
総合評価
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powered by ブクログお門違いなことを書いてるかもだけど、途中からずっと同じ展開で蛇にピアスのような疾走感が恋しくなった。 昨今、家族には様々な形があるけれど志絵と蒼葉、理子と元父親この4人の関係性は新しすぎる。 私が人を愛すときは その人と一生添い遂げ、 共に墓に入ることを誓うほど その人しか見えなくなってしまうので、志絵が 1人だけを愛せず、不倫を繰り返してしまう心理が ずっと謎だったし、結局わからなかった。 親が何度も離婚と再婚を繰り返していても、 子供である理子があれほど真っ直ぐに育つのは両親からの愛情があるからか、なんなのか。
0投稿日: 2026.01.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
モヤモヤがずっと続いていて、こういう時こそ金原ひとみさんの劇薬みたいな小説を摂取するべきだと思って購入。 とにかくメモが止まらなかった。 なんで私のこと知ってるんだろう、もしかして私の脳内から着想を得て書いた?と思うような文章が多過ぎた。 多分金原さんも経験者なんだろうな。じゃなきゃ書けるわけがない。 不倫が日常に組み込まれていて、忙しい日常の中の「こなすべき予定」になってしまってる感覚とか、 好きなのはあっちだけど決定的なのはこっちと内心冷静に男を比較していたり、 普通の不倫小説なら魅力的な既婚者についのめり込んでしまったみたいな作品が多いけど、金原さんの作品は自分だけじゃなく仲良い友達や仕事関係者にも不倫してる人がいる環境なのが非常にリアル。 金原ひとみさんの作品がどうしてこんなに好きなのかがやっと分かった。出てくる男たちを心底愛おしそうに文章に書くからだ。日常の些細な相手の言動に、つい笑顔が溢れてしまうような文章は、読み終わりたくない、この本にもう少し浸っていたいといつも思う。 そして完璧な男が出てこない。些細な分かり合えなさに落胆しつつ、そんな人間くささや、その人の欠点も含めて愛おしいと思ってるのが文章から滲み出ている。 愛おしい男をチャージすることでしか心の穴を埋められない。常に虚しい感じがして、突然幸せを自ら破壊する。 金原ひとみさんの作品はいつもそうだね。 文庫本が発売されてないし、ハードカバーも沢山の本屋を巡ってやっと買えたくらいだからそんなに売れなかった本なのかもしれないけど、私にとっては衝撃的に好きな本でした。 広辞苑くらい分厚いのに、読み終わりたくない。ずっとこの世界観に浸っていたい。と思いながら1ページ1ページ大切に読み進めていました。 そして物語の最後、あぁこれはこういう本なんだと思った。 主人公はバツ2だし、彼氏との別れ、娘との別居、色々な別れを経験する中で、この幸せがずっと続いてほしいと思いつつ、きっとこれもいつか終わるに違いないとも思っているアンバランスさが、愛おしい日々を、切なく大切なものにさせている。 物語が始まる前のページに 「であるから、私は繰り返し、繰り返しいうが、原子は少々斜に進路を逸れるに違いない。」 と書いてあって、原子?なにこれ?と思ったんですが、物語の中で2回原子の話題が出てくる。 抽象的・概念的・哲学的な話を好む吾郎と、矛盾のこととか考えると疲れるんだよと言い切るシンプル思考の蒼葉。 それぞれと同じ原子の会話をして、真逆の対応となった。 私はとにかく蒼葉がツボでした。単純思考のワンコみたいな男で全てが可愛かった。 ちょっと頼りないけど優しくていい人の直人も好きだったし、ミステリアスすぎて理解できなくてなぜかうまく距離を詰めることもできない行哉を好きになってしまう気持ちも分かりつつ、性的魅力の意味で一番微妙な吾郎に安定感と存在感を感じてしまう気持ちもなんだかすっごく分かってしまった。 一般的に女は恋を上書き保存するって言うけど、金原ひとみさんや私は多分「名前をつけて保存」タイプなんだろうな。 それぞれの人とそれぞれの関係性を築いていて、みんな大切で必要な存在というのが伝わってすごくシンパシーを感じながら読んでしまった。 なんとなくの予想だけど蒼葉とはいつかすれ違って別れて最終的に関係性が残るのは吾郎なんだろうな。直人も行哉も蒼葉も「通過点の男」という匂いがする。
1投稿日: 2026.01.10
powered by ブクログ終わり方が良かったな〜! 時折、YABUNONAKAがチラついた。 序盤はなかなかペースが掴みきれず、噛みしめるように読んでいたけど、徐々に脳の筋トレが進んで、後半はどんどんぐいぐい読んでいけたのが印象的。
0投稿日: 2026.01.10
powered by ブクログたとえ離れてもう会うことがなくなっても、何かしらの形で互いの中に残存し続け影響を与え続ける デクリネゾン=語尾変化、1つの食材を様々な調理法や部位で使い、多様な味や食感、見た目で表現するフランス料理の技法
1投稿日: 2025.12.30
powered by ブクログいつ読み終わったか覚えていないけど 覚えてることがある 小説家の主人公はどこか筆者が自己投影したいるようにもみえるし そう想像することをすかされるような感覚にもなったかも 娘に対しての言葉で 料理がまずいって言わないで、 私は好みじゃないと言って。 好きな人にブスと言われるのと自分のタイプではないと言われるので傷つき方が違うでしょ というところ。 文脈忘れたけどこういう価値観に影響することを本で読めるの楽しい
1投稿日: 2025.12.15
powered by ブクログやっぱり長編作品が好き。ストーリーが無いような感じがするのも良かったし、謎料理も美味しそう。 主人公の行動だけ切り取ると多分自由そうに見えるけれど、実際の不自由さがリアル。 著者の日記だと言われたら本当に信じてしまいそうなくらい現実世界と直結している印象を受ける。
0投稿日: 2025.12.13
powered by ブクログ会話がとにかく多いため、テンポは良いが主人公の自分勝手な性格が目について仕方なかった。 自分で自分を追い込み仕事中毒な状態になっておきながら、周りは助けてくれないと被害者面。 出てくる登場人物も、不倫したりパートナーと上手くいっていない人達ばかり。 類は友を呼ぶをテーマに作られたシルバニアファミリーのような話だった。
0投稿日: 2025.10.30
powered by ブクログバツ2の子持ち作家。そして恋愛体質。会話も心の中も全て語彙力があり冷静に自分の気持ちや考えを綴る(そりゃ小説だからそうだけど)その部分に聡明さを感じるというか理性的な人に感じるけどそんなことはなく結構メンヘラ気質で不安定。 上手く行ってる作家で料理にもオシャレさがありデリカシーのない元旦那と繊細で寛容な若い彼。そんな設定が多い(金原さんの作品で印象に残ってるのがこれ系統なのかもだけど)上に巧みな描写力でなんだかもう金原さんのエッセイなのかそうではないのか分からなくなってくる。 金原さんのエッセイ読んだ時も小説かな?と思うような感覚だったから境目を感じなくて混乱してくる。 最近読んだヤブノナカも同じような女性が出てくるので「また恋愛気質のメンヘラ中年ですか?!」と途中で少し飽き飽きしたんだけどすぐその気持ちは無くなって主人公の親としての子に対する気持ちがなんともリアリティがあり子持ちじゃないのに分かったような気になる。 恋愛ばかりの母にげんなりする娘の気持ちも分かる。過干渉気味な所とかうざったいよねって共感して。でも長期的な目で見れば母親の言いたいことも分かるよ。と。母親と娘の立場の理解や共感行ったり来たりで忙しい。 考えをちゃんと言語化しろと相手に詰め寄るところとかペラペラ自分の考えを話しまくるところ私も将来こうなるんじゃないかと不安になったりする。 主人公の生き方や気持ちに共感したり全然違うから面倒だなとか気持ち悪いと思う部分もあってでもそこにリアリティがあって金原さんの作品は熱があるというか生な感じがあってそこが好きで読んでるのかもしれないな。
1投稿日: 2025.10.27
powered by ブクログ金原ひとみさんの本は基本読後何日か咀嚼し、考え込む。つまり好き。 という前提で、本作は、強い設定だからこそそちらに引きずられ、先を読むことに急いでしまった。ミステリー脳だからかもしれないが、そういっかカタルシスを感じることができなくて、変に期待して変に終わってしまった。9.5割読んだ段階で何を読んでいるのか?と思ったけれど、最後の3ページ(Kindleでいうと残り1%)にすべてが詰まっていたので、そこに辿りつければ得られるものが多い。こうやって書いておきながら、見返すとハイライトが10箇所以上あるので、なんだかんだじんわりと染み渡ってやっぱり好きみたい。
1投稿日: 2025.10.26
powered by ブクログ読んでいて、著者の頭の中をストーリーにしているのではと感じる作品でした。 ちょうど、自分も父親として子育てしながら、父であり、夫であり、息子であり、経済人でもあり、自分自身であることの中でのバランスに日々苦悶しているので色々と著者の思考を辿りながら考えさせられてとても良い読書経験でした。 蛇にピアスしか読んだ事ないので、他の作品も読んでみたいとおもった。
0投稿日: 2025.10.12
powered by ブクログ期待以上に面白かった!! 改行少なめで紙いっぱいに文字が並んでるのが、主人公の“ものをたくさん考えてる”のを表しているような気がしてさらに良い。 わたしも会話に加わりたいくらい、うわ!わかる!っていう考え方が出てきて読み終わるのがもったいない気すらした。
0投稿日: 2025.09.06
powered by ブクログどのキャラクターもどの場面も、作者の頭の中を見せられている気分になってイマイチ乗り切れない 金原ひとみのインサイド・ヘッド
0投稿日: 2025.09.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
主人公を含めて女性作家三人の飲み会が面白かった。作家はフリーである以上なんの保証もない、と不安を吐露している箇所があったが、それでもかなり飲食は贅沢してると思わずにはいられない。 主人公が娘に対しても恋人に対しても言葉で追い詰めて行くのがちょっと息詰まる感じ。 金原ひとみはなんとなく恋愛への関わり方が山田詠美に似てるなーとところところ思うところもあるのだけど、山田詠美は少なくとも「生きづらさ」みたいなのは出してない。そこが違うかなぁ。 ブルサンが入ったキッシュ食べてみたい。 あとは最後別れるとばかり思ってたら結婚するのか。ちょっと拍子抜け。
0投稿日: 2025.07.17
powered by ブクログバツ2女性小説家のお話。すごい良かった。自分の中の感情を言語化したい、それを誰かと議論して昇華させたい、という気持ち、そしてそれをしなければ自分でなくなってしまうような気持ちは分かる気もする。
0投稿日: 2025.05.06
powered by ブクログはまっている金原ひとみさん。 読んでいる間、まるで自分が志絵になったような気がするような不思議な気持ちになった。 不倫や離婚や子供との別居などなかなかハードな話だけど、女友達との飲みやコロナ禍での生活の変化などリアルなことも多くて、重くもなく読めた。
10投稿日: 2025.04.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
きっと、これは将来の私の姿だ。 そう思うくらい志絵の思考が今の自分に近かった。 かつ、そんな人間が「子供」を持ったらどんな人生になるのか、志絵の目線を通してリアルに想像することができた。 これからも自分のための時間を減らしたくない。 その対象は人によって様々で、恋愛だったり、友人との食事だったり、読書だったり、推し活だったりするんだろう。 子供ができたからって一人の人間であることに変わりはない。自分の時間だってほしい。仕事は全力でやりきりたい。 だけど、子供に自分の100%を注がないことによって、子供が懐いてくれないのではないか。 そんな不安を持っている私の代わりに、志絵がいろいろ経験してくれているようだった。 理子が吾郎の家に住むとなった時、そうなるかなと想像はしていたものの、これが自分の将来ならしんどいなぁと思ってしまったが、最終的に志絵はなんとなく幸せそうな結末で終わった。でも、彼女はきっと今後もたくさん悩んでいくのではないかと思う。 そして、志絵のようなタイプの人間だけではない。 しんどくない人生なんてなくて、みんな人生のどこかのタイミングできっと何かしらに悩み、折り合いをつけながら生きているんだろう。 私はこの小説を通して、自分を客観視できた。 自分は志絵にすごく似ていると思うけど、仲良くなりたいとは思わない。 とても人間らしいとは思う。でも好きじゃない。もっとおおらかで、なんとかなるさと楽観的でいられる人になりたい。 でもそんな人たぶんいない。隣の芝生が青いだけ。 みんなどこかで疲弊しながら、自分を犠牲にしながら生きてるんだと思う。 人生は楽ではない。 個人的に発見だったのは、そんなに自分の時間ややりたいことを大切にしたいタイプの志絵でさえ、子供のことを心から愛し、子供の幸せを本当に考えているということだ。 子供が自分の時間を奪うことについて、ネガティブな感情を持たないのは、親なら共通なんだろうか。 いろんなことに悩み、その発端が子供だったとしても、子供をもったこと自体に後悔していなさそうなのである。 ここまで言われると、子供をもつことはネガティブなことばかりではないのかなとうっすら思えてくる。 子供を持つか、持たないかというテーマが個人的にホットなので、この小説の至るところにそういったことを考えるためのヒントが散りばめられているのが良かった。 小説として好きだったポイントがもう1つある。 それは、人が変化していくということをうまく表現しているところだ。 たとえば、「悲しみが酸化する」という表現。 これはシンプルに表現として美しくて好きだ。 たとえどんなに悲しいことがあっても、それがもし愛する人を突然亡くすような悲しいことであっても、その感情は絶対に変化していく。 それを見事に言い表した表現だった。 陳腐な表現になってしまうが、人はそうやって変化していく生き物だから色々なことを乗り越えていけるんだろうなと、改めて思った。 あとは、死刑制度に対する賛否が歳を経て変わってきたというくだりや、自分の老いについて年下の彼とは一生わかり合えないんだろうなという思いについての描写。 自分が30代に入って、少しずつこういった物の見方に共感できるようになって、小説の読む深さが変わった気がする。 これも私の変化なら、歳をとることはそんなに悪いことではない。 キラキラした未来を描いた小説ではないけれど、似たようなことで悩んでいる人はいて、苦しみながら変化しながら、それでもなんとか生きていけそうということが少しだけ見えた。 またしんどい時がきたら、この本に励まされたいなと思う。
3投稿日: 2025.03.07
powered by ブクログ結婚や不倫、恋愛の事が描かれている作品なんだけど淡々と描かれているせいか嫌な印象を受けずに読めた。物語に散りばめられている食事や料理が美味しそうでそちらも楽しめた。ビリヤニが食べたい!
1投稿日: 2025.02.25
powered by ブクログ読み進めていくごとに話にのめり込んでしまった。節々に出てくる言葉の表現が素敵で、読んでいるとスッと心に入ってきた。 話は淡々と進んでいくスタイルだが、それゆえに面白さや魅力がある。20代後半から40代の方に読んでほしい。読む人によって感想が異なるのではないか、と。
1投稿日: 2025.02.13
powered by ブクログバツ2で小説家の志絵が主人公 読み始めは、ちょっと苦手なタイプの主人公かも?と思ってたけど、読み進めるうちにどんどん志絵に引き込まれていった ちょうどコロナ禍のことを上手く絡めていて、そうそうあの頃こういうしんどさが多かったなと思い出しながら読んだ あの時の毎日がどう転んでも窮屈で、うんざりする嫌さを的確に表現されていた 女友だちとのやりとりは思考と思考のバトル過ぎて、若干読み疲れる 食べてみたい美味しそうな料理や知らない料理が次々と出てきて、つい画像検索してしまった(^^)笑
7投稿日: 2024.12.28
powered by ブクログ好き嫌いはあるかもしれないが、浮気や離婚や不倫やセックスや語ることに躊躇してしまうことを清々しく語り、それを飄々と受け入れる女性たちがとても魅力的 そして何より主人公の女性の思考や感覚がこれでもかとばかりに言語化されていることに驚いた 凄い
1投稿日: 2024.10.27
powered by ブクログ読み終わったあとふぅってなる。 主人公に共感はできないけれど、物事に対する考え方とか、人との関わり方とか、改めて人間は多面体だなと。母、妻、彼女、社会人、いろんなお面を次々と摂ったり被ったり。 年齢的には蒼葉に近いからか、自分以外のことに対してあんまり関心がなかったり物事を抽象しすぎたりと思い当たる節があった。もう少し批評的にもなりたい。
0投稿日: 2024.09.03
powered by ブクログまだ途中までしか読んでないが、なんども読み返さなければならない本だと感じている。読み飛ばしちゃいけないことが次から次にやってくる感覚。買って線を引きたい、書き込みたい。1ヶ月後また読みたい。 p148
0投稿日: 2024.08.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
面白かったんだよなあ、あんまり評価高くないけど私はとても面白かった。 あらすじを読む限り、まったく共感できない行動をする主人公だからなんで読む気になったか思い出せないけど、アタラクシアが面白かったからもしかしたらと思ったのかも。 字数が多くて厚くて重くて面白い内容だとほんと幸せ。まだまだ読んでいたかった。 コロナ禍をうまく表現していたと思う。最後のリモート飲みがなんで嫌かのあたりなんて思っていたことを言葉にしてもらって膝を打つ思いだった。 知らない漢字を2個覚えたし。 擲って(なげうって)と悍ましい(おぞましい)これ読めなかった。 危険厨と安全厨という言い方も聞いたことも見たこともなかった。 次はfishy読も。
4投稿日: 2024.05.18
powered by ブクログうーん。 会話で進むのに会話が勝手なことばっかり言い合ってて、苦痛。 お互いに話聞かないし、全部、筆者が言いたいことをワーワー言ってるだけで疲れる。 人は変わっていくものだし、それでその度にそんなに幸せ感じたり絶望感じたり、忙しいなぁと思った。 唐突に場面が変わっていくのも、わたしは苦手。
0投稿日: 2024.04.09
powered by ブクログ「曲がった原子の果てにある光景は美しく、私は時系列を超えた関係性の数々を思い出してみる」 この、時系列を超えた関係性の数々、にようやく慣れつつある私。いままで毛嫌いしてきた世界に、共感はできないまでも完全否定しなくなっただけでも自分の成長を感じる。 タイトルは正直「?」だったが、表紙のイラストにちょいと惹かれた。 三人の女性がたまに集まって美味しいものを食べるシーンの描写が好き。
0投稿日: 2024.02.18
powered by ブクログ2度の離婚、どちらも自分の浮気が原因。 娘を実父に預けて息子ほどの若い恋人との同棲。 類友との女子会はバブル風。 一番許せないタイプ、と不快感バリバリで読み進めた。 最後に志絵を認めてる自分に驚く
3投稿日: 2024.01.24
powered by ブクログ写真: Roland Persson 2022年8月出版 349ページ 表紙が印象的で、内容はわからないけど読んでみようと思った作品。 全部で19話あり、とある小説家の、パンデミックが起きた頃の日常をみている感じ。 特にすごい展開があるとかではなく、ゆーっくり読んでいく感じ。 登場人物たち((主人公でさえも...))あまり共感はできなくて、読み切るのもどうしようかと思ったけど、著者の喩え方であったり表現力が好きでそのまま最後まで読めた。 パンデミックになってからの日本の様子が書かれていて、"そういやこういうこともあったな〜"ってなる。
12投稿日: 2024.01.14
powered by ブクログ読み終えるのに 途轍もなく時間がかかってしまったけれど 面白かった。 ストーリーがというより セリフや表現のひとつひとつに唸ってしまう。 そんな作品でした。 主人公はアラフォーの小説家。 離婚した二人の元夫と 年下の大学生の彼氏 最初の夫との娘(中学生)と同居していたが 途中から年下の彼と住むことになり 娘は実父の元へ。 複雑な家庭環境といえばそうかもだけど 離婚時のゴタゴタは乗り越えた後の話で どの組み合わせで会っても わりに平和な時間と美味しいご馳走がならぶ。 主人公はこれ以上ないくらい自由に 欲望のままに 生きてきたはずなのに 自信満々でもなくて 娘への愛情はたっぷりで 常に思考過多で いろんな不安を抱えている。 人生100年時代 ひとりの人とずっと添いるとげることは 逆に難しいのではと思っているので こんな生き方もアリと思える。 主人公もだけど 小説家仲間の話にしても 源氏物語の男女逆転バージョンみたいで 男女関係なく、人との関係 色んな形があってもいいような気がしてきた。 子育てを宗教に例えてる表現が とても響いた。 子供が自立してからは 頻繁には会わないけれど、 子供は自分の軸となる存在。 コロナ禍の表現もリアル。 楽しいと思いこまされてた集まりやモノなどに 魅力を感じなくなったし、 大切にしたいものが変わってきたなと思う。
11投稿日: 2024.01.13
powered by ブクログ単純に主人公がやりたい放題で周りの男が振り回されてる感があるが、何とも言えない魅力があるんだろう。 志絵自身にも自分では制御出来ない感情があるのも、それが決して常識的で良いことでは無いことも承知の上で生きてる。 それがヤケクソでなく、いけない事も己と悟ってる感じがする。 感情の起伏が激しいがそんなのは誰しも有る事で、読んでて身につまされる。 終盤は作者の想いが前に出過ぎて小説の流れが少しずれてる感じがして少し残念。 金原作品は不倫しないと気が済まないのか(村上作品の男女がすぐ寝るのと同じ感じ)、そのことで描きたいものは何なのか、そうでないと描けないものがあ何なのか、そこを理解出来れば金原作品がもっと面白く読めるんだろうと思う。 文章は読み易いし、才能の塊って改めて感じた。 まだまだ金原作品を読み漁ろうと思う。
1投稿日: 2023.12.27
powered by ブクログ腹減った ってな事で、金原ひとみの『デクリネゾン』 いつもの金原さんのイメージかと思いきや料理と絡めたお話 普段は和食、居酒屋飯メインのわしじゃが、色んな国の料理が出てきて、これ食べてみたいなってのもあったり デクリネゾンってタイトルはそれぞれみんなのデクリネゾンって言うのか、読み終えてタイトルの意味を調べると、なるほどなっ‼️って腑に落ちた 志絵、理子、吾郎、蒼葉それぞれみんな好きなキャラじゃったなぁ。みんなそれぞれええ調理(良い人生経験、新しい家族定義と言うのか)されて活かされとる感じですかね じゃが、『蒼葉』の名前にルビが打って無かったんで、何と読んでいいのか分からぬままモヤモヤした気持ちがデクリネゾン ← 意味も無くただ使ってみたかった 2023年19冊目
0投稿日: 2023.12.17
powered by ブクログ自分が面白いと思う小説には2種類あって、ストーリーが気になって一気読みしてしまう小説と、登場人物の会話や独白に惹き込まれる小説。金原ひとみはまさに後者だと思う。 主人公はバツ2で作家の志絵。作者自身を投影してるような部分もあって興味深かった。元夫や娘の理子、恋人で大学生の蒼葉。コロナ禍、蒼葉と同居することになり、入れ代わりに理子は元夫宅へ出ていく。 多様な価値観とか家族観とか、これだけいわれていながら、相変わらず母親には母親らしさが求められ、そこはなかなか寛容にならない。志絵は母親よりも女性の幸せを選択し(たように見える)、それを全面的に肯定したラストは、個人的には良かったと思うのだけど、批判されないような周到な表現だな、と感じるところもあった。 作中でフェミニズム系の映画を志絵たちが批評する場面が出てくるが、この小説への批評を先んじて並べておいたのかとさえ思った。 あまりにもいい子な理子との理想的な母子関係、父子関係など、少し絵空事のように思えるところもある。 これまでの作者のヒリヒリするような痛々しい作風と比較すると毒や刺激は少なめだが、世間がコロナにどれほど振り回されていたか、描写がリアルでまざまざと思い出される。 家族や編集者たち、作家仲間との会食など、食べたり飲んだりの場面が多く、どれも本当に美味しそうだった。
1投稿日: 2023.12.02
powered by ブクログ「腹を空かせた勇者ども」の裏表になっている作品だと、何かのインタビューで見た記憶があって、こちらの本を読んでみた。 女性小説家で2度の離婚を経たシンママが大学生の男の子と恋愛して……という筋書きで、合間合間に繁華街のスペインバルちっくなお店の料理の描写が差し込まれる。 なぜだか分からないけれど興味を持続することができずに半分読んだところで挫折してしまった。多分、小説家という職業に就いてるし、2回は結婚してるし、娘は理解あるし、小説家の友達はいるし、元夫は育児に協力的だし、年若い男の子から崇拝のような眼差しを向けられてるし、「まあ、じゃあ、いいんじゃない?」と思ってしまったからなのかも… とくに気になった一文はあった。こういう表現は心地が良い。 ーーー "和香の不倫もきっとそれと一緒で、一人の男を知っていく、とことんまで深く入り込んで愛し愛され、これから食される牛や豚のように喉元から肛門まで互いをナイフで切り裂き内臓を表出させ内臓同士を擦り合わせたり裂け目に顔を埋めたりするような恋愛をして互いを遮る皮膚の存在をすっかり忘れた頃、彼女は彼に纏わる小説を何本か書き上げ、もう彼から得られる栄養素がないことを知り、小説を書くため新しい恋愛を探し求める。" ーーー また気が向いたら続きを読むかもしれない。
1投稿日: 2023.10.21
powered by ブクログハッピーエンドでよい。 自分の衝動に素直に生きることは良い。 これに出てくる歌舞伎町の火鍋のお店は行ったことある
1投稿日: 2023.08.15
powered by ブクログ心地良さは皆無。 二度の離婚を経て中学生の娘・理子と二人で暮らすシングルマザーの小説家・志絵。 二人の元夫と交流を続けながら、大学生の恋人・蒼葉と暮らし始める。 とても貪欲だ。 仕事も家庭も子供も恋愛も、全て手中に収めたい彼女と自分の境遇が違い過ぎて共感する事が難しい。 友人や恋人と美味しいものを食べ歩き十分満たされているかのように思えるが、時に発動する破滅的な言動にたじろいでしまう。 時間と共に人との関係性は変化し、未来に絶対はない。彼女の危うさに翻弄されつつも、迸る熱量に圧倒された。 志絵の自由さが羨ましくもある。
0投稿日: 2023.07.12
powered by ブクログ年齢の変化、人間関係の変化、環境の変化、そんな細やかな日常の中の気持ちや感じてることが、とても細やかに言語化されていて、じっくり読めた。金原ひとみさんの作品は食事がとても美味しそうで、今回もたくさんの魅力的な食事がでてくて、美味しいご飯を食べたくなった。
0投稿日: 2023.05.15
powered by ブクログ最高の小説だった。生涯ベスト5あたりに食い込むかもしれない。 「私」を支配する、自分でコントロールしきれない私の欲望。それに従ったり抗ったり絶望をおぼえながらも、それでも、誰かと、この世と、生きていくしかない。その選択をし続けている「いま」の尊さ。 コロナ禍の直前から落ち着くまでの期間を、飲み会やライブの状況と照らして描くから、まるですべて自分ごとのよう。いやー、最後までめっちゃおもしろかった。
3投稿日: 2023.04.16
powered by ブクログあなたは、『アラフォー』、『バツ二』で、中学生の娘と二人暮らしという女性が、『二十一歳』の大学生と付き合っていると聞いてどんな感情を抱くでしょうか? この国では恋愛は自由です。婚姻をしている状態で誰かと付き合えばそれは不倫と指弾されます。しかし、離婚届を出してしまえば、再び恋愛の自由を享受できもします。世の中にはさまざまな恋愛の形があり、例えば”歳の差婚”も決して珍しくはありません。私の知り合いにも”21歳の歳の差婚”をした方がいます。もう何年経ったでしょうか?お子さんが生まれる一方で歳上だった男性は定年を迎えすぐに次の会社に就職したと聞きます。どんな恋愛の形であれ、その先に幸せな家庭が作られていくのは素晴らしいことだと思います。 しかし、それが『バツ二』の女性の話となると複雑な事情も絡んできます。歳上の女性に一人娘がいるとなるとなかなかに複雑です。中学生の娘と、自身が付き合うことになった大学生は10歳も年が離れていません。これは、思春期の娘さんにとってはなかなかに感じることが多い状況とも言えます。 一方でそんな大学生はどうしてその女性が好きになったのか?という野次馬的な興味も湧きます。そんな女性はその理由をこんな風に語ります。 『彼は距離的にも時間的にも遠くのものを見通せないんです。物を知らない人ほど騙しやすいように、彼は経験値がなさすぎるから、私がかけた覚えのない魔法にも簡単にかかってしまって、魔法にかかった彼に好かれている内に私も魔法にかかってしまった』。 そんな風に説明するその女性。あなたは、そんな話を聞いてどのように感じるでしょうか? さて、ここに『アラフォー』、『バツ二』で、中学生の娘と二人暮らしという女性が主人公となる物語があります。小説家をしているというその女性は、家庭と仕事と恋愛を絶妙なバランスの中に回してもいきます。この作品は、そんな女性が『離婚の原因は二度とも私の浮気だった。それでも、離婚の理由が私の浮気だったわけではない』いう先の人生を生きる物語。コロナ禍のこの国の中にさまざまな感情を抱く人の姿を見る物語。そしてそれは、そんな女性が、 『あなたが生きている世界に生きているだけで死にそうになるくらいあなたのことが好きだった』。 そんな風に、それぞれに本気の恋愛をしてきた過去の先にある今を強く生きる物語です。 『いい匂い!』と『鼻歌を歌いながらリビングに入ってきた』娘の理子に『キーマカレー作ったからね。あと冷蔵庫にサラダが入ってる』と言うのは主人公の天野志絵。そんな志絵は『吾郎、七時くらいに来るって。冷蔵庫の中のサラダ忘れないでね。明日理子が学校から帰ってくる頃には帰ってるから』と言うと家を後にしました。駅までの道すがら『スマホを手に取』り、『時間があったら理子の数学見てやって』と吾郎に入れる志絵は、『電車に乗り込むと資料を取り出し、今日これから出るトークショーの概要に』目を通します。『本当は、永遠に家でじっとパソコンに向かって仕事をしていたい。憂鬱だった』という志絵は、『結局執筆をしている瞬間だけが、自分の書くものを信じられる瞬間』だと思います。そして、無事にイベントも終わり打ち上げに訪れた志絵は、『天野さんってどうして離婚したんですか?』と訊かれ、『それは、一回目の離婚ですか?それとも二回目の離婚ですか?』と『皮肉を込めて』返します。そして、『二回とも、離婚理由は公にはしないって約束し』たと語る志絵に、今度は『今、彼氏はいるんですか?』と訊かれます。そんな質問に答えていく中に『二十一ですと答えると女の子たちが歓声を上げ』ました。そして、打ち上げ後にタクシーを降りた志絵は『おつかれ』と声をかけられ『全然心の準備ができてない』と言うと『俺と会うのに心の準備いる?』と蒼葉は返します。そんな蒼葉と志絵は『ご飯行こう』と出かけ、その後ホテル街へと歩みを進めます。『元彼との恋愛は、何故あんなにも重かったのだろう。何故蒼葉との関係にはこんなにも解放感があるのだろう』と思う志絵は蒼葉と『パネルを眺めて適当な部屋を選び』ます。部屋に入ると『今日はがんばったね。お疲れさま』と『頭と背中を撫でて抱きしめる蒼葉に、癒される』と感じる志絵。そんな志絵に『ねえ志絵ちゃん』『結婚しようよ』と蒼葉は語ります。『ことあるごとに結婚という単語を口にする蒼葉に、やはり重々しさはない』と思う志絵ですが、『今かな?』と返すと、『俺は今なんだけどなあ。と緩い答えをする蒼葉』。そんな蒼葉の『頭を』志絵は『背伸びをして撫で』ました。『蒼葉と一緒にいると時々何をしているのか分からなくなる』とも思う志絵。小説家を本業とする志絵のコロナ禍を背景とした日常が描かれていきます。 “二度の離婚を経て、中学生の娘である理子と二人で暮らすシングルマザーの小説家、志絵”、”恋愛する母たちの孤独と不安と欲望が、周囲の人々を巻き込んでいく”と内容紹介にうたわれるこの作品。2022年8月に刊行された現時点での金原さんの最新作です。そんな単行本の表紙はインパクト絶大です。”食べたいものを食べたいだけ、食べたい時に食べたらいい”という言葉と共に表紙に描かれているのは豚肉を使った料理の数々、というよりどこか不気味な雰囲気感の中に配置された肉、肉、肉の数々です。しかもそんな食材の下部には豚が一頭、まるで丸焼きにされるのを待っているかのように鎮座しています。これは、おどろおどろしい作品なのか?という一抹の不安が頭をよぎりますが、読んでビックリ!、確かに不倫、不倫、不倫と、男と女の物語は登場するとはいえ、金原さんの作品としては異常な位に雰囲気感は悪くありません。かつ、えっ!と思うくらいに前向きな結末が用意もされています。そうです。金原さんの作品ということで、身構える必要も、読後感の悪さを懸念して敬遠する必要もない読書の時間がここにある、それがこの作品です。このことをまずお伝えしておきたいと思います。 そんなこの作品はご紹介したいポイントが多々あります。その中から三つに絞ってご紹介したいと思います。まず一つ目は食材が表紙に描かれていることに関係します。この作品は19もの章から構成されていますが、その章題が食べ物の名前をもじった不思議な名前がつけられているという特徴があります。〈第1話 生牡蠣とどん底〉、〈第11話 エビのミソはレバー〉、そして〈第15話 あずきのない白くま〉となんだか妙な引っかかりを感じさせます。そして、その本文にもやたらと食の風景が描写されます。その中から〈第10話 網の上のホルモン〉の食の場面をご紹介しましょう。 『もう焼けてんでこれ。こっちもええな』という会話の中に『網を制するひかりが私と和香にタンを取り分ける』という場面。『玉ねぎししとうも焼けてるし、多分かぼちゃ人参以外は全部いけてんで』と網の上の情景が思い浮かぶ描写の中に、『タンを頰張りながら「ふーい」と間の抜けた相槌を打つと、和香もハフハフしながら「ふふい」と答え、三人ともふふっと笑う』というひととき。『「何や幸せそうやな二人とも」 「ここの肉食べながら幸せじゃないなんてあり得ない」「考えてみれば、私コロナ以降ここ来るの初めてかも」』と会話する三人が描かれます。 このように章題で名前の上がった食材が物語に彩りを添えていくように描かれるのがこの作品の特徴です。フランス料理で”さまざまな調理方法でひとつの食材を生かすこと”を意味する「デクリネゾン」という言葉を書名に冠したこの作品。そこには、食のある日常が決して気取ることなく物語に彩りを添えていきます。食を舞台にした小説は数多あるとはいえ、金原さんと食?と、あまりピンとこない中に、美味しそうな食の場面が展開するこの作品。こんなところにも身構える必要のないこの作品の魅力の一つがあると思いました。 次に二つ目は、コロナ禍の描写です。2020年春に世界を突如襲ったコロナ禍。あれからもう三年という月日が経ち、世界的には終わりが見えてきたものの、この国では未だにマスク、マスク、マスク…の辟易した日常が続いています。そんな状況にあって日常を描く小説にコロナ禍が登場しないのは却って嘘くさくも感じてしまいます。実際、2022年に刊行された小説にはコロナ禍を背景にしたものが多いと思います。窪美澄さん「夜に星を放つ」、辻村深月さん「嘘つきジェンガ」、そして寺地はるなさん「川のほとりに立つ者は」などマスク生活、緊急事態宣言、そして閑古鳥が鳴く飲食店とそこには、現在進行形のコロナ禍がリアルに写し取られています。そんな他の作品に比してもこの金原さんの作品は一歩踏み込んでコロナ禍と対峙するような記述に満ち溢れています。それこそが、主人公のコロナ禍に対する感情が記されているところです。『その日の東京の新規感染者は過去最多を記録した』という客観描写だけでなく、 『別にマスクも検温も消毒もできるけど、気分的にはもううんざりなのだ。人の飛沫が飛び交う狭く小汚い居酒屋で、めちゃくちゃでかい声でバカ騒ぎしたい』。 かつて『人の飛沫』などあまり気にしなかった場面、果たしてそんな以前の気持ちに私たちは戻れるのか?なんとも不安な心持ちですが、主人公・志絵の思いに共感する人は多いでしょう。しかし、金原さんの表現はこれだけに留まりません。それは、『罰則のない緊急事態宣言と自粛要請』というものを冷静に見つめ『日本人のはみだす人やはみだすことを嫌う性質を思えばそれでもそれなりの効果はあるのだろう』と第三者的に見る金原さんが、そんなこの国の現状を痛烈に皮肉ります。 『苦しんでいる人のことを思いやれ、人の気持ちを考えろと綺麗事と忖度を押し付けられ、あらゆる抑圧の中で自尊心を傷つけられ、苦しむ人は誰かに怒りをぶつけるよりも自死を考えるパターンが出来上がっている日本という国が、どうしても受け入れられない』。 東日本大震災の後、フランスに移り住まれ、四年前まで彼の地に暮らされた金原さんならではの冷静、冷徹な視線で見たこの国の姿。もちろんフランスだって上手くいっていない部分は当然あるとは言え、この痛烈な皮肉は残念ながらこの国が置かれている現況を言い当てているように思います。 最後に三つ目は、主人公が小説家ということです。小説家が主人公という作品も多々あり金原さんの作品にも「オートフィクション」などがあります。この作品の主人公・天野志絵は『アラフォー』という設定であり、39歳の金原さんと微妙な親和性を感じさせます。そうなると、そこに描かれるのは金原さん自身を写す部分もあるのではないか?という野次馬的な思いです。もちろん、そこは小説であって、自伝ではありませんのであくまで余計なお世話といったところでしょう。しかし、小説家が主人公ということは、その生活がどんなものかを垣間見ることができます。そんな視点から興味深い記述を二つ抜き出してみたいと思います。 ・『絶対的に自分か相手が傷つく結果になるから、初版部数が何部かという話は作家の間では基本的に交わされない』。 → この作品では、主人公の志絵がひかりと和香という同業の小説家と親しく交流する様子が描かれていますが、そこに登場するのがこの記述。おおよそ想像はつくのでしょうが、口にするのは確かに生々しい話ですね。 ・『もちろん小説の登場人物は自分と多かれ少なかれ重なっているものです。でもどこが重なっているかというのは自分自身も正確に判断できるものじゃないし、不倫小説書いてても不倫してない、セックス好きな人書いててもセックス嫌い、Sの主人公書いててもMとか、そこから読み取れるのって、結局著者の持ってる世界観だけだと思うんです』。 → 小説家と小説の登場人物との関係性について言及した箇所です。もちろん、これを語るのは主人公の志絵であって、金原さんではありません。しかし、そんな志絵が小説家であることを考えるともしや?という思いが湧きもします。いずれにしても主人公が小説家という小説は独特な読み味を提供してくれるように思いました。 そんなこの作品の主人公・志絵は、『アラフォー』、『バツ二』で大学生の彼氏あり、そして中学生の娘ありという今を生きています。二十一歳という年下の蒼葉と交際を続ける志絵は、『いつか蒼葉にとって耐えがたい重荷となるに違いない』と自身のことを理解しながらも『女として作家として元妻として保護者として、あらゆる役割がある』今を生きています。そんな志絵の生活は娘・理子との関係性もあって、別れたはずの最初の夫・吾郎、次の夫・直人とも険悪な状況にはありません。特に驚くのは吾郎との関係性です。いまだに娘の誕生日になると吾郎の家で一緒の時間を過ごす様が描かれるなどそこにはドロドロとした感情が表に出てくることはありません。そんな中には、そんな状況を見る読者だけでなく、志絵の心の中にさえ、『どうして吾郎ではいけなかったのだろう。急激に疑問が湧き上がる。なぜ、理子と吾郎と三人の家庭を維持できなかったのだろう』という疑問が浮かび上がるのは自然な流れだと思います。そして、娘・理子を思う母親・志絵の心持ちは二十一歳の彼がいようとも変わりません。『ただただ、私は理子が大好きだった』という志絵は、『彼女を見ているだけで胸が躍る。幸せな気持ちになる』と娘・理子の存在を強く意識します。そして、志絵は、理子が『物心がつき、その軽やかな性質を露わにし始めた頃から、彼女はポジティブの象徴として』志絵の中に『君臨し続けていた』ことに気づきます。それは、『逆に言うと、彼女が関与できない、私に残された分野が、仕事と恋愛だったのかもしれない』と結論する志絵。そこに、この作品に描かれる奔放な性が登場する余地があるのだと思います。そしてまた、小説家としての仕事に邁進する志絵の姿が強く印象に残る物語がここに生まれたのだと思います。そう、この作品は、主人公・志絵の”恋愛物語”であり、”お仕事小説”でもあるのです。 『結局執筆をしている瞬間だけが、自分の書くものを信じられる瞬間なのだ』。 一人の小説家として、娘・理子の母親として、そして『バツ二』の中に『二十一歳』の大学生と付き合う『アラフォー』の今を生きる主人公・志絵の日常が描かれるこの作品。そんな作品にはコロナ禍を舞台にした人々のリアルな暮らしが描かれていました。小説家が主人公ということで、いらぬ深読みをしてしまいがちにもなるこの作品。美味しそうな食の描写の数々が物語の雰囲気感を明るく保つこの作品。 主人公・志絵の言葉を借りて、金原さんの思いが圧倒的な迫力をもって伝わってくる物語の一方で、金原さんらしからぬ読後感の良さに驚きもする、そんな作品でした。
148投稿日: 2023.04.12
powered by ブクログデクリネゾンとはフランス料理で使われる『1つの食材をさまざまな調理法で仕上げること』といった意味合いの専門用語。 小説家の志絵を軸に1人娘、2人の元夫、20年下の大学生の現恋人との関係性とその変化を、コロナ禍の時代背景を交えながら描いている。 中学生の娘を既に持つ志絵の恋愛に対する果敢な姿勢は、非常に強い欲望に突き動かされているように一見思える。しかしその時々での男との恋愛、そして衝突や別れを淡々とした語り口で描いていることから、あまり強い衝動は感じなかった。 志絵の感情や共感力が薄いわけではなく、自分が他者に感じる愛に対して正直な行動を重ねていった結果とも言えると感じた。
2投稿日: 2023.04.02
powered by ブクログ不穏が平穏に。 家族観や女性観が緩やかに溶かされ、温かい陽光を感じながらナプキンで口を拭う。 本作のテーブルには食欲を掻き立てる風味絶佳の料理が並び、同時にその食卓には志絵のSignificant other達が座る。最初はそこに不穏さを感じた。とんでもない、恋愛体質で子を蔑ろにし、「彼氏」や「デート」に興じていると。彼女は私と違ってそういうことができる可塑性に満ちたところに居る作家さん、なんだと。 しかし挟まれる和香やひかりとの飲み会の相伴に預かり、理子や蒼葉との気の置けないやり取りを見るにつけ、彼女が祈りにも近い切実さで人と共にあることが分かってくる。胸の中の強烈な悲鳴、暴れ出しそうな獣。それを収めてくれる絶対的な存在としての他者。 「青春の続き」を思い出してしまった。 ------ 「己自身のだめ生きるだけって もうしんどいの 期待も落胆も知れている」 溜め込んだ愛は過飽和中 行き場のない危ういこの心身を 強く深く重く組み敷いて押さえて 陶酔させてほしい 嗚呼 貴方を掴んでいられたら ずっと安心 ------ そうして自分自身にも嵌められた桎梏に自覚的になると、小説はヒーリング的な意味合いを持ち始め、ああ長編で良かったな、まだ終わらない。と思った。 そもそも「デート」とか「彼氏」みたいな言葉がよくわかんない色に錆びて、何も意味をなしていない日本語なのかもしれない。 彼女の連載テーマとストーリーが連動している仕掛けも良い。メッセージがくっきりと伝わり、心の置き場が定まる。「小説に求めるべき価値は、社会的正当性のない言葉をいかに伝えられるか」とエンドースされ、気持ち良くフィクションに「誑かされる」のだ。それは「騙されるよりも甘く、欺かれるよりも怪しい」 最後には彼女はコロナの息苦しさから解放されたような世界で、緩やかに自立する。その澄んだ呼吸音が聞こえるかのよう。 「私は戻ってきた」かー…自分は女としてそこに達していないから、行かないで、と思ってしまったのだけれど。
2投稿日: 2023.03.29
powered by ブクログ恋愛体質な子持ちの30代女性作家のコロナ禍での生活を取り上げた小説。 主人公はあまりに自分本位だと思って共感はできず、複数の元夫や不倫相手とこんなにうまく共存できるものなのかと思ったりはしたが、随所に人間に対する洞察が溢れていて、なかなか面白く読めた。
0投稿日: 2023.03.27
powered by ブクログ夫婦関係、不倫相手との関係、母娘関係、仕事、育児…。翻弄されているようでいて強かに生きている感じがする。子育てを宗教に例えてるあたりはすごく共感できた。子供が離れていく時の気持ちも。 女友達と知的な会話するんだなとも思った。たくさんの美味しそうな未知の料理が出てきて、私死ぬまでにこのいくつかでも食べる機会があるかどうか…。
1投稿日: 2023.02.12
powered by ブクログ生牡蠣、バトミントン、ストロング缶。 文藝の私小説にも書いてあったけど、金原さんって言ったらコレなのかな? 食べ物が沢山登場するのにあえてなのか描写が細かくないからか、全然美味しそうに思えないのもお腹いっぱいにならなくてよかった。 恋愛はしたいけど娘はそばにいて欲しい。 結婚におそらくは向いてないんだろうけど今度こそはと何度も結婚する。 変わって欲しいけど変わって欲しくない。 ネットでしか教養を深めようとしない若者を懸念しつつも、あまりにも思考しすぎてしまう自分自身にも嫌気がさす。 全てに共感は出来なかったけど、人間が誰しも抱える矛盾の描写がある度に志絵、私自身の考える幸せとは何なんであろうか?と考えた。 結局は、裕福な暮らしや順風満帆な結婚生活とかではなく食べたい時に好きなものを食べたり、年末の大掃除は窓の枠の角のカビを落とさなきゃ、とかそんなたわいも無い小さい箱に入れてしまえるような出来事の積み重ねなのかなとも思った。
2投稿日: 2023.02.10
powered by ブクログ金原ひとみさんの作品を初めて読みました 決して映像作品では得られない楽しさがあった 最近人とのコミュニケーションで具体的な家族や仕事、人間関係など具体的な話しかしていなかったので本著の中で出てくるような抽象的な話(概念、思想など)をすることの良さが急に理解できた 食事の描写が多かった 色々な国の料理を食べながら食文化について考察するのは面白かった
0投稿日: 2023.02.09
powered by ブクログ氏の著作なら何でも!って訳でもないから、これもどこかの書評で見て気になったのだと思うけど、ちょっと出所が分からなかった…。そして、これまでに読んだ氏の手になるものと比べると、ちょっと物足りなかったかも。”アンソーシャル~”よりも更に、コロナ渦を作中に取り入れているけど、どちらかというと前作の方に、今の世相ならではを感じた。それにしても、主人公を含めた女性作家三人組のキャラ付けは凄いな。うち、メインのタイプが個人的に苦手ってのも、本作に今一歩、入り込み切れなかった一因なんだけど。
1投稿日: 2023.01.18
powered by ブクログ本作のキャッチコピー「仕事、家庭、恋愛の全てが欲しい」だなんて、欲張りだと思う。 欲張りだと思うけれど、そんなふうに生きられたらどれほど幸福だろう、というのを見せつけられる一冊。 主人公の小説家・志絵は根っこの部分に生きにくさを抱えているんだろうけれど、離婚してなお友好関係にある元夫たちと、愛おしい浅はかさを持つ理解のある娘、そして盲目的に愛してくれる年下(大学生!)の彼氏に守られている。 母親の恋愛を咎める人はここにはいない。最後まで出てこない。 こんなに甘やかされて、志絵は最後どんな痛い目を見るんだろうと意地悪な期待をして読み進めていても、そんなことは一度も起こらない。 担当編集の中津川さんがちょっと危うさを感じさせる男性で、はずみで彼との間に何か生まれるかな〜なんて思ったけど、全く健全だった。 志絵はいつもオシャレで華やかな食事をして酒を飲み、仕事に明け暮れ、彼氏に頭を撫でられて笑顔を向けられて終わる。 私はただただずっと羨ましかった。同時に、「私まだこういうの羨ましいと思うんだ」と気づいて自分で自分に少し驚いた。 ストーリーとしての起伏は特段ない。言葉の奔流と金言の爆薬でもってずっと思考し続ける小説だ。 コロナ禍で翻弄されながらも、揺るぎない幸福がどっしりと維持されているように思える。 金原ひとみの小説を読んでいるときはずっと作者の顔がちらつくのだが、やはり今回もそうだった。 思春期娘の描写からもそんなことを感じたりしたのだけれど、でも作中にその短絡さを見透かされているような文章があってドキッとした。 主人公の職業柄、創作について同業の仲間と議論するシーンも多くて、私にとっての小説とはなにかについても考えさせられた。 やっぱり志絵が羨ましい。こんなふうに生きるためには、何かをふっきらないといけない。
7投稿日: 2022.12.29
powered by ブクログ24歳の今読んだけれど、ふと10年後くらいの自分を想像してしまうような内容だった。 いつか親になっていてもおかしくない年になったらもう一度読んでみたい。 その頃にはまた違う角度で読めるようになっているかもしれない。
0投稿日: 2022.12.15
powered by ブクログタイトルの「デクリネゾン」とは、フランス料理の言葉で、同じ食材を異なった調理法でつくったものを盛り合わせた料理のこと、だそうだ。 一人の女性を通して、恋愛小説・家族小説・お仕事小説の各要素が全て楽しめるところが、タイトルの意味するところなのかな。 というか、人生楽しめれば、家族のあり方なんてそれぞれでいいじゃんと思うのだ。 主人公の志絵は欲張りなのかもしれないけど、欲張り上等!と思う。 「生きる」ことの葛藤を描いてはいるけれど、ほんわかしていて、読んでいて安心してしまう。登場人物みんなが幸せになってほしいと思える、平和な小説なのだ。 「アタラクシア」と同じことを「デクリネゾン」は陽の側から描いている、と言えるかもしれない。 僕の勝手なイメージの金原さんらしくないけど、これはこれでありだな。 結末がジョン・アーヴィングの「ウォーターメソッド・マン」を彷彿させるなぁ、と思った。 いろんな形の幸せがあること。 それが多様性なのだと思う。
42投稿日: 2022.12.04
powered by ブクログ痒い所に手が届く、 それもピンポイントで。 っていうくらい名言がビシビシ刺さった。 金原さんらしくみっしり濃厚な作品なのに 読後感が爽やかでよかった。 家族って自由でいいんよねって 言ってもらえたようで嬉しかった。
1投稿日: 2022.12.02
powered by ブクログ■漠然と感じていた感覚を言語化してくれた共感しかない作品 ○好きな相手を尊いものとしておきたい 自分も付き合っても会う頻度は高めたくないし、その相手といる時間は楽しく過ごすための時間だから、不要にぶつからないようにしてきた。 それは裏返すと「相手を全部受け入れたい」みたいな感覚とは正反対で、相手を都合よく尊いものとしておきたいから、自分の認識を違えるようなシチュエーションにおきたくなくて、頻度を制限していたように思う。勝手で理解されない感覚(人に話すと引かれる)だけど、言語化されていることで腑に落ちた。 ○人との深い関わりは「抗体」にも「ウィルス」にもなりうる 「人との思い出は一生もの」みたいな考え好きじゃないし、どうせ別れるなら一緒では?みたいな感覚も持っていたけど、別れる=失うではないなと確認できた。 シーンによってはその関わりが自分を強化してくれるし、反対に責めてくることもあるが、どちらにせよ消えてない。 ○子どもという共依存関係 子どもができる=自分の一部(マインドシェア、時間、お金、人間関係諸々)を明け渡すある種分身を作る行為と思っていたが、それは一定期間のことなのかな、とも思うようにになった。 最初は絶対的に君臨する理不尽な守るべき存在として大半のリソースを割くけど、その後自分が大切にしていた自分が一部戻ってくる。 戻ってくる頃にはかけがえのない存在となっていて、その相手に対し自分が各ターニングポイントに関われること自体が幸せと思える。 本作では失って「口出しできていた」「その素直な反応を見られていた」ことの幸せに気づいていたが、そういった尊さを忘れずに接したいと思う(子供できたら)
2投稿日: 2022.11.23
powered by ブクログすげえ! 恐るべき身勝手! と感じたので,私はそういう価値観なのだなと教えてもらった気分。 でもこの主人公のこと好き。 主人公は自分の内面をとことん言葉にできるのに,娘の「母と恋愛って相性悪くない?」には「世界的にはステップファミリーが普通」みたいな「誰か」の話を持ってきちゃうのが意外だった。そこは我が事は言語化できないのか。それとも言語化できないほど大事なのか。 美人で仕事あって健康な娘がいて別れた二人の夫とも関係が良好でひと回り年下の彼氏がいて、それだけでよくね? と思うが全然よくないのだ。そーだよな。
0投稿日: 2022.11.20
powered by ブクログバツ2子持ち、大学生の彼氏持ちという女性小説家が主人公な時点で共感できそうにないのに、働く子持ちの母という共通項でなぜか不思議と移入できました。自分にも犬っぽい彼氏がいるせいかもしれません。 金原ひとみさんの本は読んだことがなかったのですが、けっこう分厚いのに飽きることなく読み切れました。食べ物と生きることって繋がっていると思いました。
0投稿日: 2022.11.16
powered by ブクログちょっと前のコロナが設定されている。 志絵という主人公は全く好きになれなかった。普通、主人公に共感するもんだけど、ここまで嫌いになる主人公はいない。めんどくせー女。すごいブスだったらいいのに。青葉が理子のこと好きになって2人に捨てられればいい。ドラマなら松本まりかだな。仕事も恋愛も子どももいるけど自分の作った葛藤で苦しんでる。うざい。 唯一、子育ては宗教、みたいなくだりだけ共感。 人とのかかわりをウイルスと免疫に例えた話は面白かった。もう2度と会わなくても抗体はできる、みたいな。 人は目の前のものを見てるからリモートは対面と違うとか、うんざり。
0投稿日: 2022.10.28
powered by ブクログダラダラと、惰性で続けてる恋愛みたいな、なんかすごく読んでて疲れた。特に大きな何かがあるわけではなく、コロナ禍の日常で結婚離婚と繰り返したり、不倫が日常だったり、ずっと恋愛要素で。 確かに母親と恋愛は相性悪いな。理子ってすごくすごくいい子に育ってるし、結婚離婚と繰り返しても元夫たちとうまくやってけてるのもすごい。結婚へのハードルが高くないってなんかいいな、いいなとは思うけど憧れたりもしないけども。
2投稿日: 2022.09.28
powered by ブクログデクリネゾンという取っつきにくい言葉、バラエティに富んだ料理に仕上げると、説明にあった。 志絵と蒼葉、娘の理子、前夫の吾郎や直人、作家仲間の和香とひかりとの絡み、これでもかいう各種料理の詳述、確かにどれもバラエティに富んでいる。中弛み感がなくもない。 著者の本はこれが初めて、これ以前の本も読んでみたいと思った。
1投稿日: 2022.09.20
powered by ブクログこれまでの金原ひとみ作品の中でいちばん隣人感があった。 コロナの経過が小説にきれいに落とし込まれていて、この生活にちゃんとつながってくる。その中でまあよく食べよく飲む人たちよ、出てくる料理が全部美味しそうで贅沢で、混沌の不安の中にいてもこの人たちは生を満喫していた。
4投稿日: 2022.09.19
powered by ブクログタイトルの『デクリネゾン』とは、フランス語で「様々な調理方法でひとつの食材を生かす」という意味がある。 本書は2度の離婚歴があり、現在3度目の結婚をするかもしれない男と交際中の作家天野志絵の日常を描いた長篇小説だ。19の章に分かれ、それぞれに登場する料理のあれこれが章題となっている。最初の夫との間に生まれた中学生の理子との関係、2人の元夫と現在進行中の1人の男、同業の2人の友人、編集者等との会話が主体で、コロナ禍も大きく影を落とす。 明確なストーリーがあるわけではなく手こずったが、 読み応えのある作品だった。
1投稿日: 2022.09.17
powered by ブクログアタラクシア以来の金原ひとみ作品。期待していた人間の内面ドロドロは今回は、そこまでの吐露は感じられなかった。 タイトルのデクリネゾンは余すことなく、やフルコース的な意味合いらしい。驚くべきは、金原さんの料理に対する知見で、どちらか言えばイタリアン、フレンチ、メキシカン、インド系に寄りつつも凄い。 コロナ禍に於ける、人と人の関係性、距離感、新しい生活様式の中繰り広げられる、人間ドラマであるが、ストーリーよりも作者の言葉、そして人生哲学に惹かれ、少しずつ少しずつ読みました。また、別の作品も読みたい。
2投稿日: 2022.09.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
人は忘れられたときに死ぬとはいうが、「まあいつか忘れたとしても、その人と一緒に過ごして得たものは残るんじゃないか」という、人間関係はウイルス/ワクチン説が印象に残った。かかわった人から受けた影響は、もう会わなくなった後も原子レベルの爪痕のように刻まれ、ある時突然、ポジティブなワクチンにも、ネガティブなウイルスとしても自分に作用していくという。脳を含めた私もあなたも物質も動物も素粒子であって、食べられたり排泄されたりターンオーバーと循環していくしていくエコ・システムのように考えれば、 「もう会わなくなった人や死んだ人だって自分の中にいくらか残存して私を守ったり攻撃したりしているのだから、星だって消えた後も何かしらの存在にに作用しているはずだ。すべての存在が私に作用し、私の存在もまた、全てに作用している。」 という言葉も理解できる。デクリネゾンが余すところなく用いるというような意味であるとすれば、自分は全世界のイチブで共鳴しているという一体感のようなことを指しているのだろうか。 ところで、原子は曲がるという一節好き。規則正しさというものは存在できず、あいまいであることがデフォルトで、その差異を「わからないね」「変だよ」「きもい」と断じる前に「相手の立場を想像する力」が現代人に必要なスキル第一位かもしれない。想像したけれどわからなかったら、争わずに通り過ぎればいいというスルースキルにもつながる。 ************ 「そっか。二年は長いか」 「二年は、ほとんど永遠だよ」 永遠……。呟きながら、私も若い頃ほどしたくない仕事を引き受けられなかったのを思い出す。今でこそ割り切って報酬と仕事内容を足したものと、プライドと苦手意識とスケジュール的苦しさを足したものを天秤にかけて受ける受けないを決めているけれど、若い頃は依頼書や企画書を読んで一瞬でも「うざ」とか「は?」と思うところがあったら受けられなかっ 「人が大人になっていく過程で身につけるべき能力第一位は想像力です。理解できないのは仕方なくても、圧倒的な力によって傷つけられた人間を見て、自分には関係ないと切り捨てるような人間にはなって欲しくないし、そうならないよう教育してきたつもりです。健康志向で、私の喫煙や飲酒を快く思っていなかった彼は、もしかしたらどこかで酒類提供禁止を喜んでいたのかもしれません。むしろ、酒に依存してた奴らざまあくらいに思ってたのかもしれないです。それくらい、彼の態度は冷淡でした。でもそれは、スケープゴートとして吊るし上げられたライブハウスや、夜の街を叩いていた人たちと同じ心理ですよね。そんな低俗なものに依存しやがってって、鬱憤をはらす行為に等しいです 「ごめんね、もっと頑張るから」 頑張るって言う時点で全然分かってなくない? 私は頑張らなくても溢れる愛が欲しいんだよ! 頑張って捻り出された優しさとか愛情なんていらないんだけど。溢れ出ないなら、私にそれだけの魅力とか価値がないってことだし、それなら別にそのままでいいし、気持ちに正直になってぞんざいに扱えばいいじゃん。えでもそれならどうして私と結婚した 「だから、頑張らないで欲しいんだってば」 「でも、頑張らないと。志絵のことを傷つけたくないし」 シュートの練習とか、受験前の一夜漬けとかじゃないんだよ? 恋人を傷つけない、っていうことをそんなに頑張らないと、傷つけないことができないの? また苛々してきて床を睨みつけて散々肩を震わせて泣いた後、もうなんかとりあえず言いたいことは言えたしいいのかなと思いつつ、私は本当にこれらが言いたかったことなのかどうかまだよく分からない。なんだか自分の中にある鬱憤を、正規ルートとは別のルートで晴らしたような気がするのだ。そして蒼葉を焦らせて鬱憤を晴らして、それでも実際ちょっと気が晴れている自分が情けなかった。もちろん最近の彼の態度一つ一つになんでどうしてと苛立ってきたのは事実だけれど、私はまるで弱い者いじめをしているよう 「家にいる時何してるんですか?」 「ネトフリっすね。も、永遠にドラマと映画観てたいっす」 なんかオススメあります? と聞く彼に、去年映画館で観た映画を薦める。もうネトフリに入ってて、観ててすごく痛いし苦しいし、己の中に存在する全てのトラウマを根掘り葉掘り搔き出されるみたいなシーンが二時間くらい続いて辛いんだけど、最後の三十分で超越的なトランス状態に至れるみたいな、そういう映画ですと言うと、彼はゲラゲラ笑って「プレゼン力ゼロっすね」と声を上げた。 「絶対観ないっす。俺楽しい気持ちになれる映画しか観たくないっすから」 「楽しい気持ちになる映画って、観終えて少しすると逆に苦しくならない?」 「そっすか? ならないっすよ?」 話せば話すほど彼への評価が上がっていくけれど、彼は絶対に私の小説が好きじゃないし絶対に絶対に人としては好きになれないだろうなと思う。それでも、普段マツエクでも美容室でも延々黙っているのに、今日は延々話していた。今日はいつもの担当者がいなかったから指名なしにしたら店長に当たったけれど、これからは店長を指名しようかとさえ思っ 「でも綺麗じゃん」 「綺麗だからするものじゃないんだよ」 「じゃ何でするの?」 「社会的拘束力を持つ婚姻制度に同意してそこに身を委ねることを大勢の証人の前で誓うっていう儀式だよ。私は結婚をただの愛情表現の一つとして捉えてて、本来の意味で結婚してるわけじゃないから、そういう人は結婚式なんて社会的なイベントはするべきじゃないんだよ」 「直人と梨花さん、そんなこと誓ってた?」 「ま、直人はそういうことあんまり考えないタイプかもしれないけど」 「ママも考えなきゃいいじゃん。結婚式はお祭りだよ、てか、 「結婚式挙げる?」 私の涙に気づいていない蒼葉はそんなことを言って、私は苦笑する。 「蒼葉嫌でしょそういうの」 「でも志絵一度もしてないんでしょ?」 「してないけど」 「俺だけの初めても、一つくらいあってもいいんじゃないかなって」 うーんと唸ったあと、考えとくと大きな声で言う。多分挙げないけど、蒼葉の提案は素敵だった。その言葉で、あることにも気づいていなかった傷が癒えたようだった。お風呂から大声でトリップの曲を歌う理子の声がして、私と蒼葉は同時に肩を震わせて笑っ しまう。センマイ刺し、赤身刺し、ユッケの盛り合わせが出てきて、説明を受けるごとに皆が満足そうな表情を浮かべる。この料理の説明を受けている時の人の顔が好きだ。どうでもいい早く食べたいと思っている人、情報もしっかり味わうタイプの人、説明の間にさりげなくスマホで写真を撮っている人、大きく頷きながらも後でこれ何でしたっけと聞くと何にも覚えていない人、人格が出て面白いの 二十年前には何とも思わなかった言葉が、少しずつ時代からずれていき、完全に時代から取り残されこぼれ落ちる瞬間を日々目の当たりにしているのだと思うと、言葉が少し硬めのアメーバのようなものに感じられてくる。デビュー当時、校閲から指摘が入るたびウザいなと思っていた「看護婦→看護師に?」「スチュワーデス→キャビンアテンダントに?」「保母→保育士に?」などの指摘も、今思えば至極当然のことで、私も今は使わないし口語として耳にするとそれだけで相手への不信感を強める。そうした生物としての言葉を使っているのだという自覚を持たなければならないと、ことあるごとに自分に言い聞かせると同時に、腐敗した言葉、エイジングされた言葉の良さもそぎ落とし過ぎないようにしたいとも思う。世の中には腐敗したもの臭いもの、皆が顔をしかめるような珍味が好きな人だっていて、朝採れフレッシュグリーンサラダ(中山さんの畑で丁寧に育てられました)みたいな物を頂点に置く人ばかりではないの
1投稿日: 2022.08.29
