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絶滅体験レストラン もしも環境問題が13の飲食店だったら
絶滅体験レストラン もしも環境問題が13の飲食店だったら
WoWキツネザル、澁谷 玲子/山と溪谷社
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総合評価

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    環境問題の入門書。 まるで雑誌のグルメコーナーのようなテンプレートで紹介される架空の飲食店(環境問題のメタファー)と、わかりやすい解説が交互にのっている作り。 ブラックユーモアたっぷりの遊びの部分とまじめな説明部分が意外にも調和して読みやすい。 絶望的な内容だけど、当事者意識と希望をわきおこさせる参考文献コーナーや前書き後書きのおかげで読後感は悪くない。 詳しく知らなかった問題もあれば、知っていたけれど遠い話だと思っていた問題もある。 チャオ・ゴミーノや隠れ家バー共犯者など知らぬ間に利用していた店もちらほらあってぞっとする。 環境問題はあまりにも大きすぎて、個人はあまりにも無力でどうしたらいいかわからなくなるけど、"甘く都合の良い無関心"や"知る責任と選ぶ権利"は自分たち一人一人が抱える問題だってことを思い出させてくれる。 さらっとながらポイントをしぼって紹介されているから気づきがあるしもっと知りたい(知るべき)気持ちになる。 良い本だった。

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    投稿日: 2025.07.31
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    この文書は、ATTECXとWOWキツネザルによる「絶滅体験レストラン もしも環境問題が13の飲食店だったら」という書籍の詳細な内容要約です。本書は2019年から開催されているエンターテインメントプロジェクトを書籍化したもので、**気候変動、生物多様性の喪失、環境汚染**といった複雑に関連し合う地球規模の環境問題を、13の異なる飲食店というユニークなコンセプトを通じて**擬似体験**させることを目的としています。各店舗は生息地破壊、汚染、乱獲、気候変動、外来種という**絶滅の5つの主要要因**をテーマに設計されており、読者が環境問題を身近に感じ、深く理解できるよう工夫されています。 **気候変動と自然災害**をテーマとする店舗群では、地球温暖化の具体的影響が表現されています。「山火事ラーメン」では、山火事で被害を受けた野生動物の肉を使用し、**泥炭地火災によるCO2大量排出**や**PM2.5による健康被害**など、山火事と気候変動の負の連鎖を体験させます。「LOVE♡LOVE♡ハリケーン」メイド喫茶では、海水温上昇による**台風・ハリケーンの強大化**と**線状降水帯の増加**を表現し、「ロイヤルオーシャン」ホットクラブでは**サンゴの白化現象、海洋酸性化、赤潮(有害藻類ブルーム)の拡大**といった海洋環境の劣化を、美しい色合いのドリンクという皮肉な演出で提示しています。 **野生動物と人間の関係性の変化**に焦点を当てた店舗では、生息地破壊や人間活動の拡大が引き起こす様々な問題が扱われています。「ロストトロピカル」ビアカフェでは**人間と野生動物の衝突(コンフリクト)**、**パーム油生産による森林破壊**、**鉱物資源採掘による環境破壊**をテーマにし、「スナック マダニ」では森林破壊による**人獣共通感染症のリスク増大**と**気候変動による蚊媒介感染症の拡大**を扱います。「乱獲亭」では食用・薬用・ペット目的での**野生動物の乱獲と密漁の拡大**、「共犯者」隠れ家バーでは**絶滅危惧種ニホンウナギの違法取引**と**ブラックロンダリング**の実態を、「KAWAII SUSHI」では「カワイイ」という感情に基づく**野生動物のペット化と不適切な消費**問題を提起しています。 **生態系破壊と大量消費社会**の問題を扱う店舗では、現代社会の構造的な課題が浮き彫りにされています。「ヨソモノ横丁」フードコートでは**侵略的外来種による生態系破壊**を外来種料理として提供し、人間活動による外来種の拡散メカニズムを説明します。「チャオ・ゴミ―ノ」イタリアンでは、プラスチックゴミをピザの具材として使用することで**大量消費社会の歪み**と**海洋プラスチック汚染**を表現し、**ファストファッションや食品廃棄物**といった現代の消費パターンが環境に与える影響を風刺的に描いています。「純喫茶ミツバチ」では**花粉媒介者(ポリネーター)の激減**が食料生産に与える深刻な影響を強調し、**大規模農業や農薬使用による昆虫生息地の破壊**、さらには**コーヒー生産地での気候変動の影響**といったグローバルビジネスの環境コストを明らかにしています。 最終章の「ドルードーナツ」では、環境問題とは異なる角度から**情報社会の歪み**に焦点を当てています。SNSのアルゴリズムが生み出す**「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」**現象、**フェイクニュースの拡散**、個人の「真実」が暴走する現象を表現し、正確な情報に基づく環境問題への理解の重要性を暗示しています。**「バイアスハニー」や「インポスターロンダリング」**といったキーワードを通じて、情報の信憑性を見極める批判的思考の必要性を訴えています。 書籍全体を通じて、環境問題が決して他人事ではなく、**私たち一人ひとりの日常的な選択や行動**が地球環境に与える影響の大きさが強調されています。あとがきでは、読者が環境問題の重要性を深く認識し、地球を守るための**「ヒーロー」**として行動を起こすきっかけとなることへの期待が込められており、小さな個人の行動でも大きな変化を生み出せる可能性を示唆して締めくくられています。このユニークな飲食店コンセプトは、複雑で深刻な環境問題を、体験型の学習として親しみやすく提示する革新的なアプローチといえるでしょう。

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    投稿日: 2025.06.16
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    環境問題を架空の飲食店に掛け合わせて解説するという少し変わったコンセプトの本で戸惑ったが、この本の元となる体験型ショーが東京で開催されており、以前SNSで見かけたのを思い出した。 各レストランの内装やメニューがカラフルに描かれ、レストランの紹介、オーナーインタビュー、営業時間など、架空のガイドブックはブラックユーモアが効いている。 海洋ゴミとイタリアンをかけたデブリアクアピッツァなど読んでいると食欲が失せるのだが、上手く表現されていて面白かった。 13軒のレストランはテーマの元となった環境問題について詳しい解説がなされている。 知らない事が多くあり恥ずかしく感じた。 例えば一言で温暖化といっても、氷が解けて海水面が上がるだけではなく、それによる台風の強大化、山火事の悪化、永久凍土が溶けることによる未知のウイルスの拡大、生態系の乱れはもちろん人類にとっての多大な経済的損失にいたるまで数々の深刻な影響が出るわけで、十分に理解していなかった。 本書をきっかけに、より深く環境問題に興味がわいた、というより、もっときちんと知らなければいけないと強く思った。 巻末に紹介されている関連書籍もチェックしようと思う。

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    投稿日: 2024.08.18