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与太郎侍 江戸に花咲く
与太郎侍 江戸に花咲く
井川香四郎/集英社
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総合評価

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    これまた、2年ぶりに読むシリーズ2作目。というか、この『江戸に花咲く』以降刊行されていないのでひょっとしたら事実上の完結なのかもしれないが。 前作と同じく4話収録しているが、前は前後編が二組ずつだったのに対してこちらは独立したお話が4つなので巻き起こる事件のバラエティは豊か。 いまでも閲覧可能である、集英社の『青春と読書』の公式HPに《井川香四郎記念寄稿》(https://seidoku.shueisha.co.jp/2209/read02.html)という文章があるが、そのなかに「舞台となる江戸時代に、現実に生きていた人間を、真剣に見つめる眼差しをきちんと注ぎ込んでいます。あくまでも、本当にいそうな「ドジで、間抜けで、悲しいくらいお人好しな、あるいは小ずるい、さもしい、いい加減で適当で、はたまたクソ真面目な」様々な人間のささやかな“本性”を笑い飛ばす物語です。人間てよくよく観察すると、説明の出来ないおかしみに溢れています。矛盾や不条理、不合理で一杯です。まさに人間喜劇。」という一節があり、この理念こそがこの『与太郎侍』というシリーズに流れる血潮な訳でありまして、前作はどことなくコミカルな雰囲気が強くて与太郎ちゃんも伸び伸びと動き回っておりましたが、対して本作はもうちょっとだけ人間のリアルな暗黒面を濃いめにしたような、ダークとまでは言わないけどちょっぴりだけビターでピリッとした味わい。 《第一話 子返し天神》は江戸の世に多かったという「人買い」(p73)や「捨て子」(p74)を題材にした筋書き。上野広小路の蕎麦屋の夫婦〈権平〉と〈おちか〉は一見粗野で粗暴に見えるが、自分の店のことはきちんとしていて子どもたちにも商売人として厳しく当たるがゆえの態度については賛否分かれるところだろう。好編。 《第四話 勘違いだらけ》は本シリーズの集大成みたいな内容。疾走感あふれる冒頭から事件のあらましが明らかになるにつれて尻上がりに面白くなっていく。最後の最後までみーんな勘違い。ラスト〈八十助〉のくだりでほっとひと息。 「実は江戸府内は、走ることは飛脚以外、原則として禁止されている。」(p230)という知識は改めてちゃんと知った。飛脚ってすごくない? おおむね良かったんだけども、肝心な与太郎ちゃんの影がものすごく薄いというかメインは〈銀平〉と言っても過言はないのではないだろうか。 気長に3巻を待ちましょう。 1刷 2025.8.26

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    投稿日: 2025.08.26