
総合評価
(75件)| 24 | ||
| 31 | ||
| 14 | ||
| 2 | ||
| 1 |
powered by ブクログもはや小川哲氏のファンになったので、理由なく手に取る。 重厚ながら、ストレスなく読める文体。 ご都合主義に終始しないストーリー。 素晴らしい読書体験。 短編だからか話が着地しきっていないようなところはやや物足りなかった。
1投稿日: 2025.11.23
powered by ブクログ大雑把に言えばタイムトラベルと歴史に関しての短編集といったところか。 各短編の良し悪しにはかなりの差を感じた。 だが概ねどれも興味深く読めたのは確か。 名馬スペシャルウィークの血統に我が身を重ねる『ひとすじの光』は 競馬好きにはたまらない内容。 自分が一番競馬に熱を上げていた時期の名馬に関する物語が読めるとは。 そしてこれほどまでに熱い血の浪漫が読めるとは、そういった感動があった。 そして表題にもなっている『嘘と正典』 これは長編で読んでみたいと思うぐらいの出来だった。 マルクスとエンゲルスの出会いを阻止することで共産主義の消滅を企む。 構成とオチは完璧。勿論、その結末には驚かされたに決まっている。
0投稿日: 2025.11.13
powered by ブクログSFの基本のキと言っても決して過言ではないだろう時間に関するSFがぎゅっと詰まった一冊。僕は、ムジカ・ムンダーナが一番気に入りました。 四次元HIP-HOPばり収録全作が面白い短編集でした。
0投稿日: 2025.11.11
powered by ブクログ単行本からの再読。SFを基軸にミステリや歴史などのジャンルを横断した作品集。改めて読むと著者のその後の作品に登場する、小説を連綿と続く系譜として位置付ける発想や、実験の失敗から信じ難い真実へと辿り着く合理主義的な科学者などの要素が垣間見られることがわかった。
2投稿日: 2025.11.08
powered by ブクログSFって好きだけど疲れるから読むのは多くなくて、でも短編だと物足りないみたいな立ち位置だけど、これは全然物足りなくない。短編なのにちゃんと完成されてるって隙がないな。個人的には、最後の不良、嘘と正典、ムジカ・ムンダーナが好き。
0投稿日: 2025.11.06
powered by ブクログ話の展開がSFでおもろい。嘘と正典はタイムマシン、運命が決められている、歴史の改変し合いの戦いで面白かった。あとは究極の音楽を探す話も。どれも伏線があって最後には驚きがある。ただ登場人物はどの人もCPUみたいで記号のような形で感情は無い。
0投稿日: 2025.11.04
powered by ブクログ6篇の短編で構成される短編集。 時間スケールは異なるけれど「歴史」が横串のキーワードではないかと思う。 共産主義の打倒を目指し時空間通信で歴史改竄を企てる表題作の「嘘と正典」は伏線の回収で何度もゾワッとさせられるし、過激な正義や短絡的な介入は歴史や状況を変えないということを再確認させてくれる。他の作品もそれぞれ毛色が違ってどれも面白い。 個人的にはひとすじの光が好きだ。名馬スペシャルウィークの血統を遡りながら自分の血筋が明らかになっていくが、その過程がなんとも不器用な父親からの愛に感じられてホッコリする。やはり小川哲、侮るなかれだな。
1投稿日: 2025.10.29
powered by ブクログ書くのを忘れていたか、書いたのが消えたかしたが、非常に面白かった。 おそらく初めに収録されていたボドゲの話と、競馬の話、ヒトラー?の話(だっけか)が印象に残っている。
1投稿日: 2025.08.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
SF短編集。この短編集ひとつであらゆる時代のあらゆる物語が楽しめる。作者の着眼点・想像力が凄まじい。ただし、ものすごく分かりやすい文章にしてある所為か、文学的な要素は薄いと感じた。 ○魔術師 父親の世紀のマジックを、姉が再演しようとする話。結局タイムトラベルを実際にしたのかどうか分からないままで、余韻の残るラスト。そこまで好みではなかった。 ○ひとすじの光 作者の競馬愛がひしひしと伝わってくる作品。誰にも注目されず、ひっそりと現役生活を終える競走馬の一頭ずつにドラマが込められていることがわかった。 ○時の扉 個人的には今作で一番微妙だった作品。あまり記憶に残ってない。 ○ムジカ・ムンダーナ 個人的には今作の中でベスト。音楽を通貨とする部族の設定が面白かったし、それに魅了された父と子の物語もとても素敵だった。 ○最後の不良 流行が消滅し、個性を出すことがダサくなった近未来を舞台に、懐古厨たちが暴れ回る話。と見せかけて、全て仕込みだったというオチ。これだけで長編一作できそうなくらい面白い設定だった。 ○嘘と正典 一番ボリュームがある表題作。冷戦期のモスクワを舞台にしたがっつりSF。エンゲルスとマルクスの出会いを阻止することで、共産主義を世界から抹消しようとするCIA職員の物語。冷戦期のスパイ活動の緊張感がしっかりと伝わってきて、とても楽しめた。
0投稿日: 2025.07.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
短編集でこんなに全部面白いことある!?ってくらい、良かった、とても楽しかった。 ・魔術師 マジックが文面でこんなに生き生きと表現できるんだと圧巻。思わず心を掴まれる臨場感のある演出描写、含んだ終わり方も全部好きだった。めちゃめちゃ好み。 ・ひとすじの光 競馬すぎて面白かった(笑)競馬好きとして非常に楽しめた。小川さんが競馬好きとしか思えないくらい熱意感じた(笑)血統のロマンがふんだんに描かれていて、ますます血統の魅力を感じました。 ・時の扉 ファンタジー要素強め。いちばんよく分からなかったけど、世界観や価値観を楽しめたかな。抽象的で少し難しめ。 ・ムジカ・ムンダーナ 音楽を通貨とする島のお話。独特の世界観が面白かった!オチも好き。良い。 ・最後の不良 星新一っぽい社会風刺めいた話。とても好みだった!これ短かったけど、もっとこの世界観楽しみたかったなあ。 ・嘘と正典 共産主義の話は難しかったけれど、分かりやすく書いてくれていたので、話はすっと入ってきた。何よりタイムトラベル絡みなのが面白かった。話としては短かったけど、充実度がとても高い!クオリティの高い短編だった。 全体的に、嘘や歴史が共通しているような感じがして、繋がりも楽しめた。 どれも短編ではもったいないくらいに好きな世界観で、クオリティが高かった。 すっごく好きでした!楽しかった。 (オーディブルにて)
4投稿日: 2025.07.03
powered by ブクログ歴史絡んだSFはかなり好みだった。歴史ネタじゃないものも柔らかくて、油断できない雰囲気の筆致と相まって飽きない。SFらしく読後はモヤモヤがあるけど(それを楽しむのがSFだと思うけど)SFを読み慣れない私には、解説が優秀だと感じた。いままで解説に満足したことなかったけど、この文庫は解説までセットで高評価。
1投稿日: 2025.07.03
powered by ブクログめっちゃハマったわけではないが、SF的な面白さが込められた短編集。読みやすさ含めて1作目の「魔術師」が好きだった。
0投稿日: 2025.06.14
powered by ブクログ良いテンポで読めた。短編6つとも面白いなって読むのは意外に珍しい気がする。いくつかは長編にしても退屈しなさそうなテーマな分、キレイにまとまっているのをこじんまりしていると思うか作者の力量と思うかは評価が分かれそう。もっと読みたい、と思う人は少なくないのでは。 個人的には「ムジカ・ムンダーナ」が一番だったかな
0投稿日: 2025.06.10
powered by ブクログSFというジャンルを超えた作品 ファンタジーかな。とても楽しめたんだが、表題作と馬の話はギブアップ。物語というよりモノが旅って感じで、幕の内弁当風が良いな。
0投稿日: 2025.03.15
powered by ブクログめちゃくちゃ面白かった。一度で理解しきれず、繰り返し読んだのに、それでも理解しきれない。読むたびに新しい発見がありそう。
1投稿日: 2025.03.09
powered by ブクログ頭を使って読む本。 とにかくいろいろ理屈を考えないと、話に付いていけない。面白いけど疲れる。す~っと頭に入ってくる話はグイグイ引き込まれるけど、引っかかってしまうとそこで止まってしまう。短篇ごとに、読む人の知識や考え方を選んでいる気がする。全編楽しく読める人はいるのかなぁ。 自分は、表題作が一番面白かった。
0投稿日: 2025.01.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
―― 可能性の塊みたいだね。 小説のジャンルを「スタイル」と「ストーリィ」と「テーマ」に分けるという考えがとてもしっくりときて。 そも、小説が自らを特定のジャンルに縛るなんてナンセンスだよなぁと思ってきたので(結果ブクログのジャンルタグは増えに増えている)、この自由さは、なんでも答え合わせばかりして自らの可能性を狭めている最近の若者たちにもっと広まってほしいものだと思うのだけれど。 簡単に喩えるなら、盛り付けと調理法と食材、みたいになるのだろうか。何をどうしても美味けりゃいい、わけだけれど、なんでもかんでもカレーにしちゃうひとはいるよね、という感じ。 そのあたり、小川哲という作家のそのバランス感覚には脱帽、である。 とっても美味しかった、です。 ☆3.6
0投稿日: 2025.01.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ユートロニカでただならぬ雰囲気を感じてこちらの本をチョイス。 結論、この作者はめっちゃくちゃ面白い。 この本自体は6つの短編からなるが、短編とは思えない密度を保ちつつショートならではの小気味良さも持ち合わせているので面白い。 個人的には「魔術師」が面白かった。タイムマシンというマジックを披露した父の後を追って、数十年に渡ってトリックを準備し、後戻りのできない一世一代のマジックを披露する姉という短いながらも起承転結のしっかりした構成が好き。 表題の「嘘と正典」も小難しい感じはあるもののすごく練られていて面白い。
1投稿日: 2025.01.13
powered by ブクログいずれの文章も難しい内容をクドクドと説明しているような印象を感じてしまった。その文章を理解するためにこちらも頭をフル回転させないと理解出来ないぐらい難しく内容が入ってこなかった。理解出来たとしても、メッセージとして感じ取れるようなものはなかった。 作者の文章との相性が悪いこともあり、読み終えることなく半分程度で終了。
0投稿日: 2024.12.09
powered by ブクログ「この表紙のおじさん誰だったっけな……見たことあるんだよな~!」 というレベルの人間も夢中で読んだ表題作だった。 どれも面白かったけど、お気に入りは表題作と「時の扉」。 場所や時間を引っ張りまわされながら懸命についていく感覚が良かった。 表題作のオチについては、どっちになればよかったんだろうと考え込んでしまった。 そして、物語というのは“正解”に辿りつくためのものじゃないんだよな……と改めて思った。 小川さんの作品はこの本が初めてだったけれど、物語を誠実に紡ぐ作家という印象。 登場人物たちの意志が確かに感じられて、「ここがこうなればこうなるし、あそこがああなればああなるよな」という納得がある。他の作品も読むのが楽しみである。
0投稿日: 2024.12.07
powered by ブクログ直木賞作家・小川哲の、以前直木賞受賞候補作になったSF短編集。6篇が編まれている。どれも独立した話だが、共通項に、過去と未来、父と息子、血脈、歴史改ざん、などを持つ。少し小難しく、気品があり、魅力的だ。謎めいた話の立ち上がりから注意深く読み進め、その短編の世界観を徐々に把握し、やがて筋はクライマックスを迎え…ホーっ、そういう展開ですか…。どれも複雑に構成された物語で、これぞ短編という味わいがあった。 「魔術師」は、かつてメディアで人気を博したマジシャンが再び表舞台に立ったとき、ステージ上でタイムトラベルのマジックを披露し、消えてしまった。そのステージの動画を何度も何度も見返す大人になった息子と娘。父は本当に過去に戻ったのか?父のマジックを再現しようとする姉。終始謎めいて不穏な雰囲気。 「ひとすじの光」は打って変わり、競走馬の血統をたどる話。疎遠だった学者の父は病に伏せっていた。亡くなる数日前に病室に呼び出された作家の息子は、父が唯一処分しなかった財産である競走馬についての父の原稿を読む。この馬のルーツを辿りながら、いつしか自分のルーツに思いを馳せる。 「時の扉」は、ファンタジーめいた話。どんな話なのかなかなか掴めない。古いヨーロッパのおとぎ話もしくはシェイクスピアの戯曲を読んでいるような感覚で読み進めているうちに、これは…!ある歴史上の人物の話なのだとわかる仕掛け。過去を認めず改ざんしていくと、時間は線形ではなくなる。 次の「ムジカ・ムンダーナ」は、異国情緒溢れる不思議な話。フィリピンの離島に、通貨の代わりに音楽で商取引がされる島がある。取引のために披露された楽曲は、徐々に価値を失っていくという。島の最高峰の音楽はまだ誰も聴いたことがない。かつてその島を訪問し帰ってきた作曲家の父は、以降いっさいの活動をやめた。父の遺品の中に古いカセットテープを見つけた息子は、印象的な曲が録音されていることを発見し、島に渡る…。 「最後の不良」は近未来の日本。流行を追いかけ続けることに嫌気が差し、オシャレを志すことがダサいと言われるようになった無機質な日本。トレンド情報誌の編集者だった主人公は、売れなくなった雑誌を横目に辞表を叩きつけ、特攻服を来て暴走族となるが…。ちょっと星新一テイストを感じた。 そして表題作「嘘と聖典」へ。冷戦の時代のソ連が舞台。主人公は、CIAの工作員。ソ連側の技士が寝返りたいと接触してくる。どうやら過去にメッセージを送る装置が開発されたそうな…?そこで、共産主義の祖であるマルクスとエンゲルスの出会いを阻止することで共産主義の誕生を阻止し、冷戦の原因を根絶できるのではという発想に至る…。果たしてこの歴史改ざんはどうなる。冒頭の伏線を回収するラストで、ふーっと満足感とともに本を閉じる。 贅沢な読書体験だった。
13投稿日: 2024.11.17
powered by ブクログ時の扉以外は全て面白かった 表題作は特に話の密度が濃くて良いです やはりこの作者の文章が好き また他の作品も読みたい
0投稿日: 2024.10.20
powered by ブクログ硬派な文体が好み。特に最初と最後の話が面白かった。残りの作品は、あと一歩、物語のおいしいところを感じられなくてもったいないと思った
3投稿日: 2024.10.04
powered by ブクログ君のクイズ、ゲームの王国に続いて3冊目。 総じて難しいんだけど面白かった。教養が自分にあれば最高だったかも。 それぞれの短編を読んでる間は難しいし、なんだこれ?みたいな感じで進んでいくけど、読み終わったら面白い!すご!ってなるような感覚。個人的に。 お気に入りはひとすじの光です。
1投稿日: 2024.09.15
powered by ブクログ全体的に少し難しかったが、面白かった。 特に好きなのは「嘘と正典」はじめは何やこれ?と思ったが、途中からわかってきてドキドキした。 「ムジカ・ムンダーナ」も結構好き。歌うような言語ってどんなだろう、と想像しながら読んだ。音楽が通貨や資産になるという発想にびっくりした。 「最後の不良」は流行に関しての考え方が面白く、共感できるところがあった。私はどちらかと言うと流行気にしない派だけど、主人公の気持ちを知って、そんな考え方もあるんだなぁと面白かった。
4投稿日: 2024.09.03
powered by ブクログ物語が快適で読みやすい本は多いけれど、読み応えのある本を手に取ったのは久しぶり。ぐいぐいと没頭して読みました。 なんというか、脳みそフル回転で読む、という感覚でした。 作家が発表する作品は、その時代に衝撃を与えることも多々あると思いますが、私にとってこの作品がまさにそれ。 『地図と拳』に行く前に、他作品も読んでおこうと思います。
2投稿日: 2024.08.24
powered by ブクログ1年ちょっとぶりの再読。去年読んだ時も面白くて星5つ付けたけど、改めて読んだら星12個くらい付けたいぐらい面白かった。 前回読んだ時に衝撃を受けた魔術師がやはり強烈。“ある”か“無い”かは意見が分かれるのだろうけど、個人的には無い方が理道の、そして姉の狂気が際立つと思うので無し派で。 表題作は前回はあまり頭に入ってこなかったけど、改めて読んだらとても面白かった。 この1年でテッド・チャンを読んだので時の扉の見え方がちょっと変わったのも面白かったり。 地図と拳、分厚くて大分身構えてしまうのだけど読んでみようかな
1投稿日: 2024.08.05
powered by ブクログこの短編集の感想を書くのは難しい。バラバラの話だが同じような世界観で描かれているような。 時間を超えてマジックを見せていくような魔術師、共産主義の時代を将来から過去に繋げていくような嘘と正典、名馬の血統の繋がりを探し出すひとすじの光。 この感じが好きな人にはハマるだろうという作家は多いが、私にはちょっと面白さがわからなかった。他の人の感想にあった回収が見事、という点を探し出せないところが多くあり。
10投稿日: 2024.05.25
powered by ブクログ表題作の中篇を含む6篇の短篇集。また、時間を題材にした作品集でもありました。 どれも良かったですが、特に気に入ったのが 『魔術師』『ひとすじの光』『嘘と正典』です。 『魔術師』 売れっ子マジシャンとして大成した父は、積年の夢だった「魔術団」を結成します。しかし、天才的な演出力や演技力があっても、事業を取り仕切る才に欠け、借金を重ねて零落し、ついには妻と離婚して姿を消します。 ある時、再び表舞台に復帰した父は、僕と姉を公演に呼び「仕掛を見破って、恥をかかせたくないか?」とマジシャンになっていた姉を挑発してきます。はたして、父の人生を賭けたタイムトラベルマジックは本物なのか… マジシャンがやってはいけない三つのことという「サーストンの三原則」。これに挑戦するという演出から、過去の好きな時間に飛ぶ片道のタイムトラベルは、アニメ『シュタインズゲート』のバイト戦士(鈴羽)の手紙を思い出して、涙腺が緩みそうになった。ラストは、読者に想像を任せる終わり方なので、謎は謎のままですが、これはこれでいいと思いました。 『ひとすじの光』 亡き父の残した競走馬と病室で書いていた未完の原稿。生前は、相続に関する手続きをほぼ終えてしまうほど几帳面だっただけに、競走馬の処遇を決めずに逝ってしまったのが謎でした。 その謎を解くため、父の原稿を読み始めたところ、スペシャルウィークの系譜を遡るところから始まっていた… 実在のダービー馬であるスペシャルウィークの血統を遡って行くうちに、作家の息子が父の思いを理解していく感動作。終盤は、まるで競馬の実況を聞いているような臨場感。ラストは、そこから新たな物語が始まるかのような終わり方が秀逸でした。 『嘘と正典』 時は米ソ相対する冷戦時代。ある日、モスクワ駐在の米大使館員(CIA工作員)が、接触してきたソビエトの電子電波研究所の技師から機密情報を得るようになります。周囲はKGBの監視が張り巡らされた、不自由な諜報活動。そんな中、技師は偶然にも「過去にメッセージを送る方法」を発見します。 それを知ったCIA工作員は、自分の過去に影を落とす共産主義を消滅させるため、マルクスとエンゼルスの出会いを阻止しようと歴史改変を試みます… ミステリではないですが、伏線の回収が見事ですね。後半は、スパイ小説さながらのハラハラドキドキしながらの読書でした。しかしながら、何をもって正しい歴史とするのかとか、最後はいろいろ考えさせられました。
26投稿日: 2024.05.21
powered by ブクログ短編集でした。最初のは面白かったが、意味が分からないのもあった。他の長編の本も難しかったので、私の理解が追いついてないだけだと思う。
0投稿日: 2024.05.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
魔術師、一筋の光、時の扉、ムジカムンダーナ、最後の不良、嘘と正典の6つの短編。 個人的に魔術師、嘘と聖典は素晴らしかった。 魔術師 最後までタネがあるのかないのかわからない終わり方がとてもオシャレでよかった。 嘘と聖典 謎の導入から、共産主義の誕生へと繋いでいきSF超大作になっていてとてもよかった。これだけで映画が作れそう
0投稿日: 2024.05.06
powered by ブクログ短編は作家の実験の場であると同時に、読者からするとその作家が自分に合うか確かめる材料でもあると考えている。 小川哲さんはすでに十分面白いことは分かっていたが、これはさらに上回った。解説にもあるようにSF×文学×ミステリの装いもあり、時間を超えた物語が6つ。どれも意外な場所に連れて行ってくれる作品で『ムジカ・ムンダーナ』が個人的には一番好き。小川さんの作品は父と子がテーマとなっていることが多い。相容れなかった関係性の謎が解き明かされた時、違う景色が見える。 なんて面白いんだ。
1投稿日: 2024.04.27
powered by ブクログ短編小説集とは知らず ゲームの王国を読んで以来、小川哲さんにひかれ 全部読みたいと思って購入しました。 6作品いろんな顔をもつ話で こんなにあちこちからよく思いつくなー と本当に感心しました。 どこか哲学的であるところ 哲学や、外国の話が日本人が書くから 読みやすいのも魅力ではないでしょうか? 特に好きなのは ムジカ・ムンダーナ 最後の不良 嘘と正典 SFの世界と本当の世界のギリギリのラインを 攻めるところが、現実味のある ありえるかも的な面白さで 引き込まれました。 薄い本なので、ぜひ手にとってみて欲しいです。 君が手にするはずだった黄金について も全然日常的ながら、SFよりではないのに 最近とても面白かったし 内容や、書き方も 幅が広すぎる、素晴らしい作家さんです! 余談 地図と拳も読みたいけど、太すぎてー 電子書籍を利用してないので 電子書籍端末を買おうか悩むくらい。 でも、まだ本がすきなんですよねー 本の匂いと、質感がたまらなく好きで 本好きの方はもう電子書籍にしてるんだろうかー??
10投稿日: 2024.03.16
powered by ブクログSFはあまり読まないですが ハイレベルなSFなんだろうということは分かる笑 クリストファーノーランを文章にした感じ
1投稿日: 2024.03.03
powered by ブクログ普段SFは全く読まないのですが。 読んでも星新一くらい。 SFは怖いのだ。ひやっとする。ホラーはこれから怖がらせるぞー、怖がってくれー、とあからさますぎて逆に怖くなかったり、ファンタジーは冬の暖炉のように暖かいのに。 前回文藝で読んだ神についての方程式があんまりにも面白かったので選んでみました。 発想が面白い。騙された、と思う。 嘘と正典は、わくわくしたし。 でも、神についての方程式の方が好きだなー。 私は男性一人称で、男の人の自意識をテーマにした小説が極端に苦手なのです。なんか気持ち悪くて。ほとんどの純文学は駄目だし、サリンジャーは愛しているけれどライ麦畑は開かないし。なので父親との葛藤をテーマにされると勝手にしてくれ、と思ってしまった。 でも小川哲さんの本はもっと読みます。 時間をテーマにした物語群っていいですね。 SFは近未来が多いからそこに切り込んでいくな んて斬新な視点になるし。 最近とても頭の良い友人と話してて、意識して頭を使う人が天才なのかもしれないと思うようになった。 一つの話の中で色んなストーリーが同時進行で進むのでたまに訳わからんくなるけれど整合性が取れていてすごいと思いました。映画みたいな?パルプフィクション。
3投稿日: 2024.02.26
powered by ブクログ6篇の短編集。「ひとすじの光」と「ムジカムンダーナ」父親が亡くなったことにより残された息子が宿題を解く物語だと思った。「嘘と正典」が一番面白かった。最初に書かれた部分をよく覚えておくと最後になるほどと納得する。
8投稿日: 2024.02.18
powered by ブクログAmazonオーディブルで聴いた。 面白かった^_^ 最近、半沢直樹とかばかりなので、もっとロマンのあるものを読みたかったので、良かったよ(ロマンとはなんぞや)。 私はテッド・チャンが合わなくてあまり好きじゃないけど、「嘘と正典」もなぜかテッド・チャン風味を感じたけど、こちらは好きです。 馬の話と音楽の話が特に良かった。 表題作は、ある一文を聴き落としてて混乱して、再度聴いてやっと分かった(^_^;) オーディブルはそういうのが不便。読み直したい・聴き直したい箇所をピンポイントで読む・聴くのが難しい。 以前、小川哲の「ゲームの王国」上巻をオーディブルで聴いて、いくら聴いても一向に面白く感じなくて挫折してるけど、これは楽しめて良かった。
4投稿日: 2024.02.16
powered by ブクログ初めて小川哲を読んだ。本書は短編集なのだが、ジャンルを縦横無尽に行き来し、古今東西の登場人物が出てくるのも意外で面白かった。「魔術師」は難解というわけではないのだが、理解に追いつかず何度も読み返した。そして、タイトル作の「嘘と正典」はそれこそジャンルレスで面白かった。他の作品も読んでみようと思う。
0投稿日: 2024.02.09
powered by ブクログAudibleで聴いた。 短編集。 表題作の、「嘘と正典」がとても面白かった。 それ以外は星4。 「嘘と正典」は、ハラハラドキドキするし、どうなるのか続きが気になった。 「魔術師」の冒頭は、怪盗キッドも同じようなこと言ってた気がして引き込まれた。
2投稿日: 2024.01.22
powered by ブクログこの人の本を読むのははじめて。 「魔術師」「時の扉」「嘘と正典」がよかった。「魔術師」が特にこのみ。 「最後の不良」は本当に起こりそうな話だなと読んでて思った。
1投稿日: 2024.01.21
powered by ブクログ「最後の不良」は最近のミニマルや質素さが流行っていることへのアンチテーゼとして面白かった。確かに見栄を張らないことが素晴らしく嘘をついてアピールすることがいやらしいという価値観が強すぎる気がする。このあたりは最新作のテーマに近いかもしれない。 「ひとすじのひかり」「嘘と正典」は話の規模は違うが歴史を元にした話の上手さが面白かった。史実に枝葉を出して物語にする発想と技術がすごい。
0投稿日: 2023.11.26
powered by ブクログこの本を手に取ったきっかけは、小川さんの[君のクイズ]がおもしろかったこと、表紙のひげ面のおじさんが誰なのか気になったからだと思う。 今回の[嘘と正典]は六篇からなる短編集である。すべてSFというくくりにされるお話になっているが、全く雰囲気の違うお話となっていて飽きずに楽しめることができた。 特に「時の扉」「嘘と正典」に関しては、時間を駆ける物語になっていて、タイムスリープものが好きな自分の性分もあって、引き込まれるようにしてパージをめくっていった。 最後に表紙のおじさんの正体もわかった。エンゲルスさんの共産党宣言のように、今私たちに大きな影響を与えているものは、どこでどのようにして生まれたのかについて自分は知らないことが多いなと思った。こういった影響を与えているものは何かしらの偶然から生まれたものも多く、そういった偶然がつながり、今もつながっていることはすごいなと感じた。
3投稿日: 2023.11.19
powered by ブクログどれも面白かった。文庫の表題にもなっている「嘘と正典」はスケールも大きくてハラハラさせられるし、あったらヤバイという恐怖感でハマる。 全体的には父親と子供との確執とか、未来からのメッセージとか、そう言う色合いが濃かった。宗教とかイデオロギーとか、そういう色は他の作品に比べて薄めだったが、作品中に見せる音楽、手品、文化などの知見の広さ、鋭さ、そしてそれを文章にする技量の高さに、いつものように感心させられた。
0投稿日: 2023.11.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
難しいかった… 短編ひとつひとつにそのテーマとなるものがぎゅっと深くつまっているので、自分自身も興味があることに関しては、とても面白いが、そうでないものはちんぷんかんぷんだった。 興味の広さと深さ、両方兼ね備えたとても興味深い作家さん。
4投稿日: 2023.10.16
powered by ブクログ「魔術師」が最高に面白かった。小川さん天才だわ〜。ある意味「君のクイズ」に似てたかな。◇歴史上の人物が出てくるのもあり、歴史に無知なのでスマホで調べて読んだ。◇「最後の不良」で、無が流行るってあったけど、似たような記述は村田沙耶香さんの短編にもあった。リアルであるかもねー
1投稿日: 2023.09.16
powered by ブクログ嘘と正典(小川哲/ハヤカワ文庫) 「地図と拳」で直木賞を受賞した小川哲さんの中短篇小説集。簡潔に言えば、めちゃくちゃ面白い小説。小説に没頭して夜中まで読んでしまうということは多々ありますが、本作では読みたくて早起きしてしまいました。 勝手に分類するとミステリー1篇、家族史的人生ドラマ1篇、修辞的歴史ドラマ1篇、家族史的ファンタジー1篇、ショートショート的1篇、伝奇SFミステリー1篇の6篇。 どれも面白く読めます。その中で凄いと思ったは「嘘と正典」、「ひとすじの光」、「魔術師」。 「嘘と正典」 100ページの中篇ですが、物語の骨格というか前提が凄いです。この内容であれば、1篇の大長編小説にしてもよかったのではと思うくらいの濃い内容。冒頭の裁判シーンから結末まで、緊張が続き、読み終えた後の開放感は快感でした。 「ひとすじの光」 競馬の好きな方は必読。「なるほど、こう来たか」というのが素直な感想。昌次郎の言葉んk罪悪感を覚えました。 「魔術師」 面白いとしか書けません。 どの作品も作者の発想に驚かされます。文庫本裏の紹介文は余計です。何も知らずにガツンとやられるのが本書の正しい楽しみ方と思います。「圧倒的な筆致により日本SFと世界文学を接続する」は大袈裟ではないような気もします。
7投稿日: 2023.08.16
powered by ブクログ本好き友人に勧められて読む。 短編集なのにどの作品も読みごたえあり、捨て作品なしと思いました。アイデアが結構斬新です。「君のクイズ」も別の本読みにお勧めされてたけど装丁とかあんまり心動かされなかったのですが、こっちも是非読んでみようと思ってます!! 直木賞受賞作の「地図と拳」はその分厚さに怯んでいます、、。
3投稿日: 2023.07.30
powered by ブクログ資料をまとめ上げ、一片の物語に収斂させる力が凄まじいと感じた短編集でした。 それぞれ、テーマもモチーフも全然違う!
3投稿日: 2023.07.26
powered by ブクログ・久々にいわゆるところの「珠玉」の短編集に出会った、というがまずの感想。 ・段々と複雑になっていくものの、読み進める価値がある。
0投稿日: 2023.07.24
powered by ブクログこの人の物語には、特殊なこだわりを持った人物が登場する。 『ゲームの王国』『地図と拳』には、そんな主人公が活躍していた。 この短編集では、少し影が薄いような気がする。 それでも、筆者独特のロジックを用いて読者を魅了する。 「魔術師」「時の扉」「嘘と正典」はまさにそれ。 「ひとすじの光」と「ムジカ・ムンダーナ」は、「父と子」の物語で、「地図と拳」にもつながっている。 お気に入りは、「ムジカ・ムンダーナ」 ちょうど映画「地獄の黙示録」をみた後で、ちょっと違った影響を受けてしまった。
3投稿日: 2023.07.18
powered by ブクログ文章の癖がなくて、とても読みやすい。謎解きの要素もあり、舞台や歴史も様々だが、違和感なく話が読み込める。表題やあらすじのインパクトから予想していたより、あっさりしている。
0投稿日: 2023.07.08
powered by ブクログ最後の不良と嘘と正典はかなり面白くて夢中で読み進めた。 競馬の話や魔術師、島の話などやけに父親を絡めた題材が多く、ちょっと飽き飽きしてしまった。
1投稿日: 2023.06.11
powered by ブクログSFという道具を使い,歴史の再解釈を試みる短編集.物事を層として多角的に解釈し,その一思考を明文化しているように感じる.多角的な解釈は研究者のような側面を彷彿とさせるが,そうか博士課程で研鑽を積まれたのかと,妙に納得する.円城塔氏と似た匂いを感じる.
3投稿日: 2023.05.15
powered by ブクログ巻末の解説ではジャンル横断的と書かれていたけれど、横断というほど何かを強い技術で混ぜているといった印象ではなく、さまざまな要素がそれと感じないほど自然に混ざって成立している作品群だった。
0投稿日: 2023.04.20
powered by ブクログ小川哲さんは村上Radioで知ってはいたのだが読むのは初。何気なく手に取ったのだがどの話も完成度が高く面白く不思議なジャンルの小説だと思った。表題の嘘と正典が一番面白いのは間違いないけど、個人的にはムジカ・ムンダーナがお気に入り。
1投稿日: 2023.02.26
powered by ブクログ短編集。歴史と小説のクロスオーバーだし、エンターテイメントでもある。楽しく読めました。 時の扉 「もし何かを変えられるとしたら、それは未来ではなく過去なのです。過去はすでに存在していて、すべての存在は変えることができるのです。」 小説と歴史の似ているところ。それはどちらも過去に属していて、未来に対して書かれているということ。過去は小説も、歴史も「書き換えることができる」 嘘の正典 過去に帰って歴史を書き換えようとする人とそれを阻止しようとする人、それぞれの立場について、マルクスとエンゲルスのエピソードを使うのか。
1投稿日: 2023.02.22
powered by ブクログ小川哲さん、直木賞受賞おめでとうございます。SF界から直木賞が出たのは、半村良以来の50年ぶりかもしれない。でも「雨やどり」はSFではないし、この頃から路線を変更してしまった。私の大好きな恩田陸はSF大好き人間だけど、ジャンルはSF作家ではない。とすると、小川哲さんは初めての純SF作家としての受賞なのかもしれない。一方、芥川賞は結構いるようだ。 積読、すなわち現在所有している本は、本作品「嘘と正典」、「君のクイズ」、そして受賞作の「地図と拳」の3つだが、どれから読むか迷った。「君のクイズ」は帯の紹介文がうるさく、「地図と拳」は分厚いので、まずは本作品から読むことにした。直木賞候補作品でもあるし、短編集なので読み易いというのも選択した理由。 全体を通した感想は、SFの境界線、かろうじて境界線内に留まっているという位置付け。ならば、他の二冊も同じような感じなのだろうか。これから純文学の方に思いっきり舵を切るのだろうか。疑惑は深まる。 いずれの作品も人の心の動きを緻密に描いており、甲乙つけ難い六作品となっている。強いてベスト作品を選ぶなら、やはり時間SF、パラレルワールドの「噓と正典」だと思う。あと、どの作品か忘れたが、人は死んだら記憶を失ってまた他の人間に生まれ変わるという考え方、これは私が子供の頃に信じていたもの、そのものであり、ちょっとびっくりした。その亜流ではあるが、最近のテレビドラマ(ブラッシュアップライフ)でも人から人への輪廻を取り上げていた考え方。これは伴名練から借用したか?一方、手塚治虫の火の鳥では、様々な生物に生まれ変わるタイプの輪廻転生で最後に人間に戻るのだが、やはり実際?は人間のみで廻して欲しい。
2投稿日: 2023.02.15
powered by ブクログ「地図と拳」で直木賞を受賞した著者の2019年、1回目の同賞候補作。時間や歴史が全編を通したテーマとなっているが、解説にもある通り、まさに「ジャンル越境的」な魅力の詰まった6編。とても濃厚な短編集だった。何と言っても「魔術師」と「嘘と正典」の歴史改変ものが出色。短いけれど、流行を皮肉った「最後の不良」も面白かった。小川哲氏に従来の「SF作家」のイメージを重ねるのはもうやめようと思う。
10投稿日: 2023.02.04
powered by ブクログ#最後の不良 アパレル時代を思い出した。 30ページ弱やけど、これ読む為だけでも買える1冊。 #嘘と正典 面白い。600ページにしてくれても良い。 共産主義が生まれなかった世界線を考えさせられる。
2投稿日: 2023.01.23
powered by ブクログSFはあまり読まないが、最初の『魔術師』から引き込まれた。タイトルにもなっている『嘘と聖典』も面白かったが、音楽が通貨になっている島の伝説『ムジカ・ムンダーナ』が好き。『ゲームの王国』『地図と拳』も読みたい。
2投稿日: 2023.01.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
短編集。ジャンルで言えばSFなのだろうが、一般的なSF小説のイメージより文章が文学的だし取り扱われるテーマは歴史とかノンフィクションエッセイに近いものも多く、何を読んだか明確に表現しきれない。しかしとにかく面白いものであることは確かだ。特に表題作『嘘と正典』がよかった。冒頭の裁判のシーン、私が歴史に疎いためエンゲルスの名前にすらピンと来ず、《アンカー》《中継者》《正典の守護者》など謎の単語が頻出し目が滑ってしょうがないと思って読んでいたのに、読み進めるたびにあれ?これってもしかして?と気づいては冒頭を読み返し、ラストクラインが《中継者》であったことが明かされたシーンで一気に冒頭のシーンと繋がったときなどは思わず声が出てしまうほど爽快な伏線回収だった。この伏線回収の描き方はミステリーを読んでいるときの爽快感に近かったかもしれない。そしてこの物語のもう一つ面白い点が、歴史の改変が可能なガジェットを出しておきながら最初から最後まで私たちの知っている世界と何も変わっていない点にある。「すべての歴史が《正典》に向かって収束していく。」というクラインのセリフが全てであり、この壮大なSF装置があっても我々の《正典》と変わらぬ歴史となるならば、この世界はもしかしたらこの小説のような過去への通信手段を持っているのかもしれないとも思える。そんなふうに考える読者がいる外枠すらもこの小説の一端なのかもしれない。我々とは遠いところにあるはずのSF作品でありながらもしかして?と思える近さがこの作品の魅力だと思う。
2投稿日: 2023.01.06
powered by ブクログよかった。 これまでSFものはあまり得意ではなかったが、帯に惹かれて購入。 読んでみるとどの短編も夢中になって読み進んでしまい、一度では理解できなかった箇所は何度も何度も読み返してしまった。 浅学なので知らない言葉や事柄が多く、出るたびにWikipediaで意味を調べていたのだが、とにかく作者の語彙と知識の豊富さに驚かされる。 あらゆるジャンルに精通しているからこその題材の捉え方、穿った見方がとてもおもしろいと思った。 作者のような豊富な語彙で感想を述べたいのにうまく言葉が出てこずもどかしいが、とにかくこの一冊で作者に惚れ込んでしまった。そんな一冊である。 またすぐに同じ作者の他の作品も読みたいと思う。 難しいのにするする読めてしまう、不思議な魅力のある文章だった。
1投稿日: 2023.01.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
表題作「嘘と正典」は、冷戦下のソ連で、アメリカのCIAが、過去を改竄するように、時空間通信という技術を使って共産主義を抹消させようとする話で、共産主義の父とも言われるマルクスの親友でもある、エンゲルスの裁判を改竄させようとする。 エンゲルスの罪を無罪から有罪にすれば、エンゲルスは、オーストラリアに流刑となるので、その後の世界で、共産主義の概念が無くなり、ソ連という国が生まれないと感じて、CIAのホワイトは、過去を未来から変えようとした。 小川さんの作品は、SFと世界の歴史を上手く交差させて、実際にあったんじゃないかと、想像させる ことができる作品が多いので、とても面白いし、歴史の勉強にもなるなと個人的には、感じました。 その他の作品も、一つの競走馬に自分を重ねた作家の話や(ひとすじの光)、音楽が通過、財産になる島の話(ムジカ・ムンダーナ)など、違ったジャンルのストーリーが楽しめるので、小川哲作品初心者の人に読んでほしいです。
30投稿日: 2022.12.30
powered by ブクログ震えるほど面白かった! 魔術師でグッと心を捕まれたあとはどれもスルスルと読んでしまった。 しかし何と言っても表題作の嘘と正典!! これはとんでもないものと出会ってしまったな。 劉慈欣に劣らぬ作家がここにいるよ!! 直木賞候補になった時に気になってて買わなかったあの時の自分にメッセージを送りたい気分だよ、即座に買えとね。 と言いつつ文庫になって即座に買ったのに積んでた自分にもメッセージを送らないとだ、即座に読めと。 これは他の作品も掘り返して読むパターン!!
5投稿日: 2022.11.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
『最後の不良』と『嘘と正典』が個人的に好きです。 ただ、『魔術師』は人生をかけてマジックを行っていたのではなく、様々な結果のインタビューを取り、失敗したものを採用しただけなのではと感じてしまいました。 タイムマシンは本物であって欲しいですが。
4投稿日: 2022.11.13
powered by ブクログ先月読んだ「地図と拳」があまりにも面白 かったのでこれも読んでみました。 時と親子の物語。 最初の話「魔術師」がなんかわかりにくくて自分には合わないかと思ったけど、他の話は全部面白くて読み終わるのがもったいないと思ったくらいでした。 表題作「嘘と正典」は手に汗握りながら読みました。このようなSFをゴリゴリ文系の自分のような人間にも難なく読ませるのすごいなと思いました。 小川哲さんの作品は全部読もうと思います。
6投稿日: 2022.11.10
powered by ブクログ直木賞候補作ともなった短編集。知性溢れる文章で、どの物語も読み応えたっぷりです。 六篇の短編の中で秀逸だったのは、一本目の「魔術師」。物語に漂う緊張感、張り巡らされた仕掛け、父親への複雑な想い…。様々な要素が絡み合うなか、映像作品を見ているような感覚で、物語の世界に入り込んでいました。この作品を読めただけでも、この本を買ってお釣りが来るくらい価値があると、個人的には思いました。
5投稿日: 2022.10.17
powered by ブクログ小川哲は天才である。 長編が面白いのは分かっていたが、短編も面白いしかも全編面白い。外れがない。これはすごい。 本作は短編集であるが、とにかく引き出しの多さに驚かされる。シリアスもコメディもいける、ホロリと涙を流させるかと思えば、どんでん返しを突き付けてくる。全く飽きが来ない最高のアラカルトだ。
1投稿日: 2022.10.02
powered by ブクログ2022-09-28 小川哲は、SF作家である前に作家であり、だからこそSFを書き続けているんだと思う。 お気楽なガジェット使いではなく、テーマに密接した設定が後からじわじわ効いてくる。 堪能。
1投稿日: 2022.09.28
powered by ブクログ表紙やタイトルから、哲学的なテーマの小説かと思っていたが、かなりSFだった。ここのところ、SFはそれほど好きではないのだけれど、この本は面白かった。 特に最後の「嘘と正典」。途中、丁寧に文章を追っていかないと分からなくなってしまうような内容ながら、読んでる間はかなりスリリングで、読み応えがあったように思う。 でもやっぱり、結局は共産主義は現れてしまったんだな.
1投稿日: 2022.09.05
powered by ブクログ「王と道化の両方」 初めて読む作家さん。 親子で継ぐいい話系と狂気じみた展開だったりふざけてるのかどうかすら怪しいくらい計画的な犯行っぽい作品もあり、だんだんどっちに振り切るのかわからない状態で次の短編へ読み進めるのが楽しくなっていった。 「嘘が正典になるなら正典とは何か?」と言う思いが頭を巡る。 他の方の感想見ると「短編も面白い」って言葉が気になりますよ…それ聞いたら長編も読みたくなるって.
31投稿日: 2022.09.02
powered by ブクログいやー、小川哲さんはすごい!短編もこんなに面白いとは。歴史改変SFとして非常によくできている表題作の「嘘と正典」はもちろん、特に下記の2本に心を動かされました。 ◉魔術師 途中まで「あ〜そういうオチね」と想像していたらとんでもない。最後の一行で頭を殴られました。最高の短編です。他の人の感想もぜひ聞いてみたい。 ◉ひとすじの光 競馬をまったく分からないのに猛烈に引き込まれました。ヒトスジのレース展開は展開が熱すぎて、手に汗握りながらページ捲りました。
2投稿日: 2022.08.06
powered by ブクログ「魔術師」読んでるこちらの集中力の問題のような気がするんやけど、肝腎要のトリック周りがよく分からず。まぁ分からんなりにオモロいねんけど。 「ひとすじの光」これはさほどトリッキーでもなく、言葉悪いけどさほど盛り上がることもなく。 「時の扉」これもちょっとハマらず。こちらがナチ絡みってだけで違うモノ期待するのは勝手やねんけどな、けど、、 「ムジカ・ムンダーナ」全体的に春樹感。どこがとか言えないけど「国境の西 太陽の南」みたいな。「カフカ」以降春樹から離れてるけど、「国境の西〜」は一番好きやし、コレも好き。一人っ子だからかも知れんし、関係ないかも知れん。 「最後の不良」コレどっかで読んだ気がするけど、どこやったか。その時からオチは何となく予想ついたけどそれで値打ち下がるわけではなく。 「嘘と正典」後半の展開が急でちょっとついて行くのが大変なところはありつつもオモロい。KGBもうちょっと出番ほしかったかな。
1投稿日: 2022.08.01
powered by ブクログ濃密な短編集でした。作品の世界観や設定、そしてテーマ。これまでの小説やジャンルにとらわれない作品の数々に、改めて小説という世界は広がり続けているのだと気づかされました。 収録作品は6編。個人的には歴史に科学や時間改編の要素を絡めた作品が面白かった。表題作『嘘と正典』は謎めいた裁判シーンから始まりその後、話は一転して冷戦下のCIA職員を描きます。 アメリカとソ連の秘密裏の覇権争い。祖国に疑念を抱くソ連の科学者。この二つがSF的アイディアで結び付いたとき現れる壮大な思いがけない物語。 ものすごく突拍子もないアイディアでありながら、冷戦下という緊迫した舞台設定で話に巧みに引き込み、そのアイディアがどこかで本当にあったかのように思わせてしまう。そして歴史や政治、国家に翻弄される個人の哀しさも感じる一編でした。 「時の扉」も歴史と科学を合わせ、そして時間の概念を問いかけてくる思弁的な作品。王に対しいくつもの物語を語る男。現在とは過去とは未来とは。世界の在り方とは。そうしたものを考えさせられながら読んでいくうちに、男の語る物語が史実と結び付き…… 思考実験的な面白さに加えて、二人の正体が明らかになった時、物語の意味がまた違って見えてきてより深みが増しました 青春小説の味わいのある作品も、切り口が唯一無二のもので面白い。 父が息子に遺した競走馬の謎を追いかける「ひとすじの光」。 音楽を通貨とする集落に訪れた青年と、亡くなった父の関係が描かれる「ムジカ・ムンダーナ」 前者は競走馬の血統という歴史から、父親の思いを描くことで主人公の再生を描き、後者は不思議な民族の文化と父が遺したテープの謎が呼応して、主人公が音楽のトラウマを乗り越えていく。 ストーリーとしてはどちらも主人公が確執のあった父親とのわだかまりや、いま抱えている喪失を乗り越えるというものだけど、その切り口や謎を解く過程が独特で面白く読み込んでしまい、そのぶんラストの爽やかさも印象的に残りました。 謎解きと父親との確執でいうと「魔術師」もおもしろかった。稀代のマジシャンが最後に行ったタイムトラベルのマジックを描いた短編。 マジシャンの人生や子供たちの複雑な思いを描き、マジックに関する謎解き物語でありながら、超常的な要素も完全に排しないどこか奇妙な味の要素もある不思議な感覚の作品。一方で家族を描いた物語でもあり、改めて考えても感想を表すのが難しい……。とにかく多重的な作品だと思います。 「最後の不良」は他の作品とは少し毛色の違った物語。流行や個性をシニカルに描いた警句的な意味合いも感じられる短編で、これも最近のSDGSやファッションブランドの潮流やSNSの存在と合わせていろいろ考えさせられました。 小川哲さんは前回『ゲームの王国』を読んだとき、理解しきれないけどすごい物語を書く人だという印象を抱いたのですが、今回は短編集ということもあり前作より読みやすく、それでいて小川さんの描く物語の唯一無二の感じは失われず、改めてそのすごさを感じました。 SFというジャンルを超えて、またすごい物語が小川さんの手から生まれそうな予感がします。
7投稿日: 2022.07.14
powered by ブクログSF的ガジェットが一切登場しない、非SF作品は「ひとすじの光」だけとあとがきにあるが、逆にSF以外の何ものでもない作も「噓と正典」の一篇しかない。で、その「噓と正典」のガチSF的な部分を、解説者は「真面目かわからない」と評している。多分だが、あまりSFは読まない人なんだろうけど、こう言われてしまうとSF者は立つ瀬がない気がする。それはともかく、SFと物語の比重で言うと、明らかに物語が重い。先に書きたい物語があって、それを効果的に表現する道具としてSFのガジェットがある。奇想がパーン、みたいのばかりがSFじゃないってことでもある。コアなSF読者にも響くと思うが、普段SFをあんまり読まない人にもお勧め。
2投稿日: 2022.07.11
