
総合評価
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powered by ブクログ明智小五郎の関わった事件を発生順に並べたシリーズ。この巻からは江戸川乱歩の執筆が戦後の小説になります。なかでも明智小五郎がある程度活躍している小説を取り上げています。 『青銅の魔人』は1945年〜46年冬、『虎の牙』は1947年春、『凶器』は1949年6月15日〜28日の出来事です。 明智小五郎は50代、小林芳雄くんはもう「少年」ではないのですが、小説内では相変わらず「50歳になっても彼なりのお洒落をして、相変わらずモジャモジャ頭で朗らかに笑う」明智小五郎と、「リンゴほっぺの少年」小林くんなので、私も「概念上の明智小五郎と小林芳雄少年」として読んでいきます。…明智夫人の文代さんは30代のはずですが、存在がほぼなくなってます…。明智小五郎が元気ない今こそ一緒にいればいいのに、江戸川乱歩が悪女か被害者女性しか書けないのかな (^_^;) 戦中・戦後は日本の作家には制限がかかり、探偵小説や怪奇小説も出版停止などの憂き目を見ました。この巻の明智小五郎があまり元気ないのですが、江戸川乱歩も好きなものは書けないというような事情も考えてしまう。 『青銅の魔人』 機械作りのような怪物が東京を騒がせている。顔は青銅色、三角形の鼻、三日月型の穴のような口、真っ黒な穴の両目、動く時にギリギリと音をさせ、言葉は歯軋りのよう、四つ足で逃げるかと思えば密室から消え去ったりもする。そして青銅の魔人と呼ばれるようになったその怪物は、東京十から貴重な時計を盗んで回っているのだ。 次に狙いをつけられたのは、復員してきた手塚氏の所蔵する貴重な時計だ。その家には幼い昌一くんと、雪子ちゃんがいる。手塚氏は名探偵明智小五郎に捜査を依頼する。 == 戦後すぐの出来事なので、復員した人とか、親も家もないルンペン少年たちが出てきます。特にルンペンたちは本来「少年探偵団」たちと変わらないような少年たちですからね。逞しさと素直さを持っています。 そして犯人は…、…、少年探偵団といえばの二十面相。人殺しはしない、やたらに凝り性の二十面相。今回も青銅人形作ったり、地下に美術品展示室作ったりして、チマチマ準備したかと思うと、相変わらず面白い人だなあ。 しかし、今回の変装は結構酷いんじゃないだろうか…とも思う。 『虎の牙』 化け物屋敷と言われる西洋館に「魔法博士」が引っ越してきた。魔法博士はその西洋館に近所の子供達を招待し、魔術ショーを披露する。その中に、天野勇一くんと小林芳雄少年がいた。ショーの最中に天野勇一くんが消えてしまった!捜査する少年探偵団にも危機が…!どうやら背後には明智小五郎と小林少年を狙いとした何かがあるらしい…? ==久しぶりに明智夫人の文代さんが出てきた。今までも「いたけど書かれなかった」扱いでいいよね。 明智探偵事務所は千代田区の一戸建て。 さて、犯人は懲りない二十面相、しかも「ただ世間を驚かせたかった」だって!笑・笑・笑 二十面相は40代かな、戦争中は大人しくしていたけれど、戦後に世間を騒がせることと明智小五郎・少年探偵団たちに復讐するためにまた出てきた!というのは、もし本当の出来事だとしたら当時の人達は面白く楽しく受け入れられたでしょう笑 『凶器』 …「いたけど書かれなかった」かと思われた明智夫人の文代さん、どうやら完全退場(-_-;) 胸を悪くして高原に療養して明智夫婦は別居してます。解説によると「戦争中に明智小五郎は諜報活動していたのでは?」が本当だとすると、文代さんも戦中戦後の夫の不在、敗戦後の夫の処遇でかなり苦労したのでしょう…(-_-;) 文代さんがいないので、明智探偵事務所は麹町のアパートに引っ越し、小林くんが面倒を見てるみたい。 この話の明智小五郎は現場には行かず、お馴染になった庄司巡査部長から「資産家佐藤氏のご夫人が襲われた」事件の話を聞いて、推理します。私は「明智小五郎は探偵というより冒険家」だと思っていたのですが(『虎の牙』では、三メートルの幅跳びを易々と行っていた)、この話では完全に安楽椅子探偵です。 解説によると、今回事件のあった佐藤氏は戦後成金で、時代のドサクサに悪どい手も使い、アメリカ軍も相手にして財を成した人物。戦後の暗さは、「失った」だけではなくこのような人物が出てきて新たな社会が作られることにも見られる。
28投稿日: 2025.05.06
powered by ブクログ子ども向け作品はやはりグロさが激減するのと、 せっかちな大人からすると文章がまどろっこしいので、 哀しいかな読む推進力がなかなか湧いてこない。 『青銅の魔人』で東京の戦災孤児の悲惨さは表現されている (が、解説にあるように悲惨だが暗くない)。 小林くんが関わったチンピラ別働隊たち(本文表現)を 探偵を通して多く更生させてくれてると信じたいデス。
0投稿日: 2024.12.22
