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商う狼―江戸商人 杉本茂十郎―(新潮文庫)
商う狼―江戸商人 杉本茂十郎―(新潮文庫)
永井紗耶子/新潮社
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総合評価

10件)
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    このレビューはネタバレを含みます。

    目的の為には手段を問わない、テロリスト・革命家等々、皆正義を信じて行動するが、病むにやまれぬ思いが極端な手段を取るのであろう、必死に抗う本人とは違って傍目で見ている者には合理的な解釈を刷る事が難しい 衰退する菱垣廻船問屋の窮状を株仲間創立による流通コントロールが産みだす冥加金をつかい、政治の不備を商いが補う心意気の主人公、永代橋崩落や薩摩藩・中野石翁らによる金の力の腐敗という時代の景色を独りの男の生きざまに結びつけて描いている

    0
    投稿日: 2025.09.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    4作目の永井紗耶子さんの本。 江戸商人・経済をテーマにしたもので、私にとっては苦手な分野です。 実際、今までに読んだ永井さんの本と比べると、あまり私には刺さらないかなーと思いつつ、とりあえず読破を目指して読み進めていました。 中盤、江戸の金の流れを握った茂十郎と、周囲との軋轢が目立ち始めた辺りから、引き込まれました。 「金は刀より強い」と、清濁併せ呑んで、江戸の経済の在り方にメスをいれ改革を進める茂十郎。その原動力が、天明の大飢饉や、妻子を失った永代橋の崩落事故というのが、人情を感じます。 強い信念のもと突き進む茂十郎の姿は爽快で、心に残りました。 その彼の出した結論が「葵の御紋は金より強い」で、お上を見限った末の彼の末路が辛いです。 弥三郎と茂十郎の友情もいいですね。 結局ラストはまたもや泣かされました。 私利私欲に塗れたお上には、苛立ちを覚えました。 政が崩壊して真っ先に苦しむのは民ですね。 映像化されてもいいのになと思う良作でした。

    0
    投稿日: 2025.09.11
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    文化・文政年間に十組問屋頭取として八面六臂の活躍を魅せた実在の人物 杉本茂十郎に取材した、江戸商人活劇。士農工商の身分制度では最下に置かれ、蔑まれながらも経済の実権を握った商人達の、「天下に資する」という熱い想いと、徳川封建制度のなかで翻弄される姿を描いて秀逸。

    10
    投稿日: 2025.07.31
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    このレビューはネタバレを含みます。

    江戸商人、杉本茂十郎。兄と慕う弥三郎との関係は非常によいですね。茂十郎は「毛充狼」などと凶暴な獣に例えられていたが、本当の茂十郎は全くの別人。江戸商人として大きな影響を与えた人物。生き様がかっこよいです。 茂十郎の言葉「いざとなればね、金は刀よりも強いんですよ」 いざとなれば金は刀よりも遥かに強い。金は人を惑わし狂わせ、時に命すら奪う。なんか、説得力ありますよね。 また読み直したい作品です。

    4
    投稿日: 2024.09.16
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    既に出来上がっている仕組みを変えることは容易ではない。永らくその仕組の中で生きていると、そもそも「変えられる」という発想にすら立てないからだ。起きていることの本質を見極める眼と、根本から崩して造り直すことに挑める胆力。強い信念を貫き突き進むことができる改革者は、結果的に多くの敵を一身に引き受けることとなり、短命で散る運命なのか。 物語が弥三郎の視点から語られることで、茂兵衛・茂十郎の凝縮した生を共に生ききる感覚が薄まってしまったのは残念。むしろ弥三郎が主人公なのだと思えば、気持ちが重なる部分も多く、自身の想いに真っ直ぐに「できること」をしていくことで、歴史の転換点を支え見届ける一つの力にもなり得るのだと、心が熱くなった。

    2
    投稿日: 2024.05.22
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    木挽町のあだ討ち文庫化待ち、図書館にある永井さん全部読みます、4作目。 ロカさんにお勧めいただいた 江戸商人・杉本茂十郎。江戸の経済の大きな流れを作り上げた一商人の活躍です。 残してある山川の日本史の教科書には、取り上げられていません。私も全く知らない人物伝。 農家に生まれた茂十郎は、江戸飛脚問屋の養子となり、十組問屋の紛争解決に助力する。そんな中、永代橋の陥落事故で息子を失う。そこから 江戸の橋の堅実な建設運営を目指していく。 莫大な費用の捻出のため数々の名策を立てて江戸中期にはびこる慣例を崩していく。 菱垣廻船・飛脚・十組問屋と江戸の流通の中心にいて 狼と例えられるほど、強引なところはあったが、大きな経済の流れを見据えていた。 最後は 武士の世界に沈められた。 今まで読んだ作品より時代小説感が充実していたと思う。

    65
    投稿日: 2024.02.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    良書。 作者、映画やドラマの脚本が書けそう。上手い。 江戸時代って、三方よしの人才が数多くいた。今の政治家、実業家に見習ってほしい。

    0
    投稿日: 2024.02.17
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     江戸の商業に革命を起こし途上で消えた男、杉本茂十郎。想像以上に面白く、あっという間に読み終えてしまった。私自身、ものを作らない業界で働いている関係で、商業・金融の果たす「繋ぎ」の価値について考えさせられた。  栄光と没落、後半は陰ってばかりなのにどこか爽やかなのが印象的。茂十郎が残した遺産は多々あれど、その後の商業界は狐狸が跋扈し混沌としていくという点が幕府への皮肉としてそう思わせるのかもしれない。初めて作者だったが、人となりや心情を描くのが非常に上手だと感じた。一方で彼女らしさを感じられなかったので、他の作品で見つけられることを期待したい。

    1
    投稿日: 2023.12.02
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    将軍家斉の時代に生きた商人、杉本茂十郎の半生。すぐそばで見ていた堤弥三郎の目線から語られる。 型破りな茂十郎に、おかたい弥三郎はいつしか魅力を感じ、彼の為すことがどのような結果に繋がるのか、見届けずにはおれないようになっていく。ただ、その根底にあるのは妻子の死――もしかしたら避けられたかもしれない――という大きな悲しみと、それを無にしないという想い。全くの私利私欲とは違う原動力で突き進んでいるから、時折いさめつつも弥三郎は彼の肩をもってしまうのだろう。 親子とも友情とも言えそうな2人のやり取りは常に真剣だ。 茂十郎は弥三郎の前で、商人という存在や金の流れについて幾度となく自分の考えを熱く語る。お上というものが大きすぎてどうにもならないと感じながら、なお諦めず策を繰り出そうとする姿に、現代をも思う。 「商人が商いをして金が正しく世の中を回っていれば、暮らし向きは豊かになり、商人は天下に資する役目を担う」 「金をどう使うか。そこを間違えればまた人が死ぬ。――どうして金を無為に使うことしかできないお上を敬うことが出来るんです。」 出る杭は打たれろとばかりに"領分を弁えろ"と諭され続け、ついには江戸を追われた茂十郎。もし、ずっと江戸市中で力をふるっていたら――江戸の経済状況は違っていたかも――老境の弥三郎がそう述懐するところは、お上という絶対権力への諦めもにじみ出ていて、ほろ苦い。

    2
    投稿日: 2023.02.22
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    202210/序盤、自分には読みにくいかなと思いつつ気づいたら一気に読み進めてた!茂十郎をはじめ登場人物達の人となりや言動描写もうまくて入り込んで楽しめた。現代に通じるところも多々あり、見事さと哀しさに圧倒された。

    1
    投稿日: 2022.12.14