
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
高校の時読んだ『ティファニーで朝食を』以来のカポーティ。春樹訳に惹かれて読んだ。 普段ミステリを読むことが多いから起承転結やキャラクターの面白さとかに注目して読んじゃうけど、久しぶりに読んで文章表現の美しさに驚いた。 両親の喪失から、ランドルフが父に成り代わり、そしてそのランドルフも……ここで終わっちゃうの?!とも思ったけれど、主人公の夢なのか、空想なのか分からない部分もあって、どこまでが本当か分からないからこそ、そのラストでも納得だなと思った。 次は『草の竪琴』を読みます。
1投稿日: 2025.10.31
powered by ブクログちょうどこの本が本屋さんに並び始めたころ、たぶん日本橋のコレド2階の本屋さんだったと思うのだけど、私は人と待ち合わせをしていて、いろんな本を手にとってはパラッとめくって戻し、を繰り返しておりました。 そのときになんとなく手にとって、読むともなく読んだのがこの冒頭部分。 「旅行者はヌーン・シティに行くうまい方法をなんとか自力で見つけなくてはならない。というのは、その方角に向かうバスも列車も存在しないからだ。ただ、チューベリー・テレピン油会社が週に6日トラックを出して、隣町のパラダイス・チャペルで郵便と物資の集配をおこなっており、ヌーン・シティーに向かう人が、ドライバーに頼んで同乗させてもらうこともたまにある。ドライバーの名前はサム・ラドクリフ。どのような手段をとるにせよ、その旅は手荒いものになる。なぜなら道路は洗濯板並みに荒れており…」 一瞬にして私の脳裏には、北アメリカの広大な大地、道路以外何もない砂っぽい荒涼とした風景がばーっと広がって。 魂わしづかみ状態でむさぼるように読み進めました。「チューベリー・テレピン油会社」とか「サム・ラドクリフ」とか「手荒い旅」などなど、妙に記憶に残るワードチョイスにしびれながら。 物語の始まりはこう。 田舎のトラック・ドライバーのサム・ラドクリフはいつものカフェに食事をしに寄ると、見知らぬ少年をヌーン・シティに乗せていくよう店主に頼まれる。 舞台となる土地の風景描写からシームレスに登場人物の説明にうつっていき、それぞれの性格やバックグラウンドなどが全く無理なくすんなり頭に入っていく。読んでいる方は気づいたら物語世界のど真ん中にいる。 とてもデビュー作とは思えない巧みさ。 もう2ページ目にして私はページをめくる手がとまらなくなっている。 この時は手がふるえるくらいがむしゃらに20ページくらいイッキ読みしたと思う。自分でも脈が上がるのが分かるほど興奮していたけど、しかし待ち人が来て、やむなく中断。 その後、すっかり忘れていたのだけど(←興奮していたわりにはすぐ忘れる)数年後の先日、図書館で見かけてやっと読了しました。 改めて最初から読んだけど、やっぱり導入部分はわくわくしたなぁ。瞬間的に南部のさびれて荒涼として不穏な風景の中にいる感じ、好きすぎる。 「あちこちに沼のような窪地があり、オニユリが人の頭ほどの花を咲かせている。黒い泥水の下に光るつややかな緑色の丸太は溺死体を思わせる。」 このあたりのちょっと不気味な描写、超名作ドラマ『トゥルー・ディテクティブ』を彷彿。 しかし、めっちゃくちゃ引き込まれたのはこの最初の方くらいで、あとは実にカポーティらしく、グデグデで意味不明な展開になっていくんですけど・・・ でも、まあおもしろかった。 読んでいて、作者も主人公ジョエルも『アラバマ物語』のディルそのものだなぁ、と思った。逆に言うと、ディルって、ほんっとにそのまんまカポーティなんだなぁ、と。 そして、いい感じの方向に向かっていた第二章で終わらずに、ものすごく悪趣味な第三章を付け足しているあたりも、ディルだなぁ、と思う。 この、ちょっとやり過ぎちゃうあたり。特にズーがかわいかった二章のあとに、あんなひどい三章を付け足さずにはいられないあたり。 まさにディル。 あれはひどいよ、ディル。じゃなかった、カポーティ! アイダベルとの魚釣りのところは、『クリスマスの思い出』を彷彿とさせる美しさでした。それも二章。 普通は二章で終わりだよなぁ・・・と思う。
4投稿日: 2025.10.30
powered by ブクログ10年前くらいに新潮文庫で読んで再読。以前読んだ際の記憶は全くなく、終始こんな話だったけ?の連続で、自分の記憶力のなさに驚いた。特に、成長して落ち着いたアイダベルが登場するはずだと思い込んでいた件については、自分のことながら開いた口が塞がらない。 ジョエルの目を通して物語は進んでいくが、時に見栄をはってでっちあげを言ってしまうような純粋で不安定な少年性については自分の過去と照らし合わせて実感を伴ってくる。 アイダベルとの少年少女らしい戯れや、ズーの凛とした様子やジョエルとの友情も微笑ましかった。その分、移動式サーカスの夜を経た後、ジョエルの心が死んでしまったような状態や、報われなさすぎるズーやアイダベルが悲しい。少年から青年への成長の物語といわれても、これハードすぎると感じた。
0投稿日: 2025.02.15
powered by ブクログ村上春樹訳ということで興味を持ち読んでみましたが、私の理解力では内容があまり頭に入って来なくて楽しめなくて、残念です。
1投稿日: 2024.11.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
これは、各国で好評と酷評があるのが少し理解できる。わたしの読書レベルでは理解できなかったなあ、悔しいけど(苦笑) 原文で読んでいないので何とも言えないが、これを美しくもどこか恐ろしい日本語で再構築した村上春樹氏はすごいと思う。
1投稿日: 2024.09.16
powered by ブクログ現実の世界と死後の世界の狭間にたつような不思議な印象を持つ作品と感じた。言葉がとても良くて最後まですぅっと読めた。
0投稿日: 2023.10.24
powered by ブクログ河野訳は正直読みにくさも目立ったが、村上訳はさすが。あの魔術的描写の奔流の良さを殺すことなく、よくここまで訳し切るなと感心してしまう(Monkeyの対談を読む限り、村上氏もずいぶん苦労したようだが) ストーリーの妖しさもたまらないが、読み手を間違いなく選ぶ本。
0投稿日: 2023.10.16
powered by ブクログときどき迷子になりながらもなぜか進む一冊 世界観が独特でついついハマってしまう 叙情的で俯瞰的表現は脳内で映像化されてしまう 何度も読んで何度も迷子になるべき作品
13投稿日: 2023.09.12
powered by ブクログ村上春樹の新訳によるトルーマン・カポーティのデビュー作。カポーティについては学生時代に主要な作品を読んだ気がしていたのだが、本書は未読だったために、新鮮な気持ちで読むことができた。 本書は親に見捨てられて親戚に育てられた少年が、父親からの連絡によってその元へと戻るシーンからスタートする。このように、複雑な背景を持つ少年の姿というのは、あまり幸福な少年時代を送れなかったカポーティ自身の一種の投影にも近しい側面があるのだと思う。それもあってか、カポーティの作品における少年や子供が主人公の作品での、あまりの心理描写のリアルさには本当に驚愕させられる。 本書でいえば、自分自身が過去に忘れてしまったような幼少期の頃の記憶がふっと蘇るかのような強い煌めきが存在している。大人になれば誰もが忘れてしまうような煌めきを、ここまでかくも鮮やかに現前化することができることこそ、カポーティが作家としての天性の性能を持っていることの証左であろう。 村上春樹自らが「まるでジェットコースターに乗ってお伽の国を旅しているような感覚」と称した、物語展開のスピード感や、出てくる登場人物それぞれのエキセントリックさも見逃せない。いったいどのように物語が着地しているかの予想がつかず、幻想的な煌めきの中で着地していく読書体験というのは、本当にカポーティ特有のものであると強く実感した。
3投稿日: 2023.09.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
久しぶりの圧倒的な読書体験。アメリカ文学に浸れる至福の時間。独特の比喩を用いた言い回し、個性豊かな奇妙な登場人物たち。古きアメリカのディープサウスの描写が素晴らしい。翻訳者を忘れて村上春樹の新作〜それも中期の頃の特別に面白い長編〜を読んでいるようだった。 すらすら読めないので何度も読み返したり、戻ったり、以前の河野一郎訳はどうだったかと比較したり。読書の真髄を思い出させてくれる究極の一冊。じっくりと向き合って味わいたい小説です。 新訳は春樹節が出過ぎてる箇所もある。言葉も前訳の方が分かりやすい部分もあるし、もちろん新訳の方が馴染みやすい単語になっている所もある。前訳で再読してみるのもいいかもしれません。 蒲団→キルト 毒蛇→ヌママムシ 無蓋のフォード車→ピックアップ型のフォード車 おまじない→護符 など 70年以上も前にトルーマン・カポーティが24歳で書いた珠玉の小説。是非、多くの人に読んでもらいたい。前訳と新訳は文章構成も全く違います。しかし、タイトルだけは同じ。自分も考えてみましたが、これを超えるような素晴らしい邦題は思いつきません。☆4は自分が完全に理解しているとは思えないので。
7投稿日: 2023.09.07
powered by ブクログ初めて読んだカポーティは、春樹さんの訳に、山本容子さんの素敵なイラストのついた『おじいさんの思い出』や『クリスマスの思い出』だったけど… あの時のノスタルジーにもっと幻想性を持たせたような… 幻想的でときに凄まじく、あまりにも美しい描写や比喩たち。 容易く読めないけれど、魅力的すぎて沼に浸かるような読書体験でした。 母をなくしたジョエル。 叔母のところに父からの手紙が届く。 父に会いに行くためには、 そのランディングという街に行くには、機械化された交通手段がないという。 もうこの序盤で、私はファンタジーの世界に入っていくのかしらと思ってしまいました。 ジョエルの唯一の安らぎだった黒人娘のズー、不思議な、大人になったカポーティの化身のようなランドルフ、マッカラーズの主人公みたいにエキセントリックな女の子アイダベル。 この物語の中に彼らってほんとにいたのかな… _火は弱まって灰になっていった。そして古い壊れた時計が疲弊した心臓のようにこつこつと時を刻んでいるあいだ、床に落ちた陽光の斑点は拡散し、暗さをましていった。壁の上に菱形格子模様を描いていたイチジクの葉の影は、大きく膨らんで、くらげの透き通った身体のような、ひとつの巨大な震えるかたちに変わっていた。_ ときどきこんなふうにトリップします。 素敵すぎて 辛すぎた。 『ティファーで朝食を』などとはまったく違った世界観。 23歳のカポーティの、初の長編作品。 春樹さんでさえ、高校生の時に『夜の樹』を原文で読んだ春樹青年でさえ、この『遠い声、遠い部屋』は、当時の英語力ではこの凝りにこった美しくもややこしい原文にはついてゆけず、日本語訳で読んだのだそう。 実はあまりにこの麗しい文体についてゆけず、途中、アマプラで『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』を観たりしたことが、少しは助けになったかも。 それから、この不思議な表紙、透明なスーツケースに入った鍵。 これもカポーティのノスタルジックでイノセントな世界にピッタリでした。 現代美術家の宮永愛子さんの『suitcase-key-』という作品です。 この鍵はナフタリンでできていて、いつか消えてしまうんですよ… 作品のメタファ的なものを春樹さんが感じられたんでしょうか…なにもかもが素敵です。
11投稿日: 2023.08.31
