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邯鄲の島遥かなり(上)(新潮文庫)
邯鄲の島遥かなり(上)(新潮文庫)
貫井徳郎/新潮社
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総合評価

7件)
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    このレビューはネタバレを含みます。

    (上)(中)(下)まとめて。 氏の著作はこれまで少なくない数読んでいるが、おそらく大方が抱かれる感想と同じく、「これがあの貫井徳郎が書いた小説か…?」というのがまず、最初に感じたこと。 それほどまでに趣を異にする長編大河小説である。 なんだか登場人物の弁明を読んでいると、京極夏彦氏が書く文体を想起してしまった、それほどまでに。 もちろん叙述トリックの出番はない(笑)。 そして全編を通じ、そこはかとなくユーモラスというか微かではありながらも絶対的な陽気さのような空気が漂っていることもまた、これまでの氏の作品群とは一線を画す。 と言っても、その明るさは上巻が顕著、中巻以降はやや薄れていき、相対的にシリアスさが増していくわけだが…。 特に第五部、あまりにも物哀しい「夢に取り憑かれた男」を機に、その傾向が強くなっていく気がする。 また、そもそもが一ノ屋という特異な家系を軸としたクロニクルの体を取っている物語だが、薄まると言えばその"一ノ屋色"も同様。 限られた紙幅の中に戦争というものがもたらす深い闇を余すところなく存分に著しきった第十二部「勝ってくるぞと勇ましく」、続けてさらに直截的に絶対悪である戦争の悲惨さを訴えた第十三部「子供たち」あたりが象徴的であるように思うが、作中の時代が下がるごとに一ノ屋の血の重みは排され、日本という国の変容を描くことに重きが置かれていく。 終盤、第十六部で一ノ屋は名実ともに終焉を迎えることになるが、そこでは時代の変遷とそれに伴う社会の変質がダイナミックにぎゅっと凝縮及び集積され、実に端的に示されている。 長く紡がれてきた物語は続く第十七部で幕を閉じるが、著者が始めから決めていたというラストシーンは決して気負うことなくするりと、それでいて前を向き腰を据えているのがまた、良い。 ただ大河ではあるが、その全容は大きな一本の奔流というよりも、それぞれに独立した中編の集合体であるという印象が強い。 私見を申せば、時空を超越した有機的な連環による驚きがもっと得られていれば、さらに感慨は深まっただろう。 「苦手なことに諦めず挑み続けたこともまた、良太郎の才能だったのではないかと今は思える。」 「でも頭が切れる人間は、先が見えるから簡単に諦めてしまう。粘りがないんだ。意見が違う人間を説得することなんて、馬鹿馬鹿しくてやってられない。」 「小説家は掴み所がなかった。駄目と即断できない代わりに、これでいいという到達地点が見つからない。言わば、果てしない道のりを歩いているような行為だった。この、霞を手で集めるような空しさを、小説家はどのように克服しているのか。」 「アメリカも日本も、女が政治家をやってれば戦争なんて起こさなかったんだ」 「たとえメイ子が百歳まで生きようと、日本は才ある女を生かせる国にはならない気がした。」 「何が正しくて何が間違っているかは、戦争に勝った方がきめるんだよ」 「『馬鹿だねぇ』  ~中略~  自分が一番聞きたかった言葉は、このひと言だったのではないかとすら思えた。」

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    投稿日: 2025.10.24
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    読み進めていくうちにどんどんハマっていく、そんな印象。 時代としては明治維新から東京大震災までがこの上巻で、このあと中・下巻と続いていくんだけど、正直長い……長いんだけど、でも次が気になるから止まらない。上巻だけでも満足感。 離島というロケーションと、その島のある一族を軸にしたストーリーで単純におもしろくて次の中巻にも期待です。

    0
    投稿日: 2025.05.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    イチマツという色男の子孫の話なのか。 共通しているのはそこだけで、これだけで上巻なのだから、このあと中・下とどういう展開が待っているのだろう。 とりあえず長い。。

    2
    投稿日: 2025.04.04
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    「イチマツ」というイケメン以上の神がかった色男がとある島内であらゆる女性と子をなしたことによる、その子どもや孫たちにまつわる島全体の物語、か? 子孫たちの人生を個別に追った短編集にしてそれぞれがうっすらと繋がる大長編で、上中下の上巻だけでかなりの満足感。引き続き中巻を読みますか。

    0
    投稿日: 2025.04.03
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    イチマツの頃はどんなストーリー展開なんだろうか?と訝ったが、それぞれの物語は過去の貫井作品には見られないものが感じられる。次(中)にも期待したい。

    0
    投稿日: 2025.03.10
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    不思議な血脈の理由とか成り立ちとかが語られていくのか、と思ってたら、不思議な血脈はただそれぞれの短編の共通点なだけだった。 でも一つ一つがすごく良い。ちょっとユーモアがあって。 この先にまたイチマツは現れるのかな? 続きが楽しみ。

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    投稿日: 2024.11.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    上中下の上巻で700ページの超大作。時は明治維新から関東大震災を経て大正の終わりまで。ある島にイチマツという島の名家「一ノ屋」の当主が帰還した。元新撰組で大変な色男であったらしい。この男は島に幸運をもたらすとされ女性にも大人気で、別腹で計13人の子を成した。その子供たち、さらにその子供(ようするイチマツの孫)の物語かな?物語中で出てくる「くが」というのは本土のこと?題名の「邯鄲」という単語の意味もまだ分からず。物語自体がどういう方向に進むのか前情報がないため、続編を楽しみに待つ事にする。

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    投稿日: 2024.10.07