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経営リーダーのための社会システム論~構造的問題と僕らの未来~
経営リーダーのための社会システム論~構造的問題と僕らの未来~
宮台真司、野田智義/光文社
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総合評価

28件)
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    現在の社会の問題を構造的に捉えて、その原因が何であるかを考察し、何をしていけば良いのかを対談形式でまとめた本である。 対談形式ということもあり、読み易さがありながらも、問題の深掘りは哲学や実例を交えているため、本質をついてると感じた。 本書を読むことで、主に日本社会で起きている問題を考えるきっかけとなり、自分がどんな社会を良しとするのか?どんな社会に暮らしたいのか?そして、そのために何をしていきたいのかを考える良いきっかけになると思う。 今の政治に一般意志が反映されているのか?という疑問もふと浮かんだ。 さて、私はこの問題に対して何をしていくのか?改めて考えていきたい。

    5
    投稿日: 2025.08.07
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    ・人々に規範や価値観を共有しましょうとただ呼びかけただけでは、その通りになることはまずありませんが、ある体験を共有していただくことで「いいなあ」と感じてもらうことができれば、そこから先、人々の規範や価値観に変化が生じる可能性があります。 ・社会の変化が急激に起きる際、人々は自分たちにとって大切なものはなにか、自分たちがどんな社会を望むのか、といったことを考えるよりも、新たな仕組みや枠組みに対応するのに精一杯です。具体的には、自分だけ取り残されるのではないかという不安や恐怖が広がり、市場や行政がそうした感情を利用して近代化を推進していったのです ・共同体には必ず維持コストがかかります。人々がそのことをわきまえない場合、共同体なんかにコストを掛けるよりは、システムからベネフィットを引き出すほうが、コストパフォーマンスは高いというふうに損得計算するようになります。すると、システムに依存するうちに、共同体を空洞化させてしまうのです ・欧米の事例を理解するのに重要なのが、社会学で言う「相対的剥奪感」と「外部帰属化」という概念です。人は、絶対的な不満というより、何かを比較の対象とした不満、「過去よりもひどい」とか「周りよりも状態が悪い」といった不満を感じやすい。加えて、わかりやすい異物や昔はなかったような対象を指して「わりのはこいつらだ」と決めつけがち。 ・埋め合わせようのない不安を感じる人が、その不安とは関係のない埋め合わせ可能な別の不安を持ち出し、埋め合わせようとする。それが神経症です ・アーキテクチュアル・パワー:人を快・不快を感じる動物として、そのコントロールをアーキテクチャによる管理化を進める ・リッツァのいう「マクドナルド化する社会」とは、人間が動物でありさえすれば回るような脱人間化・没人格化・損得化が進んだ社会です。そういう社会では、人々は「かけがえのない人間として扱われたい」という感情を無視されることで疎外感や不安感を抱くようになる。それに対処するために使われるのが「ディズニーランド化」、すなわち祝祭的消費による感情的回復です。システムが作り出した裂け目をシステムで埋めている ・人々が現実の世界で幸福を感じながら生きていけるようにしていくことがリーダーの役割 ・社会の秩序を整えるための統治には「教育を充実させて人々を倫理的な主体に育てる方法」「法制度とテクノロジーを強化して監視と賞罰を徹底する方法」「アーキテクチャを使って、快・不快を通じて人々を制御する方法」がありますが、これらはいずれもかなりのコストを要します。これに対し、ディズニーランド化を利用した統治、とりわけドラッグやゲーミフィケーション(AR・VR)を用いて人々の脳内を制御して不満や不安を解消させる統治が実現すれば、コストが劇的に低下する可能性があります ・システム世界では、どこの誰が作ったのかわからない安いものを食べています。これに対して「仲間のためにいいものを作りたい」と思っている仲間の努力にお金を払い報いながら食べる営みは、食べる体験を完全に別物にします。 ・リーダー個人の損得のためといった目的では動きは広がっていかないので、目的には体技とか利他性がなくてはいけません。また、信頼がベースにないと人はついてきてくれないので、リーダーが自分の価値観をしっかり持っていることもすごく大事 ・コミュニティパワー:地域の人々や地域の発展に関わり合うことで、みんながオーナーシップを持てるようになる ・共同自治体を確立していくプロセスにおいて求められているのは、そうしたエリートではない。むしろ必要なのは「縁の下の力持ち」です。影からサポートし、自分は目立ちません。自分の手柄も相手に渡す人です。 ・立派な人:利他的で倫理的であること

    0
    投稿日: 2025.04.19
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    面白かった。孤独の危険性とシステム化された社会との付き合い方について、理解が深まる。システム化された社会における感情の劣化など、実社会で感じていたことをしっかり言語化してくれていた。

    0
    投稿日: 2025.04.14
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    構造的問題(新興国の農園、孤独死)とは実は悪者がいないなかで起こること。 各プレイヤーに与えられた役割の中で最善を尽くすと起こり得る問題が多い。 要は部分最適になっている状況と理解できる。 別で読んだ、「組織不正はいつも正しい」に近い内容かと。

    0
    投稿日: 2025.01.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    うーん。難しい時代だ。 処方箋は提供されているが、共同体の確立とかできるんだろうか。 食を入口とする、というのはおもしろそう。 P79  人々はもはや地域にも家族にも属さない浮遊した存在となり、それぞれが匿名者として戯れています。そして、グローバル化によって中間層が崩壊した格差社会において、地域と家族の空洞化を埋め合わせているのが、市場や行政といったシステムにほかなりません。システムに依存した社会は「社会の穴を、経済で埋め合わせる」ものです。だから「経済が回らなくなれば、社会の穴に人々が落ち込む」のです。その 事例は、孤独死以外にもさまざまなものがあります。 P88 さらに言えば、日本は災害大国で、気候変動を背景にして今後どんどん災害が起こります。災害時には、市場も行政も止まりがちです。だから、システム世界の外に生活世界を持たない人が現実に死んでいくことになります。だから僕は20年間ずっと「システムの外を大事にしろ」と言い続け てきました。今まで誰も耳を傾けませんでしたが、今後は僕が言わなくても、生き残るために、シ ステムの外にある生活世界を大事にするようになるかもしれません。 P124 ヒラメとキョロメに覆い尽くされた日本 野田 現在の日本は「社会の底が抜けている」状況であり、そのことを僕らは深く危惧しています。 というのも、宮台さんが指摘されるように、人間はゲノム的に孤独に耐えられない存在です。その人間が社会の中で生きていくためには、自分たちを包摂してくれる集団が必要なのですね。 宮台 かつて、われわれの本拠地は、生活世界でした。われわれは、生活世界を「ホームベース」 として暮らし、ときどきシステム世界に出かけては、狩猟採集活動をするかのように「獲物」を持 ち帰り、生活世界を生きるみんなのためにシェアしたわけです。しかし、われわれがシステム世界 に過剰に依存するようになるにつれて、生活世界がやせ細っていきます。 今や社会は、システム世界がメインで、生活世界はその下請けであるかのように変容しています。 その結果、生活世界が持っていた包摂性は失われ、個人はむき出しの状態で「システムに直撃され る」ようになっています。そのことが人間の感情的劣化を引き起こしているのだ、というのが僕の考えです。 日本ではこうした変化が特に著しく、汎システム化と共同体空洞化の先に絶望しかないことを他の国々に先駆けて示している点で「課題先進国」なのです。 宮台 日本が課題先進国になった理由は、第1に、「郷に入っては郷に従え」の類の共同体従属規範はあっても、「共同体の衰退を是が非でも避けなければならない」という共同体存続規範がないこと。 第2に、「人が見ていなくても神がみている」の類の、人のまなざしと神のまなざしを分ける宗教的規範がないことです。代わりに日本は、上の御機嫌をうかがうヒラメと、周囲の空気をうかがうキョロメに覆い尽くされています。 P142 でも女性が生きていこうとすれば、男性を見つけて結婚するしかありませんでした。今は、仕事で成果を出したり資格を取得したりしてステータスアップを図れます。クズ男性とつき合うぐらいなら、ステータスアップに時間を使う方が合理的になります。 これらすべてを踏まえて単純な図式にすると、まず、男性が損得化して、一部が性的に退却し、次に、女性が損得化した男性とつき合って懲りて、一部が性的に退却した、という展開になっています。 そもそも性愛関係は、喜怒哀楽を含めた包括的・全人格的なものです。僕たちは性愛を通じて、自分が根源的に肯定される体験を得ました。しかし、性愛が属性主義に陥るほど、ほかに代替でき ない喜びは、小さくなります。だから、属性主義を背景に、男女がともに性愛をコストとベネフィ ットという損得勘定に帰着させてしまうのは、実は自然な成り行きです。 ところで、男女の性愛の損得化の背景には、より深刻な家族の損得化があります。家族の損得化 が、そこで育った男女の性愛の損得化をもたらし、性愛の損得化が性愛をへてつくられる家族の損 得化をもたらす、という悪循環があるのです。 P149 ネットコミュニティにおける人間関係は、つき合いたい相手とだけつき合う、つき合いたいときにだけつき合う、相手の見たいところだけを見る、というつまみ食いです。すると、部分的な人間関係しか経験できず、包括的な人間関係から疎外されます。その結果、「相手が困っていたら、思わず自分が動いてしまう」ような損得を超えた利他的つながりを経験できなくなります。実際、そうしたつながりを経験したことがないという大学生が大半です。 思わず動いて、困っている相手を助ける。それで相手が喜んでくれ、そのことに自分も喜びを感 自分が困っているときに相手が助けてくれる。それで自分が喜びを感じ、それを相手も喜んでくれる。そういう喜びは、相対的な快楽というより、絶対的な享楽です。至上の悦びで す。でも、ネットコミュニティの人間関係ではその悦びが得られません。だからネットコミュニテイが拡大すれば、人間関係の悦びを知らない人が増えます。 すると、何が起こるでしょう。人は他者との関係を、プライベートを含めてコストパフォーマンスだけで測るようになります。だから、人間関係において生じる面倒くさいことやわずらわしいことを回避するようになり、対人能力の退行や未発達も進みます。その結果、人間関係から生じるノ イズをますます怖がるようになり、ネットコミュニティのつまみ食い的な人間関係にますます依存 する、という悪循環に陥るわけです。 P153 親は、子どもを持つと、いい幼稚園に入れ、いい学校に進学させ、いい会社に就職させるという ふうに子育てし、それに成功して周囲の人たちから「いいね」ボタンを押してもらいたいと考える ようになります。「いいね」ボタンはほかのことでも押してもらえます。そこでは、子どもを育てることのメリットとコストが天秤にかけられるのです。つまり、子どもをつくるかどうかも損得勘定による判断になるということです。社会学的には、それが少子化の最大要因です。 パク マッチングアプリのようなシステムを使って出会いの効率化を追い求めた結果、かえって恋愛が非効率なものになってしまっているのではないかと理解したんですけど、間違っていますか。 宮台 間違っていません。出会いにコストをかけたくないから、マッチングアプリを使う。マッチ ングアプリは、スペックでスクリーニングする。すると、相手が見つかっても、もっと条件に合う 相手を求めて相手をどんどん替える。多くの人は「おかしいな、なんでこんなに頻繁に相手を替え なきゃいけないんだ」と思う。でも、どうしたらいいのかわからず、不全感も埋まらず、ムダなあ がきを続ける。結局は、逆説的なコスト高になります。

    0
    投稿日: 2024.08.31
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    リベラルアーツはとても広義であると思う きっとかなり色んな要素を詰め込んだ1冊なのだろう 統計学的なエビデンスは 逆説的に言い切れるのか少し疑問も残る 突き詰めえていくと社会主義的な思想なのではとさえ感じた フランス、日本、アメリカと生活しているが フランスやアメリカはレジの見知らぬ店員さんと急に世間話が始まってレジに行列 それでも、あら元気?良い1日を!ありがとう!と声を掛け合う なんてことはしばしばある コンビニの話は日本特有のものなのだろうか しかし、 気にかかる仲間がいるという事実をベースにした同心円的な想像力の働きの延長線上で初めて全体についての意識がうまれる という指摘などは大いに共感する 経営リーダーのための本書はその先の社会システムまで考察さているのだと思う

    0
    投稿日: 2024.08.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    自立依存から他律依存への頽落 構造的問題の最大の特徴は、「悪役がいない」ということだ。悪役がいれば、話は比較的単純だろう。打ち倒そうと正義のヒーローが現れるし、必死の覚悟で一揆をおこすことだってできる。でも、悪役がいなければ、ヒーローは現れようがないし、抵抗のエネルギーを結集することもできない。 コミュニティの維持について大切なのは、おせっかいを互いに許容しあうこと、人の人生に入り込んでいくことをお互いに許容しあうこと。具体的には、祭りでみこしを担ぐようなこと。バックボーンの異なる人たちが力を合わせてみこしを担ぐ、そういう肉体を使った共同作業を行うこと。それを「いいなあ」と感じてもらうこと。→「体験のデザイン」 「いいとこどり」はできない。 絆には絆コストがかかる 一人ひとりが安全快適便利を求めることは止められない。しかし、「つまみ食い」や「いいとこどり」は許されない。「いいとこどり」ができないのが社会の厄介なところ 「生活世界」と「システム世界」 ・「生活世界」地元商店的 コミュニケーションは顕名的、人格的、履歴的 店主の代わりを務められる人はいない 人材の入れ替えは容易でない 共同体意識、仲間意識によって成り立つ→いわゆる「ウザさ」「不自由さ」の原因にもなる ・「システム世界」コンビニ的 匿名的・没人格的・単発的 → 没主体化・損得化・動物化 慣習しきたりではなく、マニュアルに従って役割を演じ切ること重視 人間関係は全体的・包摂的ではなく、部分的・機能的なものを求められる 結果「善意と内発性」ではなく「損得勘定」が行動動機になってしまう 基本的に感情を伴わない- 「法よりも掟」 「相対的剥奪感」と「外部帰属化」 日本ではこうした変化が特に著しく、汎システム化と共同体空洞化の先に絶望しかないことを他の国々に先駆けて示している点で「課題先進国」なのです。 日本が課題先進国になった理由は、 第一に「郷に入っては郷に従え」の類の共同体従属規範はあっても、「共同体の衰退を是が非でも避けなければならない」という共同体存続規範がないこと。 第二に「人が見なくても神は見ている」の類の、人のまなざしと神のまなざしを分ける宗教的規範がないこと 加えて、日本の共同体は「遠くの親戚より近くの他人」的な地縁共同体であるため、システム世界の拡張がもたらす高い流動性に脆弱 以前の「世間体」は実際に「誰かに見られている」と同義だったが、地縁共同体の崩壊以降、世間体は形骸化し生活様式の共有を描いた匿名者たちの内容空疎なモードになります。 そこでの世間体は、見かけをとりつくろわせるだけの「外野のノイズ」で、孤独に耐える勇気やちゃんとふるまう動機を与えられません。 マッチングアプリで出会っても、カップルが絆をつくることは難しい ①大半は、互いに相手を入れ替え可能だとみなし続けてきたクセがある ②「相手はまだアプリを使っているかも」と想定しながら付き合うことになる から 便利なシステムではあるが、人間が求めているはずの全人格的な性愛関係を回復させるものではなく、むしろ属性主義や損得化を加速させる方向で確実に機能している →「逆説的な不全感」 出会いにコストをかけたくないから、マッチングアプリを使う。すると相手が見つかってももっといい条件の人を探す→「おかしい。なんでこんなに頻繁に相手を入れ替えなければいけないんだ?」とは思うが止められない→結局は「高コスト」 ネットコミュニティは何らかの目的を持って参画する。そうすると、人とのつながりは、極めて限定的、合目的的にならざるを得ない かつては、国家の中に共同体が残っていた。自分たち誰のことを考えていたら生きられなくて、他人に助けられた経験を持っていた。なので人は倫理的に育ちやすくなっていた。でも、共同体が空洞化すれば倫理的な指導者を生む環境も空洞化する ゲーティッドコミュニティ、独立する富裕層の減少→もはや「国民=仲間」「われわれ意識」はなくなりつつある →統治コストは飛躍的に増大 人間は利便性のためにシステムを作り出しますが、使い方を間違えると、人間の行動がシステムに支配されてしまいます 「お金が人間を支配する世界」と「AIが人間を支配する世界」はなだらかにつながっている 「お金が人間を支配する世界」の観点から見ればシステム世界への依存度が高まるほど、そこに市場が作られる ↓ その市場はさらなる格差や貧困を生む ↓ それを再配分で埋めずに、バーチャル世界が与える幸せで埋めれば、ますます格差が広がる 監視カメラや信用スコアによる統治 パブリックマインドをあてにできる「信頼ベースの社会」か「不信ベースの社会」か 5章引き続き「統治」の視点から システムの全域化≒構成員が動物(快不快損得だけで動いても)であっても回るしくみ→客の常識をあてにしないのでさらに不信社会を招くしくみ(象徴的な出来事がモンスタークレーマー) キーワードは「仲間」です。「どの範囲までを仲間だと思えるか」 「災害ユートピア」 阪神大震災では出現、東日本ではあまり見られなかった→普遍的な現象ではない 東日本では宗教、お寺の檀家運営などでだけ出現=システム世界の外(≒共同体)を日ごろから大切にしてきたから 災害ユートピアは、どんなに集団を小さくしてもできないのか。安全が確保されていれば一時的にでも出現するのか。 →答えは、育ち方の環境です。「利他性」や「貢献性」について「概念としてはわかるけど、そういう感情が自分の中に生まれたことがない」・・・そういう人たちには共通して、誰かが犠牲を払ってでも自分を助けてくれたという経験がありません。経験がないのは彼らのせいではありません。 社会の統治の未来を考える時には、「どんな生育環境を、自分の子供や仲間に残したいのか」という問いが重要になるのです。 「利己的な利他」と「利他的な利他」 自分が救われるために誰かを助ける 端的に助けたいから助ける システム世界に向き合う際のアプローチ 社会成員に期待すること ・ヨーロッパ世界 人として「まとも」に生きようとすることを期待する ・アメリカ世界  設計された環境に適応し、「うまく」生きようとする テックはシステム世界の全域化=汎システム化を促進→個人間の分断、クラスタ間の分断→人々の動物化→ 内発性とは無関係に損得だけですべてを済ませられる領域が広がったので、他者とのつながりを維持することもコストだと考え始め、損得を超えた倫理に関心を持たなくなりつつある・・・「感情の劣化」 「人間であること」と「人間的であること」は違う 人間的なAI、遺伝子組み換えによる人間的な改造哺乳類、非人間的な人間が横並びになる すると「人間であること」よりも「人間的であること」の方が大切になる 8章 処方箋 システム世界も生活世界を含めた全体の中の内部表現。それぞれ独立していない 再構築を目指すのは「システム世界の力を借りて存在する人工的な共同体」 共同自治とは、地方自治のようなものを指すのではなく「われわれが、われわれのことをなんとかする」「任せて文句を言うのではなく、引き受けて考える」 没主体化・損得化・動物化に一人では抗えない システムのファストフードに対する人間関係のスローフード のような 二項図式は失敗する 「気にかかる仲間」はネット上では作り出せない そこから「全体への意識」 「一人で自分のために知恵を出そう」は動機が枯渇しやすい 「みんなで、みんなのために知恵を出そう」は楽しくなる。熟議の場で、みんなが仲間になっていない状態では、断言調で極端な意見を話す人がいると「潔さ」や「痛快さ」を感じる人が出てきて、その意見が通りやすくなる。 中動態≒能動的受動 見るでも見られるでもない「見える」 「われわれ意識」を生じさせる 「われわれ意識」を持つのは、「われわれ意識」を持とうとするからではなく、「われわれ意識」を持つのが自然な環境に置かれて育つからです。正確には気づいたら「われわれ意識」が生じているのです。 全員を巻き込むことは理想ですが、現実的ではありません。 →「われわれ意識」をはぐくむには、「俺が決めた!仕切った!」という人ではなく「みんな参加した」という人をたくさん作ること。 統計的には全体の2割が議論に参加してくれたら大成功。それで雰囲気はがらりと変わる →議論に参加してもらっても、他の意見をつぶしたり決定権を持たないようにすることが大前提 みなさんが生きてこられた社会はそれぞれだいぶ異なっていると思います。しかし、それがデフォルトです。生きている世界が違うからつながれないというふうに思ってしまったら、そこから先は一歩も進めなくなります。 暗黙の了解、とか、信頼で成り立っていたものが、契約とかルールでしか成り立たなくなる。 暮らしていくしくみが複雑になり、システムの力を借りないと成り立たなくなる。 顔と名前よりも、識別可能な番号や記号でないと成り立たない社会、逆に言うと入れ替え可能であり、主張しなければ忘れられていく不安や孤独と向き合う社会

    1
    投稿日: 2024.05.08
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    いやはやーめちゃくちゃ面白かった...! 豊かになっているはずなのに生きづらいのはなぜか。構造的問題は何か。そもそも、私たちはどんな社会システムに依存しているか。短期的な選択が中長期的にどのような症状を引き起こしているか。なにがセンターピンか。 いつもと違う角度からの刺激がビシビシでした。対話形式で読みやすいです。

    1
    投稿日: 2024.03.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ボスから薦められ、読了。読み進める中で、自身も「システム世界」の一員であり、利便性を追求する余り、無思考/無感覚になっている可能性を強く意識した(例えば、毎日コンビニ弁当を摂取するなど)。もちろん、これは現時点の自分にとっては合理的な訳だが、システム世界に浸かることによる不の可能性を常に念頭に置くことは肝要と思う(コンビニ弁当が自身の味覚を形成すると思うと、それは必ずしも本意ではない)。 また、必ずしもシステム/テクノロジーを全否定するわけではなく、その利便性を享受しつつも、自身が帰属する共同体および共同体から自身が享受している恩恵に思いを馳せることもまた、本書から感じ取った要素の一つ。以下にも引用している通り、システム世界で強く生きるためには、そのベースとなる共同体が不可欠。共同体の存在を忘却/軽視し、維持コストを払わなければ、いつの間にか自身も「底の抜けた人間」になっている、という恐ろしい顛末になりかねない。どのような感情を持つ人と仲間になりたいか/ありたいかを考え、その維持に向け、自身は何を請け負う/与えることができるか、という視点が必要と感じた。 特に印象に残った箇所は以下の通り ・「ただし、未来の設計は必ずしも論理的な帰結から導かれるものではないということだけは再度強調しておきたい。コンピューター科学者のアラン・ケイが述べているように、未来は選択するものだし、選択の主体は僕たちだ」(p.21) ・「構造的問題の最大の特徴は、「悪役がいない」ということだ」(p.57) ・「共同体には必ず維持コストがかかります(中略)共同体からいいものだけを引き出し、コストをかけないという「いいとこ取り」はできません。つまり、「絆には絆コストがかかる」のです。しかし、人々がそのことをわきまえない場合、共同体なんかにコストをかけるよりは、システムからベネフィットを引き出す方が、コストパフォーマンスは高いというふうに損得計算するようになります。すると、システムに依存するうちに、共同体を空洞化させてしまうのです」(p.81) ・「自信を入れ替え可能な存在だと思う人間は、他者のことも入れ替え可能な存在だと見なす」(p.103) ・「日本では最近「グローバルで戦えるような強い個人を育てよう」といったスローガンが掲げられますが、間違いです。人は強くありませんし、強く見えても病気や事故でヘタレます。弱い個人を包摂する共同体、つまり代替不可能な人間関係を備えたホームベースが維持されて初めて、システム世界で強く生きられます」(p.126) ・「「気にかかる仲間」がいるという事実をベースにした同心円的な想像力の働きの延長線上で、初めて「全体についての意識」が生まれるのです」(p.254)

    2
    投稿日: 2024.02.10
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    リーダーシップの旅を読んでファンになっていた野田さんと宮台さんの対談本。好きなお二人の本だけにとても楽しみに読んだら、まさに自分が今悩んでいる部分に対しての処方箋となるようなコメントが数多く散りばめられていた。 とはいえ、簡単に世の中を変えられるわけでもないけれど、少し方向性が見えたような気がした。 分断を生まないようにしながら、一人一人が傍観者にならず当事者意識を持って参加する共同体を作ることが大事。それをできるファシリテーターが必要なのだと。 ファシリテーターと表現されているが、個人的にはリーダー的な人なのかなと理解している。それも偉そうなニュアンスではなく、コミュニティ意識をもってそのコミュニティを少しでもよくしたいと願う人なのだろう。

    3
    投稿日: 2024.02.04
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    損得野郎の自分にとっては胸に突き刺さる本だった。失って行く人間らしさに絶望しながら、人間らしさを取り戻す模索をしていこうと思う。

    1
    投稿日: 2023.08.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    冒頭で語られる「日本は社会の底が抜けた状態」というのが、本書を読むことでよく理解できる。また講義形式のせいか、難解な社会システム論が理解しやすく語られているのと、受講生による質問で議論が更に深まっている。 本書では、市場・行政を”システム世界”と呼び、その拡大により、人々の感情劣化(利他性が損なわれ、損得勘定が主な価値判断となる)と孤立化が進んでいると言う。それが仲間意識の希薄化・分断となり、民主政の機能不全に繋がっている。 民主政は、それを営む人間の”善意”や”倫理”が前提となっており、いかに維持が難しいかということと、自分自身も損得勘定の価値判断にすっかり染まっていることに気付かされた。

    1
    投稿日: 2023.03.13
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    社会の変化が極めて論理的に語られていて、なるほどと膝を打つと同時に、この感情の劣化を止める方法は本当にあるのかと、絶望感の方が大きかった。 今後は宮台氏の他の著書も手を付けるとともに、ピーターティールをはじめとした新反動主義者、加速主義者、リバリタリアンの主張も学んで行きたい。

    1
    投稿日: 2023.02.15
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    漠然と抱いていた違和感が明確に言語化されている。自分を取り巻く社会がどうなっているのか、どこに向かっているのか、そこから自分自身がどう影響をうけているのか、どう生きていけばいいのか、考えるきっかけになった。 耳の痛い話も多かった。 自分はフリーライドしがち。 講義形式なのと、文字数少なめでかなりわかりやすくしてあると思うので、関連書籍や著者の他の本も読みたい。

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    投稿日: 2023.01.19
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    システム世界の全域化と共同体の空洞化、その結果として孤独死や人間関係の希薄化といった問題が出てきた 合理的な判断と行動の積み重ねが、人間同士の関係性を根本的に変化させ、僕らの精神的安定性を失わせている 短期的な便益を享受するために意図的にシステムに依存する行為(自律的依存)が気がつけばシステムなしには生きられない他律的依存に頽落(たいらく)する 生活世界は維持にコストがかかる システム世界の全域化が始まると、社会の変容は基本的に不可逆となる 生活世界の維持をみんなで図ろうとしても、必ず誰かが抜け駆けしてシステム世界の便益を享受しようとしてしまう その誰かは、他の人々と違って生活世界にタダ乗りするだけで、維持に努力を払おうとしない 孤独に耐えられない弱い個人を包摂する役割を果たしてきた生活世界がシステム世界に置き換えられると、人間関係が流動的になり、われわれは入れ替え可能な不確かな存在となる その結果、引き起こされるのが 感情の劣化 であり、排外主義の広がりやヘイトスピーチ、高齢者クレーマーの増加といった社会現象も同じ要因によって生じる 何が自分にとって良い社会なのか 人を助けるとリターンが返ってくるから助ける社会と、困った人にただ善意から手を差し伸べる社会 権力をベースにトップダウンで命令を下すのではなく、人々の信頼を得て共同体自治の確立を向けて人々をエンパワーするリーダー 利他的・倫理的で、周囲から こんな人になってみたい と憧れるリーダー

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    投稿日: 2022.12.10
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    社会の構造的な課題を分析し、その処方箋を提示する。実にまっとうな、そして、現時点で最高水準の本だ。 キーワードはシステム化。行政や市場といった便利で快適なシステムに依存すると、社会は空洞化し、かえって統治は難しくなっていく。秋葉原事件のような無差別事件は多発するようになる。ではどうすれば? 本書のすごくまっとうな提言に耳を傾けよう。日本社会について、現代について、未来について、まずはこの本を読んでから語るべし。 何より、宮台氏の利他ぶりに、涙が出た。

    1
    投稿日: 2022.12.03
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    国家の設立目的と現代の国家の目的は一致していないのかもしれない。その中で、どのように国家を維持するモチベーションを持たせられるのか? > このように国民国家は、近代社会の理想像とは裏腹に、大きな矛盾をはらんでいました。つまり、エマヌエル・カントが掲げた「恒久平和の実現」という理想と、「戦争マシーンとしての国民国家」という現実との間に、埋めがたい齟齬がありました。けれど、それでもかろうじて運営されてきたのは、感情への設計(戦争を背景とした愛国教育)によって「われわれ意識」をインストールされた国民の中に、国民のためを考えて生きる「比較的まともな市民たち」がいたからです。「比較的まともな市民たち」が理性的に振る舞うことで、国民国家が支えられてきたのです。

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    投稿日: 2022.12.01
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    社会システムの変化に伴う、非人間性の浸透に対して、なぜそうなるか、何を意図してそうなってきたかを整理して、その上で懐古主義ではなく、これからどうするかについて、良質な問いかけを元に対話形式で進む本書は、学生、ビジネスパーソンだけでなく、すべての成人に読んでほしい書籍。事例は分かりやすく、マッチングアプリやマトリックス、アバター、鬼滅の刃なども事例に取り上げられている。 今通常のピラミッド組織におけるリーダーおよび今後のリーダー候補が、これからの社会のリーダー足り得ないことも描かれており、その立場にいる人も、その立場に関心が薄い、あるいは自分はその候補でないと思っている人も、目を通す価値のある本だと思う。

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    投稿日: 2022.10.24
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    久しぶりに集中して、本の後半は朝の3時から6時半で、一気に読み終えた。大学生までは、小説や哲学や社会学が好きだったこともあり、宮台さんの本は、当時のサブカル、援交などを全てまるっと大きく、社会学として、批評しているイメージがあったけど、難解な本は難解であった。 いつからか、私も、大学生までは最も嫌悪していたハック、ビジネス、自己啓発といった類の効率性重視かつ、心が貧しくなる本しか読まなくなった自分がいたが、そんな中、ビジネスと社会学が交わった本書は、適度なバランスで記述された本だと思う。 システム化と生活世界の軸をべースに、3段階の郊外化があったという話は納得できるストーリーだし、それぞれのキーワードである団地化、コンビニ化、ネット化は、今までも他の人の意見も踏まえ、論じられてきたデーマであり、腹落ちはする。 続

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    投稿日: 2022.10.16
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    宮台さんと野田さんが至善館で行った講義を書籍化したもの。コスパで捉える人間関係、自分は入れ替え可能な存在であると思いつめてしまうこの社会。システム世界が広がり人間関係の煩わしさが減った分、孤独や自己責任を受け入れざるを得なくなった社会。以前のような地域社会が戻ることは難しいだろう。読後、なるべく周りの人と話すようにした。そんな些細なことが生活世界を広げ、入れ替え可能ではない自分を作るような気がする。

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    投稿日: 2022.08.06
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    リベラルアーツに重きを置くなど特徴あるカリキュラムで知られる経営大学院の至善館で、社会学者の宮台真司と経営学者の野田智義が行った講義を元にした論考。もともと開学時から社会学者の橋爪大三郎などが教鞭を取っているのは認識していたのだが、まさか宮台真司まで登壇していたとは知らなかった。そしてここでの議論は今の日本、そしてこれからの日本を考えていく上で超一級の思考の補助線を与えてくれると断言できるほど素晴らしかった。 本書は「既に社会の底が抜けているこの日本社会をどのように良き社会へと変えることができるか?」という問題意識からスタートする。孤独死、無敵の人、ヘイトスピーチなど、日本社会は経済は何とか回っていても社会の底はこのような問題だらけで既に底が抜けかけた状態に至っている。そのような事態が発生しているのは、単一の悪者がいるわけでもなく、各構成員が良かれと思って行動をするうちにその総和からなる社会全体は悪い方向に進んでいく、というシステム的な観点での問題である。本書は社会学におけるニコラス・ルーマンらの社会システム論を理論的支柱とし、具体的な問題の状況を日本と海外の比較を行いながら明らかにし、そして最終的に著者2人による解決の方向性が示されていく。 実際の講義をベースとしたものということもあり、通常の宮台真司の著作からすると遥かに平易であり分かりやすく、普通に語れば極めて複雑なってしまう本書のストーリーをここまで平易に示せた点も含めて、十分な読みごたえがあった。

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    投稿日: 2022.08.06
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    日頃疑問に思っていた・違和感を感じていたことを、構造的に明確に説明してくれて、 なおかつ解決策まで提示してくれた至高の1冊。 ただその解決策を、実際に社会に浸透させて、人々の価値観や幸福感にまで落とし込んでいくとなると、ややリアリティが弱いなとは感じた。 かと言って自分もそれ以上の解決策は思いつかないので、難しいところ。 優秀で暖かい気持ちを持った筆者の言う「まとも」な経営リーダーも、リソースは限られているわけで、 そこらへんも考えていくとかなり難易度は高いなとは思う。 とは言え、まずは出来ることを行動に移していくしかないのだが。

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    投稿日: 2022.07.27
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    自分の拙い理解で、資本主義とは何か?と問われたら、全てをお金で換算する社会と答える。故に効率化を追求し、分業に分業を重ね、餅は餅屋とばかりに専門家に任せた。結果、自分の専門以外のことはとんと何もできない人ばかりになった。もちろん自分もその1人。それが本書で言われる「システム化」と理解している。 その世界の仕事はつまらない。自分は人事屋なので、間接部門のシェアド化などを見ていると強く思う。ただレンガを積んでいるか、みんなが幸せに集まる教会を作っているのか、それはその人の見方次第という寓話があるが、大抵の人にはやはりレンガ積みなのだ。しかも、その教会ができても、教会向けレンガ積みの専門家として次の教会が延々と待っているだけだ。終わるのは、ロボットが現れて仕事がなくなるときだけ。 本書の処方箋として、小規模のコミュニティを挙げているのは、資本論のコモンズや、宇沢弘文の社会的共通資本と同じものであるように認識した。

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    投稿日: 2022.06.26
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    野田智義は、非営利の独特な教育機関であるISL(Institute for Strategic Leadership)の創設者である。ISLは、大企業の経営幹部候補を対象に、リーダーを育てる教育を行う機関である。私はこれまでに、金井壽宏先生との共著である「リーダーシップの旅」という野田智義の著書を読んだことがあり、とても共感を覚えた記憶がある。ISLを母体に、2018年には大学院大学の至善館を開校されている。 宮台真司は有名な社会学者であるが、その至善館の特任教授として講義を受け持たれていて、本書「経営リーダーのための社会システム論 構造的問題と僕らの未来」は、その至善館での講義を著書にしたものである。 とても面白かった。社会学という学問を学んだことはないが、学んでみたくなるような書籍だった。 宮台真司と野田智義は、現代の日本社会を「社会の底が抜けている」状態であると認識している。それは、特定の大きな「悪者」がいるわけではないし、皆が悪い社会にしようと意図的に悪事を働いているわけではない。それは、社会システムの問題であり、構造的な問題である、と本書の中で主張しており、本書の大部分を使って、どんな状態なのか、その構造的な原因などを分析し語っている。 本書はISL・至善館での講義ノートなので、対象はリーダー候補の人たちだ。こういった状態の中で、あなた方は、リーダー候補としてどのように考え、どのようなアクションを起こしますか?というのが、講義の、本書の問いかけだ。 お二人が主張されていることの詳細の内容は本書に譲るが、とても漸進的で真っ当な内容であり、これらのリーダー候補の人たちが、それぞれの持ち場で本気で実践してくれると、世の中が良い方向に変わるきっかけになるかもしれないと感じた。

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    投稿日: 2022.06.14
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    「経営リーダーのための」という立て付けになっているが、別にそういうことを志す人でなくても、今、この時代を生きている私たち全員に必要なことが議論されている。 社会システム論(ハーバーマスとか、ルーマンなど)は、理論的には、かなりめんどくさいのだが、ここでの議論は難しくない。今、私たちの生きている時代、世界がどんな状況なのかを大きなシステムとして捉え、そして私たちの日常で身近に起こっていることを分析している。 システムという考え方は、個々の要素だけでなく、要素間の関係もみていくということ。つまり、全体は、一つ一つの要素の単なる積み上げではないということ。 ということは、うまくいけば、システムはここの力の総計以上の力を発揮することを可能にする。一方、うまくいかなければ、みんな頑張っているのに全体としては失敗してしまうということが起きる。 現代の社会はかなり厳しい機能不全になっていると思うが、この背景に誰か悪いやつがいて、、、という陰謀論にハマるのではなく、みんな善意で頑張っているにもかかわらず、全体として厳しい状況を再生産・強化する構造になっているという理解にシステム論は到達する。 この本では、今の日本社会や世界が、個人の意志とは関係なく、システムとして進んでいく方向性とそれへの対抗・対応手段についての議論をがなされている。 議論のたどり着くところはある意味当たり前のところかもしれないが、それが唯一の正解なわけではない。答えというより、議論のプロセスがスリリングで、この辺りは実際に他の人と対話してみる価値があると思った。 そして、今、こうした本を「経営リーダー」が読むことが薦められているということにかすかな希望を感じた。 表層的ないわゆるSDGsから、今の世界をしっかりみた活動にフォーカスが移るきっかけになるといいな。

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    投稿日: 2022.05.11
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    これはとても良かった。白井聡さんの本にも通じるが、資本主義、貨幣経済が大きくなっていくと信頼の喪失、相互幇助の喪失、あらゆる価値のパラメータ化、共感力の喪失、存在価値の希薄化が起こる。そしてそれは安心、効率などを求め続ける限り止められない。つまり自然運動であり今後も続いていく。とても納得感のある理論であった。 であればどうするのか。考えてチャレンジしたい。

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    投稿日: 2022.04.07
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    メモ→ https://twitter.com/nobushiromasaki/status/1502952610478772228?s=21

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    投稿日: 2022.03.16
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    ・日頃から宮台先生の本、ビデオニュースドットコムのコメント、他メディア上での発言に慣れ親しんできた人にとってはジャストサイズのサマリーになると思った。 ・内容は難しいのではなく深くて正しい。深い事柄を可能な限り平易な言葉で伝えようとしてくれている。そのため事柄の本質を抽出・圧縮・簡略した宮台先生用語を知るには上記他メディアにも日頃から触れているとかなり点と点がつながっていく。 ・システム世界の侵食に抵抗するためにこそ、生活世界ーシステム世界が統合されたものとして企業の組織マネジメントはあると改めて思った。企業における組織は重要な社会の足場なので。

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    投稿日: 2022.03.07