入しようとしたら、まずは「経済人」の前提や市場均衡理論を放棄しなければならないはずです。 ー ちなみに、ほとんど知られていませんが、シュンペーターは、不況において生き残るのは、新しい企業よりもむしろ、古い企業になると指摘しています。なぜなら、古い企業の方が内部資金がより潤沢にあるし、銀行との長年の取引関係もあるので、不況のショックに対する耐性がより強いからです。これに対して、新しい企業は、はるかに簡単に破産に至ります。 ー 一般に、イノベーションを起こしたければ、市場への参入者を増やして競争を促進した方がよいと考えられています。ところが、シュンペーターの理論は、その反対でした。競争を制限する独占企業の方がイノベーションに向いているというのです。このようなシュンペーターの理論は、どうしても受け入れがたいという人もいるでしょう。 この辺の内容が興味深い。ルーチンで苦労している社員、そのルーチンが「整っているか」で評価し合う企業がある一方で、それに収まらぬ優秀な社員や企業がある。だが、それは大企業に有利な傾向がある。また、イノベーションは市場任せにせず、国の補助が有効だという話だ。iPhoneを生み出したステイーブ・ジョブズですら、政府の支援を得ていたアメリカの産業政策の産物だと中野は言うのだ。 予算の時期だとか、恒例イベントの時期だとか、挨拶まわりだとか、そんな変わらぬルーチンに対して忙しい忙しいと働く事は、イノベーションにはならない。その資料準備や人対人への説明に時間が費やされていく。その世界の優秀さと、異なる世界の優秀さを見出し、国が支援していかねば。
62投稿日: 2025.05.25
powered by ブクログやー、エキサイティングで面白い。 読後、脳が活性化して清々しい。 まあしかし、そうも言ってられない世の中…。 もう革命を起こすっきゃねえな。
0投稿日: 2025.04.09
powered by ブクログ1. イノベーションと起業家 - 起業家の役割: シュンペーターは、経済発展において「起業家」が不可欠であると論じている。彼の著作『経済発展の理論』は、起業家がイノベーションの担い手であることを強調している。 - 「静態的」経済と「動態的」経済: 経済は「静態的」な状態(発展がない)と「動態的」な状態(発展する)に分けられる。「静態的」経済では新しい商品やサービスが生まれず、既存のものが循環するだけである。 2. 経済発展のメカニズム - 新結合の必要性: 経済発展には「新結合」が必要であり、これを行うのが起業家である。新結合には新しい製品やサービスの開発が含まれる。 - 生産性の向上: 起業家の活動を通じて経済が活性化し、生産性が向上する。これは経済の成長を促進する要因である。 3. 銀行の役割 - 貨幣創造: シュンペーターは、銀行が貨幣を創造する特殊な機関であると述べている。銀行は新結合を行うために必要な資金を提供する役割を果たす。 - 信用創造とインフレ: 銀行の貸出によって貨幣供給が増加し、これがインフレを引き起こす可能性がある。しかし、経済が成長することで、後にデフレが発生することもある。 4. 経済成長と不況 - 不況の位置付け: シュンペーターは、不況を経済の新陳代謝と考え、新結合によって古い企業が淘汰され、新しい企業が台頭する過程だと説明している。 - 政策の役割: 不況時の政府の介入については慎重であり、必要以上の介入は経済の発展を妨げる可能性があると考えている。 5. 株主主義と企業の行動 - 株主主義の影響: 株主への配当や利益配分の増加が、企業の長期的な投資を減少させ、イノベーションを妨げる要因になっている。 - 企業の成長戦略: 経営者は長期的な利益を増大させるために、企業の内部資源を活用し、事業機会を見出すことが重要である。 6. シュンペーターと社会主義 - 資本主義から社会主義への移行: シュンペーターは、資本主義が内部で矛盾を抱え、徐々に社会主義へと移行する傾向があると論じている。 - 政府の役割: 政府もまた、イノベーションの担い手とし、長期的な視野での投資を行うことが求められる。 7. 経済の未来 - デフレと経済成長: デフレが長期的に続く場合、企業は投資を控え、経済は縮小する可能性が高い。これに対抗するためには、適切な政策が必要である。 - イノベーションの促進: 経済が成長するためには、企業が新しいアイデアや技術を取り入れ、常に革新を追求する姿勢が重要である。
0投稿日: 2025.03.27
powered by ブクログ2024年3月31日に定年退職したとき、部屋の中に散らかっている本を見て、1年以内(2025.3.31)までに全て処理することを心に決めました。段ボール箱3つと、スーツケースに入った本達です。読み終えてポストイットが貼ってあるものは完全にレビューまで書き終えましたが、読みかけ本の処理に困りました。 半分以上読んでいるものは、読み終えてレビューを書きましたが、それ以下のものは処理に困っている状態でした。興味があって購入し、読み始めたもの、読んだらきっと良いポイントがあるのは分かっていますが、これから読みたい本も出版されるし、目の状態もあまり良くないので、部屋を整理するためにも、今日(2025.2.3)から私の61歳の誕生日(3.31)までに、全ての本を片付けたく思い、このような結果となりました。 3章(およそ3分の1)まで読み終わっており、記憶すべき点として以下に示します。 ・シュンペータが述べる、イノベーションを妨げる要因について、1)資金、2)社会的環境が経済的行動を変えようとするときに反感を買う、3)個々人の胸の中にある、決まった行動様式の中で生きていくように作られている(p34) ・行動の人は、需要に応じて供給するだけでなく、自ら需要を創造する(p38) ・資本主義の特徴とは、1)物理的生産手段の私有、2)私的利益と私的損失責任、3)民間銀行による決済手段(手形あるいは預金)の創造=無から貨幣を創造する民間銀行という機関の存在(p77) ・経済の中に貨幣が供給され、それによって実物資産が動いて「需要>供給」になって初めて、デフレからインフレへと転じる。日銀の当座預金をいくら増やしても、新たに事業をやりたいという企業の需要がなければ、貨幣は供給されず、実物資源が動くこともない、経済は成長しない(p89) ・企業はインフレ期は、企業貯蓄率はマイナスであったが、1998年にデフレになって以降、企業貯蓄率はほぼ一貫してプラスである、これは20年にわたって資本主義の機能が停止したようである(p102)貸出が預金という貨幣を創造する、という信用創造がある(p107) ・財政健全化は、デフレ圧力を発生させる、すべての企業が債務を完済し、さらに政務も債務を完済してしまうと、貨幣がこの世から完全に消えてしまうことになる(p109)財政赤字や政府債務は減らした方がいいというものではない(p110)それどころか、デフレで貨幣の流通量が不足している時は、政府は債務を増加して(=信用創造を増やす)赤字財政支出(=貨幣供給)させた方がいいことになる(p110) 2025年3月15日読破(3章まで) 2025年3月15日作成
0投稿日: 2025.03.15
powered by ブクログイノベーションが起こる論理が非常にわかりやすくまとまっている。 シュンペーター入門と言いつつ、現在に至るまでの日本と世界の経済を俯瞰した良書。 新自由主義による自由化、民営化の先にある社会主義的国家施策(イデオロギーは別問題と捉えて、)大きな政府の存在が生まれるのを望むばかり。
1投稿日: 2025.03.02
powered by ブクログ米国も新規の開業率は低減傾向。すぐに儲からなければ生き残れない。起業は平凡な業種で起すもの。イノベーションなど担えない。その役割は現存の大企業が行うものだが、株主資本主義が進み、資金が投資家に流れる。短期的視野の快楽主義が投資を阻み、大企業もその役割を果たせない。革新的なiPhoneが生まれたのも、政府の支援があってこそ。公共の役割が民間よりも大きい。資本主義は成功するから社会主義になる。それは自然な流れで思想ではない。…日本の失われた30年は、20世紀前半のこの偉大な経済学者の理論の正反対を行った結果。 自由主義経済をある程度続ければ、民間でできることはやりつくされる。それでも人々が満ち足りることはない。残りは、公共セクターでしかできなことになる。資本主義が行き着けば、公共の役割が増え、次第に社会主義になっていく。自然に考えればその展開を想像できるはずなのに、「公共事業は無駄だ」「支援を求めるより自己責任でなんとかしろ」「民間の方が活力がある、何でも民営化しろ」「サヨクは共産主義だから嫌い」という感情論に民衆が支配されたことが、現在の日本の低迷を招いている。他ならぬ国民が負わなければならぬ責任である。
1投稿日: 2025.02.02
powered by ブクログアメリカのしたたかさを改めて思い知らされた。新自由主義を標榜しながら政府資金で確かにずっと研究開発してる。それが経済成長を生んでいる。日本はなぜ国の投資が失敗してばかりなのだろう。MMT的に財源気にせず必要な投資をすべきだと思う。投資にふさわしいサステナビリティに貢献できる技術が日本にはたくさんある。 資本主義は合理的な判断を積み重ねた結果、社会主義になっていくというのもおもしろい。長期投資的なことは避ける。公的な価値に資源の軸足は移っていく。
2投稿日: 2025.01.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
市場均衡理論を基礎とする経済学は、イノベーションが起きない定常状態を想定している。ワルラスの世界では、経済は戦争など外部要因でのみ変化する、と想定している。 イノベーションを起こす人間は、合理的な決定をする経済人ではなく、やむにやまれぬ行動力で経済の均衡をぶち壊す人。 構造改革は、自由競争によって経済は成長する、という考え=市場原理主義、新自由主義。均衡理論では、経済の成長を考察できないはず。 均衡理論では利潤はない=資本はたまらない。 信用創造は銀行しかできない。貸出のもとになっているのは今や預金ではない。銀行は貸出をする=信用創造することで、お金を作り出せる。 資本主義の三要件 生産手段の私有、利益と損失の自己責任、銀行による信用創造=商業社会と資本主義を区別する要素。 信用創造は、一時的にインフレを引き起こす(信用創造によるカネで物不足になる)。生産が増えるとデフレになるのでインフレは解消する。信用インフレと信用デフレ。 信用インフレ以外のインフレ=人手不足、戦争、石油ショックなど。 量的緩和が効かなかったのは、銀行の貸出が増えなかったから=信用創造がなかったから。 貨幣循環理論=民間銀行の貸出によって預金が創造される。企業の資金需要がなくなれば信用創造が機能不全になる。政府支出の財源は税金ではない。 p100
2投稿日: 2025.01.22
powered by ブクログ中央銀行が貸付をする事で貨幣が市場に流れる、というのはこれまでの私の認識と全く逆であり、かなり驚いた。はじめに財源があって貸付が可能と思っていたからである。とすると現状の日本の政策はほぼ全て貨幣の流通を減らす動きであり、経済成長が低水準であることも頷ける。まだ、経験的に本書の主張が腹落ちしていないので評価は星4としたが、自分の価値観の一部を揺るがした本であることは間違いない。
1投稿日: 2025.01.03
