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貴族とは何か―ノブレス・オブリージュの光と影―(新潮選書)
貴族とは何か―ノブレス・オブリージュの光と影―(新潮選書)
君塚直隆/新潮社
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総合評価

4件)
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    ギリシャ、ローマ帝国、中世ヨーロッパ、中国、そして日本の貴族の歴史について解説。特に、世界で唯一貴族院の残るイギリスについては、産業構造や戦争の在り方が大きく変わる時代を、貴族たちが強かに生き抜いた姿が描かれる。 フランスやドイツで貴族が衰亡する中、イギリスでは貴族政治が徐々に衰退しながらも、最後まで残り続けたが、トドメを刺したのは第一次世界大戦であった。貴族の「高貴なるものの義務(ノブレス・オブリージュ)」の筆頭として軍役があったが、国民全てが動員される総力戦を経た結果、貴族政治は大衆民主主義へと移行したのである。 最終章では、洋の東西を問わず貴族には特権と引き換えに「徳」が求められたが、特権的な貴族がいなくなった現在では、ひとりひとりの人間が「徳」を重んじ、精神的な「貴族」となることを求めてしめくくっている。

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    投稿日: 2025.01.05
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    道徳が大切だと再認識させられた。 イギリスの貴族の歴史や日本のそれを振り返り、貴族による政治から民主主義政治への移り変わりによって得られたもの・失われたものは何か?政治に関与する権利を得た民衆が持たねばならぬ矜持とは?を考える機会を与えてもらった。

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    投稿日: 2024.11.17
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    利他という言葉をよく耳にするようになったのはコロナが始まった頃だったか…行き詰った資本主義を打開するキーワードとして語られているのか、閉塞感のある時代の生きにくさを乗り越える思想として語られているのか、使われている理由は様々だと思いますが、99%クラブに表出しているような富の偏在をつくった新自由主義のエンジン、利己主義に対する違和感として多用されているように思われます。ただ21世紀になって利他主義が突然出てきた訳ではなく、その源流のひとつにノブレス・オブリージュがあったことを、さらにはその水源に古代ギリシャ、ローマ、中国における「徳」という価値に立脚する政治があったことを、そしてそれを支える社会階層としての貴族をフューチャーするユニークな史観です。貴族の興亡による世界史、知っている話も深い話に変わっていきます。そういえばコロナで延期されたオリンピックも今ではすっかり利権の塊イメージですが、クーベルタン男爵の想いは大いなるボランティアによる大会でした。そこにはヨーロッパの貴族たちのコミュニティが大きく関与していたと聞きます。西欧の貴族社会の流れを細かく紐解きながら、しかしこの本を成立させている著者の問題意識は最終章の『現代日本に必要な「貴族」とは?』に濃縮されている思います。ノブレス・オブリージュからナショナル・オブリージュへ。ここに来て、利他主義、ケアの思想、ESG、SDG's、ソーシャルテーマ、公共性、…などの世界の模索の意味に繋がってくると感じました。なにかこれからの社会を論ずる時の重要な補助線を得たような気になりました。

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    投稿日: 2023.11.24
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    ノブレス・オブリージェとは「高貴なるものの責務」のことである。 本書は、世界中の貴族の歴史を解き明かしつつ、貴族が果たしてきた責務と最近のにわか貴族が公共の福祉よりも自身の快楽に重きをおく現状を痛烈に批判している。

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    投稿日: 2023.05.30