
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
尚吾が監督に脚本を提出していたときに浅沼から言われていた、多様性に目を向けすぎようとしているという言葉、私が朝井リョウさんの「どうしても生きてる」を読んだ時にまさに感じたことでした。 朝井リョウさんもその葛藤を乗り越えたのかなと、勝手に推察していました。
0投稿日: 2025.12.14
powered by ブクログガー 朝井リョウ、2023年にこんな作品も描いていたのかーさすが 私は昔から漫画もアニメも大好きで、小学生の時はひたすら紙の漫画を読んでビデオ屋さんでビデオを借りてアニメを見て、それがどんどんDVDになって、携帯で漫画を読むようになって、いつのまにかサブスクで映画を観て、電子漫画に課金して、Kindleを読んで、YouTubeを見るようになった。 時代の流れに乗っていろんなおもしろいモノを享受する側だったけど、この作品を読んで、「作る側」「提供する側」の観点や悩みや葛藤がすごくクリアに分かった。 YouTubeは、不特定多数、完成度が高くなくてもどんどん自分の作品を発信できて見てもらえる。その代わりスピード感や量が勝負で、消費されるエンターテイメント。秩序がない。 映画は、サブスクやYouTube、その他の映像配信サービスが増えて、映画館にわざわざ足を運ぶ人が減った。映画館が潰れた。莫大な費用と、時間と、完成度が求められる、作成側がこだわり抜いた作品のみが形になって世に出る。 尚吾と絋、2人の天才は大学卒業後、自分の感性を信じて違う道を歩んだ。それぞれの場所で活躍し、悩み、時代に流されたり流れなかったりして自分の答えを見つけていく。 良いものは越境する。 結局、自分に嘘をつかず、心や作品に向き合うこと。 この先もっともっと移り変わる時代の中で、尚吾は細部にこだわって作品を撮っていくんだろうし、絋は鐘ヶ江監督の作品に向かう姿勢に魅了されて素晴らしいドキュメントを撮るんだろう。 千紘と帰った帰り道を尚吾は大切な場面で思い出し、作品に取り入れるんだろう。 正解が分からない、正解がない時代だからこそ、若者が自分の心の動きやどうしようもない情熱や悩みに向き合いながら作品を作っていく、そういう未来が想像できて、前向きな終わり方だなと思った。 朝井リョウも、良いものはジャンルを超える、作り続ける、向き合い続ける、って自分に言い聞かせてるんじゃないのかなと思えた。 クリエイターって表現者ってすごいなと改めて思う。
1投稿日: 2025.12.08
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私はYouTubeを拠点に活動するバーチャル配信者…VTuberだ。 そして同命者(≒私の中の人)は、まがりなりにも、とある別の創作活動をしている。 そんな同命者は、自身もむかしは尚吾のような考えを持っていた……。 そのことを、思い出させられたみたいだ。 「歴史に名を残したい。 一流のものに触れるべき。 クリエイターたるものストイックたるべき。」……。 ただ、大人になった今、作中尚吾に覚えていたのは、ある種の同族嫌悪だったのかもしれない。 あるいは嫉妬だったのだろうか。 その教えをまさしく実行し、実現せんとする一人の青年に対しての。 同命者は、その「べき」を頭の中で盲信しつつ、実行できない自分が苛立たしくて、自縄自縛に陥ってしまっていたのだから。客観的にみれば、滑稽な話だけどね…。 ともあれ、此度は同命者の心のざわつきを傍らに、本書を読み進めた。 当初、「二人の主人公はどちらも厳しい現実を前にして夢破れる」……そんなシナリオを勝手に予感してしまい、身構えていた。 (特に紘と大樹とのやりとりは、その予感を感じてヒリヒリした) けど、蓋を開いてみれば、袂をわかったかに見えた二人の旅路は「心」に収束し、穏やかな再開を果たした。 そして主だった登場人物一人ひとりが、見えざる神の手でジャッジされることなく、それぞれの道を進んでいくことが示唆されるエンディングであると感じた。 (そういえば、大樹ですらも、単なる露悪的なキャラクターではなく、行動に理念とバックグラウンドがあったことが示されたことには舌を巻いたものだ。彼のそれが正しいか、真に実りあるのかはともあれ。閑話休題。) 私も同命者も、共通してることがある。 何かを表現する身であること。 そして……独りよがりであることだ。 需要がなくても、例え誰が見ていなくても、誰にも届かなくても、自分がいいと思ったことならやる。 そんな逆張りで、ふんぞりかえってしまう所がある。 ……少なくとも、昔は今にも増して、確実にそうだった。 今もその嫌いはあろう。 けど、変化もある。 ネットを通して色んな形の表現をするようになって、そこには必ず受け手がいるのだと知った。 自分の表現が誰かに届いて、反応をもらえる。 見守ってもらえる喜びを知ったのだ。 いつだって、作品の向こう側には人がいる。 情報を放った先には、人の心がある。 ……これを読んでくれる方は、決して多くないかもしれない。 でもそれでいい。本当にありがとう。 最後に、私が作中で最も印象に残った台詞のひとつを記して、結びとしたい。 「私の言葉を信じるのではなくて、私の言葉をきっかけに始まった自分の時間を信じなさい。その時間で積み上げた感性を信じなさい」
0投稿日: 2025.12.04
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自分の好きな作品について、どうかその作者が作りたいものを作れていて、それによって生活も満足に成り立っていると良いと思う。 ただ現実はきっと作りたいものを作っているだけじゃない。 プロとして生活のために制作を選ぶことは、自分の好きなことだけをやれるわけではない。 安定したクオリティ。予算内での模索。定められた期間。 何よりも、売り上げ。 需要を満たし、経済活動となること。 それによって自分が生活していけるということ。 主人公の尚吾と紘は、共作映画で受賞してから方や伝統的な監督路線へ、方やSNS中心のファストコンテンツの方向へと向かっていった。 前者は裏打ちされた信頼があるものの多様化する社会の中で牌の取り合いに苦戦し、後者は急速に需要を集めながらもその信用度は不確かである。 二人は互いに違う道を歩みながら、互いに理想との乖離に出会い、夢破れた先の人物に出会い、互いの進んだ道を理解ないままに羨む。 全く別の道を歩んでいるうに見えて、よく似た道筋になっている仕組みが巧みであった。 自分は素人ながら絵を描くことが好きで、関連して色々作ったりもしているけれど、プロではないので好きなことをしているにすぎない。 本来は作っても作らなくてもいい。 プロは違う。 自分の作りたいものではなくても役割として負ったのなら作らなくてはならない。 どんなに理想があったとしても実力や適正がなければその椅子には座れない。 ただそれは、直面した時は人生丸ごと無駄にしたように絶望するだろうがそうではない。 夢破れて自分に座れる椅子でやっていくことを決めた人。 そのひともまた、そこに至るまでに得た経験は無駄になってはいない。 最終的に彼らは、決断する時に脳裏に過る顔を裏切らない形で進む道を決意していく。 自分の作るものは趣味でしかない。 けれど、自分がしているVtuber活動の中で何をするか選ぶ時に、誠実であるべき対象としてよぎる顔はいつもみてくれるあなたのことですよ、本当に。
3投稿日: 2025.12.01
powered by ブクログ最後がよかった。欲求に上も下も大小もなく、ただそこにある。こうと省吾が後輩泉に言った言葉に、ひどく共感したし気持ちよかった。よく言い負かした!と思った。だから、その後の千紗の言葉にギクッとした。ただひとつ、全ての事象は人の心が動いて起こること、いたずらに弄ぶような真似はしたくないこと、今決めているのはそれだけ。
1投稿日: 2025.11.14
powered by ブクログ同じ場所からスタートした2人が別々の道を歩み、そこで違う世界を見て、感じて、考えて、出した答えがまた2人を繋げる。 「細かいところまでしっかりこだわる」尚吾と「自分の目で見て良いと思ったものを撮りたい」鉱。 どっちが良くて、どっちがすごくて、どっちが本物かなんて比べることができないのに、勝手に上か下かを決めて優越感に浸ったり、相手を嫌いになったり、自分を信じれなくなったりするのは本当に勿体無いと思った。 千紗が言ってた通り 「そのときのために、私は、誰かがしてることの悪いところよりも、自分がしてることの良いところを言えるようにしておこうかなって、思う」 この言葉の通り誰かと比べて勝手に優劣を決めたりするんじゃなくて、自分は自分の突き進みたい道を行くのが1番だと思う。 人と比べていいことなんてないよね。 個人的に朝井リョウ作品4作目にして初めて読後の感想をしっかり言語化できる気がする。今までは感情を掻き回されてもそれをどう言葉にすればいいのかわからないそのモヤモヤが心地よくて、誰かと語り合いたくなるのが好きだったからこれは1人で納得できちゃって少し寂しい気もする。
1投稿日: 2025.10.28
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「そのときの自分にとっての百点が求められてるわけじゃない。毎日投稿してること自体をすごいって言ってくれる人がいる。動画長くして広告いっぱいつければ実入りは増える。ないものをあるように見せられるし、そういう奴でも勝ち続けられる」 「尚否は初めて金銭が発生する映像仕事だって喜んでましたけど、俺はその金銭がなんか怖かったんですよね。俺にきた依頼じゃなくて、賞の名前とかその賞が持ってる歴史とか、そういう、俺自身とは関係ないところにある文脈に金が払われてる気がして」 紘は、声に出さずに繰り返してみる。 「どんな世界にいたって、悪い遺伝子に巻き込まれないことが大切なんです。一番怖いのは、知らないうちに悪い遺伝子に触れることで、自分も生まれ変わってしまうことです」
0投稿日: 2025.10.23
powered by ブクログ冒頭にあった「人は選択することに多大なエネルギーを費やしている」というスティーブ・ジョブズ的思考のとおり、彼らの選択への苦悩が痛いほど理解できる。ただこの苦悩を経ることも必要なんだ。
0投稿日: 2025.10.21
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2025/10/06 正統派の映画にこだわる尚吾と、今の時代にフィットした動画編集をする絋。自分と違う土俵に立つ相手のことを羨み認めたくない気持ちで揺れる。尚吾と鉱のいいとこ取りする泉の事も認めない理由を探す…みんな得意なことが違い、それぞれのファンを持てばニッチな人たちのスターになり得る。話の本筋ではないがユーチューバーは限られた一部の人ではなく、その人にとってのスターになればいい、そのユーチューバーは手の届かない超高収入の人ではなく会社員的な稼ぎでやっていく人もいる、そんな見方は知らなかった。私も偏見で凝り固まってる。そんな知らない世界を朝井リョウの本ではいつも見せてもらえる。 千紗の、自分はしないと決めたことをしている他人を糾弾する、その作業をしない まさにそのとおりだと思った。いつももやもや思っていることの言語化が本当に素晴らしい。 今ごろ遅いけど、朝井リョウ強化期間!
0投稿日: 2025.10.21
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タイパ、コスパを求めるあまりに心が置き去りにされてるということを痛感する本でした。 効率の良さ=良い、という方程式は必ずしも成り立たない。 何かにこだわること、周りの評価を気にせず打ち込むことで生まれるよさが世の中からなくなったら、どんなに味気ない世界になるだろうと考える。 こだわりのあるものを応援できる世界に生きたい
0投稿日: 2025.10.13
powered by ブクログ大学サークルで映像作品を監督し賞を受賞した2人のその後を、2人の視点で描いた作品。 価値観、多様性、細分化された社会と2人の映像作品に対する考え方の葛藤、成長がなかなかに青臭くもあり活力をくれたりもする作品でした。 2025年9月10日
0投稿日: 2025.10.06
powered by ブクログどっちがいいとか答えはないけど、考えてしまう問いをくれる本でした。 正解はないけど、自分はこっち!というのは選べる。
0投稿日: 2025.10.01
powered by ブクログ朝井リョウ作品はこれまで何作か読んできて全てとてもハマっていたが、初めて読後感としてあまり刺さっていないと感じる。 最後の方でまとめに入り、結局ハッピーエンドで終わったな、という感じを強く感じてしまったかもしれない。 ただ、尚吾と鉱が再会したのは嬉しかったし、同じ現場で仕事をできそうな終わり方も嬉しかった。 千紗と尚吾が別れなかったのは意外だった。
0投稿日: 2025.09.21
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ものづくりにおいての質や価値について考える材料を溢れてしまうほどに与えてくれた作品だった。作中では、多様な視点からやって来た多様な意見や思想が尚吾や絋の中でぶつかりあったり混ざったりしていた。要は、彼らのように考え続けることが大事なのだろうと思う。この本の意図もおそらくそこにある。
0投稿日: 2025.09.18
powered by ブクログ学生時代に映画賞をとった尚吾と絋の生き方が描かれている。 映画は映画館で見るもの!という考えと、ネット環境でも見られれば配信系でも問題ないと考える世代。世代間ギャップはあるものの、それに着いていかないと世間からズレが生じてしまうが、それに素直に流されたく無い2人の葛藤物語。
0投稿日: 2025.09.12
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映画が好きなので、こういう世界を描いた小説はありがたい! 最後の方の千紗の言葉がテーマなんだろうけど、視点としてとくに新しい発見がなかったので、星3つにとどまってしまったという感じ。 ラストのところ、あえて答えが書かれていないのは、この小説としての筋が通っているな〜と思いました。
0投稿日: 2025.09.12
powered by ブクログ現代の若者の感情の機微、特に倦んだ感情の描写力が毎度のことながら凄い。 若者でなくとも、何処かしら感情が共有できる場面があると思う。 色んな登場人物が独白するので、テンポが悪い面もあるけど、こっちで共感してなるほど!と思ったことが、あっちから見ると確かに違うかも‥と色々思考がかき混ぜられて、自分なりの意見を考えちゃうのが面白いところ。またこういう読書をしたいな。
46投稿日: 2025.09.03
powered by ブクログクリエイターになったことないから、めちゃくちゃ共感出来る!とはならなかったけれど、表現が多種多様になっていることには、共感しました。 YouTubeを含めたSNSで誰もが簡単に動画や文章をあげれる時代に、映画監督とか小説家が戸惑うのも理解出来ました。YouTubeも好きだし、映画も小説も好きな私としては、どちらも別物だと思うし、別の楽しみ方だと思う。 YouTubeはもっと気軽に見れる感じ、なんならなにか作業しながらでも見れる。映画はよし見るぞって決意して、時間がある時にしか観れない。でもYouTubeで得られる情報も有益なものがあるし癒されるし、映画でも得られるものがたくさんあるし考えさせられるし。どちらにも違った魅力があると思いました。 表現をする人たちには、新しい時代の流れに戸惑うこともあるのかもしれないけれど、視聴者としては、どちらも同じように楽しんでますと伝えたいです。笑
20投稿日: 2025.09.03
powered by ブクログ表現する側ではなくとも、いち視聴者として刺さる部分はたくさんあった。 サブスクで作品を観ると、「もっともっと」と欲が加速する感覚も覚えがあるし、だからといってその監督の作るスピードにも限界があるから、同じような雰囲気の作品がないかTikTokのおすすめばっかり漁っちゃうし。 そうやって人によって見たいものが細分化されること、それでも、そのコミュニティの枠を越境した不動の名作が出てくること、どちらも思わず唸るほど納得できる。 なんでこの人は、こんなにも人々の心の動きや社会の変動を、正確に読み取れるのだろう。 あと、朝井リョウ特有の「あ、これ読者の自分にも矢が降ってくるぞ…!」っていう自意識を突き刺す鋭い矢が放たれる感覚にぞくぞくする。自分の中で凝り固まった価値観をぐらぐらと揺さぶられる、鮮烈な読書体験だった。
2投稿日: 2025.08.27
powered by ブクログ学生映画祭でGPを受賞したサークル仲間の2人。「どちらが先に有名監督になるか勝負だな」と言って別れた2人は映画とYouTubeで異なる道を歩む。「細部は神に宿る」と"伝統"が重んじられ"本物"の作品が求められる世界と、大量生産・大量消費が繰り返されるが誰もが作品をリリースできる世界どちらが正しいのか。互いの世界で突き進み葛藤する2人が辿り着く答えとは。 芸術に縁のない自分の人生と思ってたけど、仕事の成果物を作品と捉えると学べることが沢山あった気がする。自分が生み出す物には責任と誇りを持っていけるようになりたい。読んでよかった一冊です。
5投稿日: 2025.08.25
powered by ブクログ全クリエイターにおすすめ! 古今東西のクリエイティブな人が必ずぶつかる壁をこんなにも上手く言語化できたのは本邦初なんじゃないかな? 「本物」を届けたいと思うクリエイター 「なんであんな紛いものがウケてるんだ」とか思ったことあるクリエイター 要するに最低限の深い考えができるクリエイターは読んだ方がいい!
0投稿日: 2025.07.27
powered by ブクログピラミッド的な共通の価値観は崩壊していって細分化されたコンテンツがそれぞれ盛り上がり、湧き出てはすぐ消えてくイメージはなんとなく理解できている。 拘っても評価されないけどそうしないと自分の仕事に満足できないことってあると思うし、どこまで追求するかも毎日苦悩し続けていくこともやめられないだろうし、
0投稿日: 2025.07.21
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★よかて思うものは自分で選べ 読み終えた今、この文章に全てが詰まってるように思える。自分もモノづくりで生きてきた人間だからこそ、尚吾と紘の隣の芝生が青く見えてしまう気持ちが痛いほど分かった。 "誰でも何でもできる"が増えた現代で、誰かと比べてできない・できてるって比べても意味ない。意味ないっていうよりそんなもの比べられないんだろうな。だからそんな時代に頼れるのは自分の感性、心なのだろう。ぶっとい軸を持つことがこれからの時代もっともっと大切になる。 自分の感性を確かめるために、取り戻すために手元に置いておきたい本だった。
1投稿日: 2025.07.12
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再度出会う前ぐらいまでわくわくしたが、最後に行くに連れて尻つぼみ。 周りの人に答え言ってもらえて幸せな主人公たち。彼女の話はかなりくどい。
0投稿日: 2025.06.09
powered by ブクログどんどん世の中が細分化していってコミュニティとか商圏とかが細かくなっていって小さいところでも根強いファンや客がいれば成り立つんだなぁと よかて思うものは自分で選べ。どうせぜーんぶ変わっていくと。 自分が見えた星の形を描いて、これが星ですって言っていく時代になったんだよね。昔からあるあの星形を、これが星なんだって言い聞かせなくても良くなった 星はそんな形じゃないって批判されまくったとしても、私の見えている星もそれですっていう人と出会えれば、そこが小さな空間になる。世界がまた一つ小分けされる 【神は細部に宿る、これは本当にそうだと思います。細部にこだわってこそ、余計なところで引っかかることなく二時間の映像をスムーズに観終えることができる。質のいい映画の大前提とは、物語とは関係のないところで観客が違和感を抱かないことです。そのためには構図、音、様々な部分で細部にこそこだわるべきです】 p55 そのとき紘たちは、撮影をしながら藪の中を彷徨っているような状況だった。撮影を進めながらも、何をしても不正解を選んでいるような精神状態に陥っていた。一つの作品を完成させるまでには、そのような時期が、必ず何度か訪れる。のめり込めばのめり込むほど客観性を失い、こんなものの何が面白いんだという疑いが拭えなくなり、道標を欲してしまう。そんなもの本当はどこにもないことを、ものづくりに携わる誰もがわかっているのに p109 ないものをあるように見せることが上手い奴らがどんどん先へ行くp133 「ものを作るときに、いろんなことの妥協点を探り合うんじゃなくて、質を高めることしか考えなくていいって、本当に特別な人にしか許されないことなんだって実感したよ」 p137 「俺、分かったんだ。今の時代、百万人の世間が断罪しても、十万人の信者がいればその中で生きられる。どんなに非道な行為でも、大勢の人前でやればそれはパフォーマンスになって、ファンがつく。どれだけ炎上したとしても、情報量が多い今、すぐに全部が有耶無恥になる。どこもかしこも埋め立て地、都合良く上書きし放題だ」 「お互い、もう何だっていいんだよ」 「どうせ皆忘れるから、じゃなくて、皆にずっと覚えていてほしいって思いながら、手を動かしたいです」 「すぐに忘れられてしまうとしても、せめてその時の自分にとっての百点のものを世に出そうって、そう思っていたいので」 p168 「あんたが考えてることって多分、だいぶざっくり言っちゃえば、この世界とどう向き合うかって話なんだよ」 「おかしな等号だらけの世界に対して、自分はどういう判断基準を持つのかっていう話」 「そういうことを根詰めて考えられるのって、人生の中で本当に一瞬なんだよね。世界と向き合うとき、こちら側がひとりだけでいい時間。立場とか責任とか生活とか、そういうことを脱ぎ捨てて世界と向き合える時間」 「その一瞬の中でどういう問いを立ててどれだけ考え尽くしたかっていうのが、映画監督になるような人にはすごく大事なんだろうなって思うよ」 「その時間に考えることから逃げちゃうと、変だなーって等号も見逃しながらぼんやり生きていくことになるから。バランスが大事とかどうせ誰もが行きつくつまんない答えで早々に自分を甘やかすことになるから」 「答えのないことを考えていられる時間って本当に贅沢なんだよ」 p207 要は、大樹の言うことをそのまま信じているわけではなさそうで、走っている間、終始何かを試きたそうな表情をしていた。だけどそれでいて、リング上と自身の肉体以外の場の治安に対して無頓着な様子はそのままで、彼にとってはその様子がひどく心強かった。 この男はこれからも、勝手に生まれて勝手に消えていくルールから外れたところに立ち続けるだろうと思った。 彼が向き合うのは自分自身だけでいい。そうしていることを許された人にだけ宿る輝きの中に、ずっと、いてほしい。拡はそんな願いを、日が昇っていく冬の朝の中に、白い息と一緒に潜ませた。 p217 自分が尚吾とは違う道を選んだのは、凝り固まったルールから解放された場所で、ただただ心震えるものを撮りたかったからだった。だけど、自由に動き回れるように見えた場所にもすぐ、ルールは追いついてきた。そして、そのルールに殺されずやっていける方法をやっと見つけ出すころには、もうその次の新しいルールが姿を現した。拳で相手を倒すというような、勝敗が誰の目にも明らかな場所に立たない限り、次々に生まれるルールから完全に逃れることは、きっとできない。 p219 紙はそのまま、眠るわけでもなく目を閉じる。瞼の裏にあるスクリーンが映し出すのは、いつだって、故郷の島に息吹く景色たちだった。四つの季節などでは区切れない、三百六十五色のグラデーションをまとった風景たち。 大人になって技術と資金を手に入れられれば、高校生のころに体育館で行った上映会をもっと大規模にしたような催しができると思っていた。だけど、それは幻想だったのかもしれない。あの山も海も体育館も、あの瞬間の島にしか、なかったのかもしれない。 p219 「俺たちがテレビを通して観てるものって、結局、文脈とか関係性なわけだから」 例えば海外で無茶なことやらさせる芸能人Aのコーナーがあるだろ 俺たちが観て笑ってるのは、多分芸能人Aの言動そのものじゃないんだよ。そのVTRをスタジオで観てる芸能人Bとの関係性とか、Aと業界そのものの関係性とか、そういうものをひっくるめて観てるんだよ Aが重鎮であればあるほど企画の無茶さが際立つし、Bが Aの後輩で Aに昔いびられてたなんて文脈があれば最高だよな 裸踊りもゲテモノ食いもそれだけじゃ面白くない。その世界の中で誰がどういう存在で、過去に誰と誰の間にどんな関係があって、ってことの方が大事なんだよ。むしろそれさえあれば裸踊りもゲテモノ食いも何もいらない。 だから個人的に交流があるとかじゃない限り、人気インフルエンサーって肩書きで揃えたからってトークが盛り上がるわけじゃない。話す技術とか以前に関係性も文脈もこれから構築されていく人たちなんだから YouTuberの動画なんて何が面白いんだって未だに言う人いるけど、その人たちは単純にそのYouTuberのこと知らないだけなんだよな。YouTuberも芸能人もやってる企画はたいして変わらない。出演者と視聴者の関係性が成立してるのが今のところテレビの方が多いってだけ p224 どんな世界にも信じるものを揺るがそうとしてくる人間はいる。都合のいい文脈に挟み込む事でその数値をだまくらかすような悪い遺伝子が存在する。 どんな世界にいたって、悪い遺伝子に巻き込まれないことが大切なんです。1番怖いのは、知らないうちに悪い遺伝子に触れることで、自分も生まれ変わってしまうこと p235 年齢や肩書、おそらく性別までを戻り払う最大の感情は尊敬。余計な文脈を削ぎ落とし、そこにある心のみと向き合うことができれば人間関係は実はシンプルになる p239 そんな細部にこだわっても誰も気づかない、という揺らぎに負けない。 差し出す相手を騙したり、軽んじるような気持ちでものづくりに臨まない。 細部に宿った神は笑いかけてくれる。 p244 言葉ひとつとっても時間をかけて精査してこだわって丁寧に作ることが大事。どういう意図でそういう表現をしたのか胸を張って説明できるくらい考え尽くしてから作品を届けるべき p282 いま対価として支払われてるのは、お金じゃなくて時間だって話をしましたけど、最近またフェーズが変わったなと感じます。人生です。一回限りの人生を何を成し遂げることに注ぐかって考える人、特に俺ら世代に増えましたよね p321 昔みたいにみんなで一つのテレビや映画を観ていた頃と違って、誰もが好きなように発信できるし、誰もが好きなものを好きなように追いかけられるようになった p325 なんでこの人たちがオリンピックのアンバサダーなの?どこが新時代のスターなの?何ができる人たちで、どうしてその地位にいられるの? その疑問がもう古いんですよね だって実際、彼らにはものすごいたくさんのファンがいて、大企業が頼りたくなるくらいの影響力を持ってる。事実、オリンピックのアンバサダーで新時代のスターなんです。 p326 「何か特別なことができるわけじゃない人間が、日々の発信の積み重ねで知名度と影響力を得ていく。ある人にとっては無名の人間が、ある人にとっては唯一無二のスターになる。 そういうことが普通の時代になりました。能力を持つ者がスターとして君臨することだけじゃなく、持たざる者が持ちゆく過程を世に公開し支持を集めることができる。お金を生むこともできる。そんな時代になりました。誰にとってもスターなわけじゃないけど、誰かにとっての小さな星がファンクラブ的な閉鎖空間を設ければ、その中で光り続けられるようになりました」p328 結局、創り出したものにそれだけの価値があるかとか、対価に見合うほどの質なのかっていうのは、考えても仕方ないんだよな それより、これが自分の作品ですって差し出す時の心に嘘がないかどうか。俺はそこが気になる p350 劇場で映画を上映するときって、人が集まれば集まるほどワクワクするはずなんだよ。どれだけ人が集まっても、全員に同じだけの体験を提供できるって、作り手が胸を張って言えるから サロンの会員が増えていくとき、正直ちょっと怖かったろ このままだと提供できる体験が底を突く、全員を満足させられなくなるって、ちょっとは思ったろ こういうサロンですって色んな人に差し出しながら、本当にこのまま差し出し続けていいのかって、心のどっかでそう思ってたんじゃないのか p351 作ったものを差し出す時に、誰かを裏切ったりする気持ちがない作り手でありたい 物事の良し悪しはどうせ決められないんだから、せめて自分の心だけでも p354 比べてイライラして、あっちの方が質も価値も低いはずなのにって怒ってた 本当は比べられないものを比べ続けてたら、いつか本当は切り捨てちゃいけないものを切り捨てちゃいそうな気がする 生きている限り、何かを選び取ることからは逃げられない。だけど、無理やり同じ土俵に並べてこっちの方が劣っているからとか、そんなふうに考えたいわけじゃない…それくらいの曖昧さがないと、どんどん許せないものばっかり増えていっちゃいそうで怖いの p366 尚吾がずっと苦しそうに見えた。目につくもの全部、無理やり同じ土俵に並べてどっちが劣ってるか議論してるように見えたから どうにかして後輩の子を認めない理由を見つけようとしてるなって思った とにかく比べられないものを同じ土俵に上げてる感じがした。それでここがダメあれがおかしいって、無理やり文句つけてるように見えてた 自分がプライド持ってる分野ほど、自分が想定しなかったものが選ばれたときにイライラするもんね p368 これまでは色んな欲求の種類に応えるだけの発信がされてなかっただけなのかもね 私今までは自分は"大は小を兼ねる"の大なんだって思ってた。本物の料理を学んでいる自分は大を与えられるにんけんで、高度で確かな技術が1番素晴らしくて、それさえあればその下に連なるどんな欲求にも対応できるって思ってた。だから自分が差し出したものが認められないとイライラしてた"大"側の私が差し出してるものはあなたの欲求もカバーしてるはずなのにって でもそもそも欲求には大も小も上下もなくて、色んな種類があるだけ 勝手にそのジャンルで最高峰の場所で学ぶ自分は、そのジャンル全体の欲求を満たせるはずだって思い込んでた。でも私が満たしてあげられるのは、たとえ本当に最高峰の場所にいるとしても、そのジャンルの一点だけ。ピラミッドの中の一点を塗り潰す技術を学んだだけなのに、そこは頂点で、頂点を塗れる自分はピラミッド全部を塗りつぶせるつもりでいた p369 今誰でもなんでも発信できるようになって、ちょっと調べればどんな欲求にも対応してくれるものがあって…世界はこれからどんどん細分化されて、それこそオンラインサロンの集合体みたいになっていくんだろうなって思う。欲求に大小や上下があるんじゃなくて、全部小分けされて横並びになるっていうか 頂点っぽい巨大な何かが色んな欲求をまとめて満たしているように見えてた時代は終わっていくんだなって だから自分がいない空間に対して「それは違う」「それはおかしい」って指摘する資格は誰にもないんだよね全部自分がいる空間とは違うルールで成立してるんだもん。たとえ自分はそのジャンルの頂点を知ってると思っても、それが本当に頂点だとしても、頂点の場所にある一つの点だけを知ってるにすぎない だから誰かにとっての質と価値は、もうその人以外には判断できない。それがどれだけ自分にとって認められないものだとしても 最近の尚吾は、自分の創るものの質を高めようとしてるっていうより、自分はしないって決めたことをしてる誰かを糾弾することに忙しそうだった。自分が知ってる頂点はそれをしてないんだから、って怒り続けてるように見えた その作業はもうやめにしてもいいのかも その作業で守れるものって自分のプライドくらいだから そうは言ってもこんなのおかしいって叫びたくなるものに出会う時はこれからもくると思う その時のために私は、誰かがしてることの悪いところよりも、自分がしてることの良いところを言えるようにしておこうかなって思う これからはそういう戦い方になっていく気がするp370
0投稿日: 2025.06.09
powered by ブクログ世界に何かを発表する人にしか分からないテーマかと思ったが全くそんなことはない。アマプラでオススメから何となく流行の作品を視聴している消費者然としている人でも、クリエイター達が何を考えているのか覗くことができる。表現者は表現のあり方を。消費者は消費の在り方を、いま一度見つめ直す機会になるはず。誰かの何かを糾弾しない朝井リョウらしい作品。ずっと傍に置いておきたい
9投稿日: 2025.06.08
powered by ブクログあああーーー、商業的すぎると見下してしまう気持ちも、見下して自分の狭い価値観に囚われていてダサいなーと思う気持ちぜーんぶ私も持ってる。。商業と芸術の両立難しい。もう一回読む
1投稿日: 2025.06.01
powered by ブクログ本と映画が好きだから、作り手の難しさはよく分かった。 人々の価値観は変容するし、多様化するし、昔ながらの権威もそのままの地位ではいられない。 自分も古典を美化しがちなところあるなと思った。 けど、古典で今もなお読まれている本は、確率的に良い本である確率が高いよね。海外の本でも、わざわざ翻訳されているんだから、海外の著者の本は質がいいことが多いはず。質がいいとか、基準が存在しないけど、いいと思う人が多い確率が高い、とここでは定義しておく。 人と比べることが無意味になる。なぜなら存在してるフィールドが違うから。現代ではフィールドは細分化し、増殖する。 だけど、本当にいいものは違うフィールドの人にも影響を及ぼす。心を動かす。逆説的に、他フィールドに影響を及ぼすものがいいものとも言える。 だから、胸張って世の中に送り出せるものを誠心誠意作りたいよね、 っていう話だと思ってる。 だけど、自分の価値観を肯定されたい、という欲は無くなることはないから難しいよね。
2投稿日: 2025.05.29
powered by ブクログ信念を貫いて自分のスタイルを崩さずにコツコツ積み上げる努力家と、世の中のやり方に沿ってアウトプットする手段をとりいち早く世に知らしめたいという世渡り派か。 どちらが正しいなんてないし、自分の信じたやり方が世の正解と交わることなんて誰が決めるのか。 比べられないものを比べ続けてたら、いつか本当に切り捨てちゃいけないものを捨ててしまいそうになる。 クオリティ優先でなく、いかにバズらせられるかという現代の風潮が物語っているようであった。 サブスクだとか限定だとか完全食だとか流行り物だとか、今だけ騙されていたいって思うこと、私も無意識に惹かれてることあるなって自覚しました。 人間同士の摩擦によるズレの言語化もさすがだしドキッとする。 作ったものを差し出す時に、誰かを裏切ったり騙す気持ちがない作り手でありたい。 誰かがしてる悪いところより、自分がしてる良いところを言えるようにしておきたい。 そんな逞しさを持ちたい。
51投稿日: 2025.05.27
powered by ブクログなんとなく読書熱が蘇ってきたタイミングでスラスラ読める著者を。勢いにのりたい。 大きな物語の消失からの現代を描く現代を生きる作家、という印象で、この作品もまんまのテーマ。「みんなが知ってる」という大きなスターが不在になってこれからどうなるやら、みたいなことを切り込んで書きたかったのだと思うし、目配せの効いたバランス感覚がいいなと思う。結論としてはきっとこれからクラスタ的なコミュニティがたくさんできるけど、いいものはそのクラスタを越境するよね。って。おおむね同意でありがとうって感じ。 ただ個人的には最近真とか美とか善とか、絶対的な基準があるのではないかと感じ始めているので、特に黄金比とか数学的な美しさについて考えることが多いので「数ある価値観を外から評価はできない」というのはほんとかなぁとも。絶対的に美しいものってほんとにないのかなぁ。でも自分も絶対にあると思ってない以上同じ立場に立っているような気もする。他人の価値観を否定するより自分の肯定するものを説明できるようにというのは前向きでいいなと思いつつも優しすぎて気持ち悪くも感じる。ぶつからないとアウフヘーベンは生まれないのでは。でも止揚して生まれた価値観だって相対的な評価しかされないという感覚か。この諦念はぶつかることじゃなくて叩くことを助長しやしないか? などと悶々と。この割り切れなさが現代的なんだろうなと感じました。退屈しない時代に生まれたものだ。
2投稿日: 2025.05.24
powered by ブクログ余韻を残す、映画のような終わり方が良い。心に響く良い物語だった。30を過ぎたばかりの若い作家が、物語を通してどうしてこれほどにも老成した、まるで経験してきたかのごとく、物事を捉え、人の心の深淵に触れ、迷いの根源に辿り着くことが出来るのか、年長者でありながら気付きの無い自分が恥ずかしくなる。ユーチューバーという新しい若者文化。細分化していく価値観の集合体の行方。名声やお金持ちになりたいとかではなく、贅沢しなくても心豊かにスローに落ち着いて自分らしく生きたいという、時代が育んだ感性、価値観を羨ましく思う。
4投稿日: 2025.05.22
powered by ブクログ細かい。とにかく細かい。 荒れ狂う時代の波によって変わってしまう価値観と質を根幹にドラマが構築され続けてて、若者からするとホントに良く、作者が議題を見定めていることが伝わる。生半可な観察眼ではない。 一方で構成はシンプル。 会話が多くてその中でひとつひとつ紐解かれていくイメージ。ただし扱いものがモノなので理解するのに時間を要するときがあるし、見解の域を出ないので共感できない時もある。 でも説得力は抜群。
2投稿日: 2025.05.15
powered by ブクログ「質か、量か」 「伝統を守るのか、時代の流れに乗るのか」 「ニーズに応えるのか、作り手が届けたいものを作るのか」 ニーズが細分化する中で絶対的なスターはいなくなった。自分のスターは他人にとっては知らない人。そんな時代に葛藤する作り手の姿に心の奥の方が熱くなった。連休前に読めてよかった。
14投稿日: 2025.05.06
powered by ブクログ新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した2人の大学生が大学卒業後に名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を歩き始める……2人の葛藤や最近のSNS等読み応えがありました。
13投稿日: 2025.05.05
powered by ブクログ「待つ それだけのことが、俺たちはどんどん下手になっている」 この一文は、現代社会を非常に高い解像度で切り取っている。 物と情報が氾濫した現代で、すべてのものがインスタントに消費され、生まれては消えていく。 「ないものをあるようにみせる」人間が跋扈し、小さなコミュニティが乱立する。 無駄に多忙な生活のなかで、本当に大切な「あるものがないように」生きている。 でもそれでいいのだと思う。 なぜなら、騙す人よりも「今はそれに騙されていたい」という人の方が多いからだ。 「酔っていたい」という自分の内側の声に気づけている場合はまだマシだが、多くの場合はその声があることにすら気づけていない。 いってみれぼ、毎朝目覚めて水を飲むつもりでスト缶を一気しているようなものだ。 こんなことをリアルでやっている奴がいたら狂っているとしか形容できないが、今の大半の人間がやっていることは、これだ。 価値観なんて脆弱な基盤の上に立った実態のないものだから、すぐに変わる。うつろいでいく。 戦後の小学生たちは、今まで使っていた教科書のほとんどを墨で塗りつぶさせられた。 だから私は自分の時間、自分の時間で積み上げた感性を信じる。 そのためには自分の感性を磨く必要がある。 自己と向き合い内省すること。孤独に浸ること。 質の良いものに触れること。 質の悪いものを見ない、触れないこと。 今の世の中は、質の悪いものが多すぎる。 「いかに自分の体の中にゴミを入れないか」 これが、現代社会を生きていくうえで最重要だと、私は確信している。
0投稿日: 2025.04.30
powered by ブクログ伝統的な手法を好む合理的な尚吾、感覚的な手法を好み、流されやすい絋の対比。対比されていたと思うのも束の間、同じような場所に着地する2人。各登場人物の効果的な配置が良かった。 どんなアウトプットであっても、どこに出し、どこに出て行くものであっても、自分が納得しているか、合点がいってるかどうかを重視する姿勢は、AIによってクリエイティブの定義が大きく揺らいでくるであろうこれからの時代に刺さるものだと思う。
0投稿日: 2025.04.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2025/4/25 読了 若い二人の映像作家?映画監督?がコンクールで受賞し、その後別々の道を歩んでいくお話し む、むずかしかった( ̄▽ ̄;) それぞれの主人公が思う、感じる、映像への執着、こだわり、とらえ方が文章化されてるのだけれど、一言では表せなく読み進めていくうちに、「あぁ、そうゆう感じか」と分かっていくのだけれど、という感じです。 隣の芝生は青い 取らぬ狸の皮算用 ヘタな鉄砲数打ちゃ当たる が混ざってるのが現代なのかなーと感じました。 そんな現代でも、それぞれの揺るがない何かだけを曲げずに信じ続ければいいのかなーとも感じました。
0投稿日: 2025.04.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
刺さる言葉ばかり この世にあるものは全て命とか人生の本質的な部分から目を逸らさせてくれるものばっかりなんじゃないかって 差し出す人の動機がなんでも、差し出されたものを受け取って喜んでる人がいる限り、そよやり取りの良し悪しを私たちが決めることはできない、というか判断しようとしても仕方ない。本当は判断できないようになっている。世の中の現象全部の質や価値って、わからないようにできてる。そうじゃないと、比べられないものを比べ始めちゃう 本当は比べられないものを比べつづけたら、いつか切り捨てちゃいけないものを切り捨ててしまう気がする 比べられないものを同じ土俵に並べて比較するのは間違ってる そもそも個別の欲求に上下はない、いろんな種類があるだけ たとえ最高峰の場所にいるとしても、満たせるのはピラミッドの頂点の部分だけ。その一点しか塗りつぶせない。世界はこれからどんどん細分化されて、ぜんぶ小分けに横並びになる。誰かにとっての質や価値はその人以外に判断できない。 でもその小さな空間に向けて差し出したものが、その一点をこえて広がっていったときに、誰に差し出しても、想定外の相手でも、胸を張ったままでいられるかどうかが主人公の姿勢である。
0投稿日: 2025.04.18
powered by ブクログ主人公2人が名監督への弟子入りとYouTubeでの発信と真逆の道を選ぶ。心情を丁寧に描いてる分劇的な展開はない。あまりストーリーに没入できなかった。
7投稿日: 2025.03.29
powered by ブクログ上質なものをそれなりの価格で提供するか、質にはこだわらないけど無料で提供するか。 見てもらえないと意味がない。でも無料でしか見ない人に提供する意味があるのか。 何が正解かどうかは一概に判断できない。 今の世の中は100人いたら100通り求めるものが違うような時代になってきているから、正解も人それぞれなのかも。 私は上質さを求めるけど、その考えを持たない人とは比較したらいけない。というより比較はできないことなんだと学んだ。 比較できないことを比較し続けると、本当は切り捨ててはいけないことを切り捨ててしまうことになるかもしれない。 そもそも欲求には大も小も、上も下もなくて いろんな種類があるだけなんだよ。
7投稿日: 2025.03.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
心の問題。自分の感性。 人の顔が過る。 比べちゃいけないもの、比べる必要のないもの。 細分化された時代。 時代が変わって、今の世の中は生きやすくなったのか生きにくくなったのか。みんなにとって共通の(A=BがB=Aにもなる)「スター」はいなくなったけど、それは細分化できる環境(プラットフォーム)がこれまで無かっただけ。 朝井リョウ8作目、やっぱおもしろいな〜
0投稿日: 2025.03.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
めちゃくちゃ良い話でした。。。 僕は性格が悪いので2人で潰し合いするのかなと思って読んでましたが、そんなことなかったです。すみませんでした。誰に何を言われても、自分が良いと思ったものを信じるということが大切だと思って生きていきます。
0投稿日: 2025.03.09
powered by ブクログ自分も将来映像作品を作る仕事に携わりたいと考えているので、ふむふむとなるところが多く、読みやすかった。 最後に星の形へと落とし込むのも納得のいくものだった。
0投稿日: 2025.03.04
powered by ブクログ現代のSNSやサブスクが普及したことに触れている作品です。それを上手く活かしている人と古き良きにこだわってる人、どちらが良いのかの葛藤???のようなものを書いていて考えさせられる作品でした。
1投稿日: 2025.02.23
powered by ブクログ朝井リョウ作品読了は本作で3作目。 劇的なストーリー展開はないものの、登場人物の心情変化を丁寧に描いている。 時にまどろっこしくも感じるテンポ。 それがゆえに自分自身に当てはめて考えさせられる場面が多い。 学生時代にぴあフィルムフェスティバルでグランプリを受賞した尚吾と絋。 性格や映画作成に対する思いも異なる2人は、大学卒業後別々の形で映画作成に関わっていく。 映像に関する時代の変化、評価。 揺らぐ自己肯定感。 物語は2人の歩みを紡ぎながら、現代社会に訴えるものがある。 印象的であったのは物語終盤の尚吾と彼女である千紗とのやりとり。 千紗がもがいた上にたどり着いた結論。 彼女の結論は賛否あるかもしれないが、何にでも甲乙つけたがる世の中で、忘れてはいけないことかもしれないと考えさせられた。 朝井リョウ作品は何が正解かを問いかけて終わることが多く読了後も考えさせられる。 そしていつも正解は無い。 登場人物も読者も、皆それぞれの正解があり、その正解も時の流れで変化していく。 感情的に読めないので読了直後は★3 少し時間をおくと★4になるのは私だけだろうか笑
15投稿日: 2025.02.09
powered by ブクログhttps://paz-library.opac.jp/opac/Holding_list?rgtn=00056968
0投稿日: 2025.01.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
まるで正反対な方向に進む2人だったが、所々で同じ考え方が垣間見えるシーンもあり、不思議と安心する私がいた。 私自身にも正反対な性格の友人がいるが、意外とそういう人とのほうが、関係が長続きする傾向にある。 理由としては、相手の物事に対する見方、考え方、捉え方が常に自分と異なるからこそ、刺激的であり、エネルギーをも得られる感覚に溺れるからであると感じている。 本作はそういう葛藤もといジレンマ、周りの評価、経営の存続に必然となる資金など、様々な要因が絡まり合い、自分のしたい表現が出来なくなる現実と何度も直面する。 その激しい濁流のような社会から、一筋の光を見つけれるかどうか、はたまた暗闇のまま突き進む勇気を持てるかどうかと読んでて先が気になる内容であった。 最終的には、恋人の考え方を知ることで、今後の時代に合わせて進むというキッカケを得られるようになった。 監督が次からはどういう風に進めていくのか、続きが気になったが、あえてそこは伏せていたので、そこから先は読者一人一人の考え方で展開が変わるんだろうなと、ある意味で刺激的な終わり方であった。
1投稿日: 2025.01.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
久々の朝井リョウ。この人のはものすごーく好みの時(例:何者、何様、世にも奇妙な君物語)とそうじゃないときの個人的ふり幅が大きい作家なんだけど、これはとっても好みだった。自分がSNSを結構やるのもあって、感覚的にめちゃくちゃ分かるなと思う作品だった。 W主人公のうちの一人、尚吾の彼女、千紗が辿り着いたところ(として語られていること)、ものすごく共感。 「だから、自分がいない空間に対して『それは違う』、『それはおかしい』って指摘する資格は誰にもないんだよね。何か言いたくなる気持ちはすっごくすっごくわかるんだけどさ、全部、自分がいる空間とは違うルールで成立してるんだもん。たとえ自分はそのジャンルの頂点を知ってるんだからって思っても、それが本当に頂点だとしても、頂点の場所にある一つの点を知ってるにすぎない」(中略) 「誰かにとっての質と価値は、もう、その人以外には判断できないんだよ。それがどれだけ、自分にとって認められないものだとしても」(中略) 「最近の尚吾は、自分の創るものの質を高めようとしてるっていうより、自分はしないって決めたことをしてる誰かを糾弾することに忙しそうだった。自分が知ってる頂点はそれをしてないんだから、って、怒り続けているように見えた」(中略) 「その作業はもう、やめにしてもいいのかも」 (すべてp.371より) これってでもある意味、究極の多文化共生的考え(複文化主義?)ともいえるかも。 ちょっと我が元上司に読んでみてほしいな笑 そして、すべてのSNSをする人に捧げたい言葉でもある。こういうことに怒っている人がめちゃくちゃ多そうだから。
0投稿日: 2025.01.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
映画祭でグランプリを受賞した 主人公の立原尚吾と大土井紘。名画座中央シネマタウンの支配人から一言、「どっちが先に有名監督になるか、勝負だな」 と言われます。立原は名監督への弟子入り、大土井はYouTubeでの発信という真逆の道へ。 感性もこだわりも相反する2人。作品を出す上で様々なる葛藤や、苦悩を鮮明にえがかれていました。 また、2人の仕事場で出てくる登場人物たちも功績や名誉など輝いているものがある一方で、大きな悩みや苦い過去も抱えている人もおり、色んな考え方、生き方があるんだなと思いました。 SNSやyoutubeをよく見るからこそ、読んでいてこの人本当に不愉快だなぁと思う登場人物がいましたが、こうゆう人確かに今じゃ許されるよな…なんて考えてしまいました。 でも、主人公や千紗さんの自分の考えをしっかり発言している場面が活き活きと描かれているのが良かったです。特に、心を大切にする、ということ。 世間での評価や価値はどんどん変化していくけれど、自分がこれで良いんだと思って行動しているときってこんなにも輝かしく見えるんだなと思わされました。 生殖記もそうでしたが、朝井リョウさんから今回も大事な気づきと、問いかけを頂きました。
11投稿日: 2025.01.09
powered by ブクログ誰かと比べて、相手を批判して、自分が正しいんだと鎧を強固にしていつも疲弊していた過去の自分と重ねながら読み進めていった。 悩みながらもがきながら、それでも前を向いて強く生きていく、そんなエネルギーを感じて感動した。 『誰かがしていることの悪いところよりも、自分がしていることの良いところを言えるようにしておこうかなって、思う。これからは、そういう戦い方になっていく気がする』 千紗のこのつぶやきにはとても共感し、私も今、こんな心境だからこそ、日々楽しくやれているのだなと思えて嬉しかった。
6投稿日: 2025.01.09
powered by ブクログ現代の価値あるものってなんだろう。 いや、何で価値を測ればいいのだろう、か。 何年か後に読むと何を感じるのかな。
1投稿日: 2025.01.04
powered by ブクログ本書の内容は現代らしいものである。 だが、問われている本質は仕事や趣味、それ以上に人生において「価値基準を何処に、どの様に置くのか」という普遍的な事だと思う。 最後に尚吾が至った境地を、羨ましく感じた。
1投稿日: 2024.12.28
powered by ブクログ朝井リョウさんの作品はこれまでに何冊か読んできたけど、ここ数年の作品は作者の人生観みたいなのが分かりやすく反映されている気がする どんどん変わっていく時代の中で自分の信念が揺らぎそうになることは多々あるけれど、柔軟性をもちつつ独りよがりになりすぎず自分が信じるものを信じ続けたいし大切にしたいと思った(けどこれがきっととても難しい) 登場人物みんな、言語化しづらい自分の中のもやもやに向き合って自分なりに言葉にする姿がすごい 特に終盤の千紗さんの言葉には納得させられる部分が多く、自分の頭で考えること、自分の言葉で話すことの重要さを感じた
1投稿日: 2024.12.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「これが自分の作品ですって差し出すときの心に嘘がないかどうか。俺は、そこが気になる。」の一節が自分には腑に落ちたし、本書を読んで以降、様々なコンテンツで自然とこの視点を持つようになった。
3投稿日: 2024.12.22
powered by ブクログ全体的に言いたいことはわかったのだが、テーマがテーマなだけあって様々なYouTuberやインフルエンサー、映画監督、サブキャラクター、友達、主人公の元彼女などが出てくるためそれらの名前や役割の把握が少し大変だった。 最近のインフルエンサーやYouTuberは英語で言うクリックベイト、釣りのようなサムネや報告動画、炎上商法が多い。 私は読みながら特に、あやなんがしてることは「人の心がある」ってことを考えていないなと確信した。 どんな情報でも放った先には人の心がある、それを悪い方向に利用して受け取った人たちの心を動かす。それで有名になる。 今の時代、多くのプラットフォームでプロもアマチュアも境界線なく自由に情報を発信できる。でもそれらは全て違う土俵で、甲乙つけるものではないとわかった。 生き方も同じ、優劣じゃないんだな、って まだ自分の中に落とし込むには少し青すぎる言葉だと思うけど!
1投稿日: 2024.12.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
答えよりも問いを与える作品を。 プロとアマチュアの境界線がなくなって、発信が時代と共にどんな風に変わっても、受信はいつでも人の心。 作品を提供する速度と自分を把握する時間が反比例するなんて、おかしい。
0投稿日: 2024.12.21
powered by ブクログ朝井リョウさんの本はいつも必ず何か答えのないものに、ひとつのその作品なりの答えをくれて、心に残る。 映画とYouTube。新しいものに対して持つ違和感を自分の中に落とし込むとき、また読みたい本だと思った
1投稿日: 2024.12.17
powered by ブクログこれを2020年に書いてたっていうのが衝撃 色んな特性を持った登場人物が、その人が言うと何倍も濃くなるような意味を持たせたセリフが飛び交ってた 大切なことがたくさん書いてあった 朝井さん本当にありがとう
0投稿日: 2024.12.12
powered by ブクログ「変わっていく時代とコンテンツの質と価値」 私も登場人物の尚吾のように、新しいものとか手軽なものを受け入れられないというか、そこに宿る価値を見ないようにしてしまうことがあるのだけど、それがなぜなのかは分からなくて。古いものとか手の込んでいるものが優れてるからとかではないし、言語化できないでいたんだけど、そのあたりのもやもやに色々な視点からヒントをくれる一冊だった。あまりにも自分の気持ちにリンクしてくるから、はやくこの気持ちの答えをくれーっと思いながら一気に読んだ。 もともと比べることができないものたちを同じ土俵にあげで比べようとするから、世の中苦しいんだよなぁ。正欲といい、朝井リョウさんはすごいなぁ…すごくおもしろかった
2投稿日: 2024.12.08
powered by ブクログめちゃくちゃ面白かった。 朝井リョウは、現代社会についての小説を読むのが面白い。 まさに、この本の中にある違和感など感じながら日々生きている。 SNSに操作される人間。SNSを操作して失う人間。 一番とても印象に残ったのは、監督が 「こころの問題」と言っていたこと。 好きなことを仕事にしているはずなの、それを続けるには、 今の流行りや社会に適合する必要があるのか。 それとも、経営が難航するまで、拘りを貫き通すのか。 2人とも、周りの人間に結構恵まれていると思う。 それを大切に出来ているのも自分自身なのだが。 また読みたい本。 朝井リョウの作品でも、とても好きな作品になった。 そしたら、世田谷文学館かなぁ? 朝井リョウがハロプロ踊ってる動画が流れてきて、さらに好きになった笑
1投稿日: 2024.12.02
powered by ブクログ読了して分かるタイトルにあるスターの意味。過渡期である今、こういう作品が出ることに意味があるのだと思う。終盤の、千紗の言語化能力が高すぎてびっくりする
1投稿日: 2024.11.30
powered by ブクログYouTubeとかサブスクが当たり前にある現代で、親近感のあるテーマだからこそ今回も色々考えさせられたな。続きが気になってあっという間に読めちゃった。
1投稿日: 2024.11.21
powered by ブクログわたしも、朝井リョウは答えじゃなくて問いをくれるから好きなんだと思う 世界はどんどん細分化していってそれぞれの空間の中でやりとりするようになる でも素晴らしいものは空間を越境する 想定していた相手じゃない人にまで届いた時に、胸を張ったままでいられるかどうか
1投稿日: 2024.11.19
powered by ブクログ時代の変化と質と量。自分が差し出すものに嘘がないかどうか。誇れるかどうか。学生の物語だったけど、社会人になった今でも通ずる部分をたくさん受け取った。自分の会社として差し出すものに嘘がないかどうか、忘れないようにしたい。正直さは見失いがちになるけど、またこの本を読めば思い出せる。いつも通り、朝井リョウさんの本はまた読みたくなる本。
3投稿日: 2024.11.19
powered by ブクログ自分はクリエイターではないので、本の悩みや葛藤は何となく分かるけど実感はないのでそういうもんなのかなという程度。 ただ、生まれや育ちの違いで全く違う価値観を持つことが許された時代にある中において、普遍的な良いものってのはもはやないのだろうなとは察した。 最後は自己満足の世界でしかないと感じたし、そで十分だとも思った。
1投稿日: 2024.11.15
powered by ブクログYouTubeや流行りの音楽ばかりに触れてここ数年を過ごしてきました。この作品を読んで巡らせ始めた思考への結論がまだ出ていません。 ですが、「すぐに答えを出すのではなく、問いがほしい」という浅沼さんの考えはよく分かるから、私もこの思考をしばらく楽しもうと思います。
1投稿日: 2024.11.04
powered by ブクログこの作者らしい作品だと思う。 YouTubeとかオンラインサロンとか今時の内容が盛りだくさんになっている。 その中でメッセージ性はきちんとあるし読んでいて面白い。
0投稿日: 2024.11.04
powered by ブクログ映画業界とYouTube、それぞれが抱える今の時代ならではの難しさに直面し、お互いを意識せざるを得ない2人の青年が時に藻掻き、焦燥感に駆られ、葛藤していく。 千紗という登場人物が導き出した答えがとても好きだった。 誰もが発信者となれるこの時代に、「本物」とは何かを考えさせられる一冊。
1投稿日: 2024.10.30
powered by ブクログエンジニア系の仕事の人が当たるであろう葛藤みたいなものが凄く上手く描かれていて、その世界にいなくても共感できた。 現代の生きづらさみたいな時代の流れも触れられていてよかった。 朝井リョウさんの作品は考えさせられるものが多いなあ
1投稿日: 2024.10.27
powered by ブクログ思っていたけど言語化できなかったむずがゆい自分の考えをキッパリと表してくれた。 何回も読み直して深く理解したい。
0投稿日: 2024.10.26
powered by ブクログ映画監督を目指す尚吾とYouTubeで活躍するこう、対照的な2人がそれぞれの置かれた環境で悩みながらも自分が大切にしてるものは何なのか考えを深めていく 時代が変化する度に驚くけど、いつの間にかそれに順応して当たり前に生きてる私。 この本を読んで、日々ぼーっと生きてちゃだめだ、感性を磨いていけるようにやれることをやっていきたいと思えた
2投稿日: 2024.10.23
powered by ブクログ数年前にオードリーのオールナイトニッポンで若林さんが南原さんと『スター』の貸し借りをしたと聴き、読んでみました。 朝井リョウさんの小説はいつも何かしらのテーマが掲げられ、主人公はその壁にぶつかり、悩んで苦しんで考え抜いて最後結論のようなものを提示してくれます。 その過程に圧倒されている間に読み終えるというのがいつもの朝井リョウさんの読書パターンです。 小説なのに付箋をたくさん貼って、後から自分自身でそのテーマについて考えるようにしています。 なので、他の作家さんの小説と異なり、脳のカロリーを消耗させながら読み進めていくので疲れてしまいます。 でも、イヤな疲れ方ではないし、何より文章が整っていてとても読みやすいです。 物の価値や質はどう評価されるべきか、創る側も消費する側もSNS最盛期の現代においてどう向き合うべきか登場人物とともに一緒に考えさせられる。 最後の尚吾の結論もよくて、『スター』も『正欲』と共に、令和の時代に読まれ継がれていってほしい作品でした。
2投稿日: 2024.10.20
powered by ブクログ朝井リョウさんのインタビューに 本著を書いたキッカケが書いてあった。 「どの家庭にも届く“新聞”に 小説を連載することは 子どものころからの夢でしたが、 いざ現実になったとき、新聞の影響力は 小さくなっていました。 そんな認識のズレを行き来するうち 削り出てきた文章たちです。」 朝日新聞出版から出してるのに 影響力小さいって言っちゃっていいのか笑 朝井リョウさんは 人の妬みや焦り、誰もが一度は抱いたことがあるようなモヤモヤとした違和感を言語化するのが本当にうまくて、面白い。 どんどん読んでしまう。 本作は主人公たちがちょっと考え過ぎかな?と思う面もあったけれど 「答えのないことを考えていられる時間って、本当に贅沢なんだよ」 と主人公のひとり尚吾の仕事仲間である浅沼が ちゃんと答えてくれていた。 あと浅沼のセリフ これもよかった。 「あっちにもこっちにも目配りしてるみたいな話が多くない?全方向に対して"大丈夫ですよーあなたの生きづらさもナデナデしてあげますよー良い方向に変わる答えが描かれてますよー"みたいな作品ばっかだよね」 本当に最近特にそれ感じます。 ここは別に単に男同士の友情で良くない?てところに「LGBT入れてますよー質が良いドラマでしょー?」ていう感じのドラマがありました。 しかしタイトル「スター」はなんか違う気がする。 もっと良いタイトルある気がするけれど。 新作が出たようなので楽しみだー。
14投稿日: 2024.10.16
powered by ブクログ生き急いだ今の自分を投影した作品でした。人の悪いとこを見るより自分の言いとこを言える人間でありたい。
0投稿日: 2024.10.11
powered by ブクログ正欲以来の朝井リョウさんの本! おもしろかった、、 自分が世界に差し出すものは、それが誰に届いても恥じることのないものでありたい という部分が、今後社会に出て今よりもっと自分が発信する情報が多くなっていく中で、自分自身の指針であり戒めになる言葉になった。
0投稿日: 2024.10.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
朝井リョウさんの文章表現がとても繊細。 尚吾と紘の二人の葛藤が、歳を重ねた自分にとってはとてもキラキラと輝かしく思え、同時に羨ましく思えた。 浅沼と尚吾のやりとりのなかでの、浅沼の作品に関しての見解になるほど、と共感。
2投稿日: 2024.09.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
朝井リョウの長編はたぶん初めて読んだんだけど、比喩表現の引き出しに脱帽。最近まで東野圭吾のあっさりした文体を読んでいたのでまずそこに驚いた。口をつぐむの一言で済む言葉も、理性のリボンをきゅっと締めるとか、言い回しがとにかくおしゃれ。どこの場面でもとにかく多用されてるから、若干胸やけするか?と思ったけど、そんなことなくめっちゃすらすら読めた。プロってすげーー。 映画とYouTube 有料で腰を据えてみる動画と、無料で片手間で見る動画 クオリティを重視するのと、質より量の世界 どちらもいいところもあるし悪いところもあるね スターというタイトルの意味を語るシーンが特にすき。
2投稿日: 2024.08.29
powered by ブクログ大学時代に同じサークルで映像に携っていた2人。 1人は自分が伝えたいことと品質にとことんこだわった映画を撮りたいという思い。もう1人は自分が撮りたいと心動かされるものを徹底して撮影して、映像にしたいという思い。 その思いの違いから、大学卒業後はそれぞれ別の方向から、映像に携わることになる。 それでも、時代の流れや価値観に揺られ、自分が本当に求めているものと世間から囃し立てられるものとの間のバランスに葛藤していくことは共通している。 その業界の頂点に立つくらいその分野を極めたとしても、その業界のピラミッドのマスすべて(=世間が求める価値観すべて)を満たせるわけではない。 個人が発信できる現在では、特定の層をターゲットにした作品も増えつつあるが、その中で層を「越境」できる可能性もある。そんな作品の可能性を信じつつ、自分の思いをとことんつきつめた作品を少数にたいしてからでも発信できる。 これはクリエイターと呼ばれる業界に限らず、自分の趣味・関心にも当てはまることだと思う。
2投稿日: 2024.08.26
powered by ブクログPodcast奇奇怪怪でおすすめされているのを聞いて手に取った。 YouTubeの世界と映画業界というすごく時勢に合った内容。最後は主人公が普遍的な気づきを得て、前向きに世界を捉えられるようになる。 大学生から社会人になって、社会・世界に対する向き合い方を考え続けていく様子がとてもおもしろかった!
0投稿日: 2024.08.19
powered by ブクログものごとの価値のお話。 朝井さんはみんなが感じているであろう、もやもやしたことを言語化するのが上手で、頭がスッキリ整理された感じでした。 あとメインキャラがみんなカッコよかった。 タイパが重視される時代ですけど、迷いながらも信念をもってものごとに真摯に向き合って研鑽を重ねている人や、その人の作品に私は惹かれます。 メインキャラはみんなそんな印象でした。 私もそんなカッコいい人になれたらなあ。(願望) 年始に浅沼さんと尚吾が話す場面が印象的でした。最高潮は浅沼さんが「ねえ」から始まって、「〜私にも聞かせてよ〜聞いてみたい」の件。ちょっと泣きそうになりました。浅沼さんのままならなさ。この人めちゃくちゃ努力したんだろうな。努力しまくった上でどうにも歯が立たなくて…で方向転換したけど…やっぱ心の底では諦めきれてはいない。 という浅沼さんの思いが、ばっと頭に広がりました。浅沼さんカッコよくてキュート。
3投稿日: 2024.08.18
powered by ブクログ刺さる箇所が随所にあった。 読みながら好きな本だなぁと思いながら読んでた。 文学的にと言うより、自分の人生に問いかけてくる感覚が読んでいてゾクゾクした。 現代の人々は何かと待つことが苦手になってると指摘されたところ。 比べられないものを比べてしまう状況があること。大小と見るか、横並びに見るか。 白黒つけがちな今日この頃、というより白で塗り潰そうとする風潮があるけれど、グレーのままで漂わせることを辞めたくないな〜。全部白だと多様性の一言で言いくるめるのも好きじゃない。 比べられないものを無理に比べて批判したり首を絞めたりしないよう心に留めておきたい。 自分自身について見つめ直すことのできる相棒みたいな本 個人的に千紗と尚吾が最後に手を繋ぐ描写の表現の仕方にビビビと鳥肌がたった
0投稿日: 2024.08.17
powered by ブクログ3.25 読みやすさと今にマッチしてる、本読むの苦手な人は朝井リョウさんがオススメ! 立原と自分がちょっと似てる所があってイイモノを作ればいい、あんなものは邪道だという気持ちが凄くわかる そんな事言ってたら前に進めないし、対応していかないと使ってもらえない まだ若いから間に合うと思うけどアラフォーおじさんは今から始めてイケるだろうか? やらないよりやった方がイイ
0投稿日: 2024.08.15
powered by ブクログ大学の映画サークルで出会った二人の若者が、昔ながらの映画監督とYouTubeの動画製作を、それぞれの道を選んで進んでいく。 自分的には両方いつも楽しく見てるんですけど、職業と言うか人生というか、突き詰めて考えるとなかなか難しい。
28投稿日: 2024.08.12
powered by ブクログ『私は、誰かがしてることの悪いところよりも、自分がしてることの良いところを言えるようにしておこうかなって、思う』 主人公の彼女、千紗が魅力的だった。 後輩の泉に、結局薄い人間だろ、そうであってくれよ!と願ってしまう人間性です。わたしも。 プライドは捨てても、誇りを持てるような人生を過ごしたいね。
4投稿日: 2024.08.10
powered by ブクログ「映画」と「YouTube」。 映像や発信という点での違い、 考えたことなかったなぁ。 どっちがいいんだろうか、価値があるんだろうか 、という問いの先には!!! 朝井さんの作品は、 読後必ず、自分の世界が少し変わってる。 だから本当におもしろいです。 現代社会をテーマに取り上げて、 深く考えさせてくれるのもなんだか身近で嬉しい。 「正欲」もそうだったけど、 メモしたい!という文章がありすぎて大変!笑笑
14投稿日: 2024.08.08
powered by ブクログ本作は大学生活中に作成した映画が評価されたことをきっかけに、尊敬する監督の元で働く尚吾と撮りたいと思えるものを撮りにYouTube活動を始める絋の二本柱で構成されている作品である。 読んでいて感じたテーマは「変動する世界と変動しない個」。 世の中のコンテンツはどんどんと細分化され、その細分化された世界を作る資格も見る資格も全員に与えられている。 そんな世界の中で尚吾は「伝統的な映像界」の世界に属し、それと隣り合っていたYouTube、つまり「素人でも発信できる映像界」を目の敵にしていた。 結果、尚吾は自分の属さない世界を侵さないと同時に、自分の世界も侵させないという結論に至る。 この尚吾の考えは非常に有効だと思う。 細分化が続く世界に加えて多様性という言葉が頭角を表し、さらに「個」が重要視される世界になってきている。そんな世界で初期の尚吾のように噛み付いていたら、間違いなく噛み付いた側が非難される。 そんな世界だからこそ一番の対処は不干渉だと思う。でもそれだけだと細分化された世界にすり潰されてしまうから、自分の考えを持ち、自分の世界を守る必要がある。 だから私は朝井リョウの作品が好きだ。 作中に浅沼の下記のようなセリフがあった。 「鐘ヶ江監督の映画を好きになったのって、答えじゃなくて問いをくれるからなのね」 これがまさに朝井リョウの作品だと思う。 話題になった『正欲』も答えは示されず問いかけを残したまま物語は幕を閉じる。だからこそ良いのだ。 余談だけど 「チーズの風味がするそれは、風味がするというだけで、本当は何で味付けされているのか良くわからない。」 散々作中で言われてた「ないものをあるように見せる」を言い換えしたこの文章好き
5投稿日: 2024.08.07
powered by ブクログ10年前の高校生くらいの時、YouTuberをやってる人たちは非計画的で現実逃避してる人たちだと思ってた。 けど時代も変わり、歳を重ねるにつれて考え方も変わって、どんな生き方もどんな考え方も否定されるべきではないのかもと思えるようになった。 自分の意見を主張するということは自分と反対の考えを持つ人の意見を否定することにもなり得る。 だからこそ、もはや全員に自分の意見を主張する必要はないし、そうするべきではないのかもしれない。 より多くの人たちに影響を与えられて、共感を得ることができればそれはそれですごく嬉しいと思う。 けどそれだけを目指して、自分の考えを広めることだけに盲目的にならずとも、その考えや活動、好みが誰かにとっていいものであれば自ずと伝播していくし、受け入れられていくものだと思う。 セールスからマーケティングがより重要視されてきているのもそういった考えからではないかと思う。 「越境しますよね、素晴らしいものは」 素晴らしいものがいつまでも誰かに受け入れられ続ける世の中が続きますように。
1投稿日: 2024.08.06
powered by ブクログ大学時代に一緒に賞を取った二人が全く別の道を歩みながら嫉妬し自分の道を疑問視しながら最後にまた交差する。
4投稿日: 2024.08.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
映画を撮るにしても料理人を目指すにしても、一流を目指せば、一流にさえなれば、そのジャンル全てをカバーできると思い込んできたが、今の時代のニーズはもっと細分化されていて、そのニーズに応えられさえすれば必ずしも一流である必要はない、変わりゆくたくさんのニーズに形を変えて柔軟に答えられることこそが今の時代成功する。それでも自分の感性は持ち続け表現し続けることが大事。人生のバイブルのような本だった。
2投稿日: 2024.08.04
powered by ブクログ大学時代に映画業界での仕事に憧れ、社会に出た二人。一人は憧れの映画監督のいる事務所で「弟子入り」、猛烈に働きながら、旧来の「良き映画」を作ろうと奮闘しつつ、時代の変化に苦悶する。もう一方は流行りのYoutube動画に携わる仕事で人気を得るも、「作品への拘り」がないがしろにされ、「ここは違うのでは」と気付きはじめ、会社を辞めて次のステップへと進む。 現代の「キラキラ」したSNSビジネスの「空虚さ」や、これまで「名誉、日本を代表とする国民的作品」を生み出してきた映画監督が直面する映画コンテンツのビジネス優位性低下など、社会問題がメインテーマともいえる。 小説としてのストーリーも面白いが、20代の「仕事観」の純粋さや不安定さ、繊細な感情が見事に錨鎖され、自分事のように読み進めることができた。 結局、時代がどれだけ進化して「個人が発信したものがバズる」社会においても、「理想と現実」とどう折り合いを付けるか、どれだけ真正面から向き合うのか、という人生の問いは変わらないのかもしれない。
5投稿日: 2024.08.04
powered by ブクログお得意の人間の裏の顔であったりと相変わらずの着眼点と表現方法で訴えかけられる作品です。ここ最近の著者の作品の中でも、ちょっと回りくどいかなと感じてしまいましたが、『価値観』そして『自己欲』の違いといったひた隠しにしたい人間味を垣間見えるのが著者作品の良い所。目的は同じであってもやり方が違ったり、そもそも目指すものが違ったりというのはよくあること。時代とともに変化する環境に並走できる人、追いつこうとする人、そして自分を変えない人。十人十色ではあるものの、価値観の押し付けは時代にそぐわないんですよね。
81投稿日: 2024.08.02
powered by ブクログ著者の文章は決して美しくないけれど、書きたいことが明確で、作品に対する使命感を持っているように感じた。 自分が生きている世界に対する違和感や、常に意識していないとすぐ飲み込まれてしまう感覚をここまで言語化してくれる小説はなかなかないと思う。こういう小説は、手元に置いて戒めや自分を見失わないためのお守りにしたくなる。
7投稿日: 2024.07.13
powered by ブクログ途中まではイマイチ面白くないなと思ってたけど、後半になるにつれ絋と尚吾がどこに落ち着くのか、気持ちにどう折り合いをつけていくのが気になり面白く読めた。 あるものがないように、ないものがあるように。 どっちがどうという話ではないんだな。 深い話だった。 細部に神は宿るがよかった、。
10投稿日: 2024.07.09
powered by ブクログ何が正しいのか、どれか良いのか、自分が大切にすることを2人の日常の物語から考えさせてるれる。 そんな細部にこだわっても誰も気づかない、という揺らぎに負けないこと。 差し出す相手を騙したり軽んじるような気持ちで、ものづくりに臨まないこと。 という考えは好きだし、別の角度からの考えも出てきてその都度読んでいる自分でも葛藤が生まれるから面白い。
0投稿日: 2024.07.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
前回読んだ作品にYouTubeへの投稿と規制が登場したので、作者詳しいのかと思ったが 今作はまた違った面で登場。 主人公二人の異なる道も、関わる登場人物達も どの主張もなるほどなぁ、と思う。 感じていてもどう表現したらよいか曖昧な気持ちを、作家という人たちは文字通り言葉として表現できるので凄い。 どの人達に主張も納得するし、朝井氏にかかれば ボクシングジム経営陣目線があれば、またそれにも共感するのだろうなぁ。。 恋人と別れるのでは、という展開は容易に想像できたので、良い意味で裏切られた。彼女の考え方もまた目から鱗。スターの見解についても。 ラスト、これで終わり??という一文。 思わずページがくっついていないか確認してしまった。 スマホが気になって映画館での2時間に耐えられないという話を聞くが スマホのある前と後の生活と、サービスの種類はまるで変ったと確かに思う。 ラインは便利だけれど、メールのように残しておいて読み返すことの不便さと、何よりすぐにでも反応せねばと思って、じっくり文面を考えることが減ったように思う。 PVや映画予告をスマホで好きなタイミングで確認できることで反対に映画を観に行くこともあるし。 映画、テレビ、配信、とそれぞれの企画者達がお互いと自分の領域などについてどう思っているのか気になった。 「多様性って…同時代に色んな人がいて色んな作品があること、じゃん。…”状態”が多様性なわけで…」 「なんか今って、あっちもこっちも色んな方向に目配りしてるみたいな話が多くない?」 「私は答えより問が欲しい。…グレーを描けるのがフィクションじゃん。だけど、…答えをもっている人間に思われようとしてる気がする。それって逆に、こっちからすると何かが足りない感じがする。」 「マイノリティの配慮があるから素晴らしい作品、みたいな評とかあるけどさ、…作品の中身じゃなくて”状態”なわけじゃん。製作者が色々と配慮してるっていう状態。そこを作品の評価として第一に挙げるっていうのは、私、モヤモヤするんだよね」 「確かに、誰でもどんなことでも発信できるようになったのはすごいことだと思うよ。…でもそれって、誰からもどんなことも受信しちゃうってことなんだよね。…受信するときに気を付けるべきことって全然学べない。」 「…体格良いから絶対スポーツやったほうがいいのに…この子、人と競ったりするの、精神的に向いてないんだなって…逆に、体格的には恵まれてないけど…でもやっぱり体格的なハンデがあるから一流にはなれない、みたいな…心技体っていうの?外見的に向いてるものと内面的に向いてるものが一致するってすごく幸福なことなんだなーとか思うわけ」 「心がね、人によって評価の基準が変わる世界でまっすぐ立っていられるほど強くなかったんだよね。」 浅沼氏はエッセイやコラムにも向いているのでは。。 彼女目線のものの考え方をもっと知りたい。 『LINEのような手軽さで…その代わり、返信が遅いということに対する罪の重さは何倍にも膨れ上がった感覚がある。利便性の代わりに、これまであった余白がなくなっというか、少しの言い訳も許されないような圧迫感が生まれたことも事実だ。』 昔は折りたたみのガラケーとか通知画面が光ったりしたけれど、スマホって点滅ライト本当に小さくて気づかないので、それって必要ないほど、皆ずっと手元に置いているのだろうか。。 「いつでもどこでも作品を楽しめる環境がもっと浸透すれば、受け手が作品を欲する頻度は変わる。そうすると、作品がこの世界を循環する速度が上がる。だけど、だからといって、一つ一つの作品を完成させる速度も上げられるわけじゃない。」 「作り出す側にも…人がいて、心がある。そのことを忘れて、受け手の変化に順応することを優先していたら、全員で速度を上げ続ける波に吞み込まれることになる。」 「待つ。ただそれだけのことが、僕たちは、どんどん下手になっている。」 「最終的に自分を待てなくなる。すぐに評価されない自分自身を信じてあげられなくなって、作品の中身以外のところで認められようとし始める。」 中二病とか、承認欲求とか、逆に叶えられる場はある今だからこそ、井の中の蛙状態はしんどいかも。。 世の中疲弊していて、本当にSFのような無味乾燥な未来を感じつつもある。。 『物理的な距離の近さは、日々が忙しい社会人であるほど、心の近さに直結する。』 「星といえばあの形って感じだけどさ、あのマークの形をした星なんて、空のどこにもないのね。でも、星を表す形はあのマークしかないから、…受け入れてきた。…本当はもっと色んな形があることに気づいてるけど、でもまああれしかないしって。で、…きれいに描くってことを、ずっと頑張ってきた… でももう、自分が見えた星の形を描いて、これが星ですって言っていく時代になったんだよね。…昔からあるあの星形を、これが星なんだって言い聞かせなくてもよくなった。…批判されまくったとしても、私の…星もそれですっていう人と出会えれば、そこが小さな空間になる。…でも、あの星形をきれいに描くことを頑張ってきた時間も、絶対に無駄じゃないの。…練習しながら身に着けた技術は何を描く時でも役に立つはず。」 彼女が主人公に対して一緒だ、と思ったのはどんな出来事だったのだろう。 「」
0投稿日: 2024.07.03
powered by ブクログめっちゃよかった! 浅沼さん好き 千紗が本当にいい人 ずっと感じてきていたことを文章化されている感じ 作品を自分で言えば営業活動に変えて真摯に取り組まないとね⁈とも思った 結局全ては受けて側がどう感じるか、と私は思っているので(違う視点とは思うが、偽善というのは本来ないと思っている)、そういう意味で最後の千紗が話してるところはずっと首を縦に振っていた それを受けて、なお、尚吾が"良いものは(受け手が小さく細分化されたとしてもそのカテゴリーを)越境していくと信じていきたい"と言ったところ、自分の信念と環境がもたらした成長が合わさっていてかっこよかった 好きな場面は浅沼さんと尚吾、鐘ヶ江監督と尚吾、千紗と尚吾 かな 絋を通して見る要がかっこよすぎる
0投稿日: 2024.07.01
powered by ブクログ何かに取り組む時、自分がやりたいことをやるのか、そのやっている"状態"という肩書きが欲しいのかということを突きつけられている感覚にあった。自分は人からどう見られるか、どういう自分でいたいかを考えてきて、いろんなことを口だけで少しだけしかやらず、途中辞めしてきた人間でそういったことを言語化できずにモヤモヤしたところを貫かれた。 主人公である二人がやっていることが、絶対に正しく自信があるからこそ、質や内容よりも状態を求めるものに批判的で受け入れ難い心情もすごく共感できた。しかし、いろいろな欲求がある現代ではなにが古い感覚でなにが正しいものなのかの境界線が見えづらくなっている。 自分の生活で取り組むこと取り組もうとしていることは絶対に自信を持ちたいが、大は小を兼ねるの大ではないということを心に留めておきたい 最後に泉を否定する二人に共感してしまった自分を彼女の(なまえわすれた、)が新しい視点で語ってくれたことがアサイリョウが言いたかったことなのかなと思った
1投稿日: 2024.06.30
powered by ブクログまだ読み終わってないけど。231頁からの眼科医との下りが好き。 読み終わって感じるのは、いつの時代も、何らかの時代の変わり目にってことで、その時々で、どう考え方とか見方を馴らして、サバイブしてくっていうか、居心地良くしてくか、ってだけで。情報処理としょうかのスピードが、格段に増したこの時代だから、顕著に見えてるだけ?そんな無理せんでも、大事にしたい感覚は、自分の中に残して大事にしておけばいいじゃん、ってこと。なんか心が救われた気もする
0投稿日: 2024.06.29
powered by ブクログ時代の変化によって、人それぞれの価値のあるモノを追いかけることが出来るようになった。そこには、そのモノが持つ"本質的な価値"を蔑ろにしてしまっている問題があるが、そもそも多種多様な価値を見い出せるようになってきたからこそ、"本質的な価値"があやふやになってきている。ある意味"多様性"ともいえる。
5投稿日: 2024.06.28
powered by ブクログ俺は今しか知らないけれど、今日には本物なんてないように思う。自分に確かな審美眼がないことはわかっている。それでも簡単に消費されるような代物は認めたくない。ただ、読み進めていくうち、取るに足りない存在であるのに、頭でっかちになっている自分に気がついた。流行を受け入れつつもブレない軸を持つこと。特に前者が大切なのかもしれないと思った。スターになれなかった俺は、中途半端に尖った角を削ることから始めないとな。
0投稿日: 2024.06.28
