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失われたものたちの国
失われたものたちの国
ジョン・コナリー、田内志文/東京創元社
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総合評価

11件)
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    前作がかなりダークだったので覚悟して読み始めたが、前作にあった理不尽な怖さは感じなかった。前作が書かれて17年経っての続編。母を喪った子の話と、子を失ないかけている母。相似する部分もあれば対比されている部分もある。一方で、主人公を女性にすることで、現代の女性が抱える問題、例えばミソジニーについても取り上げられている。最後のドライアドの人称がwe/theyであることも、種族の代表であるという意味だけでなく、最近のLGBTQ的配慮なのかもしれないと感じた。前作と今作、それぞれに魅力のある本で、両方を読むことで面白さも増えるものだった。

    0
    投稿日: 2025.07.24
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    前作から15年の月日が経っていることを感じさせる一作だった。物語は作り手の変容や時代の変容と共にあるのだと同じ著者の本を読んでいくとつくづく感じさせられる。 前作が母を失い、義母と馴染めない少年の成長譚で、今回は一人娘が事故で植物状態となったシングルマザーの心の回復の物語。主人公のセレスは失われたものたちの国で32歳の記憶も精神も保ったまま16の姿になって旅をする。前作がまだ幼く様々な事によって経験をつみ大人となっていくのと異なり、今回セレスはまず今までの経験を踏まえて様々な事に冷静に対処していく。ただ思春期の頃に戻ることでもう一度子供心も取り戻しつつ、大人としての生き方を再度見直していくことが出来るのだ。 視点が変わっている事が前作と大きな違いではあるんだけど、それ以上に本の中の世界の血生臭さが随分とまろやかになっている。世界は残酷で理不尽で苦しいものだけれどセレスは大人でその事は既にわかっているからこそ、本の中の世界ではその血生臭さに気づかないのかもしれない。 メタとしていえば、著者が続編を15年後に書いたという事がとても影響していると思うけれど。 そしてやはり木こりが良い。前作でも木こりは大変良かった。今回は出ずっぱりでさらに良かった。 前作同様、子供を守る大人が現れてちゃんと子供を尊重し、守り抜くのは子供向けの童話としてとても素晴らしいと思う。

    0
    投稿日: 2025.06.28
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    面白いのか面白くないのか聞かれたら、面白い方に入るかもしれないけれど、うーん。 難解なのかテーマが定まってないだけなのか、印象的なシーン、好きなシーンがこれと言って無い。 あと、海外ものにありがちな「絶対悪」みたいな考え方が馴染まない。 ミヤマガラスとカーリオは何をしたかったの…?

    0
    投稿日: 2025.05.12
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     本屋さんでこの本をみつけたときは、売れたから装丁ちがいで出したのかなと思った。『失われたものたちの本』は、きれいに終わっていたからだ。  手に取って、ぱらぱらめくって、あれ?こんな人物出てたっけ?とか違和感を感じでよく見たら違う本だったというオチ。  前作は前作で完結していたものの、その後『キャクストン私設図書館』という短編集の中で、同じ世界を舞台にした物語も描かれてたっけ。  前作が面白かったし、「キャクストン~」も良かったから、本書も読んでみた。  事故で植物状態となった娘の母、セレナが主人公。  娘の介護に疲れつつも、いつかまた・・・という望みと、もうこのまま娘を失ってしまうかもしえないという恐怖におびえる毎日。  高額な都市部の病院から、亡き父の持っていた家のある地の病院へ移り、その病院のそば打ち捨てられた屋敷を見つける。  そこは前作の主人公、デイヴィッドにゆかりのある屋敷。  セレナはそこから、あの世界に迷いこんでしまう。  塔をのぼろうとする騎士を弓で射貫くラプンツェルとか、狼との間に3人の人狼の子どもを産んだ赤ずきんとか、ちょっと深みのある色付けをされた童話の人物たち。  あぁ、この世界を歩くのが楽しかったんだよなぁと思い出す。   展開をたどると、それほど入り組んだ物語ではない。  ただ、その世界、人物のイメージが丁寧に積み重ねられている。  だからけっこう読むのに時間がかかったんだけど。  前作『失われたものたちの本』も『キャクストン私設図書館』も、そういう味わいがあった。  著者自身、本が好きなんだろうなぁ、物語が好きなんだろうなぁ、と感じさせる。  そのあたりの、魅力が伝わる作品だったね。

    1
    投稿日: 2025.05.06
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    前作がとても素晴らしかっただけにこちらも期待をしていたが…訳者のあとがきにも書いてあるように、少し読みづらく感じた。物語にのめり込むことができなかった。数年後に再度読み返せばまた評価は変わるだろうか…

    0
    投稿日: 2025.04.18
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    「失われたものたちの本」の完全な続編。 (前作を読んでいないと全く理解不能) ロンドンに住むセレスは一人で8歳の娘を育てている。ある日、娘が交通事故にあい昏睡状態になってしまう。医師の勧めで田舎のケア施設に移るが、その施設のそばに『失われたものたちの本』という物語を書いた作家の古い屋敷があって…。 主人公セレスの感じる孤独と絶望は痛々しいほど胸に迫ってきます。ただ、前作の主人公ディヴィッドが囚われた喪失感や嫉妬とはベクトルが違う感触がありました。ディヴィッドが少年だったのに対して、本作の主人公セレスは立派な大人として描かれています。前作が書かれてから17年が過ぎ、著者の思考の変遷がここに表れているように感じました。

    31
    投稿日: 2025.02.05
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    250116*読了 長い旅路から帰還した。セレスとおなじくへとへとである。手に汗にぎる、というよりも、心臓がきゅっとなるほどに恐ろしく、どうか救いを、と願いつづけた物語だった。激しい戦いだけが冒険じゃない。  "あらゆる読者と同じくセレスもまた読み終えたすべての本によって変容し、彼女の人生そのものが読み終えた本の記録になっていたのです。" 本とともに生き、成長してきた自分にとって、そしてすべての本好きにとって、このことばは力強く響くだろう。 著者自身もそうであったように、親として我が子を想う、その他者への愛が胸のうちにあることの幸福と、それゆえのつらさをセレスを通して実感させられた。 すべての物語は読者のこころに蓄積されていくものだけれど、そのなかでも何度も思い出す大切な物語がある。本作はまさしくそれに値する。 幼少期になにかしらの物語を読んだり、読み聞かせてもらった記憶を持っている大人は多いと思う。 特に本が好きな少年少女時代を過ごしそのまま大人になった人にとって、なかでもその後、親になった人にとって、この小説は共感と感動が大きいのではないかな。 もちろんそうでないひとにも、すべてのひとにおすすめはしたい。 前作以上にわたしにとっては意味のある本だった。

    1
    投稿日: 2025.01.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    前作は見事に完結して見せていたが、そんな作品に見事に続編を生み出させてくれた作品だと思った。 主人公は娘を失われた30代の母親で、ファンタジー世界にはそぐわない人物のように思える。 だが、彼女もまた誰かの娘であり、愛情を注ぐ対象のいる母親であり、現実を生きる冒険者なのだ。 一つ蛇足の感想を。 フロリダはお風呂から離脱する、ではなくお風呂のため離脱する、です。

    1
    投稿日: 2025.01.03
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    書くつもりがなかった続編が書かれて、それを読むことができて嬉しい。 デイヴィッドが去ったあとの世界に迷い込んだセレス。ファンタジーには珍しく成人して母親でもある彼女が主人公となって物語は進んでいく。 相変わらずファンタジックでありながらぎくりとするような展開や言い回しが登場する。前作と比較して違いや変化を探すのも一つの楽しみ。 人によって本を読んだ時の感想が異なるように、セレスによって世界にも絶妙な変化が出ている。 彼女の物語がどうなるのか、知ることができてよかった。

    0
    投稿日: 2024.08.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    失われたものたちの国 よみおわりました。 宮崎駿監督が引退を決めたのに、復活するきっかけになった物語(の続編)になります。 ジョン・コナリーの児童書になりますが、 けっして甘ったれた内容ではありません。 前作は少年ディヴィッドが『ねじくれ男』に招かれ異世界に行ってさまざまな苦難を乗り越えて成長していきます。 続編は事故で植物人間になってしまった娘を看病していた女性が異世界に飛び込んでしまいます。 かなり芯のある(強気)女性セレスですが、なぜか十代の女の子に戻ってしまいます。そして前作の主人公ディヴィッドや色んな人物と出会います。 内容はかなりグロい部分があり、スパイスが強めです。 最後10ページくらいはちょっと泣いてしまいました。 目覚めない娘にただ会いたいために奮闘するセレスがいきついた答え、私なら『ねじくれ男』の誘惑に負けそうだな、と思いました。 植物人間の娘が目を覚ますとなれば...... セレスは凄い人物です。

    1
    投稿日: 2024.08.02
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    32歳のシングルマザー・セレスは交通事故で昏睡状態に陥った一人娘のためにロンドンからケア施設のある田舎に引っ越す。目覚めない娘の看護に疲れたセレスは不思議な力に引っ張られるように異世界へ。何者がどんな目的でセレスを導いたのか。そしてその世界でセレスは半分の年齢である16歳の少女に若返り、世界の全てを知る木こりと出会い冒険の旅へ…。『失われたものたちの本』続編。作り込まれたダークな世界観に圧倒され中々ページが捲れぬ。これから読む人には是非前作を読んでから手に取ることを勧めたい。

    3
    投稿日: 2024.07.16