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夏の終り(新潮文庫)
夏の終り(新潮文庫)
瀬戸内寂聴/新潮社
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総合評価

73件)
3.5
13
15
26
8
1
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    重い重い…胃もたれする。 文書の美しさがより鮮明に心情の複雑さを描いていたと思う。多くの凡人が共感できそうなポイントが垣間見えた後すぐ突き放されるような突飛な思考の主人公に振り回される。 重い想いの根底にはあまりにもからっと欲のままに生き続けていく知子そのものなのだと感じた。

    0
    投稿日: 2025.10.07
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    自分では手に取らないような本を、 と思い購入してみた『御神籤ブック』という選書サブクスの、記念すべき第一冊目。 不倫という恋の終わりの、終わらせ方。 言葉の美しさと情緒の豊かさに陶酔しつつも、時折微かな不快感によってふっと醒めるのは、やはりこれがモラルに反する恋だからだろうか。 それとも、秘めるべき関係を全く秘めようとしない主人公の図太さに、ある種の妬ましさを感じたのだろうか。

    10
    投稿日: 2025.09.02
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    私小説。受け身でない恋。年月を経て自らが身を引く結果になったとしても、本人が後悔せずに過ごせるのは幾ばかりか。様々な生き方はあるのだけれど。2025.5.6

    0
    投稿日: 2025.05.06
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    習慣になった不倫は断ち切ることが難しい。 という言葉に度肝を抜かれた。 不倫が習慣だと? 私たちが普段特に何も考えず、ただ体に染み付いたルーティンのように行っているもの。例えば歯磨き、靴を履く、ご飯を食べる、スマホを触る。 そんな、とくべつ頭で何も考えなくても自然にできるような習慣化したものの1つに、不倫だとは。 瀬戸内寂聴はアッパレです。 感情の言語化が非常に巧みだな。 そして、本の中で妻子持ちの慎吾と付き合いながら、同じく同時進行で関係を持っている涼太から 「僕はあなたにとってどんな存在か?」 と問われたとき、 主人公の言った 「憐憫よ」 という返しにも驚愕した。「P77」 その時は、へぇ〜憐れみ、可哀想っていう自惚れのような気持ちで付き合っているんだなぁと斜に構えて解釈してしまったのだが、 改めて考えると、自分にもそんな憐れみの気持ちで付き合っている存在がいなくも、ない、な。 始めは愛があり、好きなんだけど、本命に気持ちが傾くにつれ2人へ注ぐ愛情は等しくなくなっていく訳で、いつの間にか平行だった天秤はどちらかへ大きく傾き、軽さに上へ上がった方への扱いがぞんざいになってしまう。 インスタントでキープのような愛人。 それに比べて、肉体関係を持たなくとも、ただ2人でいるだけで幸せを感じる。浄福という。それが不倫相手だとしても。いや、不倫相手だからこそなのかな。 2人でいる時間が8年も続けば、それは習慣となるだろう。十何年と毎日行ってきた食後の歯磨きを、今日から止めなさいと言われたら嫌だし違和感感じまくるもの。 それが恋愛相手ならより一層、断ち切るのは容易ではないのだろう。 そして、この物語が瀬戸内寂聴の経験に基づいた私小説だということだから、更にリアリティは増す。人生は経験だよ、と身に染みて感じる。 不倫したことないのに、あたかも自分がしているように思えてしまうから、文章力はさすがだと感じた。 印象的な文章↓ P39 愛は抽象的な聖心の貴族であり、肉欲はその前では無様な道化にすぎなかった。 P117 歳月に綯いからまれた習慣は、裁ち切る努力をするよりも、そのまま巻き込まれていく方が、はるかに安易で楽なのだ。心も安堵の倦怠感になかば満たされかけていることに気づいてぎょっとした。 ↓慎吾と別れる決断をする主人公のシーン P164 別れという土壇場にのぞんでも、知子は新語に切りつける刃があるのなら、それで時分を傷つける方がやさしかった。 (好きな相手、愛することが習慣化した相手を傷つけるなんてできないもの。)

    0
    投稿日: 2024.05.21
  • 「雉子」が一番好かった

    作者の小説は初めて。連作を含む5篇の短編私小説集。私小説というだけあって、男女の感情の機微、特に主人公である女性の感情が繊細に綴られている印象を持ったけど、最後の「雉子」が子供に対する感情が胸に迫ってきて一番好かった。

    0
    投稿日: 2024.04.29
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    短編五つから成る。最後以外の四つは登場人物も同じ連作な感じで、最後のみ異なっている。 著者の本はおそらく初めて読んだけど、これは私小説ということでちょっとびっくりした。私が知っている著者は、既に出家されお年を召してからの活動で信奉者が多数いるように見受けられる方だったので。出家前の氏については全然知らなかった。 なんというか、情熱的かつ衝動的な方だったのだなぁという印象。

    6
    投稿日: 2023.07.10
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    いかにも、瀬戸内寂聴さんの本です!という題名の、『寂聴 九十七歳の遺言』、『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』などの本よりも、この本や、『あちらにいる鬼』、あと少し毛色が違うかもしれないが『おちゃめに100歳! 寂聴さん』などの方が、インパクトがあって寂聴さんを身近に感じられるような気がする。 解説にもあるように、「悪魔と愉しみを分つ部分」が拡大されていても、それが深められ、「普遍性を獲得し」ているからなのだろうか。 『和泉式部日記』も読んでみたくなった。

    1
    投稿日: 2023.05.25
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     5つの短編からなる連作集。1〜4作目がひとつの物語、5作目だけそれとは独立した物語になっている。とはいえ、どちらも著者の私小説的な内容であることに変わりはない。前半は長年の不倫相手だった井上光春氏との間で揺れ動く心境を、後半は前夫との間に生まれた娘との別れと、それに伴う苦悩をテーマにしてそれぞれ描いたものと思われる。  この本の前に井上荒野さんの『あちらにいる鬼』、同『ひどい感じーー父・井上光春』を読んでだいたいの関係性は把握していたから、それを寂聴さんの視点からトレースし直したような感じ。必要以上にこねくり回すようなまどろっこしい文体で、読んでいて疲れた。内容もああそうですかという印象で途中で飽きてしまった。同じ題材を扱うにしても、井上荒野さんのようにドライな文章ならまだしも、こういうねっとりした文章で読むのはなかなかしんどい。内容も相当ねっとりしているし。  寂聴さんの本は初めて読んだけれど、もういいかな。

    1
    投稿日: 2022.12.15
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    映画「あちらにいる鬼」がとても面白かったので、面白かったのに、本書を紐解いた。映画は、中年を過ぎて男と確かに別れるために尼になるまでの、男と瀬戸内寂聴とその妻の不思議な三角関係を、淡々と描いたものだった。 本書も、著者と不倫男とその家庭との不思議な三角関係が出てくるが、映画の不倫男と本書の不倫男は現実でも別人である。むしろ、映画の前日譚だった。知っていて紐解いた。 1960年代。未だ不倫が不貞と言われていた時代だ。刊行年は昭和38年(1963年)。瀬戸内晴美(寂聴)が、新進の小説家として台頭していた頃。もしかして未だ井上光晴(「あちらにいる鬼」での不倫男)にも会っていないのかもしれない。晴美(もちろん、小説内では別名になっている。職業も違う)は、経済的に男に依存していない事を誇りにしている。現代ならば当たり前だが、当時としては娼婦以外では画期的だったのか。その他、女性から別れを切り出すとか、新しい不倫の形を描いたとして、当時は意義のある小説だったのかもしれない。 連作短編で前四篇は登場人物は同じで、むしろ長編の雰囲気。知子(晴美)は、売れない小説家の小杉と8年間付かず離れずの関係を持っていたが、昔の男と寝てしまった事をキッカケとして別れを切り出す。現代になって読んで驚くのは、あまり知られていなかった井上光晴との不倫の構造とあまりにも似ていたことである。 ・知子は小杉と不倫の終わりかけに、やはり若い男とも関係を持ってしまう。 ・小杉の妻は、長い間小杉の不倫を知りながら、知子を非難したり小杉を非難したりする事なく、淡々と過ごしていた。 ・知子は小杉との関係を精算するためには、小杉が通ってくる自宅を畳んで他所に引越しをしなければならないと思い込む。男はそれを淡々と受け入れる。 コレは井上光晴の娘・井上荒野が書いた「あちらにいる鬼」と同じ経過だ。引越しの代わりに、もっと徹底的な「尼になる」ことを晴美が選んだに過ぎない。瀬戸内晴美は、全く同じ事を井上光晴との関係で繰り返したのだろうか。詳しい人はいるかもしれないが、今回そこまで調べることができなかった。 短編集の最後の1篇「雉子」だけは、登場人物の名前を変え、彼女の最初の不倫から子供を捨て、次の不倫の顛末までざっと振り返っている。そこで、以下のように「まとめ」のような記述がある(牧子とは瀬戸内晴美のこと)。 男に溺れこむ牧子の情緒は、いつの場合も、とめどもない無償の愛にみたされていた。それは娼婦の、無知で犠牲的な愛のかたちに似ていた。(略)牧子の愛は充たされるより充したかった。たいていの男は、おびただしい牧子の愛をうけとめかね、あふれさせ、その波に足をさらわれてしまう。結果的にみて、牧子に愛された男はみんな不幸になった。 ←決定的な不幸を招く直前に、晴美は寂聴になったのだろうか?

    81
    投稿日: 2022.12.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「あふれるもの」から「花冷え」までは連作の短編。はじまりから終わりまで、丁寧な心情描写が続く。紆余曲折を経た二人の境地は。 道を外れて、人として終わりなのだとしたら、終わりの先、さらに終わりの先まで行き…、それでもまだ二人は生きていて。 文章が綺麗で、深く、良い小説だと思いました。 「不倫」と「出家」という壁が立ちはだかり、なかなか読めずにいた。読んでよかった。 短編「雉子」は心重い。

    2
    投稿日: 2022.11.18
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    アパートに一部屋借り、8年間、知子と暮らしたまに家庭に帰る慎吾の短編集。こんな感じの男女が次々に出てきたら疲れちゃうなと思ったけど、同じ人たちの連作短編集で助かった。不倫関係を扱うものはあまり生理的に受け付けないんだけど、女がサバサバしている(ように気を配っている)のと何事もなく日々が過ぎていくので落ち着いた風情があってちゃんと最後まで読めた、と思ったらこれは半私小説なのか、道理で背景や描写が細やかでよく作られてると思った。

    0
    投稿日: 2022.09.16
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     1962(昭和37)年から翌年にかけて発表された短編を収めたもの。瀬戸内寂聴さん出家前、瀬戸内晴美名義で可書かれた初期作品集。  瀬戸内寂聴さんは初めて読んだのだが、昭和の昔からよく新聞の広告欄にこの方のいかにも温和そうな笑みを浮かべたまん丸いお顔が載っていて、この顔と作家名はずっと昔から知っている。その寂聴さんも昨年亡くなったそうで、そういえば読んでなかったから、今回読んでみた。  この文庫本の裏表紙には「私小説集」と書かれている。これは本当なのだろうか? 5編中4編は同じ知子なる女性が主人公で、同じ不倫のシチュエーションを描いているのだが、私小説と言うことは、作者の実体験をなぞった設定ということになるが。巻末の解説にはそうは書いていないので、よく分からない。  仮に作家の実体験がストレートに反映されているとしても、これらの短編は「私小説」らしい感触はなく、むしろ心理小説の書き方である。地味な心理描写ではあるが、それだけにリアルで、ラディゲの文体の猿真似ばかりやって喜んでいた三島由紀夫などとは遥かに別次元の小説作品だ。  が、とりとめもないといえば言える。すっきりと構築された作品体とはなっていないし、そもそも「連作」と言うには、重複する部分などもあるのでしっくりこない。特に大きな構想を描くことなく書かれた小品群、といったところか。  描かれている不倫の情緒は、何やらウェットで昭和っぽいのだが、やはり「演歌」で描かれるような単純なものではない。本作で描出される主人公の人物像は、小説ならではの<オブジェクト指向プログラム>によってオブジェクト化し、それゆえに多義的な・あるいは超-意味的な実在として屹立する。要するに「彼女」という第3者として、その存在が立ち現れる。  こういった小説の基本性能を備えた作品群ではあるが、ちょっと狭い世界に閉じこもっているようなところもあり、「優れた小説」と呼ぶには今ひとつのような気がした。  たぶん瀬戸内寂聴さんはどちらかというと大衆文芸サイドの「流行作家」であったと思われるので、後年はもっと面白い小説を書いたのかどうか、またそのうち読んでみようと思う。

    0
    投稿日: 2022.07.06
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    文章が美しすぎて、いちいち感激しながら読んだ。 離れられない恋も、結局は日々の忙しない日常に戻ればすぐ埋もれてしまう。 ふっきれて軽くなった後、桜を見ているシーンはとても良かった。

    0
    投稿日: 2022.06.21
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    瀬戸内寂聴自選集「あふれるもの」のレビューを書きたかったのだけど、どこを探しても出てこず登録できなかったので仕方なくこの本に。 「花芯」「あふれるもの」「夏の終り」「けものの匂い」「みみらく」「蘭を焼く」「吊り橋のある駅」収録。 少し前に「あちらにいる鬼」という小説を読んだのだけど、それが著者の井上荒野さんによる父(井上光晴氏)と瀬戸内寂聴の不倫を描いたもので、何気に瀬戸内寂聴の小説って読んだことなかったと思い、手始めに私でも知っている短篇を含んだこの短篇集を読んでみた。 あとがきによると、1篇を除き、ほぼ出家前の、瀬戸内晴美時代のものだそう。映画化もされているから代表作とも言える「夏の終り」や、これも映画化されているはずの「花芯」など個人的にとても読みやすいものもあれば、「蘭を焼く」や「吊り橋のある駅」など暗喩めいていて多少難解なものもある。 著者による自選集で、後者のほうは著者的に「この時期は挑戦的だったけれど不評だった」というようなこともあとがきに書かれてある。 読み解くには頭を使いそうなので今回はやめて素直に物語を読んだのだけど、じっくりと読み解いていくのもまた一興なのだと感じるような物語だった。 「花芯」は読み始めから肉欲の世界だなと雰囲気で感じて、個人的には瀬戸内寂聴のイメージ通りだったのだけど、これを発表した当時は世の中に受け入れられず5年ほど文壇を干されたのだそう。女性という性の立ち位置が現在とは違ったせいもあるのだろうけど、このレベルの肉欲の物語って今ならそんなに珍しくもないから、昔は今とは全然違ったのだなと思わされる。 「あふれるもの」と「夏の終り」は連作で、本来は「夏の香り」が先に書かれたもので、後に書かれた「あふれるもの」が物語の時系列としては先になるかたちで描かれている。 38歳独身の主人公・知子が、妻帯者である恋人の慎吾と、かつて愛した元恋人である涼太の間で揺れ動く。女のしたたかさとその陰にひそむ弱さ、業の深さなどを感じる。 全体の雰囲気を一言で言うと、エロい話じゃなくてもどことなくエロい。文章自体に色香が漂っている。 世代的にもそうだし、とくにファンでもない私は、瀬戸内寂聴の生き方をつぶさに知っているわけではないけれど、初めて作品を読んでみて、この方が出家した理由がなんとなく分かった気がした。 そしてまた「あちらにいる鬼」を再読すれば感じるものも違ってくるのかも知れない、などと思った。

    0
    投稿日: 2022.06.10
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    瀬戸内晴美 2作目読了。 瀬戸内寂聴になる源は?という興味から、古い作品から読んでます。 内容(不倫8年)については、若いころに読んでいたら全く理解できなかったなと思う。 今の年代になったから、世間ではあるかもねくらいの理解で読めるようになった。 自分は無理だけど。 文章は巧みで読み応えがあり面白いので、他の題材で読んでみたい。

    0
    投稿日: 2022.06.08
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    若くはない女の恋愛との決別 もう二度と帰ってはこない、もう味わう事もない、熱くて痛くて愚かな若かった頃への愛おしさや懐かしさへの想い この後、剃髪することになる瀬戸内晴美の自分への愛情を感じる 雉子 の最後の中絶のシーンは強烈な痛みを感じる 生々しいはずなのに不愉快にはならない読後感は寂聴さんの純粋な生き様や人柄なのか

    0
    投稿日: 2022.05.30
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    お亡くなりになられたときに私の好きな多くの作家さんが本気で悼み、悲しみから抜け出せずにいるお姿を拝見し、著者の初期の代表作を読んでみたくなりました。 実は、著者の半生はTVで見ただけ、作品は源氏物語とエッセイしか読んだことがなく、小説を読むのは初めてです。 本書は私小説で、主人公が、妻子ある男と8年間不倫関係にあり(それを先方の妻も承知している)、そこに、かつて主人公が離婚する原因となった年下の男が登場し、再び関係を結んでしまうという四角関係が連作短編集の形で収録されていました。 この設定だけ聞くと、ドロドロな愛憎劇をイメージするかもしれませんがそうではありません。 著者の鮮やかな筆至が、初めに感じていた生々しさを読み進める度にどんどん軽減させ、読後はむしろ清々しい印象まで与えています。 主人公は自由だし恋愛体質だし奔放なんでしょうけど、でも、それに勝る覚悟や正直さや冷静さの方が印象的です。 相反する印象が同居し違和感がないのはさすが多くの作家さんが尊敬する方の作品だと思いました。

    3
    投稿日: 2022.05.16
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    寂聴さんのエッセイを読み、小説も読んでみたいと思い読んでみることに。私小説ということで、あの明るいお茶目な寂聴さんと重ね合わせなが読み、過去にこんな波瀾万丈なことがあったのかぁ…と驚いた。不倫、駆け落ち?という、いわば非人道的な出来事であるにも関わらず、じつにみずみずしく書かれていた。そこに嫌悪感はなく、純粋に文学として人間臭さみたいなものを表現していて、素晴らしかった。未婚、独身の私には想像もできないような世界だったが、もうひとつの人生を体験できたような感覚になった。

    2
    投稿日: 2022.01.10
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    昨年11月の瀬戸内寂聴さんの死去を受けて、冬休みに人気作を読んだ。 主人公は妻子ある男と不倫関係にあるが、一方で昔の男とも関係を持つという四角関係が描かれ、連作で収録されている。 あらすじを読むだけでは酷い女だ、なんて惨い話なだと思ったが、読み終えるとモヤモヤするより清々しい感じだったのは、瀬戸内寂聴さんの巧みなワードセンスと人物像の表現によるものなのだろうと思う。

    0
    投稿日: 2022.01.05
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    瀬戸内寂聴さんの訃報に接して初めてその波瀾万丈な人生を知り、作品が気になって読んでみた。 倫理的にみるとどうしようもなくダメダメだけど、文章から情景が浮かんでくるような、其々の気持ちが痛い程伝わってくる、美しい小説だった。惹き込まれたぁ〜 私も、男性に転がり込まれた生活を、別れを決意しそれを告げてもなおズルズルと引き摺って仕舞う遣る瀬無さには覚えがある。隣で横になりながら次の場所での生活の手続きをして、自らの決断で残してきたくせに、心が切り裂かれるように淋しくなって、連絡が途切れたら不安で見捨てられたような気持ちになりながらも、いつの間にか新しい生活に慣れて存在を忘れちゃって、ある時ふと本当の別れを実感して一人感傷に浸っちゃうような… 瀬戸内寂聴さんには遠く及ばないけど、敢えて辛い状況に身を置き、流した涙の量だけ愛が深まるような気がしていた学生の頃の不憫な勘違いを、思い出した。もうあの頃のような気力は到底ない笑 なかなかに心が掻き乱される作品でした。

    5
    投稿日: 2021.12.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    もともと映画版がかなり好きで、原作を買ってしばらく積読していたがようやく先月読んでみた。 登場人物がみんなクズすぎて最高に素晴らしい!(ほめてます)特に知子の年下の恋人涼太はめっちゃイイ。すごいわたし好みの甘えん坊系クズで身を持ち崩している雰囲気がたまらない。私の母性本能がバグを起こしている。源氏物語では匂宮が好きだと言っていた晴美ちゃん(!?)。どうにも他人とは思えない男の趣味に、お互い女学生だったらお友達になりたいくらいだ(大先生にすみません)。 ついふざけたことを書いてしまったが、この連作集に登場する人々は、すべてを曖昧にしてズルズルと流されながらも寛容にその身に受け入れ、受け流してゆく。令和の日本にはこれほどの「寛容力」はないと思うのでそういう意味ではたしかに旧い時代の物語にはちがいないのだが、なぜか普遍的な男女関係のしがらみがあり、グイグイ読まされる。手紙でしか登場しない慎吾の妻の存在感が胸に響く。 文章も美しく、夏の花のようないさぎよい余韻とおおどかさがある。大好きな恋愛小説。映画版もすごく良いので観ていただきたい。

    6
    投稿日: 2021.09.13
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    初寂聴作品。 なんかすごい濃くて強圧だった。 これが原点となった私小説だって。 これが瀬戸内寂聴か。 善悪で量れない人間の深さや顔が あることをしみじみ感じる。 ひかりちゃん主演の映画があるらしい。 映像の方がぐっとよさそう。

    0
    投稿日: 2018.04.11
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    2013.9/20 初瀬戸内寂聴作品。時代の空気感が目いっぱい漂ってなかなか良かった映画。人間関係をも最小限の台詞で空気感だけで伝える感じがもやもやさせられて、即原作買いに走ったのにどこも売り切れ...しょうがなく図書館で借りましたが、昭和41年初版本定価90円って、新潮社は販売戦略を間違ったようですね(;^_^A 読んでみると、著者の細に入り微に入りの心の詳細な描写を台詞ではなく演技で見せてくれていたんだと納得させられます。また、やるせない気持ちの描写に幸田文との類似を感じました。

    0
    投稿日: 2018.01.08
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    いくつもの章に別れた話かと思っていたら、 連作短編だったようだ。 最後の一編以外は、登場人物も同じで 少しずつ「こと」が進展してゆく。 どうしようもない邪恋に悩む袋小路の 人々の苦しい叫びが聴こえるような話だけれど 美しい日本語で描かれていることで ひやりと冷たい風が、ものがたりの 湿り気のあるけだるい暑さを どこかクールダウンしてくれるような印象もあった。 人にはそれぞれ想いがあり、 いけないとわかっていても溺れてしまう 哀しい感情がある。 それを眼を背けることなく、きっちりと 醜さは醜さのままに描かれていて、 ひりひりするような読書時間だった。 そして、それは決して絵空事でない 生身の呼吸する人間の熱さでもあった。

    2
    投稿日: 2017.03.13
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    読書会の課題図書。 瀬戸内寂聴さんのことはテレビでたまに見かけるぐらいしか知らないし、本も初めて読んだのだが、とても「女性」を感じた。 「恋」が「愛」に変わっていく様や、「習慣」が想像以上に人を支配し安住させている様や、それらをスパッと断ち切ることのできない様や、恋の終りの冷静なすがすがしさや、それらのあくまで個人としての女と男のダメな感じや、人間的なもどかしさなどがそっと心に寄り添う感じであった。

    0
    投稿日: 2016.10.13
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    実際、そばにいるときよりも離れている方が恋しいし、こっちといればあっちが恋しいとなるのは当たり前のことなのに、どうしても私たちはこれをこういうものだと割り切れない愚かさがある。二人の男に挟まれていることに優越感なんてないし、ただただ不安と申し訳なさが覆いかぶさってくるだけ、でもそんな苦しみの中で一人になることや二人になることを決めることはできるはずがなくて、ふっと、きっとずっとこうなんだという諦念がある、その時まで待たなければいけないんだろうな。

    4
    投稿日: 2016.07.28
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     読み終えて、わんわん泣きたくなった。矛盾するし儘ならないし辛いし疲れるし傷つき傷つけるのにどうしても誰かを好きになってしまう女の業に、共感とも同族嫌悪ともつかない複雑な気持ちになる。綺麗で流れるような文章で書かれているけど、むせかえるような濃い雰囲気。「色恋なんか二人の責任だ、どっちだって加害者で被害者だ」という台詞が真理なのかもしれないと思わせられる作品だった。

    2
    投稿日: 2015.12.13
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    「あふれるもの」「夏の終わり」「みれん」「花冷え」 主人公は官僚かなにかの妻だったのだけど 終戦後の混乱のさなか、男をつくって家を飛び出してしまう それはもしかすると 戦争に負けてなお国家によりかかる生き方しかできない そんな亭主への失望があって そういうことになったのかもしれないし またそうではないかもしれない どっちにしても、その年下の男とは長続きせず 次には売れない小説家の愛人となって、8年間をやり過ごすのだが そこに再び、かの年下の男があらわれるのだった …どうも主人公には オイディプスやエレクトラに自らを擬そうとする願望があって そのためのお膳立てを無意識におこなっているようにも思えるんだが そんなことで周囲の人間が、望みどおりの役を演じてくれるわけはない 結果的にこれらの短編群は 再現不可能性を通じた物語批判となっており そういう意味で 戦後自然主義のありようを非常にわかりやすく…はないものの あらわしていると言えるだろう 「雉子」 雑誌の取材で、堕胎手術に立ち会う主人公だったが そこにおいて彼女が発見したのは 自分こそ、娘に殺されるべき存在であるという事実ではなかったか

    0
    投稿日: 2015.05.25
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    4角関係は読んでいて、もどかしかった。知子がある意味2重の愛人であったところは業である。『雉子』は読後感が悪かった。

    0
    投稿日: 2015.03.29
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    なんともなぁー思い出す恋心です。笑 いや、この本自体は不倫の話なんだけど、こう、別れなきゃ別れなきゃって思って付き合っている男とどうしても別れるって告げられない葛藤みたいのが、わかるわかる!!!っていう、思い出す感じです。 こんな男と付き合って立ってどうしようもないじゃない!!と、思いつつダラダラ一緒にいる感じ、この感じがすごく良くでてる一冊で、つい思い出した。 ってかあんなに迷ってあんなに悩んで別れたのに、いままで綺麗に忘れてたんだから、人間の体って素敵だよね。笑!!

    2
    投稿日: 2014.10.11
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    映画を観てから読んだ。 自叙伝の性質を持つのに、そんなものを書く人は自己愛がとても強いはずなのに、その嫌悪感がほとんどないのは、作家としての冷静からかと思うと素晴らしい。 雉子は同じ点から広がる話なのに、より前に書かれた感があった。 発表年月はそう変わらず。

    0
    投稿日: 2014.09.17
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    ン十年ぶりに寂聴さん読みました。 綾野剛は適役だと思います。 こういう女性の生き方は賛否両論ありましょうが、 私はむしろ好きです。 いろんな縛りを緩くして、 自分の決断に任せる。 実に正直でまっすぐだと感じる。 人はいろんな制度や形式等に囚われて 正直に生きることを見失う、 見ぬふりしているのかもしれない…。

    0
    投稿日: 2014.06.01
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    8年間妻子ある男との不倫に疲れてきた主人公。 最初は作者の力に圧倒されたが、少しずつ読み進めると主人公のもとに夫と別れる原因の男と再開し、その男とも関係を持つようになるが、語り口はどこかあっさりとしている。 最後はどちらの男とも別れることになる。 きっと中途半端ではダメなのだということに気がついたのだろう。 大きく分けると2つの話だが、2つとも背景は一緒だった。

    2
    投稿日: 2014.05.08
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    ここまで正確に書き連ねられる冷静さが、 美しくはかなく、彼女を頑強にする。 習慣による常識の逸脱や、 それによって発される異様な存在感。 これを読むことで、私も整理された。

    2
    投稿日: 2014.05.04
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    寂聴さんの本を読了できたのは、今回が初めてでした。どろどろの三角関係を楽しむ気いっぱいで、読み始めたのですが、嫌悪感はこれっぽっちもわかずに終始知子の魅力に骨抜きでした。頭の中の知子は、いつも満島ひかりさんで、歩いたり走ったり寄りかかったりする彼女のコケテッシュな姿が知子のイメージにはまりました。機会があれば映画もいつか見てみたいな。

    2
    投稿日: 2014.03.18
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    映画の感想を。 映像は良かったし、配役もよかった。 しかし、相当疲れていたようで、途中で寝落ち。 機会があったら再度観たい。 いい映画なことは確か。

    0
    投稿日: 2013.12.29
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    終わりがあるようで、終わりのない旅のよう。 寂聴さんの文書は、とても美しい。 道理にかなわないことすら、美化され崇高され酔わせてくれる。 最後の生々しさも、生命の尊さを感じる。

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    投稿日: 2013.12.26
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    不倫はよくないという常識を持ち出すような余裕がない。 感情の機微の描かれかたがとても素直で、うつくしくて、共感できるはずはないのになんだか入りこんでしまう。てんでおかしい関係なのに、空気はとても自然で爽やかなのが、谷崎潤一郎とかと(比べるものでもないけれど)ちがうんだなあ。 映画「夏の終り」のキャストのイメージで読んでいたら本当にぴったりなようで、ああすてきだ。そして愚かだ。心地よい。

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    投稿日: 2013.11.12
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    妻子ある売れない作家の愛人である知子 妻も公認の愛人であり 妻子と愛人の間を規則的に行き来する生活!! 知子もまた、かつての年下の恋人と関係を重ねる。 その恋人は、知子が離婚する原因になった男性! どう考えても、 現実にはありえない関係!!に 少し戸惑いながら、読み進めましたが はるか昔の古典の世界を連想させられるような 気がしました。

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    投稿日: 2013.11.10
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    いつも正直な瀬戸内寂聴さんの作品を最近読んでいます。 この作品 完璧に私小説ですね。 びっくりするほどの純粋さで、好きになった人を追いかける。 自分が不倫しているのに、奥さんのことを心配したり、年下の情夫に不倫相手の愚痴を言ったり・・・。 小説なのに、(え~こんな思考回路なの???ぶっ飛んでる~)と思ってしまう。 しかし・・・昔では相当叩かれたんだろうなぁ。と思う内容に同情したり。 好奇心で瀬戸内寂聴を知るには入門編ですよ。

    0
    投稿日: 2013.10.31
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    20年前に夏の民宿の仕事先で夏らしい小説と勘違いして購入。以来何度か読みかけては挫折。このたび、4回目ぐらいでやっと読了。しんどかった。これは瀬戸内さんの感性に自分がついていけないだけなのでしょう。でも「夏の終わり」と「花冷え」の章はまたいつか読んでみたい。

    0
    投稿日: 2013.10.29
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    先週観た映画の原作本。 寂聴さんの本、初めて読みました。きっと好きになるだろうなあ、と思っていながら避けてきました。なんだかフィクションとして、楽しめないのではないかと。 この作品、映画は不思議なテンポで進み、時間の流れが複雑で、ぜひ原作を読んでみたいと思ったのでした。映画のテンポを埋める行間を読みたかったし、作品の登場人物の間に流れる時間をじっくり読みたいと想いました。 書き下ろされたのは、50年前。映画ではその昭和の時代を実に忠実に描いていて、その映像美も見事。 作者は御年90歳になられたとか。寂聴さんの作品を読んでみようかな。

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    投稿日: 2013.10.19
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    読書の師匠に勧められた一品。 曰く「美しい言の葉、この空気感と登場人物の心の移り変わり・・・これこそが、作者の愛した源氏物語に通じる『あはれ』の世界なのよ」と・・・。うろ覚えですが。 私にはまだ早かったようです。主人公がちょっとナルシスト過ぎというか、いちいち「どや!かっこいいやろ!」と押し付けがましくてお腹いっぱいです。あなた、それ全然モテてませんよ。ただのダメンズウォーカーですよ。ドヤ顔をなさるなら、もっと素敵な人を傍らに置いてからにして下さいな。と言いたい。 それを師匠に話したら「これはね、そういう話では無いのよ」と言われました。ごもっとも。あと10年くらいしたら再読しよう。

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    投稿日: 2013.10.01
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    別れたくても別れられない女の未練や躊躇が色濃く描かれており、何とも言えない気持ちになる。映画も良かった。

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    投稿日: 2013.09.29
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    瀬戸内寂聴さんの小説は若い時にも読んだことあるけど、やっぱり難しいです。 結局は知子と慎吾は離れられないって言うより一緒にいるのが日常なんやね。 独特の世界観でした。

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    投稿日: 2013.09.28
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    女流文学賞を受賞した「夏の終わり」を含む5編からなる連作短編集。 知子と妻子ある慎吾との関係は8年におよび、奇妙な膠着状態にあった。そこへ、かつて夫との別れの原因となった年下の涼太が現れ、慎吾との関係を捉え直す知子。 その時々で妻への連帯を感じたり、嫉妬はないと言いながら妻からの手紙に平静を失ったり、均衡を保っていそうでいながらやはり疲弊していく関係が、知子の心の機微に沿って描かれる。 作品全体の暗い淀んだ感じが、「花冷え」で少し晴れる。 なお厳密には、最後の「雉子」のみ、主人公は別の女で、同じモチーフの中で別れた娘への思いに焦点を当てた作品。

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    投稿日: 2013.09.23
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    数年前、中島みゆきさんの「命のリレー」を主題歌にしたドラマで、寂聴さんの半生を知ってびっくりしました。今の寂聴さんから出る言葉が心を打つのは、苦しんで苦しみぬいたからこそなんだな、と初めて分かった気がしました。 この本はその瀬戸内寂聴さんの原点だと知って読み始めました。とても心に響きました。 私も寂聴さんみたいなおばあちゃんになりたいな。

    0
    投稿日: 2013.09.23
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    瀬戸内寂聴の私小説が映画化された作品。 夫と娘を捨てて、若い男、涼太と駆け落ちした知子。 しかし男との生活は半年ももたず、酒場で働くようになった知子は涼太と別れ、その酒場で売れない小説家、慎吾に出会う。 慎吾は既婚者だったが、知子の家と自宅を行き来し、半同棲状態に。 そのうち知子の家は仕事場となり、妻からも用事の電話などがかかってくるようになる。 そんな生活を8年続けた頃、知子は再び涼太と出会って・・・。 というのが大まかなストーリー。 ダメ男の綾野剛を見たい!という理由でしたが、満島ひかりさんは情念が似合う、とても素敵な女優さんでした。 映画そのものは、時系列が分かりにくくて、淡々としてる感じ。 私の中のハイライト↓ ・涼太と再び出会い、涼太とも関係を持ってしまった知子に、涼太が「慎吾の妻に嫉妬しないのか」と聞くが、知子は「慎吾には恋をしていないから嫉妬していない」と答える。 涼太「じゃあ何で別れないんだ?」 知子「あの人を愛してるのね」 涼太「じゃあ俺はいったいなんなんだよ!」 知子「・・・言わせないでよ。憐憫よ!」 ・最初の結婚相手と娘と一緒に歩いていて、「好きな人がいるんです、ごめんなさい」と謝る知子。そんな知子をビンタして、冷たい顔で「・・・女のくせに」と吐き捨てる夫。そんな夫の背中に、「だって好きなんだもの・・・好きなのよ!」と言って地団駄を踏む知子。 ・涼太に、慎吾が妻と別れない理由を話す知子。 「習慣は愛情よりも強いのよ。8年間の習慣があるから、あの人は奥さんとは離婚できない」 思っていたよりも、三角関係への苦悩は少なかった気がする。 でも、こういう「あらがえない何か」というのは人間の業で、こういうことがあるから人生は素敵なのだ、と思えました。

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    投稿日: 2013.09.21
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    なんと大人っぽい小説なんだろう。登場人物は自由なようでいて人間関係の糸にずるずると絡め取られている感じがしました。

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    投稿日: 2013.09.19
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    映画化ということで、初めて瀬戸内寂聴さん読んでみた。 長く続いた不倫・・・というか4角関係?の自伝的小説。 これが書かれたのは、私が生まれる前ということで、その時代にはかなり衝撃的な内容ではないかと思うけれど、むしろ今、こんな風な不倫が成り立つかといえば成り立たないよなーと思う。 だけど、時代が変わっても、人が持つ嫉妬やドロドロとした愛憎の気持ちは、変わらないもの。 その描写は、妙に共感できた。

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    投稿日: 2013.09.16
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    まるで一つの美しい風景画を見ているような読後感でした。 表題作を含む4編からなる連作短編集と、それを換骨奪胎したみたいな掌編の、全5編。 ずるずると断ち切れない不倫関係を引き摺る女性が主人公なのだけれど、 その女性の煮え切らなさ、不注意さ、(結果としての)ずるさ、(無自覚からくる)あざとさに、思わずため息が漏れてしまう。 言ってしまえば「だめんずうぉーかー」的な、救いようのない女性なのだけれど、 この艶やかな風景描写のなかで、この流麗な日本語で書かれると、それが何と美しく映えることか…。 これこそ、日本の女流作家によって書き著されてきた「あはれ」という感覚なのでしょうか。 最後の一文で思い描かれる想像の中の風景画に、すべてが昇華される思いです。

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    投稿日: 2013.09.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    不倫とはいえ、8年も一緒に生活していたならば、もう、それも、一つの家族みたいなもんだ・・・・・そりゃ別れるのは大変だろう。 一人の男と二人の女の関係は、女が目を瞑れさえすれば、ずーと続くんだと思った。 しかし、この女のひとに関わった人は、誰ひとり幸せにはなっていない。女としては最低。

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    投稿日: 2013.08.29
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    瀬戸内寂聴って、もっと「自由な愛!(イエイ!)」みたいなかんじなのかなと思ってたので、意外と女々しいというか嫉妬と執着に満ちていて湿ったかんじなのね。 「男の人に対しての愛の量が多い」というのと「長く続いた不倫関係を自分の意思で清算した」というあたりが読みどころなのだろうけど、うーん。同族嫌悪(?)なのかもしれないけど、その裏に見える「そんな私、かっこいいっしょ?」って感じが気にかかってしまう。 もちろん共感できる感情も、あるあるのレベルではいろいろあったけど、突き抜けるようなきらめく感動はなかったかな。 比べる対象が違うかもしれないが、岡本敏子の「奇跡」のほうが全然よかった。めちゃくちゃな愛だと思うが覚悟に満ちた爽やかな風が吹いていたと思う。

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    投稿日: 2013.08.11
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    初寂聴さん。 あっけらかんとした雰囲気に圧倒。 時代的にはかなり厳しい目を向けられたろう・・・に。

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    投稿日: 2013.07.31
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    上品な日本語と各人物の情景描写が丁寧。不倫を題材にしたストーリーにもかかわらず、ジメジメ鬱屈した気分にならないのが不思議なくらい。

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    投稿日: 2013.07.21
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    映画化されるのを知り読みました。四角関係と言う本来なら重く暗い結末が訪れるかと思いきやカラッとした読後感でした。良識ある人から見ればかなり逸脱した生活を送る彼等ではあるが、それ故、自分の気持ちに偽りなく生きて行こうとする心の葛藤がじりじり感じられる作品でした。

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    投稿日: 2013.06.11
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    映画がこの夏に公開され、満島ひかり/小林薫/綾野剛が出演というので読んでみることに。 読めば読むほどキャストがぴったりで、とても映画公開が楽しみになりました。

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    投稿日: 2013.05.16
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    初の寂聴さん作品。一人で生きるのも大変な今、不倫なんて絶対できないと思いつつ、主人公の女性の心も理解できるところがあり。最後に男性との別れを実感、確信するくだりは特に響いたな。私もそんな年齢になったってことか。

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    投稿日: 2013.02.03
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    昔はセンセーショナルだったんだろうということはわかるのだけど、登場人物誰もが子供っぽくて堪え難いものがあった。いまの時代で当てはまるのは、恋愛なくして生きられない人もいるのだということ。自分に正直に生きてれば辛いこともあるだろうけど、それが本人にとって一番幸せなんだから仕方ない。それにしても、主人公はだめんずマグネット。

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    投稿日: 2012.09.28
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    ん~初寂聴本。良し悪し判断付かず…ただ戦後すぐの小説としては過激で先進的なのはわかる。 ん~やはり革命戦士の書く小説は革新的

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    投稿日: 2012.07.24
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    知子の愛って、理解出来ないんだけど、なぜか共感する部分も多くて。誰一人、憎めない、不思議な物語。人って奥深くて、複雑で面倒な生き物なんだなと思った。他の作品も読んでみよう。

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    投稿日: 2012.07.16
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    ・不倫、しんどいね。体力的にも、精神的にも。読んでてぐったり...。でも「恋」ですよ、不倫でも。今は馴れ合っている恋人でも夫婦でも、こういう情熱だけで動いていたことが誰にでもあるはず。 ロクに寝もせず、友人や仕事の約束を破ってまで会いにいったり、周りを巻き込んで。同じ「恋」だと思う。・視点が妻側の沢木耕太郎「壇」を読むと、同じに見える嫉妬でも愛人の方が何倍もキツイんじゃなかろうか。いずれは帰ってくるでしょうって暮らすのと、いつかは出て行く(別れなくてはイケナイ)のねって暮らすの。。。。不倫、オススメしないけど、このくらいの覚悟・自分から身を引く勇気?がないとしちゃいけない気がする。あたししないわ。できないわ。しんどい....。

    0
    投稿日: 2012.07.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    瀬戸内寂聴さんの私小説。 旦那と幼い娘を捨てて年下の男性と出奔。 その後、年上の売れない小説家の愛人を8年やっているところに旦那と別れる原因になった元カレくんが再登場。 再び関係を持っちゃって、破綻。 主人公の女性があまりにも幼な過ぎて、彼女への共感は全然ないんだけど、お話としてはうまくまとまってるな…と思いました。 一度に何人も好きになれちゃうのは、男性ばかりじゃないんだねぇ…。 女性でもそういう人っているんだ。 ビックリ!

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    投稿日: 2012.06.29
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    心の機微の表現が好き。さっぱり目の味付しっかりいい塩梅。電話の緊迫感、相手の家庭への距離感、経験ないけどわかるような。人間くさい中に爽やかさがある気がします。

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    投稿日: 2012.01.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    今の私と、似たような状況が興味深く読み進んだ。 私は、結婚もしていないし、こどももいないが。 8年もの間、一緒に過ごしている男の存在。 その男と別れようとするが、なかなかできない女。 こういう男女の関係もあるのではないかと ふと思った。

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    投稿日: 2011.10.11
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    寂聴さん、否、瀬戸内晴美の私小説。 宮沢りえ・阿部寛さん主演のドラマをきっかけにはじめて読んだ。 壮絶……というには、あまりに穏やかで、 あまりに優しく、「ずるい」、弱い人々。 どこまでが事実でどこまでがフィクションなのか、 多少の脚色はあろうが、彼女の断片的な記憶を辿るようで ページを繰ることさえもどかしかった。 『落下する夕方』と同じくらい、奇妙な愛のかたちがそこにあった。 ただ、とてもいとおしい。 登場人物一人びとりの苦しみ、苦悩、愛への切望を すべて抱きしめたくなる。 「おしっこ」……屈託なく、不倫相手の家で言えるだろうか。

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    投稿日: 2011.01.25
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    恋愛小説ふいんき語りで紹介されていて面白そうだったから読んでみた。 瀬戸内さんの半生は、宮沢りえさん主演のドラマで知っていたけど、 改めて小説で読んでみると、全然共感できないくらい壮絶。 なんというか、ここまで来ると完全な自虐行為のような気がする…。 こういう状況に陥ることができる人たちってそうそういないと思うな。

    0
    投稿日: 2010.08.12
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    不倫と頭ではわかっている、それでいて年下の元彼とも。でも抑えられない気持ち。夏日に不倫相手の自宅を目指してさまよう描写がお気に入り。瀬戸内さんホント題名つけるの上手い。

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    投稿日: 2010.04.14
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    Dec.21 2007 不倫暦8年。そして復活した恋と平行して数ヶ月。なんのやましさも感じなかった主人公、知子はふつうの感覚を取り戻さなければと必死だが、そんな心と裏腹に別れの覚悟が決まらない。 不倫されている妻もあまり騒ぎ立てないのは、経済力のない夫を不倫相手の知子が援助し、家庭には経済的ダメージを全くもたらさない、そのうえ家庭ではよき夫で、よき父であるからだろう。亭主留守で元気がイイ!って。。。 きっと三角だからこそバランスの取れた家庭、不倫が成り立っているんだと思う。

    0
    投稿日: 2007.12.22
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    瀬戸内寂聴さんのお話を聞きに行ってその場で購入。 84歳にして あの声の張りといい、しゃきしゃきしたしゃべりといい すごい人だな と思う。 これから書く小説は今までと違ったものにしたい。 妥協することなく、自分の可能性を信じてる。 話の中で一番印象に残ったこと。 一緒に暮らしている男性が毎晩々泥酔して帰ってくるので ”なぜ”かと問うたところ ”この家には気迫にみちている。見えないガラスの壁があって 家に入るためには、それを割らなくてはいけない。だから 酔わなくては家に入っていけない”というのだそうだ。 小説を書く寂聴さんの、気合や気迫、魂などが家中に満ちていて とても入っていけないのだと言う。 それを聞いて、即座に”別れましょう”と言ったと。 うーーーむ ガラスの家かぁ。仕事をしているしていないに関わらず 世の中の夫たちは、見えないガラスを感じているのだろうか。 などと思ってしまった。 寂聴さんの、何事にも真摯に取り組む姿というのがそこにあって 鬼気迫るものを感じたのだろうけど、きっとそこは その男性が求めている 安らぎとか癒しの場ではなかったのかな。 と感じた。2006/8

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    投稿日: 2007.06.21
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    男と女の不毛な関係をうまく描いています。最初に読んだ時は理解出来なかったのですが、読むたびに味わい深い一冊です。

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    投稿日: 2007.05.17
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    彼女の半生を宮沢りえ主演のTVドラマで見て、読んでみたいと思った。 2人の男の間で揺れる女心。人にはいろんな考え方があると改めて感じさせられた。

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    投稿日: 2006.05.10
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    非常に不安定な状況設定に関わらず、落ち着いた筆運びで、かといって河野多恵子のような息苦しさもない。そのバランス感覚は面白いかもしれない。

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    投稿日: 2005.05.09