
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「楽園ノイズ 7」を読み終えたのちに、本書にたどり着いた。 2013年7月に刊行された蒔田シュンの物語。小説すばるに掲載された5編からなる連作短編集で、刊行から10年以上を経て昨年文庫化されていた。 僕にとって本書は、「楽園ノイズ」の登場人物として既に見知っている人たちの過去に、いったい何があったのかを追体験するものとなってしまった。 著者すらも本書執筆時には考えてもいなかったであろう未来を知ったうえで12年前の“今”を読むと、二重写しになった写真を見ているような感じで、本書を純粋には読めていないと思う。 音楽業界の端っこで便利屋として生きてきた蒔田シュン(30歳)と日本を代表するシンガーソングライター海野リカコ(25歳)。音楽とともに生きる二人の物語であり、蒔田がプロデューサーへと成長していく過程を描いた『音楽業界もの』でもある。 円周率の音楽や世界一長い曲といった小ネタや、“お仕事小説”として盗作騒動やアイドルのMV制作の内幕話はとても興味深い。 本来であれば、「スプートニクの恋人」を意識しながら書いたという最終話がシュンとリカコの関係性を表わす重要なエピソードなのだろうが、個人的に最も強く印象に残ったのは第4話の窪井拓斗(19歳)との出会いと決別だった。 リカコの言葉からすれば、「楽園ノイズ 7」と本書「神曲プロデューサー」との間には、刊行年月と同じ12年くらいの時が流れていると思われる。 「楽園ノイズ 3」の窪井拓斗(31歳?)は分かりにくくて面倒くさいヤツだったが、19歳の彼はそれに輪をかけて鋭く尖っており、「…… 3」のアレでもまだマシになったほうだったんだと感心してしまった。 また、ウェブラジオでの独白から、拓斗が蒔田のことをけっして嫌っていたわけでも実力を認めていなかったわけでもなかったことを知ることができたし、それを伝えようとしていたこともわかって、素直に良かったと思えた。たとえもう直接に伝えることができないのだとしても。 すべてを見通す神様の眼を持ったようなこんな読み方は、この物語の本来の読み方ではない。 でも、そんな読み方ができたことを、僕は幸せに感じている。
0投稿日: 2025.09.25
