
総合評価
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powered by ブクログふつうの高校生の ふつうの生活が書かれた青春小説 特別な登場人物がいたり 大きな事柄が起こるわけでもなく 素直な子たちが日常を送る日々が綴られているのだけれど どの登場人物にも肩入れせずに 穏やかに読み進められる 落ち着いたよい作品でした 数人の仲の良い友だちがいて平凡に過ごせるのが 結局は一番よい学生生活なのだろうなと 思わせてもらえた
18投稿日: 2025.09.14
powered by ブクログあなたは、高校時代こんな思いを抱いたことはなかったでしょうか? 『○○なんて、地味だし、背だって高くないし、おもしろい話ができるわけでもないし、運動神経も鈍いし、何を考えているかわからなくて、いいところなんて勉強ができることぐらいだ。 それでも、一緒にいたい』。 最後の『一緒にいたい』という六文字に込められた思いにドキッとさせられもします。こんな思いを抱いていた時代があったのだと思うとそれだけで目が遠くなりますが、そんな時代をリアルで生きている高校生たちには、今も現在進行形で思い悩む日常があるのだと思います。”青春”ってやっぱり良いですね…。 さてここに、高校二年生4人の一年の日常を描く物語があります。女子2人、男子2人の日常が淡々と描かれていくこの作品。誰もが経験した高校生活のあれやこれやが淡々と描かれるこの作品。そしてそれは、そんな高校二年生たちの日常に、読者が自分のあの日を重ね合わせてもしまう”青春”の煌めきを見る物語です。 『長い坂道を上りきり、正門を抜け』『南校舎に入』って、『マーリンと一緒に』『クラス分けの表をもら』ったのは主人公の井上遥(いのうえ はるか)。三組にマーリンこと綿貫茉莉(わたぬき まり)と自分の名前を見つけた遥は『無言で微笑み合』います。『叫ぶのに近い声を上げて、喜んだり悲しんだりしている』『他の女子』を見る中に『いやあ、今年もよろしくね』、『修学旅行もあるしね』と話す二人は三組の教室へと入ります。『意地悪そうな男子はいないし、派手すぎて怖い感じの女子もいない。一年間、楽しく過ごせそうだ』と自分の席へと座り窓へと目をやる遥は、『特に眺めがいいと言われている』『海の見える教室』になって『「あたり」だと感じ』ます。 場面は変わり、『校長先生の話は長いし、おもしろくない』と思いつつ、『体育館で行われる』『始業式』に参加する遥は、『暇なので、三年生の方』に目をやると、そこには、『谷田部先輩』が『前に立つ男子と小声で話』をしています。『前にいる男子に顔を寄せ、耳元で囁くようにして話す。その姿に、胸の辺りが締め付けられる』という遥は『入学したばかりの頃、初めて学食に行った時に谷田部先輩を見かけ』ました。『かっこ良くて人気のある生徒は、他にいる』ものの、『谷田部先輩の良さは、そういう人たちとは違う』と、彼の『笑顔を見ると、どうしてかわからないが、胸が苦しくなって』くる遥。 再度場面は変わり、『ホームルームでは全員が自己紹介』という展開となり『「井上遥です。帰宅部です。映画や音楽が好きです」と、当たり障りのないこと』を話すと、続けて挨拶していく面々を見る中に二人の男子を意識します。『始業式の時にマーリンの隣に並んでいた知的キャラ男子』の満井有音(みつい あると)と、去年も同じクラスだったバンちゃんこと竹井という面々は『学年にいる考古学部員の』二人でもあります。そんなホームルームも終わり、『帰宅部』なので関係ないものの、『他にやることもないから』と、『体育館での部活紹介』へと移動した遥は、『野球部が漫才を披露して、サッカー部がコントを披露する。どちらも、おもしろくない』と思いながらも舞台を眺めます。『去年、部活紹介を見ながら、何部に入るか考えた』という遥は、『中学生の時は陸上部で、短距離をやってい』ました。『県大会から関東大会に進めるかどうか微妙なところにいるライバル同士だった』というマーリンには『近寄らないようにしていた』遥でしたが、『自分の限界みたいなもの』を感じ、『中学生の時とは違うことをやりたいと思い、この高校を受け』ました。そして、『同じクラスにマーリンがいるのを見た時は、気まずさに絶句し』ますが、やがて『お互いに帰宅部なので一緒に帰るようになり、仲良くな』りました。『わたしは、部活に熱心になる以外の青春を送りたくて、この高校に入った』という遥。そんな中、『考古学部の番になり』、『バンちゃんとアルトも』登場します。それを見て『冴えないなあ』、『冴えないねえ』と呟き合うマーリンと遥。その後、『お腹すかない?』、『学食でなんか食べる?』と『北校舎の裏にある新校舎』一階の学食へと向かった二人は、カレーを注文します。『一枚だけ入っている豚肉は、わたしもマーリンも最初に食べた』と食事をしながら会話する二人。そして、始まった高校二年生の日常が極めて淡々と描かれていきます。 “桜並木に憧れて入学した海の近くの高校で、遥は二年生の春を迎えた。親友のマーリンと過ごす毎日は楽しくて平和で、恋にも満たない気持ちで憧れの先輩を眺めている。ある雨の日、水族館で同じクラスの地味め男子アルトと遭遇するが…。始業式、学食、学園祭、花火、修学旅行、球技大会。放課後に話した、クラスメイトとの他愛ない会話。誰もが大切にずっとしまっておきたい、きらめく一年間の物語”と内容紹介にうたわれるこの作品。表紙に柔らかいタッチで描かれた女子二人、男子二人の四人の高校生の姿がなんとも柔らかい雰囲気を醸し出しています。 そんな物語は、時代の特定が難しいというより、敢えて時代を特定する表現を廃したと思われる中に、『海が見える』高台にある私立の高等学校を舞台に描かれていきます。 『窓側一列目の前から四番目、自分の机にカバンを置き、席に着く。外を見ると、桜並木の坂道の先に、海が広がっている。春の海は、空をうつしたような水色だ』。 『海が見える』というと、作者の畑野智美さんには「海の見える街」という作品があります。こちらは『海が見える』図書館が舞台となりますが、『海』の描写の数々が物語に独特な雰囲気感を醸し出しています。この作品も同作同様に『海』の印象がまず入ってきます。「海の見える街」の印象が強いこともあって、私の中では畑野智美さんというと『海の見える』作家さんという印象が定着しそうです。また、広い意味での『海』繋がりとして書名にも繋がる『水槽』が作品内に登場します。主人公の遥が訪れる地元の『水族館』がそれに当たります。そんな場で『水槽』を見つめる遥の心の内がこんな風に表されます。 『水族館で生まれて、外の世界を知らなければ、魚や他の生き物たちにとっては、この小さな水槽の中の生活が当たり前の日常だ。もしもここから広い海に放り出されても、生きていけないだろう…ここにいれば、敵に狙われることはないし、餌に困ることもない…生まれた瞬間から、広い海でサバイブしていかなくてはいけない環境より、幸せなことに思える』。 このあたりの感覚を自分たち高校生の日常に重ね合わせていく遥。 『降りつづける雨の向こうに、校舎が見える。暗い中、明かりをつけた教室が等間隔に並んでいる。水族館の水槽みたいだ』。 この表現はまさしく高校と『水槽』を重ね合わせるものです。この作品につけられた「水槽の中」という書名のある意味での奥深さを感じもしますが、この作品を読んでいく中でそれ以上に感じるのは、兎にも角にも普遍に続いていく高校生の日常を淡々と描いていく物語の印象です。このレビューの冒頭で作品冒頭の内容をダイジェスト的にご紹介していますが、そこには、『クラス分け』、『ホームルーム』、『部活紹介』、そして『学食』というように、このレビューを読んでくださっているみなさんが誰にでも共通して話題にできるであろう高校生活の一コマが主人公の遥視点で淡々と描写されていきます。それは、冒頭だけではなくその先もずっと続きます。 ・『数学の小山田先生の言っていることは、さっぱりわからない。複素数、因数定理、高次方程式、これらの言葉はいったい何を表しているのだろう』。 ・『明日は、文化祭だ。準備期間は一昨日からだったのだが、ほとんどのクラスが半分も準備を終えていない。二年生は飲食店を出すことが決まりになっている』。 ・『今日は、球技大会だ。 参加するのは、一年と二年だけで、三年は休みだ』。 いかがでしょうか。もちろん得意な方もいらっしゃるとは思いますが、多くの方にとって苦痛でしかない数学の授業、一年に一度の学校あげてのお祭りである『文化祭』、そして好き嫌いがハッキリ分かれるであろう『球技大会』というように、そこに描かれていく光景は何の変哲もない高校生の日常の一コマです。と言っても、その『文化祭』や『球技大会』で何か事件が起こるんでしょう?そんな声が聞こえてきました。断言しましょう。 “この作品ではトラブルらしいトラブルも、注目すべきイベントも一切描かれません” 高校生を主人公に描かれる小説を思い浮かべると”スクールカースト”を描く柚木麻子さん「王妃の帰還」、80kmを24時間かけて歩く”歩行祭”を舞台とする恩田陸さん「夜のピクニック」、そしてコロナ禍を背景に行われる”スターキャッチコンテスト”を描く辻村深月さん「この夏の星を見る」というようにそこには、作品を演出する何かしらのイベントもしくは注目ごとが柱にあるのが普通です。しかし、この畑野智美さんの作品には何もない、兎にも角にも本当に何もない!のです。 そもそもこの作品の主人公の遥は高校二年生という設定です。入学直後の慣れない日々も、迫り来る受験とその先の卒業が待ち構える日々も他人事の世界です。この世に数多ある高校生を主人公とする小説の中で”何もない”高校二年生の一年間だけが淡々と描かれる作品というのは聞いたことがありません。そして、さらに驚くのはこんな記述です。 『うちのクラスにはいじめもないし、悪いことをするような生徒もいない。派手な感じの男子、冴えない男子、目立つ女子、おとなしい女子、というなんとなくのグループ分けはあっても、スクールカーストやヒエラルキーというほどではない。グループを越えて、話すこともある。クラス全員で仲が良くて、毎日楽しい』。 いかがでしょうか?ここまでハッキリと書かれると何も言えませんね。上記した通り特徴的なイベントも描かれなければ、クラス内はいじめとも無縁、さらにはクラスを構成する面々に至るまで”普通”、とにかく”普通”なのです。この割り切り感はある意味すごいです。ここまで書いてもそれでも何か起こるんでしょう?と思われている方もいらっしゃると思います。それは当然です。この作品は文庫本304ページの作品ですが、この分量に高校二年生の”普通”の日常を淡々、淡々と描くなんて全くもって意味不明です。しかし、しかしです。繰り返し言いますがこの作品はそうなのです。この作品の巻末には、作家のカツセマサヒコさんによる〈解説〉が記されていますが、カツセさんはこんな風におっしゃいます。 “事件が起きない青春小説を描くのは、本来、とても難しい。たとえばわかりやすい悪者がいたり、絶望的なまでの窮地を描けば、それだけで物語に山場を作りやすくなる”。 はい、カツセさんがおっしゃるその”とても難しい”ことをやってのけられたのが畑野智美さんなのです。カツセさんはその効果がこんな風に出ていると解説されます。 “作者は本作において、そうしたわかりやすい展開よりも、何気ない日常、平熱の日々を描くことに徹しており、そうすることで、彼女ら・彼らの心の機微をダイナミックに描くことに成功している”。 これは実際に読んでいただければまさしく言い得て妙という思いが湧き上がります。私も作品を読み始めて何か事件が起こるのでは?と思いながらページをめくっていました。しかし、どれだけめくっても高校生の淡々とした日常が記されていくだけで本当に何も起こらないのです。しかし、よく考えてみれば多くの方にとっての高校生活も似たようなものだったのではないでしょうか?基本的には”普通”の昨日、”普通”の今日、そして”普通”の明日がやってくる、これが基本だと思います。しかし、これは小説です。あまりに”普通”が描かれていくのであれば読者の関心は違うところに向かいます。そうです。それこそが主な登場人物4人の心の動きなのです。カツセさんがおっしゃるところの”彼女ら・彼らの心の機微”です。では、そんな4人の高校生をご紹介しましょう。 ● 4人の高校二年生(同じクラス)について ・井上遥: 主人公、女子、帰宅部、中学時代は陸上部。『部活に熱心になる以外の青春を送りたくて、この高校に入った』、成績は『真ん中より少し下』 ・マーリン(綿貫茉莉): 女子、帰宅部、中学時代は陸上部、父親に溺愛されている、成績は『真ん中より少し下』 ・アルト(満井有音): 男子、考古学部、眼鏡の知的キャラ、『学年でも上位に入るくらい、成績がいい』 ・バンちゃん(竹井): 男子、考古学部、『男女を意識せずに話せる友達』、成績は『下から数えた方が早い』 物語はこの女子2人、男子2人の高校二年生を軸に展開していきます。とは言え大きなイベントもなければ事件らしい事件も何も起こりません。 『学校に行けば、それなりに楽しいことがある。マーリンやバンちゃんやアルトや他の友達と喋ったり、先生の雑談を聞いたり、体育の授業でバスケットボールをやったり、いくらでも思い浮かぶ』。 遥の思いに見る通り、4人の仲の良さが際立ちます。そんな物語で読者が気になっていくのが遥の心の内です。その端緒は物語冒頭に提示されます。それこそが、『入学したばかりの頃、初めて学食に行った時に』見かけたという『谷田部先輩』の存在です。 『紺のブレザーに紺色のネクタイとグレーのチェックのパンツというなんの変哲もない制服も、谷田部先輩が着るとお洒落に見える』。 『かっこ良くて人気のある生徒は、他にいる』ものの『谷田部先輩の良さは、そういう人たちとは違う』という中にこんな思いを抱きます。 『かっこいいとか、恋愛として好きとかではない。猫や犬の動画を見た時に近い感情だ。でも、かわいいとも違う。「萌え」というやつではないかと思う。絶妙なバランスのお洒落さや男同士で話している時の笑顔を見ると、どうしてかわからないが、胸が苦しくなってくる』。 そうです。この感情こそ、”青春物語”の醍醐味、誰もが抱くあの感情です。物語では、『谷田部先輩』に抱く遥の思いはマーリンも知っています。この感情の正体はなんなのか、その展開がどうなるのか、これだけでもキュンとしてきそうです。しかし、主人公・遥のこの感情は揺れ動いて変化してもいきます。そして、それは身近な友人を見る思いにも繋がっていきます。 『痛みや苦しみを感じるのが恋ではない。嬉しさで胸がいっぱいになり、おさえようとしても、全身から喜びが溢れだす。 これが、好きっていうことなんだ』。 言葉を引用するだけでも、遥の狂おしい胸の内が垣間見えてもきます。そして、読者がふと気づく瞬間が訪れます。大きなイベントもなければ事件らしい事件も何も起こらないこの作品にいつかしらのめり込んでいる自分の姿です。何も起こらないからこそ、遥の心の機微に読者の心が合わせて揺れ動かされていきます。そうです。いつしかこの作品に描かれる物語にすっかり入り込んでしまっている自分に 気づくのです。そんな物語は、高校二年生という何もない一年を描く中に終わりを告げます。最後の最後まで何も起こらないことが一貫するこの作品。そこには、だからこそ誰もが強く感情移入してしまう高校生たちの”青春物語”が描かれていました。 『今はこうして、毎日のように一緒にいるのが当たり前なのに、一年半と少し先には、別々のところにいる』。 高校二年生の男女4人の一年間が描かれたこの作品。そこには、誰もが過ごした高校生の日常が淡々と描かれていました。あまりに何も起こらない物語に逆に驚くこの作品。そんな物語に主人公・遥の心の機微を具に見るこの作品。 “あのとき私たちは、こんなふうにただ笑ってた”。そんな本の帯の言葉に遠い目になるあなた。そんなあなたに是非手にしていただきたい、これぞまさしく”ザ・青春物語”!の逸品でした。
276投稿日: 2025.06.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
井上遥 二年三組。谷田部先輩萌え。 マーリン 綿貫茉莉。自分で作った食品サンプルのキーホルダーを通学カバンにぶら下げている。二年三組。図書委員。 谷田部 三年一組。テニス部。 バンちゃん 学年に二人しかいない考古学部員。竹井。 ミツイアルト 満井有音。二年三組。知的男子。考古学部。五歳から小学校四年生になる前まだ、ロンドンに住んでいた。 小山田 数学教師。 ジェニファー ニュージーランドから来た英語教師。 川西友梨奈 二年三組。圧倒的にかわいい。 田村 生まれた時から中学校二年生の夏まだ、アメリカに住んでいた。 山岸 担任。世界史担当。 瀬野 和菓子屋の娘。
0投稿日: 2024.05.17
powered by ブクログ青春っていいなぁと思いました。 高校生ならではの日常が心温まるものでした。 ぜひとも、続編をみたい!
0投稿日: 2023.12.14
powered by ブクログ緩やかなペースで進むのがより高校生ぽく感じた。何か特別な事が起こるわけではないが、高校生の日常そのものだった。高校卒業して10年以上も経ったが、何でもない思い出が一つ一つ鮮明に蘇って胸がギュッと苦しくなった。あの頃も青春してるな〜と思う事もあったが、大人になってからの方があの頃は尊かったなとしみじみ思う。
0投稿日: 2023.11.06
powered by ブクログ鎌倉だろうか、だろうね。海がいつも身近にあり、そこに集うかけがえのない友人。簡単ではないんだよな、4人が集まってくだらない話にどうでもいい話に、でもなくなるとダメ。花火大会のキスから遥とアルトのギクシャクがあるわけで、あーやっぱり男女は違うのかと思うし、でも友情だけを求めるのは単なる綺麗事かな自分はとも思う。部活をやらないで無駄と思っていた時間を友人が大切な時間で見えないものが見えると言う、桜が綺麗とか思う事から何かが見つかると言い、そういう友達がいて羨ましいな。桜舞い散る場面から始めて桜の蕾で終わる物語
7投稿日: 2023.11.05
powered by ブクログ桜並木の坂道を上がると正門が見える。 海辺の町の、海の見える高校で、同じクラスの遥とマーリン、バンちゃんとアルトの4人の一年間を綴った物語。 バンちゃんとアルトは、考古学部員の男子。 派手な子や目立つ子もいるけれど、いじめのない良いクラスメートたちに囲まれて、何か特別なことがあるわけでもないけれど、読んでいて何故かわくわくしてくる。 これが青春ていうやつかなぁ。 高ニのあの頃の初々しい思い出の数々。 大人の恋愛の一歩手前のような、切なくて胸がキュンとなった恋も、かけがえのない友情も、何もかもがぎゅっと詰め込まれていて、記憶の断片として、いつまでもいつまでも大事にしておきたい。 ひかりに反射してきらめく水槽をイメージさせるような「水槽の中」というタイトルが本当に素敵です。
40投稿日: 2023.10.25
powered by ブクログ実はがっつり期待して読みました。 高校1年生だったら、入ったばかりで緊張、3年生は受験。高校2年生は一番楽な時期だなと思います。 そんなに大きな出来事があるわけではないけど、テストや夏休みの花火大会、文化祭など、高校生ってこうだったよねとほろ苦い気持ちで思い出します。 私の高校時代はもっと暗黒だったけど(笑) 好きな人ととのあれやこれやは大人になった今読んでも共感してしまいます。
0投稿日: 2023.09.17
powered by ブクログ高校2年生の帰宅部の女子遥とマーリン、そしてクラスメイトで考古学部の男子アルトとバンちゃんの仲良し4人組の青春物語。 読み始めは少し退屈なお話だな…なんて思ってしまったけど、花火大会でアルトが遥にいきなりキスした場面からこの2人の恋の行方に目が離せなくなりました。花火大会、文化祭、修学旅行、球技大会。高校生活にはどれも欠かせないイベント。気になる人がいたら気合いも入りますね。読んでいたらいつの間にか自分も高校生に戻ってました(笑) 卒業後はみんなバラバラになるかもしれないけど、この4人の関係は何だかいいな~。
2投稿日: 2023.08.10
powered by ブクログ通学路に桜並木、教室から海が見える学校‥。なんて素晴らしい地理的シチュエーションなんでしょう。もうこれだけで青春です。 内容は、高2女子・井上遥の視点で描く、男女4人の友情を軸にした一年間の物語になっています。 中堅学年ともいう高2(中2もそう)は、適度に学校に慣れ、受験も迫ってない時期。部活も先輩と後輩に挟まれ、立ち位置が難しい‥。意外に問題が起こるのも2年生、と知った風にいう人もいます。 でもこの学校、とっても平和なんです。更に、登場する男女4人も基本的に皆いい子ばかり。この設定、物語としてのハードル超高くない? さて、どう展開するのか! と読んでいきますが、大きな事件も起きず‥。そうか、青春小説か、だよね‥という感じです、はい。 しかしです。著者が、何気ないこの一年間の日常を愛おしむように綴り、読み手に懐かしさや切なさを呼び起こすんです。自分の若かりし頃と重ねてしまいます。これを退屈と受け取るか、共感するかは読み手次第でしょうね。 刺々しさ、ドロドロ感は全くなく、その世代特有の感覚と内面がよく描かれていると思います。一冊のアルバムを見ているようです。青春を切り取った一枚一枚の写真は、見事に鮮やかな色をしています。それも、どぎつい色ではなく、優しいパステル調の明るさです。ザ・青春讃歌!の一冊でした。
59投稿日: 2023.08.07
powered by ブクログこれはとても楽しく読めた。 高2になった始業式から始まる、遥とマーリン、バンちゃんとアルト、4人の一年。 いじめもスクールカーストもない、むしろ動画配信が発覚して処分を受けそうになったクラスメイトを全員で慮るようなクラスが描かれ、今の世の中にはあり得ないかも知れないが、読むのがしんどくなるような内容の本もある中で、こういう物語に出会うと心が安らぐ。 クラス分け、部活紹介、憧れの先輩、学食、帰り道でのお喋り、期末テスト、夏休みの海の家、文化祭の準備、就学旅行での告白、球技大会、卒業式…。 川西さんの動画配信発覚以外は特別なことは何も起こらないが、かつて通り過ぎてきたことばかりの描写に大昔の高校2年生の頃を思い出した。 思えば、男子ばかりのクラス(私の高校は男3:女1の割合だった)の1年生でもなく、もちろん受験のための授業ばかりの3年生でもなく、2年生の時が一番楽しかったもんな。 『陸上とは違う何かがしたいと思っていたのに、何もできなかった』という遥に『違う何かしてたじゃん』と返すマーリンだったが、全く同感。 志望校目指して勉強したり、友達とダラダラしたり、まあ、色々悩みはあったと思うが、待ち受ける未来に対しておしなべて希望のほうが勝っていた時代が懐かしい。 そんな中、学校をサボって行った水族館をきっかけに、川西さんの事件を経て大きくなっていく、遥の中に芽生えたアルトに対する微妙な想い。 これもまた、高校の頃ってこんな感じだったなあと思い返す。 じれったいような、自分の気持ちを持て余すような気持ちが丁寧に描かれていて、とても好い。 花火大会でのこともありがちで、分かっていてもお互いちゃんとした対応が取れないんだよね。 雪の中、海が見えるベンチでの会話がとても切なかった。
41投稿日: 2023.04.05
powered by ブクログスクールカーストではなくて、将来に不安を感じながらも、友達や恋愛などキラキラとしたものが流れていく、限られた時間を感じた。 高校2年の一年間を切り取った作品。 季節の移ろいや海が象徴的。
2投稿日: 2022.07.19
powered by ブクログAmazonの紹介より 友情も恋愛も勉強も将来もすべて。誰にでもある、特別な高校2年生の1年間。 桜並木に憧れて入学した海の近くの高校で、遥は二年生の春を迎えた。親友のマーリンと過ごす毎日は楽しくて平和で、恋にも満たない気持ちで憧れの先輩を眺めている。ある雨の日、水族館で同じクラスの地味め男子アルトと遭遇するが……。始業式、学食、学園祭、花火、修学旅行、球技大会。放課後に話した、クラスメイトとの他愛ない会話。誰もが大切にずっとしまっておきたい、きらめく一年間の物語。 高校生活でしか味わえない出来事や友情、はたまた恋愛など、小説としての盛り上がりはありませんでしたが、普通ならではのアオハルが詰まった作品でした。 単純に本当に良い学校だなと思いました。普通だったら、この展開だとイジメに繋がりかねないのに、クラスメイトのファインプレーといったら、素晴らしいの一言です。 小説内での輝かしい高校生活、羨ましい限りです。どこか懐かしさもあって、読んでいて爽やかな気持ちになりました。 小説を多く読んでいるせいか、何か雑味のある展開を期待していた自分がいたのですが、読了後はそんな自分に恥ずかしい限りでした。 心の清涼剤として、おすすめいたします。 小説のような学生時代ではありませんでしたが、友達や学校のありがたみを感じた作品でした。 学生時代に戻って、やり直したいです。
3投稿日: 2022.05.18
powered by ブクログ友達でいたい。好きかもしれない。つきあいたい。でも気まずくなるのが怖い。高校生活はあっという間に終わるけど、人生のなかでいちばん凝縮した日々がつまってる。もうあの頃には戻れないけれど、あの頃の色んな気持ちを懐かしく、ほろ苦く思いだした。
4投稿日: 2022.04.26
powered by ブクログ大好きな本だ。 高校2年生って、ほんとに一番楽しい。 その1年間の、揺れ動く気持ち。 初めて芽生えた気持ち。 キラキラと思い出す恋した瞬間。 すれ違ってしまうもどかしさ。 あまずっぱい気持ちをぎゅっと詰め込んである。 もうあの頃のようにうぶなときめき、うぶなかけひきはできなくて、思い出すと照れくさくなってしまうけれど、とっても大切だったあの時間を思い出すことができる、とても貴重な読書体験だった。
5投稿日: 2022.04.20
powered by ブクログ2022/04/07 畑野さんの描く青春系の小説が好きで、文庫化するのを待ってました! アルト、マーリン、バンちゃん、遥の4人が送る高校生活が描かれていて、ごくごく普通に4人の高校生、特に遥を中心として物語が進んでいきます。そこには一年の中で大半の人が経験しているであろう高校の行事のことや、恋愛についてのあれやこれやもあったりして「青春」という要素がギュッと豪華に詰め込まれているような感じです。 あとがきの方も書いてましたが、大体の小説には山場となる出来事があったり、それを軸として物語が展開していく柱となるものがあったりする中、水槽の中では、特にこれといって大きな出来事や中心となる描写は無く、普通に高校生が高校生活を送る様子が描かれていて、逆に一般的なものをここまで読者を引き込むように描くことができるのは凄い…的な内容にとても共感しました。 この本を読むことで自分の高校時代などを思い出し、理想的な高校生活像として自分を投影しながらこの小説を読むと、もう一度あの頃に戻ったような気分になれると思います。
4投稿日: 2022.04.09
