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日米地位協定の現場を行く 「基地のある街」の現実
日米地位協定の現場を行く 「基地のある街」の現実
山本章子、宮城裕也/岩波書店
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総合評価

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    沖縄や基地が所在する日本の地位協定の現場を丁寧に取材している様子が伝わる。 著者が当時目撃時は高校生、ヘリ墜落事故のあった沖縄国際大学に進学、毎日新聞の記者へ。基地外での米軍事故・犯罪の調査について米軍は必ず日本国の当局と取極に従うと日米地位協定第十七条に規定しているが、日米地位協定合意議事録には、日本当局が米軍の財産について「捜査、差押えまたは検証を行う権利を行使しない」と明記されているため、民間地で起きた墜落事故にもかかわらず、日本の捜査機関ですら入ることを拒む米軍。 日米地位協定は、サンフランシスコ講和条約発効、日本独立回復の1952年日行政協定として成立、60年日米安保条約改定とともに現在の形に改定・改称された。約60年経った今日まで一度も改定されていない。 日米地位協定とは、日本駐留米軍の権利について取り決めた日米間の合意、運営の趣旨は、米軍に日本の法律の適応除外を認めることにあり、在日米軍の①基地の利用、②訓練や行動範囲、③無理のない経費負担、④税制・通関上の優遇措置、⑤生活を守るため日本の法律を適用しないような仕組みがつくり上げられているとのこと。 日米地位協定のもとで何が起きているのか、現場を訪ねて問題の核心に迫る。 米軍はこれまで、世界中のほぼすべての米兵犯罪において受け入れ国に裁判権放棄の圧力をかけてきたため、現実的には米兵は母国で裁かれるらしい。 在日米軍は損害賠償責任を負わないので、事件・事故を避けるインセンティブが働きにくい。軍隊としての米軍は民事責任免除だが、個人としての米軍関係者には民事責任が認められている。しかし日本の裁判所が、米軍関係者にも責任がないという主張を認め被害者の訴えを退けたことがあり、米軍の主張に一定の根拠を与えてしまっているという。爆音訴訟は全国展開されているが、飛行差し止めが認められた事例はないとのこと。米軍機の運航について司法は「国の支配の及ばない第三者の行為」として判断回避している。米軍ではなく日本政府が被害者からの損害賠償請求を処理、米軍は全国の爆音訴訟で住民に対する賠償金の支払いを拒否 思いやり予算の負担の背景、米国の深刻な財政赤字と対日貿易赤字の増大への配慮として米軍の度重なる圧力によるものらしい。米軍駐留経費1974億円。 日米地位協定第二四条在日米軍の維持費は米軍政府負担となっているが、在日米軍基地で働く日本人従業員給料や施設整備費、光熱費などの支払い1978年から日本が毎年負担。 名目上日米軍再編費用として日本が全額負担で米軍用娯楽施設を建設。金丸信防衛庁長官が「思いやりの立場で地位協定の範囲内でできる限り協力する」と述べたことに由来した呼称。 青森県三沢基地「三沢は基地とともに発展した。沖縄とは歴史的経緯が違うんですよ」基地と共存共栄を語る。土地を売却して発展してきた三沢と土地が奪われた沖縄との出発点の違い。 日米地位協定第二条 日本国政府及び合衆国政府は、いずれか一方の要請があるときは(中略)施設及び区域を日本国に返還すべきこと(中略)を合意することができる とあるが、岡崎勝男外相とディーン・ラスク国務次官補交換公文には、日本側が米軍専用施設の返還要請しても米軍側の拒否で引き続き使用、使用期限のないという問題点がありという。 日米地位協定第三条には、日本政府は「関係法令の範囲内で」米軍基地の出入りに便宜をはかるとあり、国は米軍に国内法が適用されないよう法整備しているという。 沖縄の負担軽減決議で、青森県三沢と山口県岩国で普天間受け入れの根回しがあったらしい、本土でも考えている自治体があり、全国議長会での米軍基地がある自治体、自衛隊、民間空港があるところへの声掛けでの地域振興に米軍機能誘致、交付金目当ての動きがあった様子も生々しい。 米軍の民間空港使用回数が増大、2014-2018年5年間だけで福岡349回、鹿児島天海空港216回、長崎空港206回、熊本空港82回、種子島空港64回 国内全体1605回の6割を九州の民間空港着陸6割を占める 宮崎県自衛隊新田原基地 爆音緑茶 国防に感謝 隊友会の看板が点在 2018年日米両政府 普天間飛行場返還の条件の1つとして築城基地と新田原基地に米軍用の緊急時受け入れ施設整備の合意 コロナ禍の基地外宿泊 日米地位協定第九条では米軍関係者は日本入国時の検疫を受ける必要がない。馬毛島に自衛隊基地建設で地域振興の期待 日米地位協定第三条第四項では自衛隊基地を使用する米軍には自衛隊(国内法令と大臣命令などが適用)と同じ訓練上の制約が課されていないという。 嘉手納基地 沖縄市嘉手納市北谷町をまたぐ約2000万平方メートルの広大な敷地に日本の滑走路、F15など約100機が常駐する極東最大級の空軍基地 2019年離発着回数4258回普天間飛行場の3倍。 米軍関係者は日米地位協定第九条より自治体への外国人登録が免除、自分の地域内に米軍関係者が何人住んでいるか知ることができない。米兵の安全のためを理由に2012年から市町村別人数を、2014年度からは都道府県別人数を公表しなくなった 基地内居住の米兵は門限があるため、一般に米兵は基地外に住みたがるという。住民税も支払わずゴミの処理も不動産業者と自治体が賄っているらしい。 ネイティブ爆音世代 米軍基地内使用の泡消火剤に含まれるPFOS・PFOA流出汚染問題 有機フッ素化合物で自然環境中では分解されにくく人体に入ると健康被害の可能性がある。胎児への影響、精巣癌がんや腎細胞がん、甲状腺疾患などの関連性の指摘あり 在沖米軍基地各拠点で高濃度の検出、国内での調査での米軍基地での生活用水汚染指摘があっても、日米地位協定を理由に行政調査や問い合わせに応じず汚染水流出を強行 戦争想定の訓練を行う軍隊の行動様式は、日常の安全や平穏を求める住民生活とは根本的に相容れない 戦闘機の騒音が激しいのは静かに飛ぶという発想が戦闘とは無関係 人口の少ない地方、過疎地へと基地が集中し、大多数の日本人が考える必要に迫られない地理的優位性、米軍の訓練が住民の生活や安全を脅かしているが、中央から周辺へ人口の多い地域から少ない地域に訓練場所を移して犠牲を強いることでしか解決していない政府の小手先のやり方こそが問題と指摘。

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    投稿日: 2025.01.05
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    【「上からのひきとり」の進行】 三沢、厚木、岩国、嘉手納の米軍基地と築城、新田原、馬毛島の自衛隊基地の街が「日米地位協定の現場」として描き出される。本紙でもささやかながら築城、新田原、馬毛島の基地問題を報じてきたが、本書で掘り下げられた続報が得られた。 近年は普天間、辺野古以外の米軍基地問題について本土メディアがふれることは極めて少ない。三沢、厚木、岩国、嘉手納基地周辺の住民たちが直面している、日米地位協定のもたらす不合理を、本書からかいま見る必要があるだろう。 ひきとりの観点からは、岩国市議会議長の桑原が2013年からすでに「沖縄の基地負担の軽減に協力する」決議を、全国議長会を通じて基地を抱える自治体議会に呼びかけていた事実が興味深い。 結果的には三沢、岩国や築城、新田原、馬毛島に対して「上からのひきとり」が強力に推進されてきており、人口の少ない地域に補助金・交付金を代償とする基地負担が押しつけられる構造は微動だにしていないし、中央の意向に逆らう本土地方自治体には容赦なく「ムチ」がふるわれた。 しかし、こうした決議からは「安全保障は国の専管事項」と諦めない、地方自治へのヒントは得られそうだ。 (てんきりん@本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会)

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    投稿日: 2024.08.10
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    毎日新聞記者の宮城裕也さんの労作だと思う。共著者の山本章子さんも研究者として力を注いだのだろうが人としての姿が見えない。失礼。 我が物顔の米軍が暴虐の限りをふるえるのは日本の政治家どもが国民を守ることを二の次にしているからだとはっきりわかる。なあにが国を守るだ。てめえの利益を後生大事にして、クソッタレめ。

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    投稿日: 2023.12.31
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    「日本にアメリカの基地があるとはどういうことなのか?」もあるけれど、「そもそも誰かが住んでいるところに基地があるとどういうことが起きるのか?」など広く状況を知り、わかりやすく問題を知ることができました。 どうしようもない部分もあるのかもしれないけれど、それにしても行き過ぎではないのか?ではどこまでなら許されるのか? 色々難しい状況の今は、基地周辺の人たちと信頼関係が必要なのに逆の対応、行動をしているように思う。

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    投稿日: 2023.09.18
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    日本の米軍基地の様々なところを取り上げて、その問題を日米地位協定で説明している。山本章子が筆頭者になっているが、実際は宮城裕也が新聞記者として回ったところの説明である。嘉手納基地だけではなく、三沢基地、岩国、築城、新田原、馬毛島、首都圏の基地について書かれている。  首都圏の基地が手薄であるように感じられるので、厚木基地、横須賀基地、横田基地について、また別の本で、首都圏の基地としての問題を書いてほしい。  日米地位協定と米軍基地について、ところどころに大学生からのインタビューもはいるので、学生が知るのにはわかりやすい本であり、ところどころに大学生からのインタビューもはいる。

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    投稿日: 2023.06.24
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    日米安保、日米地位協定、日米合同委員会、などを日本がアメリカの占領家にあるが、如き、在日米軍の様々な動きについて、日ごろからどうして変更できないのか?いつまで第二次大戦の敗戦結果を引きずらなければいけないのか?いろいろ考えてきたことが多いが、三沢基地、横田基地、厚木基地、岩国、飛行場、その他、自衛隊の様々な基地の米軍使用の実態、馬毛島を始めとする沖縄米軍基地のさまざまの問題など改めて教えられることが多かった。

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    投稿日: 2023.03.15
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    「騒音も僕は別に気にしていない。でも特に県外の人にはそれが当然の状況とは思われたくない。関心ないだろうなと思うけど、本当は来てもらって、こういうところに住んでいるという現状を知ってほしい」 本文の最後に置かれたこの独白は一見アンビバレントだが、それは非当事者の勝手なジャッジなのだろう。受けいれることと、押しつけられていることを許すのは違うのだ。 タイトルを「基地」とせず「日米地位協定」としているところがミソで、基地問題は多くが地位協定の不備と、それを利用しているかのような国の無策を原因とすることがよくわかった。

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    投稿日: 2023.02.22
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    日米地位協定がもたらした、基地のあるまちの犯罪、騒音、環境汚染。国の安全保障がなぜ国民の日常を脅かすのか。丁寧な取材で明らかにする。

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    投稿日: 2022.08.22
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    安全保障を多面的に考える上で重要な一冊。これから人口がますます都市に集中するうえで、基地周辺に残る人たちをどう考えるのか示唆にとむ。

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    投稿日: 2022.07.08