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大使とその妻 上
大使とその妻 上
水村美苗/新潮社
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総合評価

13件)
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     第1部を昨日読み終えましたが、今朝、冒頭の「消えてしまった夫婦」を読み返し、最初、なんのことか解らなかったのですが、すぐに理解出来ました(笑)。  アメリカ人の独身男性(日本を深く理解している)が、軽井沢の別荘で体験したことを綴った小説です。  日本の南米大使の妻(ミステリアス)との出会い、大使夫婦とのやりとり、そして、ミステリアスな妻の素性がだんだんと解ってくるプロセスが丁寧に描かれていて、どんどんこの本に入り込んで行ってしまう、筆者の書きぶりがすばらしいと思った。  筆者が人生の中で経験したことで表現される内容、そして、深く日本文学を理解していることから発せられる表現も美しいものとなっている。  上巻の最後で、ミステリアスだった大使の妻の素性が明らかにされた。いよいよ下巻に入って行くが、また、スラスラと読めそうな気がするが、どんな顛末が待っているのか・・・

    0
    投稿日: 2025.11.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    主人公のケヴィンは軽井沢に住む1965年生まれのアメリカ人で、たいして仕事もしていないが金はある隠遁者であり、彼が書いた小説という設定で物語は進む。語られるのは表題通り、隣家に越してきた夫婦との交流とルーツである。 水村美苗は古典を下敷きに小説を書く。そもそもデビュー作がで夏目漱石の「明暗」の続きを勝手に書くような作家なのだし、そのあとの作品も同様である。本人の自己規定どおり、「近代文学の終わりに来た者」なのだから、そうなってしまうのもしかたない。 では、本作はなにを下敷きにしているのか?本人のインタビューからは谷崎潤一郎の「春琴抄」の名が挙げられていた。でも、下敷きにしたようなものではない。三浦雅志は書評でトーマス・マンの「魔の山」を挙げていたが、それも外界と隔絶された結界的な空間を指してのものだ。物語においての全体ではなく部分でしかない。 おそらく明確な下敷きは存在せず、パートごとにつぎはぎしてるようなものだと思う。だから、そのあたりについて考えるのは不毛だろうし、そんなことを考える間もなく、物語の質が高いので気にもならない。 上巻を読むと、外国人が美しい国ニッポンに想いを馳せるような内容に読めそうではある。実際、そう読んでいるひとも多いみたいだし、誤読でもない。だが、残念ながらそのようなガイジンのニッポンびいきを見て気持ちよくなるような快楽は、下巻であっさり裏切られる。美しいニッポンなど幻想のなかにしか存在しないことをまざまざと突きつけられるからだ。しかし。 「そんなもんは、あっちにいるうちに、みんなが勝手に創りあげたもんで、最初からなかったって…そう考えられればまだ救われたのにって」 「それが、いくらそう考えようとしても、そういう風には考えられなかったの。ありがたいものを、粗末にして、どんどんと壊していって、こんなにわけのわからない国になってしまっただけだとしか考えられなかったの」 これはそのまま水村美苗における日本語や日本文学につながる。 ところで、本作はコロナ禍を舞台にしている。もうコロナ禍のはじまりから5年以上経っているので、そのようなフィクションは多くなっているが、本作はコロナをきわめてうまく物語に落とし込んだように思える。

    0
    投稿日: 2025.11.12
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    日本の古典文学の引用が 随所に散りばめながら、 美しい日本語で軽井沢の 四季が描かれる。 特に劇的な出来事はないけど 登場人物にとっては大きな出来事へのリアクションに共感できるかどうかで、好き嫌いは分かれるかも。 貴子の仕舞のシーンは 鮮やかなイメージが脳裏に 浮かんだ 映像化は難しいだろうな

    0
    投稿日: 2025.06.12
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    『日本語が亡びるとき』を読んだ直後に、Y新聞の連載『母の遺産』がはじまり、毎週土曜日が待ち遠しかったことを思い出す。上巻一気読みしたところで、下巻は図書館リクエストの順番待ち。むむむ。待ちきれず買ってしまおうか、悩むところ!(下巻へ続く)

    1
    投稿日: 2025.05.08
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    軽井沢の小説を久しぶりに読む。土地の歴史とイメージが手品のタネのような。今となっては伝統的日本語を書く手立ては冷凍保存の解凍となるのか。語り手の設定もなかなか。

    0
    投稿日: 2025.05.06
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    ケヴィンと貴子、それぞれの過去から今に至るまで、国を跨ぎ時代を超え、何層にも物語りが織りなされていく。それは、とうの昔に亡くなったかけがえのない者との対話でもある。最後に二人が再会できることを願わずにはいられなかった。

    1
    投稿日: 2025.03.27
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    亡くなった兄キリアンへの想いと家族への疎外感からアメリカを離れ日本に暮らすケヴィン.彼の軽井沢の隠れ家のような山荘の隣に越してきた元大使の夫妻との交流をつうじて日本文化が立ち現れてくる.妻貴子の謎めい佇まいが想像と違っていて,その生い立ちも含めて下巻が楽しみである.

    1
    投稿日: 2025.03.19
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    2025年の最高作にもう逢ってしまったよ。 水村美苗さまの久々の最新作は、鎌倉が舞台。失われゆく日本の美を嘆きながらひっそりと別荘地はずれの庵に暮らすアメリカ人の隣へ、夢見た日本を体現したかのような女性とその夫が越してくる。彼女の正体は…ああ、もうなんと美しい文章か。読んでるだけで血が洗われる。

    0
    投稿日: 2025.02.24
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    語り手の日本に住むアメリカ人、 高等難民みたいで どこか日本を見下してるし 最初は鼻についてたんですが 読み進むうちにやめられなくなり! それは実は彼も もう一人の主人公の女性と同様、 過去に故郷で重い出来事があり それをずっと引きずりながら 生きているから。 女性の主人公が話す日本語が美しく 背筋が伸びる気持ちになりました。 最後は書かれていませんが 哀しい結末を想像しちゃった!

    0
    投稿日: 2025.02.12
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    アメリカ人のケビンは一人で軽井沢の追分の小屋に住んでいる。冬の寒い頃は東京のマンションに移っているが、気候が良くなると軽井沢に戻ってくるのが習慣になってしまった。そんなケビンの隣の別荘が改築され新しい住人が越してくるという。静けさを愛するケビンは家族ずれなら困るなと心配していたが、やってくるのは夫婦ずれだという。少しほっとしたケビンだった。そしてその夫婦が越してきて、少しずつお互いの来歴を知るにつれ、ケビンにはその夫婦が忘れられない人たちになっていく。

    1
    投稿日: 2025.02.01
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    薄い布を一枚一枚剥ぐように貴子の真実が明らかになっていく ケヴィンと同じくわたしも次々に訪れる驚きにただ茫然とするばかり。 冒頭で夫妻との別れが描かれているので、これからさらに何があきらかになって何が起こるのか、怖いような気持ちで下巻に、、、

    0
    投稿日: 2024.12.18
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    たとえば、嵐が丘のような、 たとえば、源氏物語のような、 そういう例え、そぐわないかもしれないけれど、深淵で高貴で雅で、しかも海外も感じられ軽井沢の風も感じられるような。 「下」にまた感想を書き綴ります。

    10
    投稿日: 2024.10.29
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    ああ、水村美苗さんの新作小説を読めた! その喜びに、読む前から感涙、 そして上巻を読み終えた今は、感動の涙。 初代ブクログでは、おそらく好きな作家欄に 水村美苗さんの名前を出していたはず。 『本格小説』がとにかく大好き! それから、辻邦生さんとの往復書簡『手紙、栞を添えて』は、一つ一つ確認するように、 横書きの『私小説』は違和感を抱きつつも、必死に、読んだ。 水村さんの知的で聡明な、そして近代日本と西洋が入り交じる あの世界が大好きだったのだ。 でも、あまりにも前作『新聞小説 母の遺産』から間が開きすぎた。 そして、残念なことに、どうもあの小説が好きになれず。 いつしか、水村さんは、小説をもうお書きにならないかも・・・などと思い込んで 時だけが流れていた。 そうしたら、思いがけず、新作がやってきたとな♫ ばんざ~~~い 即、図書館に予約。すぐに借りられてラッキ~ でも、これは、自分の手元に置いて、ずっと読み続けたい本。 週末には本屋さんへGO! ・・・肝心の小説。 読売新聞で水村さんはおっしゃった。 「アメリカ人の男性の目で文化人類学的に日本を見たい気持ちがあった」 大使とその妻、つまり周一と貴子夫妻と親しくなるケヴィンの手記の形で 小説は進む。夫妻との出会いと別れ・・・ 上巻ラストでは、貴子の秘密が明かされ、驚愕する・・・ 一方で、ケヴイン同様、ああ、そうだったのかと、腑に落ちる。 まさにわたしはケヴィンを通して二人を見ていたわけだね! 「読売」では「日本語だから可能な表現とか、書き言葉の面白みを 継承して後につなげたい」とも、おっしゃる。 なるほど!ああ、本当によくわかる! 読んでいて、ふと、中里恒子『時雨の記』が蘇ってくるのは その「書き言葉の面白み」のせいだろうか。 あのときと同じように、本作も大事に大事に文字を追っている。 一つ一つをきちんと味わうことができる文章だ。 下巻も、大事に読みたい。 一気読みしてしまいそうだけれどねw

    6
    投稿日: 2024.10.09