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憧れ写楽
憧れ写楽
谷津矢車/文藝春秋
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総合評価

13件)
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    2025.8.7市立図書館 楽しみに見ている大河ドラマ「べらぼう」、いずれ出てくるだろうということで写楽関連本を少し読んでおこうと思って、少し前に予約を入れていいタイミングで順番が回ってきた。 去年の秋に書き下ろしで出たばかりの、写楽の正体をさぐるミステリー仕立ての時代小説。ときは寛政八年、狂歌や黄表紙の栄華も今は昔、松平定信公の厳しい取り締まりで本の世界も芝居の世界も手痛い打撃を受け、萎縮したような不景気な微妙な空気のただよう時期、蔦屋としのぎを削った版元鶴屋の喜右衛門(二代目)の視点で語られる。写楽=猿楽師斎藤十郎兵衛説にのりつつ、そこに残された謎に迫っていく手並みは見事。 べらぼうのお陰で人物関係だいたい頭に入っていてすいすい読めるし、版元と絵師、それにモデルとなった役者たちの暮らしぶりや心にせまっていて、とてもおもしろい謎解きだった。「そうきたか!」とわくわくした。 写楽の謎は大河「べらぼう」最後の山場になるはずだけど、どういう展開になるのかなあ⋯

    0
    投稿日: 2025.08.07
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    東洲斎写楽モノといえば正体を巡る歴史ミステリだが、その正体は能楽師・斎藤十郎兵衛で決着しジャンルとしては廃れるのかと思っていた。だが本書の谷津矢車氏は、東洲斎写楽の活動期間が10カ月という短い期間にもかかわらず、作風や絵の質が最初期とそれ以降で全く違うという点に着目し、実は別の写楽がいたのではないか?というテーマで抜群に面白い歴史ミステリを作り上げている。 本書は、地本版元の主 鶴屋喜右衛門が、斎藤十郎兵衛のもとを訪ね写楽の「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」を依頼するところから始まる。だが斎藤十郎兵衛はかの有名なこの絵を含む6作の役者絵は別の写楽のものであり、無理だと仄めかす。かくして鶴屋喜右衛門は、ひょんなことから相棒となる喜多川歌麿と共に写楽の正体を探ることになる。 本作の魅力は、やはり東洲斎写楽に縁のある蔦谷重三郎や、山東京伝、大田南畝、十返舎一九ら、また歌舞伎役者達とのかかわりあいであり、その生活の姿である。特に蔦谷重三郎は、写楽の正体を守るため立ちはだかり、写楽のことを「憧れ(あくがれ)」と評する。 写楽の正体は、納得感がありつつ成程と思えるものであった。この作品で面白いのは、本作の寛政年間をまるで現在の写像のようにして書いている点である。これは先代の喜右衛門が活躍した天明年間までを高度成長期からバブル期のように描いている点で対比している。主人公である当代の喜右衛門は、そんな先代の時代に「憧れ」を抱いている姿が特徴的であった。まるで版元、作家、職人の仕事の仕方が、一昔前と今との対比のように書かれている。 学術的には正体が明らかになってしまった写楽だが、まだまだ歴史ミステリの題材としての面白さを感じれる仕事であった。蔦屋の言う「憧れ(あくがれ)」が何なのかはご自身で確認してほしい。

    70
    投稿日: 2025.07.07
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    写楽の正体とは、なんて魅力的なのだろう。 有力説も腑に落ちて良いが、こちらもロマンチックで最高の説でした。

    29
    投稿日: 2025.07.06
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    知らない事も多く、スマホ片手に調べながら読みました 現在、最も有力な説とは異なる話で非常に興味深い内容でした

    4
    投稿日: 2025.04.21
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    活動期間10ヶ月で消えた謎の絵師東洲斎写楽の正体を巡る歴史ミステリー。 写楽を出版した蔦屋重三郎のライバル仙鶴堂の主人鶴屋喜右衛門が探偵役。 寛政の改革直後、奢侈を忌避する風潮に戯作本や錦絵が売れず、忸怩たる思いを持ちながら教養本である物の本の商売に比重を移す喜右衛門。 狂歌師唐衣橘洲の「斎藤十郎兵衛ではない本物の写楽を探せ」との依頼を受け、写楽の秘密を探り始める。 版元、役者、戯作者、絵師、摺師にあたり、歌麿の助けも借りて細い筋を辿り続ける喜右衛門を続いて襲う障害。 終盤の謎解きは数々の伏線をきちんと回収、史実とどこまで合っているかは知らないが、喜右衛門の版元としての成長、覚悟、蔦重の悔恨、役者、絵師の意地などが絡み合い、読後感は快い。

    0
    投稿日: 2025.03.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    新たな視点・解釈(写楽は二人いて6枚は恋川春町のもの)の写楽本というだけでなく、寛政期の濃密さが漂ってくる極上の時代小説。登場人物(みんな有名人で楽しくなる)の描き方が抜群で、史実を確りベースにしたミステリー小説として大変面白く最後まで読める。写楽を巡る物語なのに、装丁にポロックを持ってくるところも斬新で良い。

    1
    投稿日: 2025.03.05
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    主人公は老舗版元の主ニ代目鶴屋喜右衛門。大首絵から2年後、狂歌師の唐衣橘洲に写楽の肉筆画が欲しい、と頼まれた喜右衛門は写楽とされる斎藤十郎兵衛を訪ねるが⋯ この方の「蔦屋」もよかったですが、蔦屋が敵役?のこっちも面白い!写楽の大首絵をじっと眺めたくなります。ことの真偽はともかく、よくこんな筋書き思いつくものですねえ。最初の設定からして伏線だったとは。版元、絵師、役者それぞれの職業人としての業も描かれていて、心を打ちます。

    1
    投稿日: 2025.02.24
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    大河にあわせて出てきたような作品。 日本史で習った錚々たるメンバーが 名前を連ねております。 正直、蔦屋重三郎ってよく知らないので、 この本読んでも何だかすごい人という印象なんですが、 今年の大河を見終えたら、 少しは詳しくなってると信じて 大河を観ようと決心した一冊でした。

    0
    投稿日: 2025.02.05
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    老舗版元『仙鶴堂』の店主である喜右衛門。彼には写楽の浮世絵で世を騒がせたいという夢がある。が、当の写楽は憧(あくが)れで…店の経営と己の夢とのジレンマで煩懊する喜右衛門。今も昔も悩みは一緒で親しみやすい。写楽の真相に辿り着くまでのワクワク感や蔦屋重三郎ら江戸ッ子に逢えるのも楽しい。

    1
    投稿日: 2024.12.30
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    鶴喜こと仙鶴堂・鶴屋喜右衛門の目線。 来年の大河ドラマ《べらぼう》とやらのおかげで、蔦重周辺の関連本、増えましたねえ。

    0
    投稿日: 2024.12.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    憧(あくが)れ写楽 著者:谷津矢車 発行:2024年11月10日 文藝春秋 (書き下ろし) 来年の大河ドラマは江戸の出版元である耕書堂を営む蔦屋重三郎の話。NHKは特に原作をあげておらず脚本家の森下佳子の作としているが、谷津矢車著の小説「蔦屋」が原作だと思われているふしがあり、結構、読まれているようでもある。間もなく始まる予習というわけである。同じ著者の手になる本書「憧れ写楽」は、蔦屋と同業者であり、蔦屋の才気を認めている仙鶴堂主人・鶴屋喜右衛門(きえもん)が主人公。もちろん、両者とも実在の人物。この話も予習になる。 アイデアや行動力で伸してきた蔦屋に対し、先代から引き継いだ大手の鶴屋という位置づけだが、どちらも錦絵や戯作などを出版する地本問屋が本業。ところが、老中・松平定信の政策により贅沢や娯楽が制限され、そうした本が出しにくくなって、儒学書や学問書などの「物の本」ばかりが店先に並ぶようになってきた。物語は寛政8(1796)年。 その2年前の寛政6年に突然現れて話題をさらったのが、新人絵師の東洲斎写楽だった。とくにこの年5月の芝居「恋女房染分手綱(そめわけたづな)」の江戸兵衛を描いた役者絵は、誰でもが知っている有名な錦絵である。それまで役者絵は全身図を描くのが普通だったが、顔から胸を大きく描く大首絵に、雲母を塗りつける雲母摺(きらずり)という手法が衝撃的だった。版元は役者絵で実績があまりない蔦屋だった。そして、翌年、僅か10ヶ月ほどの活躍を最後に消えてしまった謎の絵師でもある。 写楽は阿波蜂須賀公抱え猿楽師、斎藤十郎兵衛であるというのが有力説らしいが、喜多川歌麿説を唱える本なども出ている。この小説では、斎藤十郎兵衛を鶴屋が訪ねる場面からスタートしている。ある武家の家臣で狂歌師から、江戸兵衛の肉質画を頼まれた鶴屋が、写楽だと噂されている斎藤十郎兵衛に肉質画をもう一度描いてくれと依頼していたのだった。しかし、版画をもとに肉質画に何度チャレンジしても描けない。斎藤十郎兵衛は、この絵は自分が描いたのではない、写楽は他にいるという。蔦屋は、最初はその言葉を信じず、前金を受け取っているのにうまく描けない言い訳だと思っていたが、次第に別に居ると思うようになる。写楽の作だとされている錦絵には2系統あり、斎藤十郎兵衛本人も自作だと認めている系統と、別人、すなわち本物の写楽が描いた系統とが存在すると確信する。 本物の写楽探しを始めた鶴屋。写楽に描かれた歌舞伎役者に会ったり、戯場(劇場)の座主に会ったり、絵師や戯作者に会ったりしているうち、なぜか蔦屋がやってきて写楽探しはやめといた方がいいと警告をする。理由ははっきりと言わないが、その方が版元としての鶴屋のためだと。いよいよミステリー展開に。赤犬の首が店に投げ込まれたり、刷り用の紙不足になったりと、嫌がらせもおきる。お互いに版元として尊敬し、認め合っている仲なのに、蔦屋が一枚噛んでいるのか? 結局、写楽に会ったことがあるというのは、俳諧師の内田米棠だけだった。10年ほど前、年齢は40歳ぐらい。喜多川歌麿ではないかと考え始めた鶴屋だったが、年齢があわない。しかし、写楽の作とされる6枚の役者絵に関する評価を色々な立場の人に聞くなかで、段々となぞが解けてきた。これまでにあった人物としては、市川蝦蔵が何かを知っていると考えた。蝦蔵は五代目市川團十郎であり、今は息子に六代目をゆずって蝦蔵として役者をしている。問い詰めると、蝦蔵は口を割り始める。そして、自らの解明を話す蔦屋に対し、同席した蔦屋とともに真相を明かしていく。蔦屋の推理は当たっていた。写楽の正体は、斎藤十郎兵衛でも、喜多川歌麿でもなく、別人だった。 ************* (ここからネタ割れ注意) 写楽の代表作、江戸兵衛は三代目大谷鬼次(二代目中村仲蔵)だとされているが、実は写楽はそう特定する書き込みはしていない。ただ、2年前の寛政6年5月に河原崎座で上演された「恋女房染分手綱」のときに出版されているので、大谷鬼次のはずであり、世間も鶴屋もそう思いこんでいた。ところが、実は蝦蔵だったのである。10年ほど前(9年前)の天明7年興行のそれで、演じていたのは五代目市川團十郎、すなわち蝦蔵だったのである。他の役者も、何人かはそのような人違いだった。 本物の写楽の正体は、戯作者として人気の恋川春町だった。もちろん、彼は絵師でもある(この小説が唱える新説?)。 春町は、天明7年の「恋女房染分手綱」を始めとした芝居の役者絵を描き残した。ところが、寛政元年(天明9年)に春町の戯作内容が問題視されて松平定信に呼び出された。春町は出頭前に自裁した。春町の正体はといえば、駿河小島藩年寄本役の倉橋寿平という武家だったのである。 蔦屋は、松平定信に睨まれた春町の名前で出版すれば、自らも危ない。だから、春町の名前を伏せ、写楽の名前で斎藤十兵衛を巻き込んで、何年か後に執筆時期を誤魔化して出版したのだった。 その蔦屋は、寛政9年2月、突如倒れ、5月に世を去った。 ************* 鶴屋喜右衛門:仙鶴堂主人、寛政8年2月に写楽?に「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」肉質画を依頼 お辰:妻、京都鶴屋の娘、校合担当、まかない担当 喜介:息子 蔦屋重三郎: 丸屋小兵衛:元版元で耕書堂の裏方に、 斎藤十郎兵衛:阿波蜂須賀公抱えの猿楽師、東洲斎写楽もどき?、寛政6年デビュー(蔦屋耕書堂) 和泉屋市兵衛:芝の名物地本問屋、役者絵では一番 唐衣橘洲(からごろもきっしゅう):御三卿田安家家臣、狂歌師 喜多川歌麿:44歳 曲亭馬琴:元耕書堂番頭 十返舎一九: 北斎宗理:勝川春朗→叢春朗→北斎宗理 大田南畝:狂歌師 山東京伝: 恋川春町:戯作者、駿河小島藩年寄本役の倉橋寿平、ペンネームは勝川春章のもじり、本物の写楽、 朋誠堂喜三二:戯作者、秋田佐竹藩江戸留守居役の平沢平角 歌川豊国:人気若手+絵師、和泉屋の稼ぎ頭 勝川春章:勝川春朗(北斎)らが弟子、写楽も弟子か私淑 河原崎権之助:河原崎座(木挽町の控櫓) 大谷鬼次:二代目中村仲蔵、三代目鬼次、 市川男女蔵:写楽探しに協力、恋女房染分手綱で一平役、父は市川門之助 谷村虎三:稲荷町(下っ端役者)、悪役、恋女房染分手綱で鷲塚八平次役 岩井半四郎:女形の最高位である三位、女房染分手綱で重の井役 小川常世:女形、九位、女房染分手綱で奴一平の姉や仲居役 市川蝦蔵:役者を引退し成田屋七左衛門に、息子は六代目團十郎 内田米棠(べいとう):俳諧師、本物の写楽と会っている(10年前に40歳ぐらい) 倉橋:本物の写楽の息子 

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    投稿日: 2024.12.03
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    江戸中期、約1年余りで150作品を世に出し、忽然と消えた絵師・東洲斎写楽 その写楽が2人居た?! 版元や歌舞伎役者、絵師や戯作者、江戸文化の人々もたくさん出てきて面白い 谷津さんの、人の心理を描く筆も冴え渡っている!

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    投稿日: 2024.12.01
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    【蔦屋が隠した謎の絵師、写楽の真実とは?】「写楽は二人いる」ある人物からそう聞かされた版元の主、喜右衛門は喜多川歌麿と写楽探しに乗り出す。謎の絵師の正体に迫る意欲作。

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    投稿日: 2024.10.22