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powered by ブクログ歴史から紐解かれているので、エネルギーの地政学リスクがよくわかった。地政学リスクを把握するには、現在のマクロ要因だけでなく、歴史も知らないとダメやね… しかしまあ分厚い割にはスラスラ読める。
0投稿日: 2025.03.01
powered by ブクログ本書で論じられるのは、「地政学とエネルギー分野の劇的な変化によってどのような新しい世界地図が形作られようとしているのか、またその地図にどのような世界の行方が示されているか」である(序論より)。 第1部では、アメリカにおけるシェール革命の進展とその影響が説明される。シェール革命によってアメリカは石油と天然ガスの世界最大の生産国になり、輸出国にもなった。世界のエネルギー地図を激変させ、世界の地政学を塗り替え、新たな影響力、強化されたエネルギー安全保障、選択の幅が広がった外交政策など、米国の立ち位置を変えた。 第2部では、エネルギー大国であるロシアについて、その強さと共に、石油と天然ガスの輸出に依存する経済面における弱みについて叙述されるが、とりわけ不透明な先行きとしてウクライナとの関係について懸念が示される(本書はウクライナ侵攻前の著作であるが、ウクライナがロシアとヨーロッパのいずれを向くかという問題が大きかったことが分かる)。またプーチンが中国に近づく「東方シフト」を進めており、結束した中ロ政府が「完全な主権」を主張し、米国の「覇権」に異を唱えていることを説く。 第3部は、経済力と軍事力を飛躍的に伸長させている中国についてである。ほぼ全域にわたって中国が領有権を主張している南シナ海が、周辺諸国と争いになっており、また米中の戦略上の対立が最も先鋭化している場所であること、中国製品の市場と必要なエネルギーや原材料を確保することを目的とする「一帯一路」構想が、経済的な企てなのか、中国主導の新秩序を築こうとする地政学的な企てなのかなどについて、多角的に論じられる。 第4部は中東について。中東の主なプレイヤーであるイラン、イラク、サウジアラビア、加えてシリアやヨルダン、イエメン、アラブ首長国連邦、バーレーン、イスラエル、そして米国といった国々がどうして対立しているのか、スンニ派とシーア派、資源である石油を巡る争いなどの事情について、その歴史的経緯や「敵の敵は味方」のような複雑な関係が簡明に叙述されていて、とても勉強になった。 第5部は、電気自動車、ライドヘイリング、自動運転といった新しい動きが、どのように自動車産業とエネルギー事情を変えていくか、第6部では、気候変動とエネルギー転換の将来が論じられる。地球温暖化対策がどのように進むかはかなり各国の姿勢、政策によって変わってくると思われるが、特にトランプ復活によって米国の取組がガラッと変わりそうなので、各国の足並みが揃うのかかなり心配だ。 経済活動や日常生活に欠くことのできないエネルギーとその背後にある複雑な国際情勢について、最新の満載した情報を分かりやすく提供してくれており、お勧めの一冊だ。 (しかし、第5部の自動車のところにトヨタがちょっと出てくるくらいで、日本に関する叙述はないに等しい。エネルギー資源の問題について日本のプレゼンスがないことを痛感させられる。)
9投稿日: 2025.01.20
powered by ブクログ新しい世界の資源地図 エネルギー・気候変動・国家の衝突 著:ダニエル・ヤーギン 訳:黒輪 篤嗣 米国で最も影響力のあるエネルギー問題の専門家である、筆者が地政学的見地から、超大国の動向を解説した大書 20,21世紀は、エネルギーという軸で、世界は動いていて、気候変動や、国家間の衝突を誘発している 本書は二つの軸から語られている 国家(経済力、軍事力、地理的条件、戦略、野心、偶発的出来事と不足の時代) エネルギー資源(石油、天然ガス、石炭、風力、太陽光、書く) この二つの要素が絡まる地図は、絶えずダイナミックに変化し続けていて、バンデミックなどの不測な事態を含めて、世界に深刻な混乱をもたらしている。 この新しい地図を読み解くのが本書の目的です 世界を支配しているエネルギー大国、米国、サウジ、ロシアが今後どのようにかわっていくのか ■米国 シェールガス 天然ガスの可採埋蔵量は、急増している 電力の天然ガスに占める割合は、17%⇒24%に変化 いまや米国には、有り余るほどの天然ガスがある 2014⑫には世界5位の埋蔵量を誇り、米国は世界の主要な石油プレイヤーに返りざきを図った。 北アフリカ、英国東方沖でも天然ガスが発見されたために、欧州は米国の潜在的輸出先ではなくなった 米国は膨大な貿易赤字を理由として、韓国にLNGを多量購入させるための長期契約を結ばせた 化石燃料に反対する人々は、まず、パイプラインの設営に反対している 米国のエネルギー問題は、シェール革命と環境保護活動と衝突である 米国はシェールを確保してからも、原油の輸入を止めていない 中東のひんしつの低い重質油を生成するような設備を保持しつつ、軽くて品質の高いシェールで外貨を稼いでいるのだ パワーバランスの変容、ロシアは米国のシェールガスを批判し、欧州市場に与える影響を憂慮した。 現在余剰生産能力の大半はサウジにあり、生産量の調整弁の役割をになっている。サウジは、世界の石油の「中央銀行」とよばれている シェールガスの地政学的影響 ・イランの2015年の核合意 ・欧州の天然ガス市場の多様化 ・中国への天然ガスの輸出 ・エネルギー分野は、米国、サウジ、ロシアの3者のうごきが地政学の中心となる ・シェール革命がもたらした、バジェノフ層の石油採掘技術は早晩世界に広がることとなり、ロシアをはじめ世界各国が注目している ■ロシア ロシアは世界三大産油国の1つ 歳入の40%以上が、エネルギ関連から得られている ロシア政府が、ガスプロムをはじめ、大半のエネルギー企業の株を保有している ウクライナは、ロシアに天然ガスのパイプラインの通過料を課していてそれが、大きな収入源になっていた。当時80%の天然ガスがウクライナを経由して、欧州に輸出されていた ウクライナへの西側への接近が、ロシアにとって、エネルギー問題を含めた直接の脅威と映った。しかもウクライナにとってロシアに未払いの代金が、数十憶ドルもあり、ロシア政府はこれ以上の譲歩ができなくなっていた。ロシアは、ウクライナを経由するパイプラインの管理を、自ら実行すること、パイプラインは、重要の資産なのである ロシアは、ウクライナ以外にポーランド経由でドイツに天然ガスを輸出するパイプラインを敷設した ドイツのエネルギーに占めるロシアの割り合いは、33%に達していた。 米国はロシアから欧州へのエネルギー供給については、神経質に反応し、輸出と止めようとしたが、欧州の反発をまねいた。 米国とロシアの不幸、ウクライナ問題が浮上したときに、スノーデンのロシアへの亡命が判明し、オバマ政権は、急遽プーチンとの首脳会談を中止した。 ロシアは、ウクライナに対して、保有していた核兵器の返還と引き換えに領土保全を確約していた。が、それもウクライナ政府がロシア寄りであるという条件下であった。ウクライナの西側への接近は、エネルギー問題にせよ、軍事的な問題にせよ、ロシアが容認できるものではなかった。 ロシアで、ガスプロムの競合会社が出現した。サハリンのLNGがそれである 東方シフト、欧州から基軸を中国に移すというロシアの戦略である。 ハートランド、ロシアの中央アジアへの進出をいう。もともとソ連邦であった、中央アジア諸国のうち、アジェルバイジャンとカザフスタンは、産油国である。 ハートランドは、米中露のバランス外交を行っている ■中国 中国の外貨準備は、3兆ドルにおよび、うち1兆ドルは、米国債が占めている 2014年に米国を抜いて、中国がGDPでトップに立っている 軍事費は、米国6340億ドルに対して、2400億ドルで世界2位、サウジ、ロシア650億ドルであり大きく隔たる 中国の台湾問題には、軍の投入も辞さない姿勢を懸命にしている 南沙諸島、南シナ海は危険は海と認識されている。水産物資源が集中しているからだ。 その問題は3つ ①南シナ海にうかぶ小さな地形はだれのものなのか ②南シナ海の海域は公海なのか、中国領の一部なのか ③EEZとは、航行を規制する権利があるのかないのか マラッカ海峡を通過するリスクを中国も感じていて、それをマラッカ・ジレンマという 南シナ海には、石油天然ガスが眠っていると想定され、中国は高性能のリグで調査をしているが、米国と衝突している 中国は、イラク、クウェートと同様の1250億バレルを予想しちえるが、掘ってみないとわからない 中国にとって、コンテナ船は、鄭和の大船団以来、宝の船である 中国がグローバル経済と、世界貿易の地位を獲得できたのは、コンテナ船があってこそであった 米中対決は南シナ海でおきている、相互の駆逐艦が40mまで接近する事故がおきていて、以来、日豪、欧州諸国が加わった海のパトロールが続いていて、上空でも、米中の哨戒機が飛び交っている 加えて、台湾だ。米国の台湾への傾斜は、両者の戦略的対立を読んでいる 米中ともに、西太平洋からは退場しないため、危険海域は不安定になりつつある 一帯一路は、現代の絹の道、海の道である。中央アジアのエネルギー資源へのアクセスに関する高速道路の役割を担っている また、中国北西部の安全保障に面でも重要である 一帯一路は、外側から見ると、中国の西進膨張であり、ユーラシア大陸橋と呼ばれている ■中東 サイクス・ピコ協定 列強のオスマントルコの分割 ケマルがトルコ領をアレッポの近くまで押し戻した 油田の発見、イラク等 エジプト ナセルは、サイクス・ピコ協定を破棄して、中東に新たな地図を描くという野望があったが、イスラエル戦争でついえた 中東の基軸は、サウジと、イランの戦い 湾岸戦争の真のねらいは、イラクがねらっている、サウジ、クウェートの石油権益を保護することであって、イラクを民主化することではない アラブの春は、湾岸協力会議の各諸国に脅威をもたらした サウジアラビアはイエメンを含めた出兵を行い、事態の鎮静に努めた イランの革命防衛隊の目的は東地中海まで安全保障の領域を拡大する、だ イスラエルは、沖合に巨大ガス田があるのを発見した(⇒ガザの紛争と直結) サウジの石油価格政策に対して、米国は、イランの石油輸出一次解禁を含めた処置でゆすぶった。再度の禁止の際、イランは反発して、核武装にいたっている 2019年サウジ東部の石油精製説設備に火災が発生、当初は事故かと思われたが、ドローンと巡航ミサイルによる破壊攻撃だった。イエメンの過激派の行為とされたが、背後にはイランか、イラクのシーア派の地域からである疑いもあった。このことにより石油は急騰した。 サウジは中東の盟友であり、それは、聖地メッカの保有とともに、膨大な石油による収入を基礎にしている 石油価格が高いうちはよかったが、低迷をはじめてから収入は減少に転じ、世界の石油離れの可能性に直面している。 サウジをはじめ、湾岸協力会議諸国は、石油からの依存の脱却と経済の多様性、民間部門の成長などをめざしている ■自動車 電気自動車の登場は、石油産業に対する大きな脅威だ。石油需要の35%は、車によって占められている。 電気自動車のコア技術は、電池である、いかに効率のよい、電池を開発できるかにかかっている 電気自動車については、中国がその先頭を走っている 自動運転技術 段階的に自動運転化を図る方法、衝突回避、加速制御、などの要素を一つ一つ順番に導入していくというものだ ■気候 エネルギー転換による排出量の増加と、脱炭素 温室効果ガスの排出量は史上最高となっていて、いかに抑えるか、COP21にての調整が行われているが、先進国の現状維持に加えて、成長している国々の排出量の増加もあり調整が進んでいない ゆえに、気候変動リスクは増大する一方だ CO2の排出国は、中国、そして、米国で、全体の41%を占める グリーンディール、緑の党などの運動が起きている 再生可能エネルギー、風力、太陽光、いずれも中国のウエイトが高い 現状を打開する技術、小型原子炉、炭素回収、水素 石炭の火力発電所は減少、新規はない(米国) 石油と天然ガスはプラの材料、こちらも減少している 結論 世界経済の規模は拡大しているが、多くの課題がある グローバル化の潮流はナショナリズム、ポピュリズムの再燃で逆風にさらされている 今後、人工知能と、機械学習、自動化のイノベーションにより、全職種の仕事に変化が生じる 世界のサプライチェーンのネットワークは、変化を迫られている エネルギーを支配しているのは、米国、ロシア、サウジの3国だ 気候をめぐる困難な課題で、緊張が高まり、分裂が進む国際秩序においては、国家間の衝突も備えることができる妨げである エピローグ 水素を基軸においた循環型 風力や電気自動車に使用するレアアースは、95%が中国が占める コバルト、ニッケル、リチウム、銅なども循環型経済に不可欠である。 4人の亡霊 鄭和 歴史的な権利 フーゴー・グロディウス 海洋の自由 アルフレッド・セイヤー・マハン 米中の軍拡競争 ノーマン・エンジェル 米中衝突のコスト 紹介されている書 ・砕かれた平和 ヤーギン ・石油の世紀ー支配者たちの攻防 上下 ヤーギン ・市場対国家ー世界を作り変える歴史的攻防 ヤーギン共著 ・キッシンジャー回想録中国 上下 目次 序論 第1部 米国の新しい地図 第1章 天然ガスを信じた男 第2章 シェールガスオイルの「発見」 第3章 製造業ルネサンス 第4章 天然ガスの新たな輸出国 第5章 閉鎖と解放 -メキシコとブラジル 第6章 パイプラインの戦い 第7章 シェール時代 第8章 地政学の再均衡 第2部 ロシアの地図 第9章 プーチンの大計画 第10章 天然ガスをめぐる機器 第11章 エネルギー安全保障をめぐる衝突 第12章 ウクライナと新たな制裁 第13章 経済的苦境と国家の役割 第14章 反発 -第2のパイプライン 第15章 東方シフト 第16章 ハートランド -中央アジアへの進出 第3部 中国の地図 第17章 G2 第18章 「危険海域」 第19章 南シナ海をめぐる3つの問い 第20章 「次の世代の知恵に解決を託す」 第21章 歴史の役割 第22章 南シナ海に眠る資源 第23章 中国の新たな宝の船 第24章 米中問題 -賢明さが試される 第25章 一帯一路 第4部 中東の地図 第26章 砂上の線 第27章 イラン革命 第28章 湾岸戦争 第29章 地域内の冷戦 第30章 イラクをめぐる戦い 第31章 対決の弧 第32章 「東地中海」の台頭 第33章 「答えはイスラムにある」 ーISISの誕生 第34章 オイルショック 第35章 改革への道 ―悩めるサウジアラビア 第36章 新型ウイルスの出現 第5部 自動車の地図 第37章 電気自動車 第38章 自動運転車 第39章 ライドヘイリング 第40章 新しい移動の形 第6部 気候の地図 第41章 エネルギー展開 第42章 グリーン・ディール 第43章 再生可能エネルギーの風景 第44章 現状を打開する技術 第45章 途上国の「エネルギー展開」 第46章 電源構成の変化 結論 -妨げられる未来 エピローグ -実質ゼロ 付録 ー南シナ海に潜む4人の亡霊 謝辞 用語一覧 ISBN:9784492444665 出版社:東洋経済新報社 判型:4-6 ページ数:600ページ 定価:3200円(本体) 2022年02月10日
17投稿日: 2024.09.21
powered by ブクログ2007年を基準にすると、2019年の米国の赤字額はシェール革命がなかった場合より、3090億ドル低かった。 シェール革命により石油天然ガス業界全体では雇用数は米国内で1230万人にのぼった。 中国のエネルギー消費は全世界の25%近くを占めている。 全エネルギーに対する割合は60%近く。米国は11%
3投稿日: 2024.08.31
powered by ブクログなんかすっげースラスラ読めるけどぶっちゃけ全然アタマに残ってねえ。 タイトルの和訳に配慮というか苦労が見えた。
3投稿日: 2024.04.05
powered by ブクログ原油、天然ガス、レアアース…資源の地政学を知らずして世界情勢を語るべからず。歴史や経緯を含めた全体を本書で俯瞰できるため、新聞やテレビなどの媒体よりも深い理解を得ることができる。 そもそも産油国ってほとんど中東中心だと思っていたが、中央アジアから北中南米、アフリカまでかなり広い範囲に渡っていると改めて認識させられた。それに対してコベルトやリチウムなどは中国とコンゴに産地が限定されているのが不気味で、代替材料の実用化が喫緊の問題に感じさせる。 フラッキング技術によるシェール革命で米国がエネルギー自給自足になったことはザックリ知っていたが、ギリシア出身の移民が事業的なリスクを背負いながら突破口を開いた経緯などは知らなかった。しかし従来型と違ってコストがかかることと、大手メジャーのような資本金が少ないプレーヤーが多かったことから価格下落で壊滅的な打撃を受け、業界再編が進んだとのこと。気候変動への対策でフラッキング禁止の勢力もあるがエネルギー安全保障や経済優先の観点からシェールオイル採掘は継続しそう。 ロシアへの制裁でノルドストリーム2が対象になったが、ロシアによる設備の自給を促しただけで供給量全体を見れば米国の制裁は政策ミスだったのではないか。 中国の覇権姿勢によってWTOコンセンサスが終焉した、とは非常に厳しい時代に到達してしまった。日本も安全保障をしっかり見直して東南アジア諸国やインド、米韓との連携を強化する必要がある。 中東ではイスラエルとハマスの戦闘やシリア内戦が騒がれているが、イラン革命の攻勢やトルコによる影響など、まだまだ懸念材料が多く、地域の安定化はまだまだ実現できそうにない印象。イラン革命の思想はいかにも革命的だが、国民国家を否定して中世的なイスラム国家を広めるために他国に部隊や武器を送り込むとは、ただのテロ国家そのものに思わせた。ソレイマニ殺害の事件は大きなニュースになったが、本書を読んでどういう人物か改めて認識を深めることができた。 南シナ海に潜む4人の亡霊が付録としてあるが、非常に面白かった。鄭和ってもともと明朝のムスリム捕虜だったとは…ほかに「海洋の自由」のグラティウス(オランダ)、「海上権力史論」のマハン、戦争は無益と主張したジャーナリストのノーマン・エンジェルが挙げられている
0投稿日: 2024.02.23
powered by ブクログこの一冊を頭に入れるだけで、世界を見る目が変わる気がする。高レベルで広範囲のエネルギー事情が解説される。国防においても経済においても重要な課題であり、教科書にすべきほどの決定版ではないだろうか。あまりに密度が濃過ぎて、年跨ぎで読む事になった。メモ書きの抜粋に書評を添えて以下に記す。 アメリカはシェール革命の結果、石油と天然ガスのどちらにおいても、ロシアとサウジアラビアを一気に抜いて、世界最大の生産国になった。現在では、世界屈指の石油と天然ガスの輸出国でもある。アメリカは、エネルギーをほぼ自給できるようになった。 何十年にもわたって、世界の石油市場を規定してきたOPEC加盟国対非加盟国と言う捉え方は、ビッグスリー(アメリカ、ロシア、サウジアラビア)と言う新しいパラダイムにとって変わった。 1991年ソ連の崩壊により、ウクライナは初めて主権国家となる。その際に生まれながらにして世界第3位の核保有国となった。1900の核弾頭をソ連から受け継いだ。しかし、1994年のブダペスト覚書で放棄し、ロシアに譲渡された。そのかわりウクライナはロシア、イギリス、アメリカからウクライナの既存の国境を尊重すると約束を取り付けた。2005年の時点で欧州に輸出される天然ガスの80%がウクライナのパイプラインを通っていた。 オレンジ革命以降、ロシアは天然ガスの価格交渉で態度を硬化。今まで安価にウクライナに天然ガスの未払いや価格を理由に、ウクライナへの供給を停止。アメリカはロシアに抗議。 世界で最も重要な通商航路と言われる南シナ海。スプラトリー諸島は、もともと波に隠れて、水上から見えない岩サンゴ礁があちこちにあるような危険な海域であった。南シナ海を通る世界貿易の額は3.5兆ドル。中国の海上貿易の3分の2、日本の海上貿易の40%以上、世界貿易の30%を占める。中国が輸入する原油の80%は南シナ海を通過、食料安全保障の面でも重要な水域であり、世界の漁獲量の10%、マグロ類の漁獲量の40%。 中国のエネルギーの85%は、今も化石燃料で、石炭の占める比率が60% 。石油は20%だが、輸入量は世界最大であり世界の総需要の75%。輸入される石油のほとんどは中東産であれアフリカ産であれ、南シナ海の前に狭いマラッカ海峡を通る。 南シナ海で見つかる資源の大部分は原油ではなく、天然ガスである可能性が高い。 1933年スタンダードオイルオブカリフォルニアがサウジアラビアで油田を探す権利を獲得。1938年に掘り当てた。1930年、ヒジャーズネジド王国がサウジアラビアに改称。1950年代に世界の生産量が増え始め、石油収入が流れ始めたが、石油による富の時代が本格的に始まったのは、1973年の石油危機で、原油価格が4倍に跳ね上がった時から。そこからサウジアラビアは豊かな国に。 欧州では、電気自動車にも風力タービンにも必要とされる。レアアースが95%を中国産が占める。欧州で使われているコバルトの60%は、元はコンゴ民主共和国で算出したものだが、実際に欧州に輸入されるコバルトの80%以上は中国で精製。 箇条書きでは文脈が繋がり難いが、そもそもウクライナ情勢も中東情勢も、南シナ海における問題もエネルギー確保が遠因、あるいは直接的な理由であり、その極めて重要な課題に加えて、カーボンニュートラルが作用していくというのが世界的な流れである。この事は本書を読まずとも認識済みかも知れないが、その詳細について、理解の助けになる本だ。
22投稿日: 2024.01.07
powered by ブクログ地政学が流行った時期に見つけて購入。アメリカのシェール革命、ロシア、中東、中国のエネルギーを巡る情勢がNHKのドキュメンタリーのように克明に描かれている。事実の羅列ではなく実在の人物の言葉や行動と共に綴られており臨場感がある。中東の情勢に疎かったのでこの本でだいぶ勉強になった。 一方で気候の章は自分の専門に近いからか知っている話が多くやや物足りなさもあった。
1投稿日: 2024.01.06
powered by ブクログ世の中には、「学校では教えてくれないけど、分かっていた方がいいこと」が多すぎると思いませんか。まったくもう。 この本、「エネルギーに興味あるんだったら、読むといい」と素敵Guyに勧められ、いや、特にエネルギーに興味あるわけじゃないんですケド・・・と思いつつも、近所の図書館にちょうどあったし、正月休みに入るところで読む時間もあるしで、素直に言いつけに従い、読んでみた。 で、最初の言葉になるわけです。 エネルギーの地図、つまりエネルギーをめぐる各国の戦略、めっちゃくちゃ大事じゃないですか? 世界情勢を読み解く上で。 え? 今ごろ何言ってるって? こういうのはちゃんと学校で教えるべきじゃないでしょうかね。 世界の紛争の裏に資源あり、てことを、もう少ししっかりと。世界の国々は人道的・政治的な理由だけで戦争したり他国に干渉したりするわけじゃないんですよって。 歴史の時間ちょっと削ってもいい気がするなぁ~。 たとえばシェール革命が他国との外交交渉上の姿勢をこんなにも変えちゃうなんて、やっぱり知っておくべきよね。 ダイベストメントがこれまでに削減したGHG排出量は、おそらくおよそ0トンだろう、っていうビル・ゲイツの言葉もけっこう考えさせられた。 石油の値段が下がり過ぎると困る原理とか、シェールがショートサイクル、とかいうエネルギーごとの産出事情とかも何気に重要情報ではないでしょうか。 モディ首相の言葉「グローバルサプライチェーンはコストだけにもとづくべきではありません。信頼にももとづくべきです」と言って、中国依存を減らそうとしているのもなるほど、と思ったし。 「電気自動車はガソリン車の6倍、風力タービンは天然ガスの発電所の9倍、それぞれ多く鉱物を使用する。鉱物の需要は急増するだろう。その増加率はリチウムが4300%、コバルトとニッケルが2500% にものぼる」「世界の三大産油国の産油量が世界の産油量に占める割合は約30%だが、リチウムの場合、上位3ヵ国が供給量の80%以上を占める」っていう鉱物をめぐる状況も、なんだかヒエエエエな事実でした。 そしてアップデートも大事。 気候テックをめぐる投資と政治関連のニュースなんて、この本の後、今年(じゃなかった、もう去年か)1年だけでずいぶんいろいろあった気がする。 でも、表のニュースを見ているだけじゃ、なかなかそれぞれの事象が頭の中でつながらないので、こういう親切な解説本をときどき読むって大事ですね。
3投稿日: 2024.01.01
powered by ブクログ近年の地政学とエネルギー分野の激変に関して、米露中、さらに中東、気候変動ごとに読み解いていく。 アメリカの項ではシェール革命の経緯、ロシアの項ではソ連崩壊後エネルギー大国として欧州に影響を与えてきたが天然ガス市場の変化等によりそれが変わってきたこと、中国の項では経済や軍事の成長とともに拡大したエネルギー需要や一帯一路構想、中東では石油と天然ガスによる富と権力と石油需要ピーク後への関心の移動、気候変動の項ではパリ前とパリ後のエネルギーの地図の変化などを主に扱っている。 シェール革命がガソリンの値段だけでなく、2015年イランの核合意や欧州のロシア依存の軽減など、地政学的に大きな影響を与えていたことを具に知ることができた。ソ連崩壊にあたってソ連財政の命綱を断ち切ったのは原油価格の急落だったこと、ノルドストリーム2を巡るヨーロッパでの意見対立、イランが中東地域で行使している影響力、電気自動車や自動運転、Uberの発展、気候変動を巡る国際世論の形成などについても新たに知ることが多かった。
0投稿日: 2023.12.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
いやー、難しい…。哲学系以外で理解に時間をかけたのはホント久々かも。まぁその難しさが面白いわけなんだけど。 エネルギーを生み出すのに必要な石油/天然ガスが大国アメリカから採れるようになった「シェール革命」から本書は始まる。ロシアやサウジアラビアからの輸入を必要としなくなる上、色々な国へエネルギー源を輸出することが出来るというのは、各国の関係性を変えるのに十分だったわけだ。 ロシアや中国、中東の危うさも同様に、このエネルギー源に由来している部分もある。エネルギー源は金になるからこそ、それを手に入れようと誰もが争うのだな。 一方でコロナや再生可能エネルギーにより、石油/天然ガスの価値というものも変わってきている。身近な例で言えば電気自動車など。石油/天然ガスの価値が下がれば、それによって成り立っていた国々は方針を改めざるを得なくなる(サウジアラビアなどがいい例だ)。あるいは、レアアースがそういった石油/天然ガスの枠に収まっていくのかもしれない。 エネルギー1つとっても世界情勢全体を俯瞰しなければならず、「地政学」という一言がいかに汎ゆる意味を孕んでいるかを示してくれる超良書。難しいしまとめきれないんだけど、非常に納得感のある一冊でした。オススメです。
1投稿日: 2023.11.25
powered by ブクログ気候変動に関心があって読んだ。グローバルトレンドは理解できるが、国益が複雑に入り組んだ世界で、脱炭素を簡単に進めるのは簡単でないと思わされた。グローバルトレンドはそれとして、自分はどうするか、自分の組織はどうするかを考えるとますます悩ましさを感じる。
0投稿日: 2023.09.10
powered by ブクログ過去の変遷は振り返って整理することはできても、未来の予測は極めて困難だとあらためて思う。シェール革命やコロナウイルスなど、突発的な事象で世界は大きく変化する。変化に対応できるか、変化を楽しめるか、そんなマインドを大事にしたい。
0投稿日: 2023.08.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
500ページを超える読み応えのある本。この一冊で現在のエネルギー資源と世界の勢力地図を総覧しようとしている。近年、エネルギーと地政学にまつわる世界地図がどのように塗り替えられたかを、石油・天然ガスの主要な生産あるいは消費国・地域である米国、ロシア、中国、中東と、エネルギー問題に関する二つのテーマ、電気自動車、気候変動問題を中心に詳細に描き出している。 米国で2000年代初めにシェールオイル、シェールガスが採掘され、増産が軌道に乗ると、世界的な政治・経済のバランスが大きく変化した。経済的には、2008年のサブプライムローンによる金融危機で疲弊した米国の経済が復活した。安価な石油が生産できることで産業が米国に戻ってきた。しかしもっと大きな変化は、米国が石油の輸入国から輸出国に変わったことであり、それは国際政治のバランスを大きく変えるものであった。1970年代のオイルショックからイラン革命までの過程にみられるように米国は中東との関係に頭を悩ませてきた。その理由の一つは、石油の安定供給のためであった。しかし「シェール革命」によってその懸念は後退し、国際情勢に対して「強硬策に打って出られる余地」を作り出した。中東に対する関与のあり方の変化や、ロシア・中国に対する強硬策などは、その背景にシェール革命がある。 ロシアは世界の三大産油国の1つに数えられる。石油・天然ガスはロシアの主要産業であると同時に、国際戦略上の武器でもある。ロシアを世界の超大国として復活させるというプーチン大統領の目論見を実現するために最大限活用されている。ノルド・ストリーム建設をめぐるヨーロッパ各国との綱引き、石油・天然ガス供給を求める中国への接近。ウクライナ侵攻後のロシアが欧米からの経済制裁にもかかわらず、持ちこたえているのは豊富な石油・天然ガス資源があるからだ。 中国は米国とともに世界を2分する大国となった。米中両国で世界のGDPの約40%、軍事費の約50%を占めている。為替レートで算出されたGDPで比べれば、米国は中国経済より大きいが、購買力平価で計算した場合は中国が世界最大になっている。 中国の「一帯一路」構想はアジア、ユーラシア、その先にまで広がる経済圏を形成し、世界経済の中心に中国を据えようとする。その目的は、中国製品のための市場と、必要なエネルギーや原材料を確保することにある。しかし一帯一路はどこまで経済的な企てなのかはわからない。阿片戦争以来の「国辱の百年」の克服を唱えており、国際秩序の中で勢力を増し、「中華帝国」を復興しようとしているようにも見える。領海については、東シナ海及び南シナ海のほとんどは中国固有の領海であると主張しており、その根拠は1936年の地図に描かれた「九段線」に基づいている。しかもその海は公海ではなく、外国の海軍は中国からの許可なく航行してはならないという。しかしこの主張は、国連海洋法条約にもとづく「航行の自由」に反している。西側の「普遍的価値」への挑戦でもある。今や米中間の相互依存関係は崩れ、経済と安全保障の問題をめぐる対立、米中経済のデカップリング論、軍拡競争となっている。 オスマン帝国の支配下であった中東に国境線を引いたのは、1916年のサイクス・ピコ協定であったが、それはイギリスとフランスの勢力争いの賜物であった。以来、中東ではイスラムの権威を復活し、カリフ制による支配を取り戻す運動がたびたび起こってきた。エジプトのムスリム同胞団にはじまり、アルカイダそしてISISにまでつながる。2014年、シリアからイラクに進撃したISISは「サイクス・ピコ協定の終焉」を高らかに謳った。中東の国境線はもとより不安定であるが、イスラム教内のスンニ派とシーア派の覇権争いによって各国の外交、内政が複雑化している。 20世紀以降中東各地で発見された石油と天然ガスは富と権力の基であり、砂漠の国々の経済を支える重要な資金源である。しかしやがて訪れるであろう「石油需要のピーク」を前にして、新たな産業の模索も始まっている。「シェール革命」によって米国の中東への依存度が減り、政策に変化が起きたことは、中東各国を疑心暗鬼にさせている。今までのような米国一辺倒ではなく、ロシア、中国への接近を図る動きも見られる。 電気自動車、「移動のサービス化」(Mobility as a Service : Maas)、自動運転は世界の石油産業と自動車産業に大きな影響を及ぼし始めている。乗用車とライトトラックは、世界の石油需要の35%を占める。電気自動車の増加は、石油需要に直接の影響をもつ。ウーバーのような配車サービスは、自動車は所有するものから、利用するだけのものに変えていく。自動運転技術は、自動車をハードウェアからソフトウェアに変え、自動車産業に大きなインパクトを与えている。そして今後ドライバーの雇用にも大きな影響を与えるかもしれない。 2015年11月に開催されたパリ気候会議でパリ協定が採択され、今世紀中の気温上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑え、できる限り1.5度以内に抑えることを目指すため、各国が行動することが取り決められた。「パリ前」と「パリ後」は大きな時代区分となった。「エネルギー転換」へと大きく舵を切ることとなったが、しかしそれは人間の活動からいっさい炭素を排出しない「炭素ゼロのエネルギー」なのか、それとも「実質炭素ゼロ」のシステム、つまり炭素を吸収するメカニズムによって排出量を相殺するシステムなのか。どのように達成するのかについてのコンセンサスはまだない。「再生可能エネルギー」開発のため、太陽光と風量による発電は急ピッチに進められている。しかし太陽光や風力にしても鉱物資源や土地の確保が必要であり、それらの獲得のために大国は覇権争いを繰り広げる。新しいエネルギー構成おいても地政学が展開されるのは、今と変わらない。 この本の最後は、米中対立の焦点の一つである南シナ海について触れて終わっている。普遍的な法秩序と民主主義を標榜する日本としては、米国とともに中国・ロシアと対峙していくべきなのであろうが、エネルギー資源の乏しい日本がロシアと完全に袂を分かつことができるのか、経済大国となった中国とデカップリングしても日本の経済は持ちこたえるのか。答えが見つからない。 米中対立、欧米対ロシア、ヨーロッパ世界対イスラム世界、世界各地で起こる目まぐるしい勢力争い。気候変動(今や気候危機)を含む地球規模の課題が山積する中で、こんな争いごとをしている場合なのだろうか?!
0投稿日: 2023.07.02
powered by ブクログ新しい世界の資源の地図を読んで 第一部 米国の新しい地図 ・マクロを見ることは大切 →シェールガスで天然ガスの供給量が急激に増えて、天然ガスが下落することを悟ったEOGは、シェールオイルに舵をきった。 ・シェールオイルによって、アメリカは世界の主要な石油プレイヤーになった。これは、経済的にも地政学的にも重要。 →各国との貿易で赤字を減らす要因になる。自国でエネルギーを賄えるようになったことで、地政学的にも優位な立場になった。国際的な安全保障を実現しようとした時、強硬策に出られる余地が出てきた。 ・メタンガス流出問題 →シェールオイルに限った話ではないが、設備やパイプラインから漏れ出るメタンガスが問題になっている。回収すればお金にもなる。 ・今や2000億円以上がアメリカ国内の化学関連設備の拡張に投じられている。 →天然ガスは燃料としても、化学製品の原材料としても使われる。安価なエネルギーが唯一の理由ではないが、中国等の人件費の安い国から再びアメリカ国内に投資が戻る結果となった。 ・今もなお続くエネルギー投資 →メキシコやブラジルなど技術を持たない国は今なお世界から注目されている。ただし、他国を受け入れるかはその国次第。技術を海外に持ち出すことができれば、高い利益を上げられそう。 ・パイプライン建設は容易ではない → 環境保護団体の反対を食らったり、大統領によって意見が変わったり、大変そう。 第二部 ロシアの地図 ・ロシアの強さ →広大な国土。莫大な量の核兵器とミサイル。サイバースキルも高い。世界に出ていこうとする意志もある。とりわけ天然資源もある。 ・ウクライナにあるもの →天然ガスの欧州向けのパイプラインがある。そこにウクライナが関税をかけている。なお、パイプラインはロシアの所有になっている。 そこで、ノルドストリームなどウクライナを回避するパイプラインが建設された。 ・欧州のエネルギー政策 →①天然ガスのシステムのレジリエンスを高め、長期契約ではなく需要と供給で価格が決まる市場を形成すること。②脱炭素と高効率化、再エネ化 ・2014年ロシアはクリミア併合 →軍を派遣し、住民投票で再統一を発表。欧州諸国の民間機を撃ち落とすこともし、EUからも反感を買う。アメリカは経済措置を取るが、これが長期化すると、他国はアメリカに依存しなくなり、経済措置の意味が薄れる可能性もある。 ・ロシアは、まだまだ石油のポテンシャルがある。 →北極海やシベリア盆地など。 ・近年、ロシアは東シフト →特に中国との結びつきを強めている。 中国もロシアが重要なパートナーとしているが、エネルギー比率で言うと2%程度で、輸出額も米国の1/10である。クリミアの時の米国の制裁にも従っている。 ・中国とロシアの一致 →西洋の普遍的な価値観や規範に対する拒絶。国家主権の経済運営の一致。米国の覇権的地位への反発。 第三部 中国の地図 ・中国はアメリカと並ぶ大国 2008年の金融危機を脱したのは中国のおかげ。それにより存在感が強まった。軍事力等もある。しかし、エネルギーと人口動態に課題を抱えている。 ・中国とアメリカの火種 →台湾、最も大きいのが南シナ海。 貿易戦争もある。アメリカは、中国を米国の利益と価値観に相入れない世界を築こうとする大国とみなした。略奪的な経済力で近隣国を威嚇する一方、南シナ海で島々の軍事拠点化を進める中国は、戦略的競争相手。 ・南シナ海 豊富な海洋資源があり、また貿易の要衝にもなっている。中国の原油輸入の80%がここを通る。そして、中国は自国の海域であることを主張している。国際法では認められなかったが、中国はそれを無視。(9段線と言われる国境線を見ると言ってることのヤバさがわかる。)海軍にも力を入れている。 ・中国のエネルギー事情。 現在、中国は世界一のエネルギー消費国。エネルギーの構成比率は、石炭6割、石油2割、天然ガス6%、残り再エネ。よって、エネルギーの地政学が中国政府の最優先事項になる。 ・中国とASEAN 東南アジアは、安全保障面では米国と統合されているが、経済面では中国と統合されている。 ・一帯一路 中国とユーラシア全土とをインフラ、エネルギー、投資、通信、政治、文化を通じて繋ごうとしている。新しいシルクロード。西側とは特に思想の違いはあれど、大規模な資金能力(投資、貸出)を武器としている。しかし、借り手が債務不履行になれば、中国に優位を許すため、注意が要る。 ・各国の動き(予想) 多くの国は、中国の新しいグローバル経済に加わりたいと考えている。しかし、同時に自国の行動の独立も確保したいので、ロシアや米国の関係を使って、中国影響力の増大とのバランスを取ろうとするだろう。ただ、最近米国は世界の問題から手を引きつつあると多くの国に見られている。インドという大国は一帯一路に不信感を持っており、動きが気になる。 第四部 中東アジアの地図 ・イラン革命 ホメイニ師は、シーア派の聖職者が支配するイスラム共和国を作ろうとした。そして、この革命を他国にも広げようとした。 ・アメリカの中東関与のきっかけ イラン革命や、ロシアなどからペルシャ湾地域の支配権を守るために深入りすることに。 ・イランとサウジアラビアの対立 シーア派とスンニ派の争いに期限。現在、イランは「単一の世界的な共同体」の建設を目指して革命を広げようとしている。(イラン革命) ・シーア派とスンニ派 イスラム教の9割はスンニ派。シーア派国家のイラン。スンニ派国家のサウジアラビア。 ・イラクを巡る争い イラクはシーア派が多数を占める国であった。フセイン時代にはイラン革命の道が閉ざされていたが、フセイン打倒後、再びイラン革命の標的に。しかし、アメリカもシーア派の騒擾に対抗するため介入。さらに近年ではISISとの戦いもある。現状、主にイランにより、イラクはかなり弱体化している。 ・イラクのランドブリッジ 現在、イランからイラク、シリア、レバノンに至る。イラン革命の波及地域。 ・イエメンの現状 カオス国家になっている。もはや国家として機能していない。イラン系のフーシ派が力をつけており、サウジアラビアと戦争にもなっている。アラビア半島の南端だけに地理的に重要な意味を持つ。 ・東地中海の資源 近年、イスラエルやキプロス付近で大規模な天然ガス田が見つかった。しかし、今のままでは争いの海になりかねない。 ・ISISの誕生と発展、衰退。 世界を支配するカリフ制の復活が目標。ゆえに、国民国家への拒絶がある。イスラエルの建国には断じて反対であり、世俗化の脅威である米国にも抵抗。ムスリム同胞団からアルカイダが生まれ、イラクとシリアのアルカイダからISISが生まれた。ISISは、石油関連施設なども支配し収入を得た。またSNSを使って戦員を集めた。しかし、2019年には米国の参戦もあり、シリアも奪還。トップも討ち取った。ただ、戦闘員が未だ残されているのは事実である。 ・アルカイダの作戦方針 アラブ諸国の政権や米国、世界経済を攻撃する手法として石油に重点が置かれた。 ・石油の価格について 石油は生産しようと思えば供給過多にでき、現に2014年には急落した。しかし、その後OPECプラスによる減産の合意が取られ、2016年に上昇に転じた。しかし、2018年トランプが石油価格の上昇を拒んだり、米中の貿易戦争により石油価格は下落に転ずる。 ・中東とロシアの関係 ロシアはサウジアラビアやイラン、シリアなどと対話ができた。サウジアラビアにとっては、ロシアは米国との関係悪化に対する防衛手段になったり、イランとの対立でも利がある可能性があった。OPECプラスにより2016年には石油価格の下落を防げた。 ・新型コロナウイルスと石油生産量 自国が減産し、他国が減産しないとシェアを奪われる可能性がある。また新型コロナウイルス蔓延当初、ロシアなどは米国のシェールのシェアを取るいい機会だと考えていた。しかし、マイナス価格などの懸念もあり、皆の減産で合意した。 第五部 自動車の地図 ・電気自動車 ・自動運転車 安全・安心・プライバシーをめぐる議論に加え、連邦政府と州政府の役割分担を決める議論もある。 ・ライドヘイリング ・目指す世界は、事故ゼロ、排出ゼロ、渋滞ゼロ 第六部 気候の地図 ・太陽光発電のシェアについて 現在7割が中国で生産され、原料のポリシリコンの生産に関しても6割を占める。 ・将来のエネルギー構成 →太陽光、風力、水力などが増えるだろう。安定供給の観点から蓄電池も気になるところ。 ・現状を打開する技術 →現時点では、実質炭素ゼロへのエネルギー転換を進められる技術はない。しかし、可能性が高いものはある。 貯蔵とバッテリーの技術、改良型原子炉・小型原子炉、水素、3Dプリンター、建築技術、送電網の近代化、CCUS技術、DAC。 ・途上国の現状 電気のない暮らしを送る人が10億人。近代的な調理用器具が使えない家に住む人が30億人。この30億人は薪や炭などを家で燃やし室内大気汚染に晒されている。 ・インドのエネルギー革命 LNGを増やしたり、太陽光の開発を行なっている。目指しているのは、「天然ガスを基盤にした経済の先駆けになること」 ・温室効果ガス対策の影響 エネルギーの生産や輸送や消費のあり方、戦略や投資も、技術もインフラも国家間の関係も変わり続けるだろう。異業種の企業間で提携や競争が顕著になる。 ・途上国の成長 ここ20年の石油消費量の増大は、途上国によるもの。人口と所得が増加している。 ・石油の将来の需要について コロナ前に1億バレルだった消費量は、2030年代半ばにピークを迎え、2050年には1億3000バレルになると予想されている。思い切った施策が実施されても6000万〜8000万バレルにしか下がらないとされている。 ・鉱物資源に関して 太陽光発電わ電気自動車が普及するほど、必要な鉱物資源を確保する必要が生まれるだろう。需要の増大に伴っては、鉱物安全保障とでも呼ぶべき、サプライチェーンの構築が大事になる。
1投稿日: 2023.04.03
powered by ブクログ素晴らしい本で、ぼやっとしていた資源の事情についての解像度が格段に増します。 国ごとのトピック、資源ごとのトピック、歴史に着眼点を置いた展開など、ストーリーをベースに読み解ける。 必携の本と思いました。
0投稿日: 2023.04.02
powered by ブクログエネルギー問題特に石油を中心として地政学的に今どのような問題が起きているのか、アメリカロシア中国中東など世界中の情勢について語られている。 かなり読み応えのある本。
0投稿日: 2023.02.28
powered by ブクログ2023年5冊目。満足度★★★★☆ 「米国で最も影響力のあるエネルギー問題の専門家」による世界を読むとく書の最新刊 500ページを軽く超える厚さに、怯みそうになるが、毎日少しずつ時間をかけて読み終えた。 本書を読めば、エネルギー、気候問題や地政学の今に関する基礎的な知識を得られるであろう 私には第4部「中東の地図」の箇所が、知識不足のためか読むのが辛かった。 アメリカのエネルギーに関する状況が、10年くらい前と今では「様変わり」していることが印象に残った
0投稿日: 2023.02.03
powered by ブクログ米国のシェール革命がエネルギーを取り巻く地政学上のパワーバランスを一変させたことがよく分かる1冊だと思う。中東の複雑な歴史については改めて勉強が必要だと痛感した。
1投稿日: 2023.01.01
powered by ブクログやっと読み終わった(1ヶ月くらいかかってしまった気がする) 大変勉強になるので、皆さん読まれる事をおすすめします。 中東の複雑な歴史を理解できている方だとスムーズに読めそうです。 読んで考えることも、とても多い内容。気候変動についても、もっと勉強したいし、そういう勉強会みたいなのあったら是非参加したいと思う内容です。 それにしても、こんな時に戦争始めたプーチンは改めて憎たらしい!とも思います。 なんだか、こんな感じだと地球滅びるのかなぁ?と冷静に考えて怖くもなります。
1投稿日: 2022.12.11
powered by ブクログ化石燃料は政治力に関わっている 各国が政治的な影響力の支配を避けるため、なるべく分散して化石燃料を輸入している。 欧州はロシアの依存を減らそうとしているが、ドイツは大丈夫か?電気料金が上がる未来しか見えない。 中国がかなり政治的影響力を強めている。 今後のエネルギーは自国で作れるようになることが理想?
1投稿日: 2022.12.06
powered by ブクログー 以来、技術とイノベーションはエネルギー転換の要因になってきた。そのためには着想や発案から技術やイノベーションが生まれ、さらにそれらが最終的に市場へといたる必要がある。これは必ずしも短期間で起こるわけではない。エネルギーはソフトウェアとは違う。現に、リチウムバッテリーが1970年代半ばに発明されてから、路上を走る車に使われ始めるまでには、30年以上かかった。近代的な太陽光や風力の産業は1970年代初めに誕生したが、規模が拡大し始めたのは2010年以降だ。しかし、デジタルから新素材や人工知能、機械学習、さらにはビジネスモデルなどまで、イノベーションのペースは、関心の高まりとともに加速している。背景には、気候対策や政府の支援もあれば、投資家の判断、異分野の企業やイノベーター間の協力、技術や能力の収斂もある。 何がいつ起こるかは、関わる者の才能や、開発を支える資力、真剣さ、困難に負けない気力、創造性の豊かさにも左右される。イノベーションからは、破壊的なものであれそうでないものであれ、新しい技術が生まれ、それによってエネルギーと地政学の新しい地図が形成されることになるだろう。しかし地図は直線的に進む未来を保証するわけではない。ある程度の頻度で、思いもよらぬ妨げに見舞われ、そのつど進路変更を余儀なくされることは間違いないだろう。シェール革命も、2008年の金融危機も、アラブの春も、2011年の福島の原発事故も、電気自動車の復活も、太陽光のコストの急落も、世界的な大流行を引き起こす感染力の恐ろしく強いウイルスの出現と経済の暗黒時代も、米国の政治を揺るがした2020年の大規模な抗議行動も、予期せざるものだった。 しかし、予期でき、備えられる妨げもある。わたしたちがそれによって具体的にどういう道を進むことになるかまでは描けないとしても、はっきり「見えている」ものもある。1つには気候をめぐる困難の数々がそうだ。しかしそれだけではない。緊張が高まり、分裂が進む世界秩序においては、国家間の衝突もそうだと言える。 ー ウクライナ侵攻の前に出版された作品だが、世界で起きている資源戦争の今が分かる作品。 僕たちアラフォー世代は10代の頃に『沈黙の春』を読み、環境問題に向き合わなければならないと教育を受けてきた。にも関わらず、その後の30年間、ほとんど何もして来なかった罪は重たい。 そして僕たちは来年40歳になる。次の25年で何を実現出来るのか、それが2050年の未来の姿を決める。そう考えると、僕たちの年代の責任が非常に重たいのがよく分かる。 僕たちは本来は、世界を変えなければならないのに、日々の小さな仕事に振り回されているのはいったい何故なんだい???
2投稿日: 2022.12.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
エネルギーと地政学について。大部だがテーマごとに区切られており読みやすい。 ・供給者として、OPECはもはや重要ではない。産油国としては米国が一位、次いでロシア、サウジの順番になっており、これがビッグスリー。中東はその莫大な埋蔵量と生産量の調節が可能なため、輸入国にとっては今後の重要。 米国ーシェール革命の影響 ロシアーガスのパイプラインを通じた欧州との関係 中東ーイラン(シーア派)とサウジ(スンニ派)の盟主争い というのが3つの柱。 また、これまで見込みがないと考えられていた東地中海でもイスラエル領で巨大なガス田が発見され、今ではイスラエルもガスの輸出国となっているなどエネルギー資源の発見により今後も地政学的な影響があちこちで起こりうる ・需要家としては中国の話と欧州が少し出るぐらい。日本はもはや世界の中での存在感が無視できるレベルになっているのを実感させられる。中国は産油国としても日量380万バレルあり、世界第8位。しかし需要がこれをはるかに上回っており、輸入量は世界の総需要の75%を締めている。
0投稿日: 2022.11.07
powered by ブクログ長かった〜。読了に3ヶ月掛かった。石油の世紀もだけど、この人の本は長い。 石油業界に関わる身としては、シェールオイルが石油市場と米国の国際的な立ち位置に与えた影響を再認識出来た。 天然ガスはあまり知見が無いが、ロシアの天然ガスは欧州だけでなく中国にも相当量がPLで送られているのかな。 日本や欧州の石油需要が既に顕著な減少傾向にある一方で、世界の石油需要は当面増加傾向が続くのも再認識。 再生可能エネルギーへのシフトは、ウクライナ情勢により影響を受けた。しかしながら、大きな地図で見ると、本著が記すとおり、脱炭素に向かうことは変わらない。その道筋と所要時間が、政治的国際情勢と技術革新によって変わるのだと思う。 さて、日本の石油産業は国内需要と共に衰退するのみか?輸出形にシフトしつつ、再生可能エネルギー分野に進出するのか?日本の次のエネルギー供給のキープレイヤーは誰だ? 主戦場はどこだろう。モビリティのエネルギーと電源は分けて考えた方が判りやすい気がする。 次はもう少し小さな縮尺の地図として、竹内結子さんの本を見てみよう。
0投稿日: 2022.11.06
powered by ブクログエネルギー安全保障を軸にアメリカ、ロシア、中国、中東のキープレイヤーたちの思惑が見て取れた。 アメリカでのシェール革命はそれまでの石油市場のパワーバランスを大きく変え、経済力に圧倒的な影響を与えている。 ロシアは天然ガスを人質に取っている。 中国はシーパワーを手に入れるべく南シナ海を改造し一帯一路を張り巡らす。 中東はオイルマネーを持て余し発展に活かせていない。 そのような中、地球環境の持続性が喫緊の課題となり化石燃料の扱いを巡る先進国と発展途上国に大きな溝が生じている。 クリーンエネルギーへの傾斜が一時的であれ高負担を強いることに世界はどこまで耐えられるのか。 コロナやウクライナ侵攻を見るとエネルギーは地産地消でなければ自らの命運を他に委ねることななることがよくわかった。
1投稿日: 2022.10.30
powered by ブクログエネルギー分野の変化によって塗り替えられた新しい世界の地政学。 たとえば、シェールオイルの登場によって、アメリカは、原油の輸出国になることすら可能になった。 エネルギーの産出できる地域、国家と、移送の問題、利権、地球環境問題と、それに伴う地政学的な変化、覇権国家の変遷・・・・・・こういった話って、地球上のすべての地域を覆っていて、とにかくもー範囲が広すぎるよ。 したがって、本書は、600ページ近くもある。 どちらかと言えば、政治学的なアプローチなので、統計データや、グラフ、計算式などは、出て来ない。 重要な箇所では、必要に応じて、地図が掲載されてるけど、それ以外は、とにかく文字ばっか・・・・・・読んでて疲れる。 もっと、詳しい地図がイッパイ載ってて良いし、エネルギーの変遷を表す、一目瞭然なグラフとか表が、掲載されてるべきじゃないの? って、思うんだけど。 米国のシェールオイル革命から、メキシコとブラジル、パイプラインの戦い、 ロシアの天然ガス、エネルギー安全保障をめぐる衝突、ウクライナがEUに接近したことで起こった争い、ロシアの中央アジアへの進出、 G2(中国と米国)、南シナ海を巡る問題、一帯一路の盛大な構想、 ISISのサイクス・ピコ協定の無効化、 電気自動車の登場によって塗り替えられるエネルギー問題、エネルギー転換とグリーン・ディール・・・・・・ とにかくもー、文字が多すぎるし、知らないことが多すぎて、疲れた・・・・・。 地政学ってゆーのはさー、1人の研究者で1冊の本を書くのって、そもそも、ムリじゃない? それぞれの専門家が、詳しい専門知識を持ち寄って、それぞれの意見を擦り合わせながら、それを大局的な見地からまとめるジェネラリストもいて、1冊にまとめるべき内容だよ。 もっと、グラフや、表や、統計データも組み込んで、読みやすくしてほしい。 文字ばっか延々と続くのは、おかしいよ。 プルーストの小説じゃあるまいし。 ------------------------------------------------------ 83 シェール革命で、地政学も変化した。 世界の石油市場は一変し、エネルギーの安全保障の概念が変わりつつある。 これまで何十年にもわたって、世界の石油市場を規定してきたOPEC加盟国vs.非加盟国、という構図から アメリカ、ロシア、サウジアラビアのビッグ3、という新しいパラダイムに取って代わられた。 モスクワ、リヤド、ワシントンの間で、前例のないやり取りが交わされるようになった。 113 ウクライナがEUとの関係を深めれば、地政学的にも大きな影響をもたらす。 ウクライナは必然的にロシアから離れることになるからだ。 しかし、ロシアにとってウクライナは、主要な関心事だった。 143 中国とロシア 両国の役割分担ははっきりしていた 地政学的な連携のもと 中国が、製造、消費財、金融を ロシアが、石油、天然ガス、石炭、その他のコモディティを提供する、という関係 プーチンが中国を 「重要な戦略的パートナー」と呼び 習近平がロシアを 「最も信頼できる戦略的パートナー」と呼んだ。 ロシア海軍が南シナ海で、中国海軍の軍事演習に参加した 中国との軍事協力の拡大が最優先事項だと ロシアの国防相は述べている。 214 一帯一路には、最大で131カ国が加わる、とも言われている。 イタリアとギリシャも参加に前向きだ。 216 中国の一帯一路構想 地図 出所:IHSマークイット OECD CSIS 220 多くの国は中国からの投資を欲し、新しいグローバル経済に加わりたいと考えている。 しかし同時に、自国の独立も確保したい ロシアや米国との関係を使って、中国の影響力の増大とのバランスを取ろうとするだろう。 225 2014年、イラクとシリアの間に惹かれた「サイクス・ピコ協定」の線を、ISISが消し去ったことを示すため、1本の動画がインターネット上に広められた。 サイクス・ピコ協定は死んだと、男は言った。 ISISが目指したのは、国境と国民国家を廃し、代わりに、カリフ制を復興させることだった。 国家主権ではなく、イスラムの権威と7世紀の諸構造にもとづいた帝国を築くこと。 374 電気自動車の台頭は、石油産業にとって、世界の石油需要の35%を占める乗用車とライトトラックに、100年ぶりに強敵となりうる競争相手が現れたことを意味する。 390 2009年、中国が米国を抜いて、世界最大の自動車市場になった。 その後も、米国との差を広げ続けている。 中国政府は2025年までに 国内販売される自動車の5台に1台を 新エネルギー車NEVにしたいという考えだ。 392 インドでも、国内の自動車を電動化しようとする機運が高まっている。 393 英国では、2040年までに、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止する計画を発表した。 495 バイデンは素早かった 2021.1.20. 大統領就任式で宣誓してからわずか数時間後 初めて大統領執務室の机に向かうと 「本日をもってパリ気候協定に復帰するという約束」を履行する大統領令に署名した。 532 歴史か、国際法か、ナショナリズムと軍事力か、相互依存と共通の利益か、 今の南シナ海のをめぐる争いはこの対立によって特徴づけられている。 「歴史的な権利」という言葉で、鄭和を思い出せ 「海洋の自由」には、フーゴーー・グロティウスを 「米中の軍拡競争」には、アルフレッド・セイヤー・ マハンを 「米中関係の悪化」には、ノーマン・エンジェルを思い起こし 密接に結びついた世界経済の中で、切っても切れない関係にある両国の衝突コストを考えよ。 今、争われている海峡には、これら4人の亡霊が潜んでいる。
1投稿日: 2022.10.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
この本には、地政学とエネルギー安全保障の変化によって、世界がどうなっていくかが書かれている。 舞台となるのは、4つの国と地域。アメリカ、ロシア、中国、中東だ。エネルギー安全保障において、現状最も重要なのは、石油と天然ガスの確保である。アメリカでのシェールガスとシェールオイルの発見は世界のバランスを大きく変えてしまった。 そして、今後のエネルギー安全保障の鍵となるのが気候変動への対策(カーボンニュートラル)になる。めちゃくちゃとも思えるくらい高い目標が設定されているが、これを達成させるための3つのキーワードがある。1つ目が炭素回収、2つ目が水素、3つ目がバッテリーだ。この3つの技術革新が求められる。 この本の原書の発売は2020年だったので、少し情報が古い。今の世界情勢を知ったら、もっと違った考察が出てくるのかもしれない。
15投稿日: 2022.09.30
powered by ブクログプーチンの話は面白かった。石油を手にすることがロシア復活に繋がることをよく知ってたんだな。プーチンは。サウジアラビアも石油をアメリカと繋がった王族が手にして国を富ませてるから、石油だけで、他に産業が弱くてもなんとかなるんだなとか思ってサウジアラビアの話に期待。中国の話は新聞に書いてあることだけ。イランやイラクについては、感情的なアメリカ人。読む価値なし。ホント恥ずかしくないのかね。 国別だと中国やインドが悪いと書いてあるけど、国民1人当たりにするとどれくらいなんだろ。ヨーロッパとか人口少ない国多いから実は1人当たりの消費量って中国少ないとかないのか?
1投稿日: 2022.09.03
powered by ブクログ【感想】 本書はエネルギー問題を扱う専門家、ダニエル・ヤーギンによって書かれた「資源をめぐる地政学」の本である。原書が書かれたのは2020年9月とかなり新しく、アメリカ、ロシア、中東といった巨大産油地域の最新情報はもちろん、電気自動車や気候変動といった、エネルギー関連業界の動向まで余すことなく網羅している。まさに「新時代の地図」と言える一冊だ。 エネルギーが国際政治上の武器として扱われた例といえば「第4次中東戦争」であるが、そこから50年近く経った今でも、石油をはじめとする「資源」は常に大国間で緊張を生み出し続けている。 そのエネルギー業界に、近年大きなシフトが起きた。「シェールガス革命」である。 新エネルギーの発見によって、米国は世界最大のエネルギー消費国からエネルギー産出国に転換した。2019年には70年ぶりの純石油輸出国に返り咲き、2022年にはオーストラリアとカタールを抜いて、LNG輸出が世界トップとなった。 この出来事は世界のエネルギーの地図を塗り替えた。 ロシアは今まで、「ノルド・ストリーム」によって欧州との結びつきを強めていたが、アメリカの台頭により同地域への影響力が低下することが予想されている。そうなると西側だけでなく世界のエネルギー市場から完全に孤立してしまうため、それを防ぐために中国との大型契約を行ったり、サウジアラビアとパートナーシップを締結したりして、対米への足掛かりを築いている。 中東諸国も同様に面白くない。アメリカはOPEC非加盟国であるため、石油産出に関して連携ができない。アメリカの石油増産により原油価格が国際的に下落すれば、ダメージを受けるのは石油依存度の高い中東各国だ。また、OPECを主導する巨大産油国サウジアラビアとしては、中東諸国の火種になっているイランが石油増産を行うのを防ぎたい。ただし、原油価格の下落を防ごうと減産を行い、かといって他国は減産をしなかったら、自分たちだけがシェアを奪われる格好になってしまう。これがジレンマとなり、OPEC加盟国は対応に窮している。 エネルギーをめぐるテーブルの上では、こうした政治的駆け引きが繰り返されていく。これもひとえにアメリカがエネルギー大国に成長し、ロシアや中東の政治的意向を無視してパワープレイに走ることができるようになったからなのだ。 ――――――――――――――――――――――――― 以上は一例だが、本書はこのように「アメリカのシェールガス革命によって起こった影響」を、現在の世界情勢に当てはめて「新しい世界の資源地図」を作ろうとしている。本書が凄いのは、現在の情勢だけではなく、歴史の話もふんだんに交えている点だ。アメリカの章であれば、シェールガス革命前夜からエネルギー大国になり上がるまでの足取りを丁寧に説明しており、中東の章であればイラン革命からイラク戦争、ISIS誕生やOPECプラスの締結といった諸要素を幅広く解説している。読んでいて、「え、この密度で全世界を取り上げるの?」と思ってしまったぐらい、とにかく濃い。そして最後は「電気自動車」や「気候変動」も紹介している。国同士のやりとりだけでなく、マーケットの動向も取り上げ、そしてその分析も非常に細かい。これ一冊でエネルギーをめぐるトレンドを総ざらいできそうなぐらいだ。その分、ハードカバー600ページ弱という超ボリューム。だが、読む価値は大いにある。是非オススメだ。 ――――――――――――――――――――――――― 【まとめ】 1 アメリカ:シェールガス革命 シェールガス採掘技術の登場によって、テキサスはごく短いあいだに変貌を遂げ、並外れた成長の軌道に乗った。2009年1月から2014年12月にかけ、テキサス州の原油生産量は3倍以上増えた。この時点で州の産油量は、メキシコの産油量を上回り、さらにはサウジアラビアとイラクを除くOPEC加盟のすべての国の産油量をも上回った。 これは石油資源の地図をも描き換えた。パーミアン盆地の「スプラベリー・ウルフキャンプ」と呼ばれる一帯は、サウジアラビアの巨大油田、ガワール油田に次いで、今や世界で2番目に大きい油田と見なされた。イーグル・フォードも、クウェートのブルガン油田やサウジアラビアの別の油田に次いで第5位に食い込み、ロシアの石油力の拠り所になっているサモトロール油田を抜いた。米国は復活し、再び世界の主要な石油のプレーヤーに返り咲いたのだ。 シェールガス革命の結果、原油の輸入量が急速に減り、貿易赤字が縮小する。さらにこの革命が重要だったのは、国内に雇用をもたらしたことだった。2019年の時点で、シェールガス革命はすでに280万人以上の雇用を支えており、製造業、関連ソフトの開発事業、不動産事業といった関連産業にも雇用効果が波及した。また、今まで国外の拠点に向けられていた産業投資が、国内に方向転換し始めた。国と州の歳入は、2012年から2025年までで1.6兆ドルになると予測されている。 LNGのグローバルビジネスが加速した結果、オーストラリア、カタール、エジプト、イスラエル、ロシアなどで新しい輸出事業が立ち上げられている。 中でも顕著なのはメキシコである。シェール層の一部は米国からメキシコに続いているが、メキシコには採掘技術がない。そこでメキシコはエネルギー部門の自由競争を開始し、国内外の企業から投資を呼び込んでいる。新しいパイプラインや発電所が建設され、米国のシェールガスがメキシコの発電所に届き、値段の高いLNGや石油にとって変わった。 トランプ政権誕生後、LNGは貿易紛争と政治の道具になる。 天然ガスの世界最大の生産国であり、なおかつ欧州における主要供給国でもあったロシアにとって、シェールは脅威だった。対象的にアメリカは、シェール革命のおかげで「安全保障上強硬策に打って出られる余地」ができたのだ。 シェール革命で地政学はどのように変わったか。 ①イランとの核合意の締結。 →核開発絡みの制裁に対して、イランは原油供給を絞り価格をつり上げることで、輸入国を間接的に攻撃し、制裁を緩めさせることが可能だった。しかしアメリカの生産量の増加によって、イランの輸出量の減少が相殺される。結果、イランに強固な圧力をかけることが可能となり、同国を交渉のテーブルに引きずり出すことができたのだ。 ②LNGの輸入をロシアに依存する割合が減ったことで、欧州におけるエネルギー安全保障が多様化された。 これまで何十年にもわたって世界の石油市場を規定してきた「OPEC加盟国vs非加盟国」という捉え方は、「ビッグスリー」(米国、ロシア、サウジアラビア)という新しいパラダイムに取って代わられたのだ。 2 ロシア:帝国の復活を目指すエネルギー大国 ロシアは世界の三大産油国の1つに数えられる。天然ガスでは米国に次ぐ世界第2位の生産国であり、今も世界最大の輸出国だ。石油と天然ガスの輸出から得られる収入が、国と国力の財政基盤になっている。その収入は歳入の40〜50%、輸出収入の55〜60%、GDPの推定30%を占める。 ロシアが世界経済の主要なプレーヤーであるのは、何よりも石油と天然ガス資源のおかげだ。ロシアの原油輸出額は2000年に360億ドルだったものが、2012年には2840億ドルまで増えた。じつに8倍の伸びだ。同じ期間に、天然ガスの年間輸出額も170億ドルから670億ドルまで上昇した。石油・天然ガス収入の増大に伴って、ロシアは経済の弱国から強国へと変貌し、対外債務を返済し、国民の給与と生活水準を引き上げ、年金を増額し、ルーブルの「安定化」基金を蓄え、国防をさらに増強し、大国としての復活のために資金を投じた。 天然ガスの輸入をロシアに依存している欧州。そのエネルギー政策には2本の柱があった。 第1の柱は、天然ガスのシステムの強靭さとエネルギー安全保障を高めるとともに、欧州全体で天然ガスの単一市場の形成を目指すことだった。ガス会社は欧州内の各地に容易に天然ガスを輸送できるよう、パイプラインのつながりを増やしたり、必要に応じて、天然ガスの流れる向きを逆にできるよう、パイプラインを改良したりした。またLNGの基地や貯蔵施設への投資が促進されたほか、買い手による天然ガスの転売を制限する「仕向地条項」も撤廃された。 第2の柱は、気候変動対策として、脱炭素と高効率化、再生可能エネルギーへの速やかな移行を目指すことだった。先頭に立ったのはドイツだ。ドイツは「エネルギー大転換」というスローガンを掲げて、風力や太陽光発電の開発に大規模な助成を行った。 2011年、ロシアとドイツを直接繋ぐ――対立関係が続くウクライナを経由せずに――100億ドルの天然ガスパイプライン、「ノルド・ストリーム」が開通する。これによって欧州はますますエネルギー供給をロシアに依存することとなり、域内外の議論の的となる。 中欧の政策担当者やメディアのあいだでは、このパイプラインの建設で得をするのはロシアだという批判が根強かった。西欧の国々、とりわけドイツはそれとは見方が違い、市場や貿易や投資を含むもっと大きな相補関係の一部、地理的に避けられない関係の一部としてこの計画を捉えていた。 ノルド・ストリームが大きな物議を醸す中、ロシア政府から欧州へ向けて、1つのメッセージが発せられた。サンクトペテルブルク国際経済フォーラムでのことだ。ガスプロムのCEOアレクセイ・ミレルが、欧州からの出席者で埋まった会場で次のように言った。「ロシアに対する恐怖心を克服するか、さもなければ、ガス切れを起こすかです」。 4年後の2015年末、「ノルド・ストリーム2」建設のための調査が始まり、再び政治的議論の対象となる。 米議会はプーチンに近いと言われている個人や企業、金融機関を対象とした制裁を可決した。ノルド・ストリーム2もいくつかの法案で制裁の対象とされた。EUの中で東欧諸国は、ノルド・ストリーム2の建設を止めるための制裁を歓迎したが、そのほかの国の反応は違った。ドイツの外相とオーストリアの首相は共同声明で「欧州のエネルギー供給は欧州の問題であり、米国の問題ではない」「政治的な制裁の手段と、経済的な利害とを結び付けるべきではない」と述べた。理由はそれだけではない。欧州のあるエネルギー大手の幹部に言わせると、米国が制裁を科すのは「自国の天然ガスのため」、つまり米国のLNGの輸出のためだった。 2019年12月20日、ロシアとウクライナのあいだで話し合いがまとまり、果てしなく続きそうだった天然ガスをめぐる両国の激しい争いが和解に達したというニュースが伝わった。ロシアが引き続き5年間、ウクライナ経由で欧州に天然ガスを大量に輸送することを約束したのだ。これによりウクライナの通過料収入の目処が立った。さらに驚きだったのは、ロシアがウクライナへの約30億ドルの賠償金の支払いに応じたことだった。 ロシアとウクライナの長い争いについに終止符が打たれてから数時間後、ドナルド・トランプはフロリダへ向かう途中に防衛予算法案に署名し、ノルド・ストリーム2への制裁を発動させた。この制裁に対してメルケルは「EUへの不当な内政干渉だ」と怒りをあらわにした。 プーチンは現在、エネルギー政策を東方にシフトしている。中国への接近である。 ロシアも中国も、「一極支配」と米国に「覇権を握られた」国際システムにも、活動家やNGOにけしかけられた民主主義の普及と体制の転換にも、反対の立場で一致している。両国が唱えているのは、多極化と、何よりも国家の(とりわけ自国の)「完全な主権」である。 二国間の議題の最上位に置かれたのは、大規模な天然ガスの契約の問題である。中国は経済成長を支えるとともに、大気汚染を抑えるため、どうしても天然ガスの利用を増やしたかった。一方ロシアは、ヨーロッパの顧客への依存を弱めるとともに、石油・天然ガスへの旺盛な需要があり、なおかつ政策と経済の両面で方向性が近い国の市場に、将来軸足を移す必要があった。 2014年、2国間で「30年で4000億ドル」という超大型の契約が成立。この結果、中国はドイツに次いで、世界で2番目に大きいロシアの天然ガスの市場になった。 2019年12月2日、上海で超大型の天然ガス事業の契約が交わされてから5年半後、全長約3000キロのガスパイプライン「パワー・オブ・シベリア」が開通。プーチンがソチで、習近平が北京で開通に立ち会った。今や、エネルギーがロシアと中国の戦略的パートナーシップの土台になっている。 3 中国:覇権を狙う新進気鋭 中国は産業革命時代の英国と同じように「世界の工場」になった。例えば、中国は現在、鉄鋼(世界の生産量のおよそ半分を占める)、アルミ、コンピュータの世界最大の生産国だ。電気自動車や風力タービンに必要なレアアースでも、世界最大の生産量を誇っている。2011〜2013年の3年間で、中国で消費されたセメントの量は、米国で20世紀中に消費されたセメントの量を上回る。保有する資産も莫大だ。中国国家外為管理局の外貨準備は、3兆ドルにのぼる。そのおよそ3分の1は米国債で占められる。 同時に、中国政府は輸出主導型から消費主導型の経済への転換を図ろうとしており、中国は消費国としても急速に成長している。SARSが流行した2002年、中国のGDPは世界のGDPのわずか4%だった。2020年のコロナウイルスの流行時には、その比率は16%に達していた。これはつまり、世界各国が新型コロナウイルスの打撃を受ける以前から、中国経済は世界中に影響を及ぼしていたことを意味する。 エネルギーをめぐって現在紛糾しているのが、南シナ海をめぐる問題だ。 南シナ海の海底には石油や天然ガスが眠っているとされているが、期待されているほどの資源が本当にあるかは定かではない。現在、南シナ海で生産されている原油は日量90万バレルほどだ。これは2019年の世界の産油量の1%にも満たない。 では、将来はどうか。ある中国の予測では、未発見の埋蔵量は最大で1250億バレルと見積もられている。これはイラクやクウェートとほぼ同じ規模だ。ただ、米エネルギー情報局は120億バレル程度だろうと推定している。また、資源が発見される可能性が一番高いのは岸に近い海域であり、争われている海域にはその5分の1の埋蔵量しかないと考えられている。 南シナ海が重要なのはむしろエネルギーを含む貿易だ。 2001年のWTO加盟以来15年で、中国の石油の消費量は2.5倍に増えた。しかし2020年初頭の時点で、石油の輸入量は世界の総需要の75%を占める。 また、世界の石油タンカーの約半数が南シナ海を通っている。この海域を通る世界貿易の額は3.5兆ドルにのぼり、中国の海上貿易の3分の2、世界貿易の30%を占める。行き先は中国ばかりではなく、日本や韓国へ向かうタンカーもある。日本や韓国は、中国の行動によって石油の輸入を妨げられるリスクを負っている。 しかし中国にとっては米海軍が唯一のリスクだ。中国のストラテジストが念頭に置いているのは、次のような危機のシナリオだ。台湾が独立の動きを見せ、中国がそれに対して軍事行動を起こす。すると米国が対抗措置として、南シナ海の中国の石油ルートを断つ。そこから導かれるのは制御不能の事態だ。 米中のあいだには、鋭く対立する経済問題が山ほどある。トランプが大統領に就任してから、中国は極めて危険な地政学的競争相手として「敵国」の最上位に位置づけられている。副大統領時代のマイク・ペンスによれば、中国は「米国の技術をごっそり盗み取り」、「世界に類のない超監視国家」を築いた国であり、今や「米国の軍事的な優位を切り崩し」、「米国を西太平洋から追い出そう」としているという。 対して中国は、「米国で強まっている覇権主義、パワー・ポリティクス、単独行動主義」に非があるとし、米国は「絶対的な軍事的優位」を追求し、「国際的な安全保障環境を損ねている」と米国を非難した。また、アジア・太平洋地域が「国家間の競争の中心的な舞台になっている」のは、「域外の国々」(つまり米国のこと)が「不当に中国の領海や、中国の島嶼部の周辺水城や空域に侵入して、中国の安全保障を損ねている」せいだとされた。 しかし、米中はより一層相互依存を高めている。ゼネラルモーターズの中国での自動車の販売台数は、米国での販売台数を上回っている。トランプ元大統領による貿易戦争以前、米国の大豆の輸出は60%まで中国向けで占められ、アップル社のiPhoneの中国での売り上げは年間400億ドルにのほった。さらに、中国は米国産LNGの最大の市場になるとも予想されている。 4 中東:世界最大の産油地域 OPEC最大の産油国サウジアラビアと、主要な産油国の1つであるイランとの現在の争いは、どちらが中東の地図において優位に立つかの闘いだ。それは宗教や、イデオロギー、国益の衝突という形を取り、覇権への意欲によって支えられている。 2014年9月頃、原油価格が1バレル当たり100ドルを切った。それが11月には77ドルまで下がった。原因はいくつか考えられるが、需要の増加をしのぐ勢いで米国のシェールオイルの生産が増えていたのが一番の要因だ。 地政学的な緊張や混乱によって原油価格が上がるのは自明の理だったが、今回は真逆の現象が起きている。サウジアラビアは、OPECの中で数少ない、原油価格にテコ入れできるほどの減産を行える国だ。しかしサウジアラビアは減産に消極的だった。自分たちだけ減産し、ほかの国が減産しなければ、市場シェアを失うからだ。OPEC外のメキシコ、ロシアも減産をしない意向である。新しい問題はOPEC外に新しい産油国が増えすぎたことで起きたのだ。 OPEC各国の大臣たちはその日、決定を下さないという決定を下した。価格を市場に委ねたのである。 その後の数週間、原油は市場にとめどなく流れ込み続け、2015年1月には5ヶ月前の半分以下に価格が暴落した。米国ではシェール業者が大打撃を受け、企業の倒産数は100件近くにのぼった。 石油輸出国の大半が苦境に陥った。ロシアでは、政府系ファンドの資産が急速に目減りしつつあった。サウジアラビアは赤字に転落し、外貨準備高の切り崩しを加速させていた。イラクの石油収入は崩壊した。2015年、ベネズエラは破れかぶれになり、ほかのOPEC諸国に「米国内で反シェールの環境保護運動」を起こそうと呼びかけた。 2016年11月、OPEC諸国間で「アルジェ条約」が承認される。総生産量を日量120万バレル減らすことを盛り込んだ減産措置である。2週間後、OPECと、ロシアに率いられた11カ国の非加盟国グループ(米国やカナダはもちろん入っていない)の代表がウィーンに集まって、協定を結ぶ。OPECの日量120万バレルの減産に対し、非加盟国は55万8000バレルの減産で応じることが決まった。OPECと非加盟国の新しい連合体は「OPECプラス」とも「ウィーン連合」とも呼ばれるようになった。 OPECプラスは地政学的な秩序の再編にも繋がった。ロシアとサウジアラビアがパートナーシップを締結したからである。ロシア側からすれば、アラブ諸国で随一の米国の同盟国であるサウジアラビアとのパートナーシップは大変都合が良く、サウジアラビアからしてみれば、ロシアはイスラエルやシリアやイランなどの、中東の全陣営と話ができるプレイヤーだった。 サウジアラビアは現在、「ビジョン2030」を掲げ、石油以外の輸出を大きく伸ばすことを目標に国の変革を目指している。経済の多様化、民間部門の成長、石油への依存の軽減など、国の運営を多角化することで安定を図ろうとしている。ただし、サウジアラビアは王国であり、雇用の大半が政府部門の仕事であることから、ビジョン2030には社会全体の構造改革が必要となる。 5 電気自動車 石油産業にとって電気自動車の台頭は、100年ぶりに強敵となりうる競争相手が現れたことを意味する。 現在、電気自動車の販売のおもな推進力になっているのは、政府の政策だ。その状況は世界中どこでも変わらない。 世界で一番電気自動車やプラグイン・ハイブリッドが普及しているのはノルウェーだ。2019年には販売台数の45%を占めた。ノルウェーでもやはり政府の支援がものを言っている。補助金額がかなり大きいのに加え、路上でも優遇されており、電気自動車を買わないほうがおかしいと感じられるほどだ。 米国では、連邦税額控除が最大のインセンティブになっている。控除額はバッテリーの大きさで決まり、各メーカーの最初の20万台の販売までは、最大で7500ドルだ。州や市で独自のインセンティブを導入している場合もある。追加の税額控除や、相乗り専用レーンの通行許可、無料駐車場などだ。2008年の金融危機に対する財政刺激策の一環で、オバマ政権はテスラに4億6500万ドル、日産に12億ドル、それぞれ電気自動車の開発のための融資を行った。 自動車と燃料供給者の世界が、新しい競争の舞台になった。もはや単に消費者に自家用車を販売するだけの競争ではなくなっている。単なる自動車メーカー同士の競争でもなければ、ガソリンブランド同士の競争でもない。競争は多元化している。ガソリン車と電気自動車の競争であり、自動車の個人所有と移動サービスの競争であり、人間が運転する車と無人の自動運転車の競争でもある。その結果が、技術とビジネスモデルの闘いであり、市場シェアをめぐる争いだ。変化は徐々にだが、確実に起こっている。攻勢をかけているのは電気だ。石油はもはや無敵の王者ではない。ただし、もうしばらく、運輸産業は広く石油の影響下に置かれるだろう。
19投稿日: 2022.08.20
powered by ブクログエネルギー安全保障の過去から未来までを俯瞰できる一冊 脱炭素、カーボンニュートラルの世界的な潮流は間違い無いが、具体の対応はその国の地政学、資源、経済状況で異なってくる。 太陽、風、水の自然エネルギーは重要ではあるが、変化の鍵は化石燃料および資源国が握っている。 本書は、米国のシェール革命、中東の宗教と石油、南シナ海、自動車業界など、今の世界を知るのに重要なテーマを広く、濃く解説する。1章ずつが短くトピックごとに明確に分かれるため全体を俯瞰して部分を読み返すのが容易。 新型コロナ、ロシアのウクライナ侵攻など、世界はますます先行きが見えない。資源のない日本にとって、本書の知識は教養として皆が持つべきものだと感じた。
0投稿日: 2022.08.04
powered by ブクログエネルギーを主役に歴史的観点や経済、政治動向を踏まえた国ごとの考え方、戦略がコンパクトにまとまっていて有益。ただ、コンパクトと言いながら鈍器レベルの分厚さ… 個人的には中東の予備知識が足りず若干消化不良ながら、サウジアラムコの上場等腹落ちする部分も多かった。定期的にアップデートして欲しい本。
0投稿日: 2022.07.28
powered by ブクログ温室効果ガス実質排出ゼロに向けて、急激な変化を目前にする今、踏まえておくべき世界情勢。 ・アメリカのシェールガス、シェールオイルによる輸出国化 ・中東依存の低下、世界の警察の必要性低下 ・欧州へのLNG輸出、エネルギー地図の変化 ・ロシアとウクライナとのパイプラインを巡る紛争、ウクライナの西側シフトと戦争の予感 ロシアの欧州パイプラインとEU各国の思惑、米国の制裁、復元力 ・欧州のLNG基地建設による相対的地位の低下 ・北極圏LNG開設による東方シフト、多様化 ・2014年に購買力平価GDPで中国が世界一位 ・東シナ海を巡る米中対立(資源次第で重要性が変わり得る) ・一帯一路(BRI: Belt and Road Initiative)と米リバランス政策、インドの台頭 ・サイクス・ピコ協定による国境、中東の混乱 ・国境を廃するカリフ制 ・東地中海のガス田 ・コロナ後のOPECに代わる米、ロシア、サウジの石油安定秩序
0投稿日: 2022.07.20
powered by ブクログ米国、ロシア、中国、中東と世界のエネルギー資源をめぐる各国との関係を詳細な事例に基づき説明した本。なぜ、米国が近年、中東への関与だ減ったか、なぜ中国が南シナ海を支配しようとするのか背景がよく理解できた。結局、人類は、未だエネルギー資源、レアアースに支配されており、その価格、産出量に振り回されるのかがよくわかる。
0投稿日: 2022.07.13
powered by ブクログすごい読み応えだ。 グローバルな環境でエネルギーや資源ビジネスに関与する人には必読書だろう。 ロシアによるウクライナ侵攻の前に、すっかり背景が解説されていたことに驚くと同時に、ヤーギン氏のような俯瞰的な思考を繰り返すことが、世界情勢とそれに連動する経済動向の将来予見性が高まるという事を意識させられる。
1投稿日: 2022.07.02
powered by ブクログエネルギーの専門家であり、ベストセラーとなった「石油の世紀」の著書でもあるダニエル・ヤーギンの新書。 10冊読んだような読後感だが、エネルギー問題を地政学(アメリカ、ロシア、中東、中国)やESGの観点(環境問題や電気自動車)から多面的に描き出しされている。 この1冊を読んでから、世界で起きている様々な紛争の背景にあるものがより立体的に見えるようになった。
0投稿日: 2022.06.21
powered by ブクログ信頼のダニエル・ヤーギン著作。歴史的なエピソードを交えて現在の問題を様々な思惑の地図として描き出す。ロシアのウクライナ侵攻前に出版されたものではあるが、その侵攻もこの「新しい地図」の文脈で考えることができる。 大きな潮流としては、個人的にこうまとめた。 ・アメリカのシェール革命によるエネルギー自立 ・それによるアメリカの中東関与の弱まり ・中国の共産党独裁国家としての経済発展と、その結果としてのアメリカとの対立 ・ロシアの大国幻想、結局資源頼みの経済とプライドのアンバランス ・電気自動車へのシフトによるエネルギー需要の転換 ・気候変動リスクに対応する化石燃料からのシフト ・これらの転換における中国の存在感 ・そして全てに関連する地政学的なリスク、領土的野望 今後の産業や国際社会がどう進んでいくかを予言するものではないけど、予想するために必要なピースが素晴らしく読みやすい書き振りでまとめられており示唆に富みまくりの本。
0投稿日: 2022.06.19
powered by ブクログ分量は多いが、スラスラ読める。石油を通じた世界の流れが分かりやすく書かれているため、イメージしやすく非常に勉強になる。 こういう内容を高校とかで学ぶと面白いし、大学で何を学ぶかのヒントにもなると思う。
0投稿日: 2022.05.28
powered by ブクログかなり勉強になりました。世の中は、それぞれの国が自己主張する不安定な世界で、お互いバランスを取らないと戦争の引き金を引いてしまう関係になっています。その原因や関係性を理解する上でとてもいい本でした。
0投稿日: 2022.05.21
powered by ブクログエネルギーの視点で世界を読み解き、驚くほど近現代史の解像度を上げてくれる良書。エネルギーは経済を動かすだけではなく、世界を動かす重要な要素なのだ。 アメリカ、ロシア、中国、中東の各地域を順に読み解き、アメリカのシェール革命によるゲームチェンジ、ロシアにとってのウクライナの重要性、中国による南シナ海への進出、中東の紛争など、ニュースで伝えられる断片的な事象の背景などが、線としてつながりで理解することができた。 話は自動車、環境と進み、石油・天然ガスからのエネルギーのシフトの行く末まで網羅されており、読み応え十分の内容であった。
0投稿日: 2022.05.14
powered by ブクログダニエル・ヤーギンの「石油の世紀」は名著だと思っていたところ、この新刊。ロシアとウクライナの戦争を理解するためにも必要な本だと思って購入。 再エネを追いかけているだけでは理解できない、生々しいエネルギーの地政学。とても勉強になる。 そして中東がここまでぐちゃぐちゃになったのは、むしろ21世紀に入ってからだということがわかり、愕然とする。
0投稿日: 2022.05.06
powered by ブクログ『これまでの20年以上、ウラジーミル・プーチンは大統領として壮大な「国際的事業」に取り組んできた。それは旧ソ連諸国をまたロシアの支配下に置くことであり、ロシアを世界の超大国として復活させることであり、新しい同盟関係を築くことであり、ひいては米国を押し返すことだった。どれほどロシアに原因があるかは別としても、プーチンの思惑にかなった結果になっていることは間違いない。北大西洋条約機構(NATO)の分断しかり、EUの分裂しかり、米国の政治の混乱や、醜悪さや、二極化しかりだ』―『第9章 プーチンの大計画/第2部 ロシアの地図』 自分がこの業界---ここで少し長めの無駄話になるのだけれど、石油業界(あるいは石油会社)というと、日本では一般的にガソリンスタンドやサインポールを出している石油元売りの業界(あるいは会社)というイメージが強いけれど、欧米ではむしろオイル・インダストリーと言えば石油を生産する方の業界を指すことが多いんだよね。いわゆる業界の川上(=上流)側を指している訳で、これが無いことには川下もない訳だから。石油という言葉をお堅く訳せば実はOilじゃなくてPetroleumだけど(これはむしろ原油(=Crude Oil)と同義)上流も下流も含めた業界の意味だとPetroleum Industryが使われる印象。そして石油には原油と天然ガスが含まれる。ついでに言うと20年くらい前までは天然ガスはおまけ(というかハズレ)だったのが、最近はOil CompanyじゃなくOil & Gas Companyというのが一般的になったくらいガスも商品として価値が認められるようになった(それも今後変わるだろうけど)。なんでこんな話をするかと言えば、今の日本人のほとんどは石油が輸入出来て当たり前だと無意識に考えていて、石油が戦略物質だということに中々ピンと来ないから。皮肉なことに戦前の軍部はそのことを確り理解していた---に入りたての頃、世の中ではまだセブン・シスターズという言葉が実態を伴って存在していた。なので、最初の海外赴任の頃に出版されたダニエル・ヤーギンの「石油の世紀」は、まだ駆け出しの自分には業界の歴史と共に暗黙のゲームのルールのようなものを知る絶好の教科書だったことを覚えている。 そのヤーギンの最新作「新しい世界の資源地図」は、米国、ロシア、中国、そして、中東という、どの国にとっても石油資源戦略上外して考えることの出来ない基軸において過去30年程の間に起きた大きな変化を概観し、更に自動車、気候問題という観点から近未来の方向性を占って見せるという大著。「石油の世紀」の続編との位置付け(「探求」は飛ばしてもいいような気がする。気候変動を気候危機と同義語と捉える向きには逆なのかも知れないけれど)であるが、後半の2つのカテゴリーについては現在進行形の部分が多く、明確な視座を提供するという訳ではない。元々著者の得意とすることは飽くまで複雑に絡み合った事象の背景にありそうな、全体を統制するかのような要因(あるいは物語)を見い出すことで、未来予想をすることではない(というのは言い過ぎかも知れないけれど)。それに、やはり四地域に関する洞察こそヤーギンの面目躍如という感じがする。 『もっと若い補佐役たちの考えは違った。「アラブの春」の盛り上がりに感激し、フェイスブックやツイッター世代に共感を覚えていた。聴衆の心を掴むオバマの演説の力を信じていた彼らは、ムバラクの追放を躊躇しないよう大統領に直言した。「歴史の正義の側」に加わるべきだ、と。「しかし、どちらが歴史の「正しい」側で、どちらが「誤っている」側なのかは、誰にもわからないのではないか」と、ゲイツはのちに書いている。「希望と理想主義によって始まった革命のほとんどが、抑圧と流血に終わるのだ。ムバラク後に何が起こるかは、誰にもわからない」』―『第4部 中東の地図/第31章 対決の弧』 米国のシェール革命、ロシアの天然ガス資源開発、そして中国のエネルギー需要の増大と地政学的平衡感覚、どれもセブン・シスターズ後の世界での大きな変化であり、ヤーギンの考察は、その時代を同時並行で走って来た身には尚更、なるほどと思わせるところがある(もっとも、そもそも岡目八目とも言うし、並走している限り歴史的な流れは見え難いというのは世の常だし、実は個別の小さな動きの背景にあるものが個々の決断全てを論理的に決定している訳でもないと思う。歴史とは、結局のところ過ぎたものを顧みて総括する以外、把握することは困難なものなんだと思っておいた方がよい、と個人的には思う)。けれど、やはりエネルギーの供給を考える上でどうしても外せないのは石油であり、それが中東地域に偏在しているという事実から目を背けることはできない。本書の各段落に費やされている頁数を比較してみても、米国(72pp)、ロシア(67pp)、中国(65pp)、中東(166pp)、自動車(58pp)、気候(53pp)と圧倒的に中東に割かれた頁が多い。資源量の偏在に加えて、宗教、民族、いわゆる国という単位の成り立ちのどれもが一筋縄では捉えられない複雑さを有していて、尚且つ、その変化も激しい地域であるのだから仕方がないと言えばないのだが、そこに、欧米露の思惑も入り乱れているので尚更だ。そして更にそこに加わる中国の一帯一路。この地域において白地図を塗り分けるようなヤーギンの考察も現時点では合理的なものと思えるけれど、未来については必ずしもその合理性の延長にある訳ではない。 『移行はどれくらいの速さで進み、どのような影響を及ぼすだろうか。予測には大きな幅がある。IHSマークイットのシナリオによれば、世界の電力消費は2040年までに最大60%増える。その時点で、風力・太陽光が全発電量に占める割合は24%から36%になると予想されている。どちらにしても現在の7%からは大幅な上昇になる。予想に開きがあるのは、容易に想像がつくとおり、技術や発明、政策や経済の未来については、どうなるかわからず、さまざまな想定がなされうることによる』―『第43章 再生可能エネルギーの風景/第6部 気候の地図』 例えば、IHS Markitという会社は、少し前にファイナンス情報を提供するMarkitと合併する前までIHS(Information Handling Service)という会社で、石油業界の情報提供会社としてはもう少しシンプルな会社だったし、そのIHSだって石油部門に関してはCERA(Cambride Energy Research Associates。ヤーギンが設立)を買収したことで単なる情報サービスから脱して業界の雄であったWood MacKenzieと肩を並べるシンクタンクのメインストリームに出てきたという印象。そもそもその前はもっとシンプルな探鉱情報(いわゆるスカウト情報とマップ)を提供する業界的には最大手だったPetroconsultantsという会社を買収して参入して来た部外者的会社だったという印象が未だに自分には残っている。そういう栄枯盛衰を傍で見てきた身としては、業界の常識が変わるのは本当にあっという間ということを忘れてはいけないと思うこと頻り。例えば、どんな類の開発にも付き物であるHSE(Health-Safty-Environment)だって、20年くらい前までは工事現場的な単純なHSだったのが、今やSHSE(Social-HSE)と社会的責任も負わなければならない立場を操業者に課すこともある。けれど、例えばアフリカ東岸に於ける開発で負わなければならない社会的な責任とはどこまでの範囲を含んだものなのか。その国の資源に対する適切な開発はもちろんのことだが、貧困救済までも考慮した地域の活性化策も含むのか、はたまた地域間の貧富の差の解消策も含むのか、民主的な為政者の支援策も含むのか、と考えだせば切りがないし、より問題は複雑になる。だから単純な物語というのは本当は存在しない、とどうしても思ってしまうのだ。 ヤーギンの本はいつも大部で読むのが一苦労という感じだけど、歴史書的な記述で混沌とした社会情勢の変化などを筋立てて語るので、判り易いと言えば判り易い。でも、例えば日本史における司馬遼太郎の「創作」のように少し判り易くし過ぎているところもあるのだろうと思いながら読んだ方がいいようにも思う。
5投稿日: 2022.05.05
powered by ブクログシェール革命 軽くて品質の良い原油 米国の原油輸入 2019年 ペルシャ湾11% カナダ50% 品質の低い重質油用の米国の製油施設 2015年輸出禁止解禁 輸入量 2008年 総供給量の60%が 2019年3%以下に LNG輸入から輸出へ 2018年世界最大の産油国へ ロシア 石油と天然ガス 歳入の40~50%、輸出収入の55~60% GDPの30% 原油価格の急落 1991年12月 ソ連死亡宣言 ウクライナ=辺境の地 中世 キエフ大公国 1994年ブダペスト覚書で核放棄 欧州への天然ガス80%がウクライナ経由 関税 2011年 ノルドストリーム開通式 天然ガス35%ロシア産 EU全エネルギー9% 東方シフト 中国とロシア「パワー オブ シベリア」2019年開通 カザフスタンの石油の20%が中国向け 中国 輸出 対露350億ドル 対米4100億ドル 「トゥキディデスの罠」覇権国と新興国の戦争 アテネとスパルタ 中国 石油の75%を輸入 世界エネルギー消費の25% 85%が化石燃料 太陽光パネル 中国で70%生産 2010年から9年間で85%価格低下 ソーラーウェハー95%が中国製 ポリシリコン生産量の60% 2019年 設備容量 642ギガワット 10年前の14倍 実際の発電量はその20% 風力発電 2019年 618ギガワット 40%アジアのうち3/4中国 95%が陸上 利用率25% 2010年から9年間で50%価格低下 原子力発電 2011年福島の後、2019年の間 ドイツ17基停止、中国34基新設 インド 半数が「バイオマス=汚い」非商業エネルギーを利用 商業電力の75%が石炭 すべてのエネルギー源を組み合わせる独自の考え 薪オーブン→プロパンガス ディーゼルエンジン車→天然ガス 太陽光パネルに関税で障壁 海洋ゴミの90%はアジアとアフリカの10河川から 薬や試薬の99%は石油由来の原料から 石油需要のピークは2030年代半ば? 風力タービン1基=鉄1500トン、コンクリート2500トン、プラスチック45トン 電気自動車一台のバッテリー 23万キロの原料を採掘 実質ゼロ 「カーボンニュートラル」 1.炭素回収 植樹 回収エンジニアリング 2.水素 エネルギー密度高い 再生可能エネルギーでグリーン水素を作る 3.電力貯蔵 リチウムイオンバッテリーのコストと廃棄 レアアース
0投稿日: 2022.04.17
powered by ブクログロシアとウクライナの戦争を契機に資源価格が高騰している背景をより深く知りたくて、本書を読んだ。地政学の第一人者である著者が、アメリカ、中国、ロシア、中東のエネルギー事情を丁寧に紐解いており、分かりやすかった。 日本は東北大震災以降、原発稼働を最小限にしているため、電力供給を火力発電に多く依存している。火力発電の燃料となる石炭・天然ガスは輸入していることから、海外の紛争や政治リスクは、エネルギー供給を不安定化させ、日本にとっても重要な問題である。 本書で面白かった点のまとめ ①アメリカはシェールオイル・ガスの発展により、世界有数の石油・天然ガスの輸出国となった ・紛争リストが高い中東に天然資源の輸入を依存するのは、アメリカ経済にとって打撃を被る可能性がある。そのため、シェールオイル産業の発展で、自国内で天然資源のサプライチェーンを構築できたことは、経済安全保障において重要。 ・アメリカがイラン核合意でイランの石油輸出に制裁を課すことができたのも、アメリカのシェールオイルガスで供給が増えたから。 ・とはいえ、中東諸国の石油産油量は世界トップであり、石油価格は中東諸国の動向によっても影響される。石油価格の高騰はアメリカ経済にとっても負の影響があるため、中東諸国への介入をアメリカがゼロにすることは考えにくい。 ②中国の東シナ海の進出は、天然資源の確保と航路を抑えることが目的 ・中国が東シナ海進出の歴史的根拠としているのは、第一次世界大戦時に中国が作った地図。欧米と日本に領土割譲をされていた、当時の中国は、軍事力では欧米諸国には叶わないため、自国領土の正当性を地図で示し、その地図において、現在の東シナ海までを中国領土としていた ③ロシアとウクライナの対立 ・EUROとロシアの綱引き状態にあるウクライナの紛争は2004年の大統領選挙にまで遡り、2004年のオレンジ革命(不正選挙に対する民主化運動)に対してプーチンは反発していた。そのため、ウクライナを経由していたガスパイプラインから天然ガスをロシアは抜き取った。まさに報復 ④イラン・イラク戦争を巡る構図 ・イラン革命前は、サウジアラビアとイランは共産主義国への対策で協力していたが、イラン革命でイスラム原理主義に回帰し、ジハードの名の下へ革命輸出をしている ・シーア派が主流のイランでは、同じくシーア派のシリア、イエメン、レバノンをテロリズムで支援する。 ・イラン革命後にフセインと対立し、イラン・イラク戦争。対立の背景は、ホメイニ師はバース党(イラクの与党でスンニ派)を国民の多数派であるスンニ派を虐げていると糾弾し、フセインはイラン国境付近にある石油油田の確保を狙った。 ・サウジアラビアはイランの革命輸出を危惧し、イラン・イラク戦争ではイラクの金銭支援をしていた ・イラン・イラク戦争の長期化したことで、フセインがさらなる領土獲得と石油資源を求めてクウェートへ侵攻 ⑤イラクに侵略する革命国家イラン ・2001年のイラク戦争のきっかけになったのは、アメリカがイラクが核開発をしている疑惑があると考えられたことだ。開戦の根拠である大量破壊兵器はイラン国内で見当たらず、フセインは後に「イラクに対抗する手段として、破壊兵器の保有をちらつかせた」と述べた ・イラク戦争後のイラクにもイランは進出し、シーア派の革命輸出の拠点にし、そこからサウジアラビアや湾岸諸国への進出を狙った。既にイラク指導部には、イランの息が掛かったシーア派工作員がいる ・アメリカはイラクから撤退しているため、イランの侵略が進むイラクは一層のカオス ・中東の大国であるサウジアラビアは、王国でもあるため、革命国家であるイランとは対立関係にある ⑥レバノンはイランの革命輸出モデルケース ・政治武装組織ヒズボラはイランの手引により、レバノンで組成されたシーア派コミュニティ。ヒズボラは、イランによる武力訓練も受け、2020年には連立与党政権になった。 ⑤ISIS
0投稿日: 2022.04.10
powered by ブクログ2022/3/23読了。思いもしなかったロシアプーチン大統領によるウクライナ侵攻には唖然としたが、実は2014年のロシアのクリミヤ地区侵攻から今日まで紛争の火種は顕在化していた。日本で平和に暮らしている人間にはただ分からなかっただけなのだが…。今回の戦争を目の当たりにして本書を手に取り地政学リスクを背景に政治状況の変化(強国の覇権争い)の中で資源がどう利用されているのか…これが権力に利用され悲劇を生んでいることも知ることになるのだが、世界地図を傍らに置き非常に感慨深く考えさせられた。この分野の第一人者だけあって分かりやすくかつ読みやすかった。
0投稿日: 2022.03.20
powered by ブクログ読み応えのある本。 地域ごとの資源、産業ごとの資源。多角的にとらえています。 今のウクライナ、ロシアの話も分かりますし、ISなど中東情勢も分かります。
0投稿日: 2022.03.14
