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輪舞曲(新潮文庫)
輪舞曲(新潮文庫)
朝井まかて/新潮社
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総合評価

11件)
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    伊沢蘭奢。 その名前は、うっすら知っていた。でも、名前だけ。 『輪舞曲』のハードカバーを、ずっと「読みたい」に登録していて、一度借りたのに読めずに返して、今回は文庫版を借りた、ようやく読めた。 読む気になったら一日で読み切っちゃうのだから、早く読めばよかったのに。 松井須磨子の演技に、感電するように惹かれ、婚家も家族も、子供も置いて、女優を目指した伊沢蘭奢。大正時代の大女優。 彼女を愛した三人の男性と彼女の子息が、蘭奢の死後にその生涯を語る形になっている。この本は、朝井まかてさんのお作の中だと、読者からの評価が、比較的からい印象なのだけれど、今回読んでみて、理由が解ったような気がする。 作品自体はすごく面白いのだ。だけど、大正時代の演劇や映画などの歴史的背景などに明るくないと「ふーん」「よくわかんないかな」となるのかな、と…。 恋人であった徳川夢声や、福田清人、子息の伊藤佐喜雄だけでも知っているといいのだけれど。あるいは、新劇運動についてでもいいし。予備知識を入れたり、わからないところは調べながら読むと、作品の解像度がぐっと上がるはずだ。 蘭奢その人の目線ではなく、他の人物からの回想も主になるから、ちょっと盛り上がりに欠けるように見えるのかなあ? 私は、それぞれの男たちの、蘭奢への細やかな愛情も、すごく面白いと思ったのだけれど。子供時代、ジュニア版の古典文学の監修で親しんでいた、福田清人が出てくるだけでも、胸を轟かせて読んでしまった。 奔放なようでいて、可憐で古風なところのある蘭奢は、ハードカバーのイラストの印象そのままのモダンガアルで、ゴージャスな女優でもあるし、新しい女。それも、理知的な知性派の女にならなくてはいけないと、誰も見たことのない誰かになるため、血の滲むような苦闘を重ねた近代人でもあるし。 愛息に手ずから煮物や焼き魚の夕餉を作る、どこにでもいる、地に足のついた女でもあるし。まさに輪舞曲がくるくるまわるように、色んな顔を見せてくれる。 もう少し深く知りたいなら、参考文献を読んでみたいような、いい意味で余白のある評伝小説であったと思う。 ずっと読まずにいた本が、ちゃんと読めて、とてもほっとしている。読むぞ!って他に雑音を入れなければ、こうやって読めるのに、ついぼんやりしたり、疲れて本を抱えて眠ってしまったりしちゃうけれど、こうして没入して読了出来ると、胸がすーっとする。今回も面白かった。

    10
    投稿日: 2025.10.22
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    好き勝手に読み始めた代償または対価 明治時代 亡くなった女優 伊澤蘭奢 彼女の愛人や恋人、息子の四人が顔を合わせる場面から始まり 各章で各々が蘭奢との接点を振り返る。 ちょうど三谷幸喜さんの映画(謎の女とその恋人たちが振り返る話)が公開してた頃、亡くなった女優の謎(自殺か他殺か)、一人の女性をめぐり関わった人によって印象が様々に変わるような話を勝手に期待して手に取る。 他の作品名の中に「眩」があり、ドラマ版を見ようとしてたので何かの縁だと購入した。 関係性によって見え方が変わりはしたのだけど、途中本人目線のパートもあったので 途中からは気にせずにいた。 サスペンス要素は無いとわかり読むのを少し止め、あとがきを読んだり出てくる人たちについて調べる時間を取る。 皆さん有名な方々だったと知らず、そこから読み方が変わる。ちょっと調べただけでは出てこない部分をつなげて想像して埋めてくれていることに気づく 何より最近出た本だと分かっていても「当時の表現」が隅々まで出てくるため、(当時がどうだったかまではわからないものの)明治の空気を感じながら歴史の隙間を覗いているような読書だった。 蘭奢が人妻だった頃からの恋人・徳川夢声 冒頭の今では態度がでかい毒を持った人柄だけど学生時代に蘭奢の色気に翻弄されている姿の対比がなんか良かった。 途中までフィクションとして読んでたからか調べれば何かしら過去の出来事が見られるのは不思議な感じ。

    24
    投稿日: 2025.02.07
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    明治の世 女優という夢を追い続けた伊澤蘭奢 わずか40歳でこの世を去った希代の新劇女優と 焦がれる男たちの物語

    0
    投稿日: 2025.01.28
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    明治時代の女優、伊澤蘭奢の死と、その周辺の男たち。 松井須磨子が、カチューシャの歌とかゴンドラの歌とか歌ってたって知らなかった。

    6
    投稿日: 2025.01.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    大正時代のお話で、当時のことや言葉の知識があまりないので最初はとっつきにくいと感じた。読んでいくうちに少しずつ馴染んでくる。 実在していた方の小説をどうやって書いているのかがすごく気になった。 演じるということに全てを込めている所がかっこいいと思った。

    0
    投稿日: 2024.05.08
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    38歳で急逝した新劇の女優、伊澤蘭奢。 女優を志して離婚し、我が子とも別れて新劇界へ飛び込んだ蘭奢は、愛人の内藤民治の援助を受けながら素養を磨き、舞台への情熱を燃やし続け、やがて看板女優へとのし上がっていく。 愛人や取り巻きの文化人、文学青年らの視点を通して女優蘭奢を描いた作品。 蘭奢の心の奥底については読んだ後もまだなんとなくヴェールに包まれているような、ミステリアスな印象のままだ。 本編もさることながら、あとがきがとても興味深かった。文庫化にあたって改稿したことも分かり、初版も読んでみたくなった。

    0
    投稿日: 2024.04.24
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    今より女性が真っ直ぐに夢を追うのが難しい時代に女優という道を選んだ蘭奢と彼女を取り巻く男達の物語。 世間の目も生活も厳しかったろうに、自分の才を信じて母や妻という肩書きを捨てた蘭奢のなんて強いこと、他の女性にはない輝きを持ってたからこそ、蘭奢と同じように才能や高い志を持った男達が彼女に惹かれていったんだろうなぁ。 かなり脚色は加えられてると思うけど、かつての日本にこんな凛々しく強い生き方をしていた女性がいたのかという驚きとそれにも関わらず知名度が決して高いわけじゃないという驚き。 個人的に夢声(敏雄)と蘭奢(繁)の関係性が1番すき。

    2
    投稿日: 2023.07.17
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    大正時代を、時代を切り拓いた人の物語でした。 朝井まかてさんは、私たちが知らなかった人たちの人生に焦点をあててくれて、本当にうれしい。 牧野富太郎さんの物語も、読みたい。

    0
    投稿日: 2023.07.09
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    Nからの招待状/丸髷の細君/イジャラン/茉莉花/ 焦土の貴婦人/逆光線/手紙/桜の枝の面影 後の記――あとがきにかえて 伊澤蘭奢 四人の男たちを通して見る彼女はそれぞれに違う。それが一人の女の複雑さを見せる。 女優でなくても、誰に対しても同じ面しか見せてない人は滅多にいない気がする。相手が変われば自分も変わる、きっと

    1
    投稿日: 2023.06.12
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    朝井氏の大正ロマンものである。 女優・井澤蘭奢にまつわる短編集。大正ロマン味たっぷり。言葉遣いから各種読み方まで大正である。文体も大正。江戸モノの朝井氏に慣れている身としては、冒頭から挫折しかかったものの、そのうちに慣れるだろうとページを手繰っていったのである。活劇、演劇、当時の女性のありかたなど、どのページをめくっても大正の風をかんじられる作品である。 あとは、いかに読者が文体に慣れ楽しめるかの技量にかかっているといえよう。 大正ロマンがお好きな方にオススメである。

    0
    投稿日: 2023.06.03
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    大正時代に活躍した実在の女優・伊藤蘭奢の生涯を四人の男達との関係を軸に描いた物語。帯にある『伝説の女優はなぜ死んだのか?』という惹句から、作中に蘭奢の視点が一切挿入されない作風を期待していたので、第四章で蘭奢自身が語り部となるのに些か拍子抜けした。当時の演劇界や社交界、出版業界の内情を知れる興味深い作品なのだが、彼女が伝説と呼ばれるに至った背景や経緯の書き込みが浅く、その魅力が今ひとつ掴めないまま。巻末のあとがきを読む限り、複雑な出自を持つ人物を物語る場合、その子孫である方への配慮も並大抵ではなさそうだ。

    0
    投稿日: 2023.05.29