
総合評価
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powered by ブクログ濃い、でも読める、これが上手い文章というべきか。 それがないと、いやそれがあるからか、人間の生態というか嫌らしさが抉り取られて読者の真正面に据え置かれる感じで読み進めたいけど重いというか。 今はもうないだろう古き歓楽の世界も垣間見えて、風俗史としても楽しめる一面があります。 巻末の解説も女性らしさを前面に押し出した解説で時代を感じさせてくれます。ただ、女性にしか分からない感覚はどうしたってあるはずですが、それを万民に肌感で読ませるのもこの作家の力量かと。
2投稿日: 2024.05.31
powered by ブクログミーハー極まり無いけど『PERFECT DAYS』で作家に興味がわいて。 登場人物たちの日常の、流れるように移ろい行く様を利発な女中の主人公の視点で柔らかく描く。 舞台となる芸者置屋のちょうど転換期を描いてはいるけど、派手な事件が起きるでも無く、淡々と日常が過ぎていく。 芸妓の着物や持ち物や化粧の艶やかさ、表情や声色や仕草から溢れる心情、花街の情景が主人公の目を通して鮮烈に綴られて読み手を本の世界へ引き込む。 主人公の過去は細やかに仄めかす程度で、読み手に想像させる余白のバランスも良い。 読み進める内に構造や雰囲気に映画と共通するものが見つかり実に興味深いと感じた。
0投稿日: 2024.03.27
powered by ブクログ芸者置屋で働くことになった梨花という女性のお話です。華々しい世界の裏側の描写も面白かったし、梨花の心理描写も小気味良いテンポで描かれていて、読んでいて飽きなかったです。筆者の流れるような美しい文章に圧倒されました。とにかく物語の世界に没入できましたし、読んだあとの余韻が凄くて中々現実世界に帰って来れなかったです(笑)
1投稿日: 2024.01.08
powered by ブクログ文章が独特で、調子が悪い時は頭に入って来ず苦労した。でも、面白い部分は面白かったし、今の職場に似ている場面がたくさんあった。女が集まるとどこもこうなるのかな。仕事のできる梨花さんかっこいい。
1投稿日: 2023.11.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
主人公の梨花が、傾きかけた芸者の置屋に住込みの女中として働き始めるところから話は始まる。 「くろうと」の世界に初めて入った「しろうと」なのに、右も左もろくすっぽ説明されないうちにこき使われる。 なんと初日は晩ご飯を用意されていなかったのだ。住込みなのに! 梨花は目端が利いて、気働きができるので、次第に主人一家からも通いの芸者たちからも信頼されてくる。 梨花の賢いところは大事なことを見逃さず、出過ぎた振る舞いをしないこと。 誰に対しても公平であること。 彼女の半生については多くを語られないので、戦前は女中を持つ側の奥さんであったこと、家族とは死別したことくらいしかわからない。 多分戦後のどさくさで財産を失くしたうえに、家族の病気治療などで没落していったのかなと想像できる。 先日読んだ『小さいおうち』の時子がもし戦後生き抜いていたら、このような境遇にならなかったとも限らない。 置屋の主人とその娘、姪とその娘という女所帯のうえ、通いの芸者が3人。 元は7人いた芸者が3人に減っているのだけれど、その減らし方もよろしくない。 どうにもお金のやりくりが苦しくて、あちらにもこちらにも不義理を働いている様子である。 けれども「しろうと」の梨花はこの世界に身を置こうと思い決めている。 タイトルは『流れる』。 流されるではなく流れるなのだから、彼女たちの生き様を非難しているわけではない。 ただどうしようもなく時代は流れていき、人は低い方に流れるものなのだ。 物語の最後、女たちはそれぞれに身の振り方を考えていく。 そして梨花にもそれなりの話が来るところで終わる。 いちおうはハッピーエンドなのかもしれないけれど、梨花のこれからがハッピーである保証はない。 タイトルは『流れる』だけれど、流されていくのでも、流されまいと気張るのでもなく、流れを見据えながらそこに根を張ろうとする梨花が主人公というところに納得した。
3投稿日: 2022.10.30
powered by ブクログ1956(昭和31)年作。 住み込みの女中となった女性の視点から、落ち目の芸者家の様子を描いた小説。 文章がとても良い。ちょっとした言葉の選出などにいちいち味があり、絶えず気を配った彫琢された文体である。これに浸っているだけで充実感がある。 一方物語内容や構成などにはさして出色のものはないと感じたが、どうだろうか。が、平凡な日常を細やかに描出した小説世界は、それはそれで価値を持つのかもしれない。
0投稿日: 2022.06.08
powered by ブクログ言葉はきれいだけど、話はよくわからなかった 久しぶりに眠い話だった 自分には合わない作風なのかな でも、言葉の表現はきれいなので、他の作品を読んでみようと思った
0投稿日: 2022.04.06
powered by ブクログめっちゃ面白い。 それからすごく不思議。 1955年に書かれた小説なのに、すごく今風っていうか、 なんかね、すんごい面白いお姉さんのツイッター見てる感じ。 何十年も昔の小説だなんて思えない。 ……って考えてたら、高橋義孝先生の巻末の解説でちゃんとした文章で説明されてた笑 「文字によって構成される文章というもののロジックではなしに、話される生きたことばのロジックに従って文章となったというのが幸田さんの文章である。」 それそれ!!! 多分ね、生のことばで書いてあるから、古い感じがしないの。 すっごく新しいの。 今も昔も、人間の思考回路なんてそう変わんないんだなって感じする。 しろうとの主人公の目で語られる花柳界の雰囲気がすごくリアルで面白い。 私は冒頭の「猫だわよ!」と、 駐在さんに出す志那そばをとんでもないところから手渡しするシーンが好き。 声上げて笑っちゃった。 作者の分析的な視点も効いてる。 ま~~~~~芸者衆の性格が良かったり悪かったりするんだけど、 そのキャラクターデザインが優れてて、 「確かにそういう人生を歩んでたらこういう性格になって、こういうことも言うだろうな」 って納得しちゃう。
1投稿日: 2022.01.15
powered by ブクログ男の自分にとっては、すごく女性の視点が新鮮に感じた。 男とは体の作りとか、体力とか、その前に備わってるもんが全然ちゃうということがよくわかる。 それは、生物学的とか、社会的とかをやかましく言わんでもあるもの。 話は戦後の花柳界へ女中にいった主人公の話。 どこにでもある、人間芝居を色鮮やかというか、立体的というかとにかくリアル、主人公の目線としてりある。 大河に身を任せて、ひとは生きるもの 突っ張るのも悪くないが、まわりに押されゆらりと流れてゆく 芯があればこその人生、しかししゃれこうべになるまでの舞台 立ち居振る舞いは人それぞれ 2021/10/19
0投稿日: 2021.10.19
powered by ブクログ主人公 梨花を通して描かれる置屋の芸者たちの生活。 梨花の鋭い観察眼と何重にも機転を利かせる様子がリアルに描写されています。 ここまで読むか、ここまで考えるか、とハラハラしながら読みました。 気働きとはこういうことを言うのかな、と思わせられました。
0投稿日: 2021.09.20
powered by ブクログ本当は「木」の前に読んだ本。 この「流れる」を読んで、もっと彼女の本を読んでみようと思った。 どんな場所に身を置いても、彼女の描く人間の様子、とりわけ女の描写に、背筋を伸ばさずにはいられなくなる。 こんな人が周りにいたら、わたしは何を学ぶことができただろうか、わたしは、何を学ばずに今まで生きてきたのか、ということに思いを巡らし、時の流れを憂う。懐古趣味なんて言われたくないけれど、背筋を伸ばして生きることのすがすがしさを、人の生きざまから学ぶ経験を、もう少し多くの人から学びたかったなと思い、これから学んでいこうと、思う。
0投稿日: 2021.04.16
powered by ブクログ掃除婦や犬の食事係といった様々な仕事を勤めた未亡人・梨花が、芸者置屋の女中として住み込んで花柳界の舞台裏を経験する物語。 慣れぬことに苦労しつつ働くのでなく、ひたすら強い女性として仕事を淡々とこなす梨花には感情移入しにくかったものの、芯のしっかりした優しさがあり、その強さのために加速度的に没落していく置屋の誰にでも心を添わせることができるんだろうな、ということに気付くと俄然彼女が魅力的に映るように。 華やかな表舞台は描かれず、暗い裏事情ばかりが書かれているのに、陰惨な感じはあまりない。というのも女主人のしなやかさや、時に触れて現れるいやらしさのない美質が、文面からふんだんに伝わってくるためなのだろうと思う。 現実感がある文面で、もしや著者の自伝的作品なのでは、という気もする。読友さん本
0投稿日: 2021.04.07
powered by ブクログ女の話。 女が女を見る目は鋭い。見逃さない。 夫を亡くして自分の食い扶持を自分で稼がなければならなくなった時、今までの生活とは全く重ならない芸者の置屋での女中を選ぶとは、それまでの人生、いったいなにがあったのか?と気を揉ませる主人公の来し方。 足元すくわれないよう、でも出過ぎぬよう、能ある鷹は爪隠すのスタンスで新しい生活の場でうまくやっていく。 作者は本当に芸者置屋の女中をやったことがあるということだから、内容もリアル。 それにしても女主人が床に倒される場面(熱のある子供がぐずって抱きついてきて)の丁寧な、そして悪意のある、一コマ一コマを切り取るような説明。 また別の女主人の床から起き上がる仕草にも、皮肉でクールな目は一切を隠さず、説明の手を緩めない。 こんな女がそばにいたら、味方につければいいけれど、決して敵には回したくないね。 最後、才覚が見込まれ、新しい職場で、さぁてどう生き凌いでいくか、乞うご期待といったところか。
1投稿日: 2021.04.03
powered by ブクログ卒論のテーマにさせていただきました。 「しろうと」と「くろうと」の世界の違いがはっきり現れる瞬間がいくつかあるのが印象的。
0投稿日: 2021.03.13
powered by ブクログ花街のあるひとつの経営の傾いたお屋敷の話。 主人公は女中の視点から人や金が出たり入ったりする様を一番冷静に見ている。 主人とあまりこころの通じていない場合の「小さなおうち」という感じかな。 このくらいの年代の小説は、人の虚勢や格好のつかなさダブルスタンダードなどを詳細に書き、その上で「まあこのくらいのことは可愛げがありますよね」と好感を持った描写がなされることが多くて、わたしにはあまり馴染まないなと思う。 しかしこの一言では言い切れない複雑な心情はよく捉えられていて、幸田文さんに相対してしまったらわたしは一体何重の心の扉を見透かされてしまうのか…と恐ろしい気持ちになった。 ーーーー なな子達→雪丸 「静かなのは陰気、ことばのいいのがお高くとまっている、利口なのが腹のなかのわからない、実行力のあるのがずうずうしい、美貌がいやみ、」
4投稿日: 2021.01.28
powered by ブクログ凋落していく置屋で、くろうとを眺めるしろうと主人公の視点が巧み。芸妓たちの時に激する直接的な台詞よりも、交わされる無言の視線が彼女たちの関係性、そして内面感情をはっきりと指し示している。間と目線を行間にありありと浮かび上がらせる幸田文の表現に敬服。
0投稿日: 2020.08.08
powered by ブクログ2020年4月 懐に見合わぬ見栄をはったり、目の前の厄介事をちょろっとお金を払って後回しにしようとしたり…そんなだらしなさは歳を取るとツケが回ってくると怯えて生きているところがある、わたし。 お金がないにも2種類あって、昔からお金がないのと昔はあったが今はないのと。後者の方が断然ひもじい。没落した芸者屋の女主人の状況は身につまされる。 この物語の主人公梨花もなんだかワケありで、後者のお金の無さだ。けれど優しくしっかり者で凛としている。梨花の見ている景色はいつもどこか明るい。
0投稿日: 2020.05.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
染香さんがいい味出してたように思う。別の家に移って翌日から当たり前のように座敷にご出勤。借金があってもめげずに稼ぐ!最後の方、その姿勢がたくましく、愛しく思えた。 しろと、くろうと、という言葉が随所に出てきたけど、くろうとのほうはそうであることに一種の誇りを持っていたんだろうなと思う。しろとさんには簡単には真似できっこない手練手管を身につけていることへの。 それにしてもやり方どうあれ、どんな場面でも人を立てようとする義理立て?のような心配りってのは角を立てずにやっていく秘訣なんだろうなと思う。 つたの家のおかみさんが不二子と転ぶ時、泊まりに来たお姉さんの寝起き、どんなにか美しく魅力的なのだろうかとあれこれ想像するけれど、きっと本人を見ないと分からない。そして、会いたくなる。この目で見たくなる。そういう、人を引き付ける魅力。 全編共通で描かれているのは鋸山とのお金を巡る攻防。けど、その日々の中で描かれるくろうとの街の日常。もし、こうした街がある時に生きていたら、さぞかし美しく、幾重にも重なる情緒、人情、豊かな芸術が私を魅了したことであろう。 男が変わるほど、女(こっち)は情が深くなっていいもんなんだ。とはとあるお姉さまの名言。万人に当てはまるかどうかは別として、その人の人生から発せられた言葉の背景を、もっと聞きたくなる。そういう奥行きのある深い言葉って名言だなと思う。 この本の最後の一文。確かに脈絡がないけれど、もらった春という名前は主人たちの凋落に対して、梨花の春であるという対比でもあるのだろうかと深読みしてしまう。続きがあったら佐伯と靄のような空気を交わすのだろうか。その後のことは、物語の中の人にしか分からない。
0投稿日: 2019.03.16
powered by ブクログ零落してゆく置屋の景色と時間を、女中 梨花の視点で華麗に切り取った小説。書かれたのは1956年だが、すでに古典と呼んでも違和感のない風雅さがあり(恥ずかしながら、幸田文はもっと前の時代の作家だと思い込んでいたこともあり…)、現代エンタメ小説が失なってしまった純朴な読書の時間を与えてくれる佳品。 朧げな記憶に「おとうと」を読んだことがある気がするほかは、幸田文はほとんど読んだことがないので、ちくま日本文学ででも読んでみるかな。
2投稿日: 2018.09.26
powered by ブクログ名作だった。名作ゆえに、読み終わった途端、もう一度じっくり読んでしまった。私の思う名作とは、味わいのある言葉遣いがあること、何度も読み返したくなること、人にすすめたくなること。美味しくて、足繁く通い、友達にも教えたくなる、名店と一緒だ。 物語も、女中が見た没落しかかった芸者置き場という、下世話ながら惹かれる内容だ。そこには上流へ流れる者、下流へ流れる者、それぞれのストーリーがある。 最後の著者の言葉、「水は流れるし、橋は通じるし、『流れる』とは題したけれど、橋手前のあの、ふとためらう心には強く惹かれている。」という文章に、この物語の全てが凝縮されているように感じた。ふとためらう繊細な心を細やかに描写している。
4投稿日: 2018.08.20
powered by ブクログ和三盆のような一冊。出来事ひとつひとつの背景にある女性特有の繊細な心理描写が丁寧に細かく散りばめられている。4,5人以上の個性ある女性が思い思いにとる行動と心理を余すところなく的確に写し撮りつつ、キャラを埋没させずにストーリーを進めていく技術ってとても難しい芸当だと思うんだけど、女中でありながら大変に有能な梨花を一段上の視座に立たせて解説を入れることによって、その手ブレを補正してるんだろう。 満員電車でなくカフェでゆっくり読んだ方がいいなと感じた。これは二度味わうべき本だ。もったいない読み方をしたな。
3投稿日: 2018.06.22
powered by ブクログ住み込みの女中である梨花の目を通して描かれる芸者たちの世界。はかなく浮き沈みの激しいその人生を、ぞんざいで愛情ある口調で語りながら、いつのまにか梨花自身の生き様が見え隠れします。
1投稿日: 2018.05.19
powered by ブクログ文章に独特のセンスが光るが、女性視点の置屋の内実が赤裸々に語られ、なにか夢が削がれる感じがして読み投げにしてしまった。
0投稿日: 2018.04.28
powered by ブクログ芸者の置屋に女中に出た人の話。 ところどころにでてくる、女のこけかた?や起き方が男に見せる美しさっていうのが、女子会みたいですごくおもしろい。 主人のおねえさんが姿がよくて所作もきれい、三味線も上手で一世を風靡した芸者さん。その周りにいる芸者たちもみんななんだかんだでかっこいい。花柳界はその狭さがすくえそうな狭さっていうのがおもしろかった。 あと、みんな誰かをあてにして生きていて、それを歯がゆく主人公は思っているけど、いちばんちゃんとしている蔦次だって、主人公だって、結局流れてしか生きていけないんだなと思う。この時代の女だからっていうのではなくて、人は目の前にあるものでどうにか生きていくんだろう。
6投稿日: 2018.01.04
powered by ブクログ幸田文『流れる』新潮文庫。 林芙美子の『放浪記』と河上肇の『貧乏物語』を足したような、日本がまだ繁栄を見せぬ、経済的に未完成の頃を舞台にした女の物語。暗く、じめりとした閉塞感の中に描かれる人間模様は余り好みではない。 四十過ぎの未亡人・梨花は没落しかかった芸者置屋に住み込みとして女中を始める。花柳界の風習や芸者たちの生態に戸惑いながらも、梨花はそこに起きる事件を極めて冷静な目で観察していく。
3投稿日: 2017.09.03
powered by ブクログ物凄く文章が読みづらいなぁと思って読んでいたら、昭和32年の発行だったとは。幸田露伴の娘だったとは。驚いた。 文章は、思考の流れのように行ったり来たり、頁にぎっしりと詰まっておりなかなか骨が折れる。しかし、なんやかんやでさくさくと最後まで読んでしまった。出てくる女性たちが皆弱くて逞しい。
0投稿日: 2015.12.24
powered by ブクログやっと手に取った幸田文。期待を裏切らない面白い作品だった。漢字変換されてない言葉が多々あるので慣れるまで少し読みにくかった。意地があって口が達者な女しかいない置屋の内情。主人公:梨花が素人で所謂普通の感覚を持っている人、という設定が読む側が素人であるだけにスッと話に入っていきやすかった。会話の箇所を読むと往年の女優が喋っているのが容易に想像できる。この頃の人はみんなこんな早口でスパッと話したもんなんだなぁ。裏の中華料理店と五目そばの受け渡しをするシーン、可笑しくて可笑しくて声たてて笑ってしまった。途中、同映画も観てみたが、そのシーンがちゃんと入っていてムフフとなる。映画も素晴らしかったけれど原作の方が梨花の黒い部分も出てて好きかな。他の幸田作品も楽しみ。
0投稿日: 2015.11.22
powered by ブクログ幸田文さんは、この小説をなぜ「流れる」と名付けたのだろうか。 実は読了しても、私にははっきりとわからなかった。でも何となくはわかる。その「何となく」をもとにレビューを書き進めることにする。 主人公の梨花が女中として飛び込んだのは、芸妓を数人だけ抱える小さな置屋。そこは世間一般を「しろうと」と呼び、自分たちを「くろうと」と呼ぶ世界。 この作品が書かれたのは昭和30年。戦後10年目を迎え、時代が急速に変化していた時期。古いしきたりや和服の世界が描かれるのと並行して、自動車や電話が日常生活に入り込む。そういう時代の過渡期に、古いものを守ろうとするか、それとも古きを捨てて新しい物を取り入れようとするかふたつに一つの選択が迫られる状況は、小説の背景として動的で面白い。 でも私が読んだ限りは、「しろうと」が時代の先をいくとか、あるいは「くろうと」が古き良きものを守っていくとか、そう単純な図式には思えなかった。そもそも、この小説の登場人物を単純に「しろうと」「くろうと」の二元論で切り分けて読むことが果たして正しいのか? 確かに梨花は最初、芸の世界では全くのしろうとだったが、一癖ふた癖な女たちに囲まれてるうちに、多くはさらりと冷たい視線でかわし、くろうとから一線を引くものの、かと思えば、時には女としての感情をいっしょにふるわせてくろうとに同情する場面も出てくるなど、梨花自身、まるで元々くろうとであったかのような姿も描かれる。 逆に、くろうとの女主人や芸妓が難無くしろうとへの境界を飛び越え、その言動が「えっ、それってしろうとと同じやん?!」って場面がたびたび現れる。 小説の最大の魅力のひとつに“人間を描いている”というのがあると思うが、私の好きなダブリナーズ (新潮文庫)でJ・ジョイスは何のことはない市井の人間を描き出すことで人間の“魅力”と“汚れ”といった一切を表現しようとしたように、文さんは芸妓の世界に、その可能性を見出し、小説の主題に選んだのだろう。 古くて保守的な芸妓の世界を描く作品を「流れる」と名付けたのは、自分自身の変化の多い人生遍歴を流れると意味したというだけでなく、また、職を転々とした末に「流れ着いた」ところという意味だけでもない、私は文さんが、一見古く澱んだ「くろうと」の世界にこそ、人間の真実の姿をはっきりと示す人間の心の機微の「流れ」を見出したからなのでは、と思えた。 (2011/3/15)
0投稿日: 2015.11.08
powered by ブクログなんだか現代にも通ずるものがあって良かった。 ただ、この作品の深いところまでは分からなかった気がする。 いつかもう1度読みたい
0投稿日: 2014.09.30
powered by ブクログ芸者置屋で働く女中の話。 白粉とアンモニアの匂いが同時に香ってきそうな女の意地と見栄だらけの世界と、 主人公・梨花の凛とした佇まいの対比が印象的だった。 面倒事にはあくまでしろうと女中として一線を引き、 情を動かされた事には素直に感動する。 舞台も時代も違うが、梨花の姿勢はそのまま現代の 働く女性の処世術として参考にできそう。
0投稿日: 2014.09.01
powered by ブクログゆるやかな話し言葉のように紡ぎ出される美しい日本語。彼女たちのようなおんなが、確かが存在していたことを強く感じる。着物、化粧道具、台所の描写、女性にしか書けない小説である。
0投稿日: 2014.08.28
powered by ブクログ初めての幸田文、先ず言葉の瑞々しさにドキリとした。打ちたての蕎麦のようなしゃきっとした潔さとともに、主人公の立ち働く様子がテンポよいリズム感で流れている。 そして冷静な人間観察の中にも、人情の機微がチラチラと見え隠れして温かい。 主人公の梨花に共感できたのも、芸者置屋という異世界の景色を僅かながら思い浮かべることが出来たのも、今、読めたからの幸せ。
0投稿日: 2014.06.28
powered by ブクログ”女中が見た芸妓の艶。” 様々な経験をして、自分らしくもフラットな目線で人を見ることができるようになりたい。
0投稿日: 2014.06.28
powered by ブクログ戦後まもなくの隅田川沿い花街界隈やそれを囲む商店・飲食店等のにぎわいを想像しながら読んだ。それに期待していたので……(物語の趣旨はべつだったかな)哀しい人たちの姿がたくさん描かれていた。解説にはハッピーエンドと書かれていたが、なんとも救われないような気持ちになった。もちろん梨花の行く末にはエールを送りたいけれど。
0投稿日: 2013.09.26
powered by ブクログ女性たちばかり出てくるのに、 どうしてこんなにはきはきと 輝いて見えるのか。 登場人物の人間らしさが どろどろ絡み合うのに 情とか、主人公のさっぱりした 強さとかが心地よく読める。 他の作品も読みたい。
0投稿日: 2013.09.26
powered by ブクログ芸者家でのてんやわんや。その中に自分も居る様な雰囲気にさせられる。 解説者のいう難しいことは分からない。面白ければそれで良し 人生いろいろなのだが ずっと繋がれたまま犬生を終えたあの犬の名前がが知りたい。この犬が一番哀れに思えた。
0投稿日: 2013.09.23
powered by ブクログ第1回のイベントで最初にシェアされた本です。 お持ちになった本は、もう3冊目!以前の2冊は、読み込んでぼろぼろになってしまったとのこと。 お仕事が在宅介護でいらっしゃるので、おうちにお邪魔すること、あと女性が働くということ、いろいろ心にせまる内容のようです。 おばあさま所蔵の本だったとのことで、世代のつながりにも思いをはせることができました。 文章は、話し言葉に近いそうです。 気軽に読めるかもしれませんね!
0投稿日: 2013.08.27
powered by ブクログ紹介いただいた小説。女性もこんなにしたたかに働けるんだなあ、と、主人公の梨花を「先輩!」と呼びたくなってきます(笑)。彼女は芸者置屋に女中として雇われた40すぎの女性。置屋は主人から芸者から何から、なかなか一筋縄ではいかない人たちが多いのですが、そこをうまーくやってくのがすごい。観察眼鋭いのもおもしろい。結局、この人は何者だったんだろう。過去がはっきり語られずおぼろげなのも魅力でした。
0投稿日: 2013.08.11
powered by ブクログ冒頭から一気に引き込まれる、あのがちゃがちゃした活気とだらしなさ。梨花も梨花でものすごく仕事ができるちゃきちゃきした感じじゃなく育ちがいいのかどこかのんびりとした感覚がありつつも、くろうとさんの生活習慣や価値観にどんどんなじんで欠かせない存在になっていく。 おうちには芸者屋ならではの問題が多々起こるんだけど、梨花はその流れを眺めるしかできない。 ずっと眺めて最後の最後で流れに乗ってまた別の流れを見に行く。
1投稿日: 2013.08.10
powered by ブクログ凛とした女性の強さが心地いい。幸田文さんの小説には一本筋が通って少しの緊張感と独特の涼やかさが感じられます。
1投稿日: 2013.07.25
powered by ブクログ2013.3.17読了。 女の愉しさ、辛さ、おかしさ、哀しさ、面白さ。深さ、切なさ、馬鹿馬鹿しさ。
2投稿日: 2013.03.17
powered by ブクログ幸田文さんの著作はいつも読むのに時間がかかります。というのも、紡がれることばをじっくりと味わいたくてかみしめるからです。他の本ではつい流し読みしてしまう時もたまにあるのだけれど、そんな事をしたらもったいない気持ちになります。今では使われない言葉や言い回しが多いけどそれがまた良くって。ピンと背筋が伸びていてそれでいて物腰の柔らかい文章。キレのある言い回しの会話のやりとり。この作品は年末年始のお話なのですが、殊更に寒さを強調する描写はそんなにないのに、冬の澄んだ空気や匂いが伝わってきて、身が引き締まります。
0投稿日: 2012.12.21
powered by ブクログ表現が絶妙。 文体が心地よく、なんの気構えも無く、その世界に入っていける。 ただ、物語の焦点があいまいで、話としては惜しいなぁという感触が残った。
0投稿日: 2012.09.08
powered by ブクログ異文化その2、古風な価値観とか置屋とか人を観察する著者の視点とか。 私の中に無いそれを、描き出してくれた一冊。 これだけ豊かに日本語を操れたら幸せだろうなと、読むたびに感じます。
0投稿日: 2012.08.12
powered by ブクログ高校の問題集に載ってて、気になって本屋で探した記憶があります。なんか懐かしくなって時々パラパラ捲っちゃう。
0投稿日: 2012.05.29
powered by ブクログ芸者置屋に女中として住みこんだ梨花は、花柳界の風習や芸者たちの生態を台所の裏側からこまかく観察し、そこに起る事件に驚きの目を見張る…。
0投稿日: 2012.05.09
powered by ブクログ今から読む人にとっては、ちょっと、とっつきにくいかもしれません。 なぜなら、芸者の置屋というイメージしにくいところが舞台ですし、今となれば耳慣れない言葉も出てきます。 けれども、「流れる」はぜひ読んで欲しい作品です。 特に最後の場面、主人公が仕えている芸者さんに主人公がただものではないと見抜かれてしまう場面が秀逸です。
0投稿日: 2012.02.22
powered by ブクログしろうと、の視点による堅気で流麗な文章の中で、においたつ、とでも言うような過剰な女たちの美しさいやらしさ、そして幾つもの出来事が、重なり合い浮き沈みながら流れて行くようだった。流されて消えてしまって、さみしい。 とってもおもしろかったです。 見当外れなことを言うようだけれど、美しいって一つの才能で、やっぱりどうしようもなく、焦がれてしまうなあ。
0投稿日: 2012.01.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
今時人の所作にどきりとしたり、見惚れたりってないもんなあとしみじみ。 全てが素敵で憧れるわけではないけれど、全てが眉を顰めることばかりではない。 主人公が妙にその世界に惹かれてしまう気持ちがわかるかも。
0投稿日: 2011.09.26
powered by ブクログ水村美苗氏が幸田文をベタぼめだったので読んでみた。初幸田文。いかにもいかにもきちんとしてそうで、躾が行き届いていて、端正で美しい日本語が使われてそうで、いかにも「ナチュラルでていねいな暮らし」ぽくて(?)ステキ女子たちが読んでそうで、って、反発があって(バカ)ずっとあんまり読む気になれなかったんだけど。いや、おもしろかった。普通の小説なんだ(バカ)。いろいろあって芸者家の女中になった主人公。「本格小説」でも思ったけど、よくできた女中さんって、ものすごくよく観察していて、気がついて、頭がよくて、芯は強くて、分をわきまえていて、自分を客観視できてるんだな、と。その聡明さにあこがれた。いわゆるお仕事小説でもあるわけで、淡々と働くってのもいいものだな、とか思ったり。この主人公の過去、寮母とか掃除婦とかしていたころのこととか、この小説のあとの新しい店をまかされてからの話なんかも読みたい、と思った。ただ、描写がうまいせいか、死にそうな犬とか病気の子どもとか汚れた寒々しい家とかまざまざと見えるようで、読んでると気持ちが暗く寂しくなってしまうような。どうも日本文学ってそういうところがある気がする。読むときのこっちの体調や気分にもよるのだけれど。
0投稿日: 2011.02.06
powered by ブクログ初めて読んだのは中学の時です。難しい話ではないけれど、古い言い回しや物の名前等、分からない部分も結構ありました。 でも時にたゆたい、時に蕩々と流れる文章のリズムが心地よくて。 何度も読み返し、少しずつ腑に落ちて、そのたび味わいが増すように思います。
0投稿日: 2010.09.09
powered by ブクログ大分前ですがきものを読み面白いな~と思って購入。そのまま忘れていたのですが本棚を発掘したときに出てきたので読みました。 読み出したら面白くて! でも読み終わって考えてみると結構切ない、寂しい話だなあと思いました。その辺りも橋のたもとで行こか行くまいか考えてるような心持なのでしょうか。 女性はたくましい!と言うかたくましくありたいなと思いました。 面白かったです。
0投稿日: 2010.05.20
powered by ブクログすっげ! と思った。 しなやかにして強靭。 流れるような文体。 登場人物の、誰をも憎めない。 人間臭いのに、愛しい人がいっぱいです。
0投稿日: 2010.05.07
powered by ブクログ幸田文は、露伴を父とし、厳格に育てられ、結婚し一女をもうけるも離婚、離婚後に作家として成功自立しており、「家守る女」と「経済的に自立する女」との両方を体験した人。ちなみに、幸田露伴の妹たちは洋楽の先駆者であり、自立する女の先がけでもありました。その著者が、実際に花柳界に住み込んだ経験をもとに書きあげた昭和30年の作品。 そこから半世紀、「男女雇用機会均等法」からもう30年以上たつというのに、幸田文が抱え、彼女の小説にでてくる「女の葛藤」は今に通じる。「女が仕事で成功するためには女を捨てるか、女を武器にするかどちらか」とは今でもよくいわれる話でしょう? この「流れる」では、女を武器にしているほうの女の葛藤を描いているわけですが、特にウーマンリブ的な女人に読んでもらいたい。「女らしさ」について、あるいは「女らしい女」について勉強になると思います。女同士だからこそ、わかっているつもりで、何もわかっていないことはよくあるでしょ? 社会の変化は緩やかだし、こと「女の経済的自立」という問題は、人間の根源(産む育てるという女の性)にからむ問題で、あと50年、いや100年後も「思うに任せない」状態が続くに違いないもの。 この本から女の自立についての答えは見つからないけれど、時間や時代の趨勢の流れ(=つまり社会)と自分との距離感、「流れに乗りたい」「落ちこぼれてもそれも良しとする」「流れに乗れない人(あるいは自分の側にいない人)にどういう態度をとるのか」等、隅田川の流れのようにゆるやかに肩ひじ張らず考える時間を持てる一冊だと思います。 How toの書かれたビジネス本や男女の性を精神的医学的な本で、ロジカルなアプローチをするのも良いけれど、同様に、もっと皮膚感覚で「女」というものを感じることって、遠回りのようで「女の社会適応」にとって必要なことだなと思われてなりません。 成瀬巳喜男監督、山田五鈴、杉村春子、高峰三枝子、岡田茉莉子等オールスターキャストで 映画化もされています。この映画のほうもオススメ。変わりゆく日本の街の風景、花柳界、建築、服装などが見事に映像化されていて、素晴らしい。
0投稿日: 2010.02.19
powered by ブクログ時代の流れで落ち目になっている芸者家の主人、年を取っても芸者としての実力の持ち主染香姉さんのすばらしさ、弱み、その両方を梨花が見ながら、また、くろうとの世界にしろうとが入って、下に見られながらも、しろうとの怖さを垣間見させる場面、梨花のすぐれたところが次第に認められながら、次第にこの世界を好ましく、離れられなくなってしまう梨花の気持ちが、最後の場面では強く感じられ、気持ちの良い読書になった。
0投稿日: 2010.01.14
powered by ブクログ図書館。 置屋の住み込み女中になったアラフォー寡婦・梨花の物語。 どちらかというと、ヒロインは傍観者的な存在。 口語体が心地よかった。
0投稿日: 2009.08.19
powered by ブクログ四十過ぎの未亡人梨花は、没落しかけの芸者置屋に女中として住み込みます。 しろうとから見る花柳界は、芸者達のふとした仕草や姿の美しさに目を奪われたり、芸者を取り巻く風習の合理的な部分と曖昧な部分が入り混じった様子や、出入りする女の表裏が見えたりして、美しく華やかであると同時に、脆く哀しくもあります。 裕福な旦那の後妻に納まる女もあれば、貢いだ挙句に捨てられる女もあり、 美しく芸達者な主人の娘は醜く売れなかったり、そうかと思うと病気の姪は素行がおかしいが美しかったり。 どこか不揃いな人間同士が寄り合ったり交差したりしながら生きている、人間模様・人生模様がおもしろかったです。
0投稿日: 2009.07.22
powered by ブクログばあちゃんから進められて読んだ、幸田文 初めて読んだのは「闘」だった。 意外と一生懸命読んだけど何せ中学くらいだったから 全然、そのよさとかじゃなく、ストーリーを目で追うばかりだった。 でも、久々に手に取ったこの「流れる」で こんなに薄い本なのに、こんなにお腹一杯になるんかっていうくらい すごい本なのにビックリした。 女の人の強さ、そしてボロボロの芸者長屋の雰囲気? 貧乏だけど、外面やお付き合いとかがしっかりしてる暮らしていうか とにかくカッコイイ文体なのだ。 古い本だけど、すごいおすすめです
0投稿日: 2009.07.08
powered by ブクログ地に足の着いたかんじ。鄙びたかんじ。観察眼の鋭さ。率直な描写。 日本人だけどいまだに芸者の世界は未知だらけ。 「SAYURI」「さくらん」「舞妓HAAAAN!!!」など映画にもけっこうあるけど どうもいまいち私自身が誤解しているような気がいつもしている。 まあ祇園で遊んだことなどないからわからなくて当然といえば当然?
0投稿日: 2008.11.09
powered by ブクログ小説は好まない。中でも私小説は嫌いだ。この作品を書くために作者の幸田文は実際に住み込みの女中を経験したそうだ。そう言う意味では嫌いな作品の候補であった。しかし、面白かった。暗い作品ではあったが、確実に滅びに向かっていることを意識しながらも何もすることができない、することをしない人々の逃げ場のない閉塞感が二〇〇八年現在の時代の閉塞感と符合して息苦しく、時にめまいを感じながらもワクワクした気分を維持しながら読了した。
0投稿日: 2008.10.05
powered by ブクログ幸田露伴も読んだことないのですが、とっても読みやすいというなんかのレビューみたら読みたくなっちゃって図書館で借りてきました。 文庫版でないやつは、誰も借りた形跡がなかったのだけど、渋い桜色の装丁でとっても可愛かった。 とある芸者小屋のお手伝いをしてしまうことになった日々のお話。 今でいうと、「きょうの猫村さん」 知らない世界の常識とかってこんなんなのねーあらまー。 みたいな。 とっても読みやすい本です。
0投稿日: 2008.03.24
powered by ブクログいい!絶対いい! たぶん3回目くらいに読むのだが何回読んでも良いと思う。これは少し語りたい。読むたびに発見するものがあるのだ。 最初読んだのは高校生のとき。「おとうと」から始まって文庫を何冊か続けて呼んだ。そのときは文体のリズム感とかそんなのがよかったんだと思う。 2回目は古い映画を見た後。梨花は田中絹代、染香が杉村春子、ななこは岡田真理子(こんな字だっけ?)、勝代はえーとほらあの日と灯台守の映画に出てた人、24の瞳の人。主人が誰だったか忘れちゃったけど。佐伯は中谷何とかって人だった。30代のときだったかな。そのときは、「なんどり」が朝起きる場面にやられたのだ。 横になったまま細い手を出して赤い友禅の掛蒲団を一枚一枚はねておいて、片手を力にすっと半身を起すと同時に膝が縮んできて、それなり横坐りに起きかえる。蒲団からからだを引きぬくように、あとの蒲団に寝皺も残らないししっとりとした起きあがりかたをする。藤紫に白くしだれ桜と青く柳とを置いた長襦袢に銀ねずの襟がかかって、ふところが少し崩れ、青竹に白の一本独鈷の伊達じめをゆるく巻いている。紅い色はどこにもないのに花やかである。若くつくっていてももう老婆というはずのひとの夜を考えさせられるのである。なんと云ってもひとといっしょにいる夜、いたい夜ではなかろうと思うが、それはしろうとの推察である。この紅より色の深い紫の襦袢を着なした本体というものには、およそ燃えるだけのものはすでに尽きていると見るのである。過去の燃えた記憶しかあるまいけれど、いまもこうした風情のある寝起きなのである。・・・(略)・・・高速度写真のようにスロー・モーションでなよやかに起き上がって、少しも急いた気持ちなどなく手鏡に髪をそろえる。 梨花は自分の「ざっぱくない起きかた」を思い「ふたりの床からしなやかにからだを引き抜」いた日を遠く思う。赤いものがもう何回あるかという年になってそれよりもずっと年いった女の過去の情事を垣間見たような気持ち。 やられた、これなんだな。梨花の気持ちが30すぎてなんとなくわかったのだ。高校生ではわからなかった情景が見えたって云うか。・・・現在のことはたしかに主人のうちのしみじみとする年の瀬である。自分の世帯のうえならしみじみなどという余裕はなかった、ただ迫られることの恐ろしさでがじがじするのである。 「しみじみ」のなんという心もとなさ。「がじがじ」のなんと言う歯軋りのような切なさ。 今回、ふと他のひとの感想も読んでみようと途中で検索してみました。 ハイジさんの「梨花=市原悦子、家政婦は見た的負け犬ストーリー」なるほど、そういえば「聞くまいとする耳が勝手にあちらに延びて行く。」だの好奇心からなな子のノートを見ちゃったり、佐伯をめぐる女たちの思惑や佐伯の反応を探ったり。みんな頼るもののない一人で生きていく女。なるほど。 スミスさんのスリルとサスペンスというのもなんとなく納得。 そして今回気がついたこと、結局私の理解力では以下の2点がどうなったのかはっきりわからないということ。 第1点、なな子が云った「2階に行ってはいけない」の疑問。いくらかわかったって云うけど「器量と芸の2本立てのやきもち」よりもっと複雑なことってなに?掃除やお茶は持って行っているんだから親子の中に関係するなってことかな。そんな抽象的なことなな子が云う?鈍感な読者だからよっぽっどこうでこうでと書いてないとわからない。 第2点、作者本人はこのあと病院の付添婦みたいな仕事に変わったけどこの後梨花さんはどうしたの。「一つは主人、露を光らせて咲き崩れようとする花のようなあでやかな笑顔、それがいまはなんとさびしい顔なことか。一つは佐伯、この男に感心しながらも年長者の優越で優しくしてやりたいと思ったこと。その二つが自分の心のめど」、ってどうなったの。読解力ないんです。どっちにも取れるような気がして。なんどりとのやり取りが伏線で佐伯を取ったと思うんだけど。05・3・15
0投稿日: 2007.11.05
powered by ブクログ時代設定や小説の舞台を把握するのに苦労はしたが、思っていたよりも、ずっと読みやすかった。というのも、文章が、丁寧なで優しくて温かで、日本語って本当はこういうものじゃないのかな、と考えさせられました。そして、何より「流れる」というタイトルがぴったり合うような、主人公・梨花の要領の良さと言うか、処世術は羨ましいばかりです。
0投稿日: 2007.10.09
powered by ブクログあけすけな所まで行かない正直さを持つというのは、損でもあり得でもある、ということ。それと、必ず感じるのは事物事象を的確に捉えようと凝らされた視線の強さです。それが正直さを支えているのだと思います。言葉の選び方が厳しいところも、それでも何処かものごとにたいする愛着や愛情を感じさせるところも、やはり大好きです。
0投稿日: 2006.07.21
