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方舟さくら丸(新潮文庫)
方舟さくら丸(新潮文庫)
安部公房/新潮社
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総合評価

58件)
4.2
16
25
8
0
0
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    このレビューはネタバレを含みます。

    何回も笑わせてもらった。 特に主人公モグラのキャラクターが面白かった。 肥満体型に黒のレインコートを羽織っていたが、後はサングラスでもかければモグラとして見栄えがする。 「豚」というワードに過敏に反応するがデブという比喩で怒っているわけではなく、父親は猪みたいにガタイのいい人間で中身は最悪(母親も強姦されてモグラを産んだ)であり、今回シェルター活用している洞窟に、左足に足枷をつけられて放置されたこともあり、最初こそ痩せた体型だったが、そこから母親に枷の鎖を切ってもらって脱出してから父親への憎悪などでどんどん太ってきて、父が猪なら子は豚だな、などと同類扱いされるのがたまらないのである。 なので猪口という苗字もなるべく名乗らない。 「〜犬や豚じゃあるまいし。」 「豚だって……」 豚はいけない。 ↑メモするのを忘れたが、こうゆう流れのところがあって特にお気に入り。 虫屋との出会いも面白いし、サクラ達も意図せずだが合流し、結束を高めるためお互いの弱い部分をさらけ出そう!と過去の自分語りを始めたり、ほうき隊だか謎の男が洞窟内で目撃されたり、便器に片足を突っ込んで抜けなくなったり、舞台っぽい面白さ。 ただ、モグラは女への免疫が低いため、たまに気持ち悪い描写が入るのがまじキモイのでマイナス★1

    16
    投稿日: 2026.01.09
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    今まで読んできた安部公房の中ではわかりやすく面白い。コメディみたいにドタバタな中に「安部公房〜!」な小技の数々と曲者揃いの登場人物たち。 地下の採石場跡に住みついている主人公「もぐら」。その巨大な洞窟は核シェルターとして造り込まれています。 もぐらは、シェルターの中で共に生き延びるメンバーをいつでもスカウトできるよう「生き延びるための切符」を持ち歩いているのですが… 人が良いのかツメが甘いのか、もぐらの不器用さにヤキモキ!しかも後半もぐらに襲いかかる悲劇。もーもぐら〜勘弁してくれ〜、でもここから一気に面白さ加速! 現実から一度離れて、違う世界で違う自分を経験したら。 自分が全てを注ぎ込んだ事って杞憂だったのかも…とうっすら気づいたら。人を選ぶってどういう事かを突きつけられたら。 全部がファーっとどうでもよくなるような感覚。 そしてタイトル「方舟さくら丸」、この「さくら」の意味も併せて、いろんな事を考えるラストでした。 本文中の章は数字のみですが目次には見出しが書かれています。 最初に目にする目次ですが、読み終えてからもう一度戻ってくると、そこにもちょっとした情報があってニヤニヤ間違いなし。 本作のプロローグとして書かれた短編「ユープケッチャ」が気になるのですが、手に入れるの難しそう…図書館にあるかなぁ。

    7
    投稿日: 2025.12.29
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    面白かった。安部公房の中では比較的理解しやすい内容だったのでは。主人公の肥満男モグラは核戦争に備えた方舟を作り、ノアさながら乗船させる人間を選別していく。 肥満男のモグラのせいで昆虫屋がかたまりに思えてしまい、ずっと空気階段のコントを見てるような気持ちになってしまった。

    2
    投稿日: 2025.03.27
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    孤独と独善の中で方舟に引き篭もるモグラ。ひょんなことからそれが打ち破られ、予想外に自己の中に進出してくる。安倍文学らしい滑稽さを含みながら、現代社会の個人に対する影響力とそのシニカルな視点を提示している。

    5
    投稿日: 2024.12.05
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    性の威力 便器を中心に生活する滑稽さ 対しユープケッチャは自分のフンで生きる 人は大きな流れのユープケッチャとも言えるし正反対とも言える 政治的な側面や民主主義に関する疑問提唱でもあり、核戦争に対する皮肉でもある。自分が作った王国を危機に瀕死させて自分が脱出する。 そして、サクラ。サクラを題名に使い、それをわざと説明する安部公房は読者に対して何を言いたかったのか。 人は皆ある種のサクラであると伝えながら、サクラでいることも美しさの一つなのかもしれないと思わせた。

    1
    投稿日: 2024.10.05
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    どこかのタイミングで戯曲のようなユーモアに引き摺られてしまい、砂の女とか他人の顔へのカチッとした読み方から抜けてしまった だけど、やっぱりブラックユーモアの入れ方が半端なく上手い。情景も圧倒的だしプロットも完璧 存命しているうちに生で追うことができなかったのが悔やまれる作家no.1

    1
    投稿日: 2024.07.27
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    “便器”というものがここまでテーマの中心に据えられるのが面白いと思った。核戦争への警句も強く印象に残る。ユープケッチャという謎の自己完結的な存在と主人公との対比もある。

    0
    投稿日: 2024.04.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    中高生の頃にこの本を読んでいたら、男性というものへの不信感を募らせていたかもしれない。 女性に対する本能的な情動は仕方のない生理的反応なのかもしれないけど、正直結構読んでてぞわぞわした。そんなにスカートの裾って気になるもんなのか、、フィクションであってくれと願う。 選ばれし者たちというより社会からはみ出して生き方を失った人々の行先のよう。 自分たちがそこでは権力ピラミッドの最上位に君臨したい、でも民主的であって物分かりのよさをアピールはしていたい。 ただ結局は自分の好き嫌いという点での選別。 モグラの思考は分からなくはないけど、やはりひどく狭い。自分もそういう節がないかとヒヤヒヤしながら反面教師で読んだ。

    1
    投稿日: 2023.12.17
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    初めての阿部公房。読んではいないが映画やその他の情報からの「砂の女」の暗くて重いイメージで読む気になれなかった。しかしそのイメージ撤回。複雑で深く、喜劇的でもあっておもしろかった。世界が滅びても自分は生き延びるってどういうことだろう。

    1
    投稿日: 2023.10.06
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    砂の女より面白かった。登場人物が(砂の女より)多い分、物語が動く感じ。この閉塞した空間で次から次へ何かが起こって行く展開、ラストといい、舞台向きな気がする。と思ったら安部公房は戯曲も書くし、演劇活動されてた方なんですね。納得。

    2
    投稿日: 2023.02.24
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    世界の破滅から生き延びるための切符を売る主人公。設定は面白く序盤はワクワクしながら読んでました。しかし、想像を超えるような裏切りはなく、なんだか拍子抜け。少し物足りなさはありましたが、面白かったです。

    3
    投稿日: 2023.01.26
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    個人的には名作。 『密室』は苦手だったが、こちらは後期安部公房の寓話性とダンジョンの面白さが噛み合って先がとにかく気になった。 ラストの静寂と、もの寂しさは次作『カンガルーノート』に引き継がれる新鮮さでとても良かった。

    2
    投稿日: 2023.01.03
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    次はどうなるの?どうなるの?と読書が止まらない作品でした。読み終わらない間のわくわく感と、自分もその場に居るようなスリル感。楽しくてしかたありませんでした。安部公房さんの本また読みたいと思う。

    3
    投稿日: 2022.10.18
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    ページをめくる手が重くてしんどかったけど、なんとか読了。読み終わってみると、あれこれと気になってくる。 外見にコンプレックスを持つひきこもりの排他性、選民思想、強がり。 75歳以上の老人たちの中学生狩りは若さへの嫉妬か。 なんでも流せる便器の象徴的な意味と、自らがそれに囚われてしまったことの意味。 突然やってくる終幕と、抜け出した後にある透明すぎる世界は、希望でも絶望感でもないのか。

    1
    投稿日: 2022.08.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    贋物ユープケッチャからの始まりで、早速にも好奇心を鷲掴みにされた。 嘘か本当か分からないような情報と共に、サバイバルゲーム的な展開が繰り広げられる。 結局、ユープケッチャは何だったのか? ユープケッチャに何を託そうとしたのかが分からない。 公房独特のクセの強いブラックユーモアもあり、そこで安心感と安定感を得る。 ノアの方舟には正直な、唯一の人間しか乗船できないらしい。 「砂の女」が苦手意識があり、初めに読んだ時は暑苦しいしで辛かったけれど、再読を決心させてくれた。 まだ公房作品に慣れないし掴めないまま「砂の女」を読んだ記憶があり、しかし本書は夢中になれたので、再読すればまた違う視点や感覚に触れられそうで仕方ない。 場面などは全く違うんだけれど、閉塞感が似ていることから決めた。 世界のあらゆる自分以外の人間が透明人間に見えたところ、案外他人なんてそんなものかもしれない。 モグラの他人に対する見方が変わった瞬間が凄く好きで、背中をぽんと叩いてあげたくなる。

    3
    投稿日: 2022.04.18
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    安部公房再読2冊目を何にするか。迷ったあげく、本書を選んだ。ロシアとウクライナの状況がいくらかは頭にあった。ユープケッチャが忘れられないということもあった。自分の糞を食べながら、1日1回転自分を中心に回るだけで生きていく虫。僕はそれをイメージしながら、舞踏家田村哲郎氏の前で踊った。文庫本の帯には「地下の洞窟に広がる核シェルター。核時代の方舟に乗れる者は、誰と誰なのか?」とある。これはちょっと大げさではないか。それは「モグラ」の妄想ではないのか。しかし、現在、本書が書かれて40年近くたつが、未だ核の脅威は収まるどころか、高まってさえいる。原発を攻撃するのは核兵器の使用と同じではないのか。命令に対しては思考停止するというのか。誰かがどこかの段階で思いとどまることはできないのか。本書で核爆弾は使用されていない。しかし、原発の後処理は想定されているように思う。要はゴミ処理である。日本人にはどうも「水に流す」という思想があるようだ。私も排水溝の掃除をしながら、取り除いてゴミ箱に捨てるべきものを、そのまま流してしまうことがある。自分の目の前から消えてなくなればきれいさっぱり忘れてしまえる。しかしそれは、どこかで何かを汚している。数ヶ月で微生物に分解してもらえるものなら良い。しかし、我々は分解できないものをつくり過ぎてしまった。それがマイクロプラスティックの問題ではないのか。本書を読みながらずっとゴミの問題を考えていた。最後には自分まで巨大便器で流されようとする。片足突っ込んだ状況は滑稽でしかない。それだけではない。船長の女に対する視線、姿勢がずっと気になっていた。著者自身に性的コンプレックスがあるのか。そういう登場人物をわざと作り出しているだけか。いややはりその傾向があるとしか思えない。山口果林との関係がどうであったとしても。「他人の顔」にしても「箱男」にしても、きっと他の登場人物も似たり寄ったりではないか。素直に女性と恋愛はできないのだろうか。そうして、「ほうき隊」の老人たちは、「手は出さなくても、チンポコは出す」のだ。女子中学生相手に。あぁ。これは「現代文学の金字塔」なのか。

    0
    投稿日: 2022.03.10
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    学生時代以来の安部公房。 BOOKOFFで購入。 「砂の女」を読んで新婚旅行で鳥取砂丘に行ったくらいだから、学生時代にはわりと熱心に読んでいたと思う。 安部公房はくせがあり、最初にスッと入れないとなかなか読み通すのが難しいが、これはスッと入れた。 スマホもパソコンもほとんど普及していない時代、想像力の豊かすぎる主人公が核戦争に備えて巨大なシェルターを作り、「生き残るに値する人々」をスカウトする筈だったのだが…という話。 主人公を始め、出てくるのはいびつな人たちだ。いびつさが奇妙に誇張されグロテスクでさえある。 しかし、読後感はわりと爽やかだった。

    6
    投稿日: 2022.02.27
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    放置された地下採石場跡の広大な洞窟に、モグラこと〈ぼく〉は核シェルター設備を作り住み込んだ。近づく核投下の日までにこの方舟に乗れる資格のある人を見つけて乗船切符を渡そうとするが、ひょんなことで3人の男女とシェルター内での共同生活が始まる。しかし洞窟に侵入者が現れ、仇敵とも言える父親からの連絡、さらには便器に片足を吸い込まれて身動きが取れなくなり〈ぼく〉の計画は崩れ始める。核による人類滅亡、シェルターにより生き延びる人たち、生き残った人たちによる新しい社会と平和、そうした一連の想像はすべて幻想であり現実逃避でしかない。逃避した先の世界もまた現実と変わらない。 冒頭で〈ぼく〉は自分の糞を食べて同じ場所をぐるぐる回って生きるユープケチャという昆虫をデパートの屋上で買う。先に購入していったカップルに釣られて買ったのだがその男女がサクラだったことが後でわかる。このサクラの男女と昆虫屋と一緒に共同生活を始めるのだ。虚構に虚構を重ねて第三者をその気にさせるサクラ。さくら丸の名前はそこから来ているのだろう。世の中はすべて幻であり虚構である。どの世界にも真実はあり、パラレルワールドのようにそれらはすべて一人ひとりの頭の中に作られる。つまり、人の頭の中は誰の力を借りなくても、ユープケチャのように自分が排泄したものを食べて同じ場所をぐるぐると生き続けている。昭和59年の作品である。核の時代、核があまりに遠い存在すぎて人はデストピアとユートピアの両方を想像していたが、それどころか時には核そのものが本当は存在しないのではないか、心配すること自体が無駄ではないかという気さえしていた。核があるから安全という人たちの世界と核がなければ安心と言う人たちの世界のどちらが真実なのか。そんな不安の時代に人は何を信じていたのか。あの頃、自分だけは無傷で生き延びるのではないかという根拠のない世界観の中で、誰もがユープケチャのように自分だけの理屈を勝手に吐き出しそれを咀嚼して自己満足していた気がする。いや、人生とはそんなものなのかもしれない

    2
    投稿日: 2021.12.03
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    地下採石場跡の巨大な洞窟を核シェルターとして改造した元カメラマン、通称モグラ。核戦争後を生きるにふさわしい人材を常にモグラは探している。ユープケッチャという虫をきっかけにしてモグラは三人の男女と出会い、核シェルターで共同生活を始めていく。とはいえ、シェルターには侵入者が現れ、それに加えてモグラはうっかり大きい便器に足を吸い込まれ、身動きがとれなくなってしまう。結局、方舟は機能する前からトラブル続き。読んでいて、国家権力の巨大さを感じさせるような記載があった。あとユープケッチャは自分の糞を食べながらひたすら同じところで生き続けるという虫で気になった。架空の虫だった…

    1
    投稿日: 2021.07.20
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    ナショナリズムについて書かれた小説 同じ思想を持つ仲間を選び抜くというのは、違う思想の人々を排除することでもある。 ノアの方舟から着想、さくらは日本の象徴である。 小説に登場するユープケッチャという昆虫は、他者と一切の接触をせず生きる閉じた虫であるが、人間は完全に閉じることはできない。 ※ユープケッチャは船底のような腹を支点に回転しながら、自分自身の糞を食べると同時に糞をし続け生きる。日中は頭が常に太陽の方向を向き夜になると眠り、時計虫とも呼ばれる。

    3
    投稿日: 2021.01.16
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    安部公房 「 方舟さくら丸 」核シェルターを舞台とした近未来小説。 仕掛け(著者が提示したアイテム)が多いので、いろいろな捉え方ができる 著者にとって 人間の在るべき姿は、定着せず 移動し変化することであり、生きのびることより、最後まで 生の希望を持ち続けることであるというメッセージを感じた 近未来への警鐘的なテーマ *自分の糞を餌として 移動せず 生きる虫(ユープケッチャ)と 便器にしゃがんだまま 旅を妄想する主人公を同一視している *核兵器や便器を リセットボタンのように描いているが、リセットされても悲観的な人間像しか出していない *生きのびるための切符配りやオリンピックの国家の出しゃばり具合にファシズムやナショナリズムを感じる 著者は 最後に 人間や街を「生き生きと死んでいる」と表現し、現実感のなさを 悲観したように思う

    0
    投稿日: 2020.09.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    高校生以来の安部公房。 内容よりもまず、文体と構成、言葉選びがかっこよすぎる。「物語」としての強度は言わずもがな、その独自の「形式」の圧倒的なセンス。ラインを引きながら読んでいたのだけれど、引く箇所があり過ぎた。 特に後半にかけてのスピード感と陶酔感、そして虚無感が素晴らしい。全編に散りばめられたブラック通り越した底が見えない、あの便器のように暗い黒いユーモア。 閉ざされた巨大空間、方舟、=王国。自らの「排他性」を他者の介入により自覚していく主人公=モグラ。外の世界では「棄民」とされ、またそれを自覚して強度を増す「ほうき隊」と呼ばれる老人男性集団の躁状態。 「統治」する快感と「統治」される快感。何も考えなくていい、という、平和。 現実から目を逸らして、死なないように生きる事は悪? 「信じていられれば、そのほうが幸せなのかもしれない。」 最後まで、「女」としか記述がないまま閉じていく女。 「女性性」の扱いもかなりグロテスクで悲惨に思った。 「女は女で、それ以上区別する必要なんかないと思ってるんだ。」 名前のない女の言葉。ほうき隊には婆さんはいない。戦争が好きなのは男ばかり。女子中学生を雌餓鬼と呼ぶほうき隊の副官。 めちゃくちゃに面白くて、最後、先述したが虚無感が半端なく。心して読むべし。

    3
    投稿日: 2020.04.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    こんなに不気味な喜劇があるのか 起こっていることを羅列するならばひどく喜劇的、あるいは滑稽である しかし、どのエピソードも言葉では説明し難い不気味さを有している ひたすら現実逃避し続けている”もぐら” しかし、本人にとってはそれこそが現実であるという奇妙なコントラスト そして、ひどく世俗的な理由から方舟に乗り込む3人 さらに、もぐらと一方では類似的な、”ほうき隊”の登場 僕たちはただ、大きな物語の中で生きているだけなのかもしれない さらには選民と棄民のアイディアも秀逸

    1
    投稿日: 2020.03.15
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    安部公房で一番好き。この作者は、閉塞的な環境の人間模様を書かせたらピカイチですね。 話変わるけど、ノーベル賞は安部公房に取ってほしかったなあ。あと数年生きていれば……。

    1
    投稿日: 2019.07.07
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    醜い外見をもつ主人公は来るべき核戦争に備えて石の採掘場跡を改造した方舟を作り、乗組員を探している。百貨店の催事で見つけたユープケッチャなる昆虫(自らの糞を食べることで自己完結できる)を購入したあと、昆虫屋に乗船チケットを渡すが、男女二人組のサクラにチケットを奪われてしまい...。あとは読みすすめていくことをお勧めする。因みに、日本で初めてワープロで執筆された小説らしい。 途中で出てくる女子中学生の下りあたりは随分唐突に感じた。掘り下げ方が足りないような。女子中学生獲得に躍起になる老人達は非常に滑稽。何処かふわふわした流れのなかで、ここだけが非常に人間くさい。主人公が女に触れて喜んでいたり、恐る恐る距離を詰めていこうとするあたりの心理描写は非常に上手。自己完結するユープケッチャは恐らく方舟の比喩なんだろうが、足などの器官が退化しているのに生殖は出来ないのでは? 作中に出てくるホコリ取りの機械のほか、ギミックは非常に凝っている。理系作家だよなぁ。

    0
    投稿日: 2015.12.27
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    この本を読んで、映画CUBEを思い出した。CUBEの製作は1997年で、1984年に出版されたこの本とは互いに何の関係もないのはわかっているけど。 空間に閉じ込められた数人が、自分たちで予兆しえない事件や出来事に巻き込まれ、時間が進むにつれて当初の心理が微妙に壊れてゆき、その壊れる様子を追うという点では共通している。一般的に「不条理」とも括られそうな両者。非現実的な設定もさることながら、理解不能な状況の延々とした描写、そして「えっ!」って感嘆符と疑問符を幾つも付けたくなるようなラスト… これは好き嫌いがはっきり分かれるだろうし、正直言ってレビューは書きづらい。力点を置く場所を見つけにくいから。しかし知的好奇心はくすぐられる。だから自分の空想力を思いっきり駆使して、この本のもつ「本当の面白さ」は何かを、紙を火にかざしてあぶり出しで書かれたものを読むような作業を自分に課すしかない。 この本の主人公は、核戦争による世界の終末を予測し採掘跡の広大な洞窟に武装してひとり立てこもりカウントダウンを待つ。ひとつ思ったのは、この本を現代言われるところの「引きこもり」の人が読めば、どういう感想を抱くか、ってこと。だって、自分だけの世界の構築、自己の肥大化、自分の容姿へのコンプレックス、他人に対する資格審査、選民思考、あげれば引きこもりに通じるキーワードはいくらでも出てくる。 でも、安部公房は後に社会問題化する引きこもりの人を描きたかったのだろうか?私はむしろ逆で、世間一般の人共通の精神的属性を、安部はすべて引きこもり的なものに集約させようとしていると思う。 結末で洞窟から外へ出た主人公が平和な日常を過ごす街全体やそこに住む人全体を改めて凝視し、死んでいると感じたという描写は、私たち誰もが宿命的に背負わされている疎外感を表現したかったのではないか。すなわち、引きこもって我が道を行く人生を送るのも、社会に出て日の光を浴びて暮らすのも、どちらも孤独だってこと。 そうすると、現代の「社会的排除」という言葉で表されるような、自分が望む望まないにかかわらず社会にいながら外界との接触がほとんどない人が現実的な存在として表面化したのは、そういう点で見れば不思議ではない。 CUBEは設定の妙から人間社会の不合理性をとことん突き詰めた形で一本の作品に結実させているが、この本はその不合理性を咀嚼したうえで、人が生きるうえでの孤立性を浮き彫りにしようとする意図を感じる。つまり、別に核戦争や自然災害を待つまでもなく、人はある意味孤独で、生きるうえで寂寥感を避けえないってこと。 その現実を受け入れ、「絆(きずな)」なんて言葉を安っぽく使わずに、寂寥感や排除とどう折り合いをつけ孤独に打ち勝てばいいのか。同じところを時計みたいにぐるぐる回りつづけ自分の糞を餌に生息する昆虫“ユープケッチャ”を登場させ期待をもたせるものの、現代病とも言える孤独や疎外感を解消する具体的な手法までは書かれていないので、星1つを減じたい。 (2013/1/2)

    1
    投稿日: 2015.11.08
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    悪夢と思って読んだら喜劇だった、そんな小説だ。「ぼく」と語る主人公は精神錯乱者のような一面を見せる。自らの糞を食料として半永久機関として存在する「ユープケッチャ」がシンボリックに用いられ、これから徐々に狂気じみた物語が始まる。、、、と思ったら昆虫屋やサクラ、女、老人、少年と次から次へ一癖も二癖もある人物が登場し、一方の主人公はエゴとエロを前面に押し出しながら凡庸に埋もれていく。後半はまさに文字通り便器に埋もれたままだ。描かれる世界は狂気そのものだし女子中学生狩りなどどロリコン的悪趣味も描かれるが、それらの異常性がブラックジョーク的な雰囲気を生み出している。 ノアは方舟へ各動物の番いを乗せたが、一種類の動物を複数乗せると方舟は出発さえしない、なんとも面白い着眼点ではないか。最後の「ぼく」はまさにキョトン状態だったろうが、読者も狐に化かされたような不思議な感覚を味わうことができよう。

    1
    投稿日: 2015.11.01
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    ずいぶん前に安部公房はこんな前衛的な作品を書いていた。地下の核シェルター。巨大便器。ユープケッチャ。方舟に乗って逃げ出せるのは一体誰なのか。

    1
    投稿日: 2015.04.07
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    <ぼく>は来るべき核戦争に備えて、採石場跡地を核シェルターに作りあげ、この「方舟」の選ばれし乗組員を探していた。<ぼく>は偶然デパートの露店で見つけた「ユープケッチャ」という架空の虫が、これから始まらんとする閉鎖空間での完結した生活を象徴しているように感じる。虫の売主と露店のサクラの男女二人が「方舟」の乗組員となるが、「方舟」への侵入者の発見によって、<ぼく>が思い描いていた当初の計画は急激に狂っていく。老人から成る街の清掃隊「ほうき隊」と若者グループとの「方舟」を巡る抗争の最中、<ぼく>はあらゆるものを吸いこんでくれる「便器」に片足を吸いこまれ身動きが取れなくなった。「方舟」で生き残れる者はいったい誰なのか。 童貞のどうしようもない性に対する心情をよく書き表している。女の尻の描写の多さ。サクラの女、かわいい。 閉鎖空間での生活というテーマは、『砂の女』と共通するものがある。終わり方も似ているし。 女子中学生狩りに熱中する老人たちのグロテクスさといったらない。しかし、方舟、閉じた生態系というテーマを考えると、人類という種の保存のために女性の確保に関する話が入ってくることは避けられないだろう。方舟に残るサクラの女のそれからを想像すると気分が沈む。

    0
    投稿日: 2015.01.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    やがてくる核戦争から生き延びることを求め、採石場跡の洞窟に世界を築くことを試みる男の喜劇的な創世記。 彼はともに生き残る仲間を募りますが、"方舟"に仲間を引き入れた途端、次から次へと苦難が襲いかかります。 はじめは主人公と意気投合したけれど、権力に魅せられ変貌していく昆虫屋。 生き延びるための乗船券を盗み、方舟に乗り込んだ招かれざる客・サクラと女。 そして、"女子中学生狩り"に夢中になる老人たちの組織、ほうき隊と支配者たる権力の精通者・副官。 核戦争のみならず、生きるための競争に誰もが参加せざるをえない時代において、生きることそのものがどうしようなく権力的であることを求められているようです。 安部公房が権力の問題と真正面から向き合った、彼の代表作の一つといってもいい作品でした。

    1
    投稿日: 2014.12.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    私はさくら丸では暮らしていけないなあと思う。そこまでして生き延びたいと思うわけでもない。 この計画は上手くいかない(あるいは昆虫屋にとっては上手くいっているのかもしれない)けれど、きっと、現実はそういうものなんだろうなと思った。どれだけ計画が素晴らしくても、それを実行するのは、計画を立てることよりもずっと難しい。

    0
    投稿日: 2014.12.04
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    超久しぶりに読んだ安部公房。核戦争が起きるかもしれないと廃坑を船に見立てて立てこもる太った主人公と、それにまつわる人たちの微妙にへんちくりんなやり取りが延々と。核戦争、って辺りが時代を感じてやや古臭かったけど、へんちくりんなやり取りはいかにも。

    0
    投稿日: 2014.10.01
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    ふと読み返したくなり再読。3年ぶりくらいに読んだが、印象が変わった。 安部公房後期の長編。この小説の見所は「登場人物全員悪役」ということだろう。しかも小悪党。それらの登場人物が騙し合い、出し抜き合い、物語は進む。 まず笑ったのが「デブ」の頻出具合。主人公のもぐら君がデブなんだけどデブやブタと言われたらキレる。ブタと呼ばれないために自らもぐらを名乗っているくらいだ。このもぐら君、なかなかスケベで女の尻を触ろうとしたりひっぱたこうとしたりする。笑いどころが意外に多い。 この小説は壮大な「かくれんぼ小説」だ。みなさんもかくれんぼの経験があるだろうが、そんなワクワク感がある。偽物という意味の「さくら」をタイトルに据えたのもいい。安部公房は「偽物」という響きが好きらしく、全集についてくる月報も「贋月報」の名前を冠している。けっこう分厚い小説ですがすぐに読めます。おすすめです。

    1
    投稿日: 2014.09.27
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    寝る前に読むメンツが決まってきた。カフカの寓話集と百聞先生、それに安倍公房である。 『他人の顔』『箱男』『密会』……何回読んだか覚えてないくらいだ。そしてこの『方舟さくら丸』は「新潮長書き下ろし特別文学作品」ちうやたら長いシリーズの、今から考えると豪華な製本で発売されたときから何度も読んでいる。 この独特の、乾いているのに湿った文体、噛み合ってるんだかないんだかギリギリな会話など、このくらい緻密な小説を書く人はもうほぼ絶滅かも。

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    投稿日: 2014.07.12
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    近未来なのか現代なのか、はたまた世紀末的な退廃したマッドマックスのような世界なのか、今ひとつわからないまま始まって終わる、基本的に安部公房お得意の密室劇。安部公房作品によく有る、比喩にとらわれていると気がついたら場所が移動しているという作風なのだが、基本的に方舟(?)の中での移動と事件で、かつ一人称視点がブレないので、「密会」に比べると明らかに想像しやすい。いつもの追い詰められている感は少なく、どちらかと言うと登場人物全員の「疲れ」がひしひしと感じられる作。安部公房の初心者向けではないが、読みにくい方でもない。

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    投稿日: 2014.06.16
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    読む本がなくなってしまったので、BooksKiosk新大阪店で買いました。 (2013年9/28) 男は、砂の穴からは逃げなかったけれど、 岩の穴からは逃げ出したんですね。 (2013年10月5日)

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    投稿日: 2013.09.28
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    もし自分がもぐらだったら、乗組員なんて求めずに それこそユープケッチャのように閉鎖的に生きていくのになぁー なんて思ってしまった。 そして、それはもぐらより排他的な考えなんだと気づいてへこんだ。 ラストはもぐらにとってハッピーエンドだったのか。バッドエンドだったのか。 まっすぐ立っているつもりが、いつのまにか地面がぐるっとひっくり返って 逆立ちさせられてるような気分。 女への尻叩きで表現される駆け引きの変態性がたまらない。

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    投稿日: 2013.09.23
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     終末思想に囚われて採石場跡を地下核シェルターにしてしまった主人公とその乗組員になった昆虫屋の男、サクラの男女二人組が侵入者達と繰り広げるシェルターを巡った心理戦。現代版ノア箱舟。  安部公房にしては読みやすい(例えば「箱男」や「砂の女」より)。独特のシュールな味もあり、ストーリーの盛り上がりもあり、哲学的な結末も分かりやすく着地している。深読みしたいと思えば深読みできるし、そうでなくても単純に読んでいて楽しいのは各キャラクターがたっているからだろう。主人公の妄執っぷりは無様で憐れだし、昆虫屋は信用できると思いきや女を巡って主人公と争うし、サクラ二人組は胡散臭そうで実は頼もしかったりするし、父親のクズっぷりや侵入者達の組織のバカらしさも印象深い。  ラストシーンはつまりシェルターの内と外の区別がつかなくなったということだろうか。ひきこもりの消極的解放。というより解放の末の空虚。それはそれで一つの病理――もっと言えば現代病だという気がする。

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    投稿日: 2013.08.03
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    もぐら氏の描かれ方が面白かった。 自前の豊富な知識を(聞かれてもないのに)ひけらかす。その知識は極めて具体的である。そして妙に自信家。そのくせ臆病でもある。 まさしく「マニア」だ。

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    投稿日: 2013.07.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    核戦争の危機から逃れるための方舟。 その船長、“もぐら”はデパート屋上のガラクタ市場で、“ユープケッチャ”という、自分の糞を食べる閉鎖生態系を持つ虫を見つける。それは採石場跡の地下でひっそり、誰の干渉も受けずに暮らす“もぐら”彼自身のような存在だった。彼はユープケッチャを方舟の乗船審査基準として、生き残るための乗船券を渡す人物を探す。 デパートの屋上で出会ったサクラの男女二人組に、方舟の鍵を持ち逃げされ、“もぐら”はユープケッチャを売っていた昆虫屋と一緒に方舟へと向かう。たどり着くと二人はすでに侵入しており、船長もぐらは、サクラとその連れの女、そして昆虫屋とともに方舟の中で過ごすことになる。 そんな中、侵入者の存在が発覚し、方舟の計画は崩れ始める。もぐらの父、猪突(いのとつ)や、ビジネスの相棒、千石などが現れて、ストーリーは展開し、その上もぐらは、足を滑らせ地下にある便器に片足を吸い込まれて嵌ってしまう。 核シェルターというテーマにしては展開もそれほど大きくなく、時間にしても数日経たない間の物語。 核戦争の危機から逃れるということを建前にしながら、この小説のテーマは、社会からの隔離というものではないか。「生きのびるための切符」を渡す相手を探しながら、なかなか適切な人物を見けられない主人公。結局は地下でひとり誰の干渉も受けない暮らしに満足していたのかも知れない。世界と繋がりたいのだけれど、それがうまくできない男。登場人物たちは感情を言葉にしてあまり表に出さず、かわりに、身体的な接触、名前の呼び方や細かな仕草でそれぞれの感情が読み取れる文体。特に、主人公と昆虫屋の、女の尻叩きの儀式では、もぐらの女に対する欲望心と、昆虫屋への猜疑心が渦巻いている。 改めて、安部公房の文章は緻密すぎる。 冒頭からさまざまな伏線が引かれており、ほぼ完全に世界観を作ってから文章にしたのであろうことがよく分かる。天才。 ≪豚≫という言葉にコンプレックスを感じている主人公はあまりにも卑屈に考えすぎていて、それがそのまま文章化されているので、慣れなかったらとても面倒くさいと思う。 でもそんな主人の苦悩やもがきがまわりまわって滑稽なものとなってしまう。 オチもいつもの安部公房作品と同じで、めちゃくちゃ考えさせられる。 それは脱出だったのか?それとも閉じ込められただけなのか? ブラックユーモア、皮肉、苦悩、妄想。 悲惨な滑稽さ。 脱出の夢。 待っているのは透明な景色。

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    投稿日: 2013.06.28
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     主人公は廃棄された鉱山への秘密の入り口を知り、侵入者を拒むべくさまざまな仕掛けをして、そこを不法に占拠している。そしていずれやってくる核戦争からのシェルターとして、その場所を利用しようと考えている。  核ミサイルがいつ飛んでくるか。なかば脅迫観念にかられてシェルターの準備をしつつ、本来の排他的な性格から他人を中に入れることに躊躇している主人公だが、それでもひとりきりで生き延びることはできない。一緒に「方舟」に乗船する仲間を探して、町に繰り出すのだが……  暴力的な父親を嫌悪し、怯えながら育った主人公は、神経症の傾向があり、人間不審気味で、コンプレックスが強い。だけど根にどこか人の良いところがあって、他者の存在を拒み切れもしない。集まった「仲間」もそれぞれにクセがあり、半ば詐欺のようなことをやっている連中で、人の弱みに付け込むような信用のおけない人間なのだけれど、それなのにどこか隙があって、なんとなく憎み切れないようなキャラクターになっている。その柔らかさがクッションになっているというか、暗い話をただ陰鬱なだけに留めていないような気がする。不気味な、暗い話には違いないのだけれど、そうした部分に加えて文体の軽やかさと、所々のユーモラスなエピソードのおかげで、意外に読みやすかった。(安部公房は作品によって文体ががらりと変わるようで、すごくすいすい読みすすめられるときと読むのに時間がかかるときとある)  いつか気がつかないうちに核戦争がはじまって、世界中が死の世界になってしまうかもしれないというのは、おそらくこの小説が書かれた当時、いまよりも生々しい恐怖だったはずで(現代でも完全に忘れ去れられた危険というのではないけれど)、主人公の強迫観念をただの不安症と笑い飛ばす前に、そういう時代背景を考える必要があるのかもしれない。

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    投稿日: 2013.03.09
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    地下採石場跡の巨大な洞窟に、核シェルターの設備を造り上げた〈ぼく〉。「生きのびるための切符」を手に入れた三人の男女と〈ぼく〉との奇妙な共同生活が始まった。だが、洞窟に侵入者が現れた時、〈ぼく〉の計画は崩れ始める。その上、便器に片足を吸い込まれ、身動きがとれなくなってしまった〈ぼく〉は―。核時代の方舟に乗ることができる者は、誰と誰なのか?現代文学の金字塔。 「BOOK」データベースより 裏表紙のあらすじから面白すぎた。その期待を裏切らない中身だった。

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    投稿日: 2013.03.02
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    「生きのびること」を、現代に規範の中で緻密に仮定づけている。 終わりがやってきて、それから、生きのびるためには選ばれし者を決定する必要がある。 どのような尺度でそれらを選別するのか。 主人公は猜疑的で臆病な通称≪モグラ≫。生きのびるための方舟の船長であり、最終的に『脱出』することができる唯一の人物。 方舟には自衛隊上がりの”香具師”と自負する≪昆虫屋≫、その斡旋をする≪サクラ≫と≪女≫。 物語は方舟の出航を向かえぬうちに終焉を迎える。船長モグラの、方舟から、そして巨大便器からの脱出によって。 世の中の選ばれし者-選ばれざる者の縮図が、皮肉にそして精巧に描かれている。 オリンピック阻止同盟、サバイバル・ゲーム。 ゴミだめの様なオリンピック会場と、中学校の運動場。 安部公房の他作品『死に急ぐ鯨たち』にも、同じような思想が描かれているのだろうか? 空がみたい、と呟く女でさえ、永遠の方舟、閉ざされた世界の中で生き続けることを選択する。 果たしてそれが、生きのびるための、手段なのであろうか。

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    投稿日: 2012.09.19
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    核戦争が起こり世界が滅ぶという終末思想に取り憑かれた主人公。生き残るために自ら作り上げた地下の方舟に乗船する資格を持つ人間を探し、見つけたのは露店商とサクラとその女。 生き残っても仕方がないような主人公を含む登場人物達。 ユープケチャだの何でも流すトイレだの童貞特有の妄想だの、訳のわからないものがとても重要な意味を持って物語は進んでいく。 世の中のクズを全てキレイにする掃除隊なるものの存在が物語を展開させ、最期の時を迎えていく。 かなり昔に一度読んだが、あらためて安部公房の発想力と筆力には圧倒される。頭がおかしいニオイがもの凄く漂っているところがたまらなく好きだな。やっぱり安部公房は最高の作家だ。

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    投稿日: 2012.01.21
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    構築された世界観も、文体も、とても読みやすい作品。 閉塞状況の中、ひたすらに人を信じようとして疑う。 やっぱり人間のモヤモヤ感を描くのがとてもうまい。 「砂の女」の次はこれを薦めます。

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    投稿日: 2011.11.28
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    作品群の中、一番小説らしさと作者らしさがいいバランスで出た作品。不条理、ブラックユーモアを混ぜ、物理的に場面転換してゆくとこがよい。作風により、投げ出しやブツ切れもある中、根気よく結末まで取り組んだ、現代版「ノアの方舟」と呼ばれる逸品。

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    投稿日: 2011.05.12
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    現代版ノアの方舟、みたいなものでしょうか。読みやすいです。 ただしそこにあるのは希望なのかはいささか不明瞭な所がありますが、あくまでブラックユーモアの富んだ作品であることは間違いないと思います。 「饑餓同盟」と通ずる部分もあり、現代日本の人間を表している作品だと思います。

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    投稿日: 2011.02.12
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    食べたら出す。当たり前だがとても重要な場所ではまってしまい、そこから違う状況に導かれてしまう男。最後まで独特のペースで読まされた気がするが苦にならなかった。21世紀になった今でもシェルターは無くならないな。

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    投稿日: 2010.03.31
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    安部公房作品の主人公は、何らかの形で外界をシャットダウンしてる場合が多いですね。本作の場合は核シェルターで暮らす「もぐら」。 架空の生物「ユープケッチャ」の生態が独特で面白い。 「砂の女」と同じくらい、安部公房の中では読みやすい作品だと思います。

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    投稿日: 2009.12.20
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    「砂の女」「壁」以来の安部公房。独特の世界観を久方に味わった。 表と裏。嘘と建前。現実と非現実。正気と狂気が入り混じり、時には、 逆転してしまう。ラストは、「砂の女」とは逆にモグラ(主人公)は 閉塞空間から外へ出てしまう。「出てしまう」と書いたのは、外に出ることが 良いことかモグラにもわからないからである。個性豊かな登場人物が モグラを動揺させる様々な出来事を起こし、一見滑稽な場面もあるが、核戦争、 生と死、人間の排他性など重いテーマも潜んでいる。

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    投稿日: 2009.11.19
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    地下採石跡の巨大な洞窟に、核シェルターの設備を作り上げた<ぼく>。〔生きのびるための切符〕を手に入れた三人の男女と<ぼく>との奇妙な共同生活が始まった。だが、洞窟に侵入者が現れた時、<ぼく>の計画は崩れ始める。(裏表紙より引用) これ結構好き! 安部公房の作品の中ではハッピーエンドの類…? 短編集の「ユープケッチャ」を読んでからこの本を読みました。 あの謎の穴はモグラの穴で、あの登場人物はモグラだったんだなーって思いました。ちょっと違うけどね。もう一回こっちも読み返して比較したい! モグラの洞窟、さぞや住み良い場所なんだろーなって思います。 こんな風に私も暮らせたらなあー。 そして「ノアの方舟」の構想。 実際現代に、何か大きな災害や核戦争が起きるとして、「ノアの方舟」を作るとしたらどうなるんだろう? モグラ、昆虫屋、サクラ、女、猪突。 すごく個性豊かなキャラクターで、一人一人がよく感じられてよかったです。 サクラ・・・最初はどうなんだろう?信用できなさそうだな・・・と思ったけれど、彼が一番の「漢」だった気がします。特に最後の決断。 女は終始魅力的でした。もっと知りたいキャラです。 女がモグラと二人のときに言っていたセリフで、「男が結婚詐欺をするときは、医者だとか、地主の息子だとか、会社の役員だとか、職業や財産を餌にするでしょう。でも女の餌は、女じゃない。ぜったい損だと思う。職業を聞かれて、ただ男って答える男はいないけど、女はただの女で通用しちゃうんだな」というのがあり、ああああこれそうなんだよ!!って思いました。 つい先日、文化の心理学で同じようなことを先生が言っていたのです。 安部公房は案外フェミニスト?なんて思ったり。わかりませんけど。 これ、かなり読みやすい本に感じられたので、もっとレビューがいっぱいあると思ったけど案外少なかった(笑) 安部公房入門にも最適の一冊だと思います。是非。 立体写真がすごいです!!!

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    投稿日: 2009.06.26
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    核戦争、恐怖の均衡、地下基地…冷戦の臭いがプンプンするぜぃ。 本文には一文字も「冷戦」が出てこないわけだけど冷戦好きにはきっとたまらない一冊でしょう。 グロテスクな夢のようなトリップ…

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    投稿日: 2009.02.13
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    核シェルターという名の『方舟』を作った人のお話。何でも流してしまう巨大な便器を中心とした新世界。何も根拠は無いけれど永遠に続けれれる生活を想定(妄想)して世界を作り上げた主人公。だけどこの主人公、やたらとクセがあるのです。一人でいたいと思いながら誰かを求め、求めたと思えば排他的であり。まさに机上の空論状態であった彼は、やはりモグラだったのです。

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    投稿日: 2008.09.08
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    秘密基地の中で見た悪夢の様な、のめり込む渦の様な、そんなつかみ所のないような あるような話。 どこかで凄く恐ろしいくせに、蟻の巣の中みたいな舟の中に、どうしてもわくわくした魅力を感じてしまう。かなり面白いです。

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    投稿日: 2006.08.15
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    こんなにラストシーンの映像が浮かんだ本は初めてです 暗い場所から太陽の下に出た瞬間のすべてを白っぽく見せるあの感じが戻らずに続いて全部が白くなるというか・・・何言ってんのかわからんね

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    投稿日: 2006.07.20
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    主人公の幼稚な発想が連発する奇抜なストーリーは、先の展開が全く読めない。ラストシーンは、奇妙な脱力感とすがすがしさを同時に味わえます。

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    投稿日: 2006.05.03
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    ユープケッチャの話が出てきたところから、途端に引き込まれてしまうだろう。とんでもない設定にもユーモアがあって、そして思わず笑う場面も。

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    投稿日: 2006.01.24
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    2005.10.18 片方から見ると冒険小説なんかもしれないけど、主人公がやっぱり暗い…ちょっと関係とか経緯の説明がたらん。わりに場所や細部の説明が多すぎ。でも悪くは無い。

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    投稿日: 2005.11.25