近代ファンタジー世界での、詐欺師男と心を読める少女の逃避行劇。 表紙の空気感もあいまってちょっとアウトローなロードムービー作品かと思い手に取りましたが、いやぁここまで異能バトル物だったとは。しかしルビの乱舞する必殺技の応酬にはときめく方の読者なので、おおいに盛り上がりました。そういうの大好き。ファンタジーラノベはこうでなくちゃ。 とはいえわりとしっかりとした文体です。一人称視点ですが、洒脱な言い回しで紡がれる情景が比喩表現好きにはなんとも心地好い。血に宿るという特殊能力に〈王〉という存在が絡んで作り出された独自の世界観、その謎を主人公と共に追っていけるのですが……さすが詐欺師。騙すことがうまい。そして彼が一番騙していたのは？徐々に剥がされていく各々の仮面の奥、辿り着いた目的地での血と想いの応酬、散りばめられた言葉の断片が形を得る真相。 満足の読後です。理解できない部分は残りますが、続編も決定しているというので今後に期待。 ヒロインたちも魅力的で、恋にまっしぐらなご令嬢の天然級な明るさと、クールで強者なメイドのちょっとしたぽんこつ具合が旅路に色を添えてくれますし、メインヒロイン・クロニカの可愛さだって抜群です。なにより私のイチオシはもう一人のメイド、アリアさん！ひゅ〜！！推せる。