Reader Store
日本の犯罪小説
日本の犯罪小説
杉江松恋/光文社
作品詳細ページへ戻る

総合評価

8件)
3.3
0
1
2
0
0
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    2025/07/19 推理小説家と類される作家たちが小説の中でどう犯罪を描いてきたかについての研究論文を読んでいるようで、とても読み応えがあった。犯罪そのもの、犯罪心理、犯人の生い立ち、社会の歪みなど、作家がどこにどう焦点を当てているか、それによって後の作家や作品にどう影響を与えたかがとても丁寧に解説されている。 今後、ミステリー(とひとくくりにしてよいかどうか分からんが)の読み方が変わりそう。文体が好みで、サクサク読めた

    0
    投稿日: 2025.07.21
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    探偵小説と20世紀の精神:大量死の衝撃と変容する理性 本書は、探偵小説を「20世紀小説」と捉え、その起源と発展を第一次世界大戦という未曽有の大量死の経験がもたらした精神構造の変化と結びつけて論じます。理性と狂気の境界が曖昧になる20世紀的な精神、虚無感、そして戦争が生み出した「失われた世代」の文学・芸術との関連を指摘し、初期の探偵小説における20世紀的リアリティを分析します。 日本における探偵小説の受容と展開:純文学との対立と本格への渇望 大正後期から昭和初期にかけての日本における探偵小説の受容と展開の背景として、大衆文学の成立、「新青年」による欧米探偵小説の紹介、そして純文学との分裂という当時の文学界の状況を解説します。本格探偵小説成立への渇望と、第二次大戦後の横溝正史の登場による実現を、日本の社会状況と精神史的文脈の中で捉えます。 戦後日本の探偵小説:孤立、トリック、そして時代の映し鏡 敗戦後の日本を巨大な密室と捉え、孤絶した舞台や巧妙なトリックを用いた戦後の探偵小説を分析します。エラリー・クイーンの作品を大量死の時代を象徴するものとして読み解き、ヴァンダインの評価の変遷にも触れながら、戦後日本の探偵小説がどのように時代の精神を反映してきたかを考察します。 桐野夏生と宮部みゆき:現代犯罪小説の新たな潮流 女性を主人公とすることで日本の犯罪小説に新風を吹き込んだ桐野夏生と、現代社会における無差別な暴力やメディアとの関係性を描く宮部みゆきの作品に焦点を当てます。それぞれの作家の代表作を通じて、社会の歪みや人間の心の闇を描き出す現代犯罪小説の新たな潮流を分析します。 水上勉と小池真理子:人間の宿命と世俗に背く感情 実在の事件を基に人間の辿る運命を描く水上勉、そして犯罪と恋愛という禁断のテーマを通じて人間の深層心理を描く小池真理子の作品を取り上げます。それぞれの作家の視点から、人間の抗いがたい感情や社会との葛藤、そして犯罪を通して浮かび上がる人間の本質に迫ります。 高村薫と馳星周:理解困難な人間と社会との関係 人間の理解困難性や社会との関係性を描く高村薫と馳星周の作品を紹介します。高村薫の社会と個人を描く重厚な作品、そして馳星周のノワール作品における相反する要素を抱えた人間の姿を通じて、犯罪小説が捉える人間の複雑さを論じます。 「大衆」の時代と探偵小説の未来:20世紀の終焉と新たな展開 第一次世界大戦後の「大衆」の出現と、探偵小説が全体主義と対立する構造を持つ点を指摘し、20世紀の終焉と日本の「新本格」ムーブメントの勃興を結びつけます。探偵小説が時代を映す鏡として、今後も変化し続ける社会の中で人間の謎を探求していく可能性を示唆し、本書を締めくくります。

    0
    投稿日: 2025.05.21
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    マッコイさんである マッコイさんの「本」を読むのは初めてである しかし、マッコイさんの文章を読むのは初めてではない というか日本のミステリーファンでマッコイさんの文章を読んだことないという人がいるのであろうか いやいない 断言する いないったらいない ミステリーの書評家と言えば、マッコイさんなのである 申し訳ないがその他の人は周回遅れもいいところだ マラソンに例えればマッコイさんが国立競技場に戻ってきたときには、他の人はまだ国立競技場を出ていないみたいなレベルだ ちょっと邪魔だ そしてマッコイさんはどういう人かというと「造詣が深い」ということになるのだろうが、いやそんなもんじゃない 言葉が追いつかないレベルだ 誰かマッコイさん用に新しい言葉を作る必要すらある マラソンに例える…のはもういいか とにかくめちゃくちゃ詳しい なぜ詳しいかと言えば、宇宙レベルで好きなんだろうなと思う そんなもんマッコイさんの書評は愛しかないもの そのくらい分かるもの そしてもちろん登場した作品は漏れなく読みたくなーる マッコイさんなんか読まなきゃ良かった(難しい年頃)

    72
    投稿日: 2025.04.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    犯罪小説を著者毎に論説する真面目な評論集。なるほどとは思うものの非常にカタイ評論で面白みは薄い。まあ今後の読んでない著作の参考にはなった。

    0
    投稿日: 2025.03.10
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    犯罪小説についての評論。なのだけれど、犯罪小説っていったい何なんでしょう。ミステリとは違うのかな? と疑問に思いましたが。ミステリのワンジャンルではありますよね。ミステリ好きなら読んでおいて損はないかも。 言及されている作品には古い時代のものも多いので、読んでいないものが多いです。タイトルは知っていても読んでいない、というのも多いなあ。だけどどれも魅力的で、またしても読みたい作品が増えてしまいました。けっこうハードボイルド枠も多い気がします。そのあたりは特にまだ読んでいない……。

    1
    投稿日: 2025.01.10
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    2024年発行、光文社の単行本。全16章、18人。犯罪小説とは犯罪者を描いた小説のこと、という理解でいいのだろうか。この犯罪小説を切り口とした作家に対する評論集、ということになるのだろう。時代的にも広く、犯罪者を描くものであれば時代小説も範囲に含めている。こういう視点での作家評論はなかなか面白いと思う。 各章の評論対応作家:大藪晴彦、江戸川乱歩、藤原審爾、水上勉、松本清張、結城昌治、佐木隆三、石原慎太郎、阿佐田哲也、池波正太郎、山田風太郎、西村京太郎、小池真理子、船戸与一、宮部みゆき、桐野夏生・馳星周・高村薫、初出:終章以外は『ジャーロ』80号(2022年1月)から94号(2024年5月)、終章は書下ろし、

    0
    投稿日: 2024.12.21
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    光文社から発行されているミステリー専門誌『ジャーロ』に2022年から2024年までに連載されたものに書き下ろしを加えてまとめられた本書は、日本における主要な犯罪小説を批評した評論集である。各章ごとにひとりの作家を取り上げ、その作家による作品が日本の犯罪小説史においていかに重要であるかを説く内容となっている。その過程において著者は、取り扱う作家にまとわりついている代表的なイメージ像に左右されず、それぞれの作家の“犯罪小説家”としての重要度を一から再考している節が見受けられる。すれっからしのマニアにとっては、既知の作家の新たな側面を発見するのを助けてくれる本だ。 作家の経歴を紹介しつつ主要な作品を紹介する体裁なので、「犯罪小説を読みたいけれど、どれを読めば分からない」という人にとっても格好の入門書としての役割を果たしてくれるはずだ。『日本の犯罪小説』と銘打たれてはいるが、それぞれの作家が海外の作家や作品に影響を受けている場合には、そちらについても触れられている。先人からいかなる影響を受け発展し、後進にいかなる影響を与えたかを含めての“日本の犯罪小説”が語られているのである。個人的には中学生のころに西村京太郎のトラベルミステリーに耽溺していたため、「トラベルミステリーの描き手」ではない側面について書かれた章をとくに興味深く読んだ。

    0
    投稿日: 2024.11.18
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    昭和の頃、小説の中の犯罪者は、固定観念を打ち砕く革命家のようでもあった。激しい怒りと、震えるような苛立ちが彼らを突き動かしていた。作家たちは、彼らに何を仮託していたのか。そして、社会の変化と成熟は、犯罪小説をどう変容させたのか。大藪春彦、江戸川乱歩、松本清張、阿佐田哲也、池波正太郎、小池真理子、宮部みゆき……18人の作家の創作の秘密に、「犯罪」のキーワードから迫る、迫真の文学評論。

    2
    投稿日: 2024.10.03