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戦争獣戦争 上
戦争獣戦争 上
山田正紀/東京創元社
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総合評価

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    このレビューはネタバレを含みます。

    導入部分の三十数ページが一番ワクワクしたなというのが率直な感想。 「査察で訪れた北朝鮮の核施設で、使用済み核燃料プール内を謎の巨大生物が泳いでいるのを目撃する!」、ここまで読んで「この後はどうなるのだろう?」と気持ちも盛り上がったのだが、その後は史実も絡めたハードボイルドな内容ではあるのだが、設定が明らかになるほど話がこぢんまりとしていく感じでイマイチ盛り上がらない。 中盤までは異人とヒトの差異を(文中で彼らが感じているほどに)感じなかったが、それ以降は『ヒトではない』ことを実感する場面が増える。ただ、刺青獣の能力を除けば、怪物というよりは単純にサイコパス(= 他者への共感性が完全に欠如しているだけ)のような感じもした。 物語が進むごとに異人の神秘性のようなものが失われていく。台湾の奥地で殺し合っているだけの部族から出たナニかだと分かったときには存在している規模があまりに小さく、ガッカリにも近い感情になった。 『死命』も『死態系』も明らかになっていくに従って陳腐な感じになる。生命や生態系の対になるという壮大な感じがしない。多様で豊かな生に対して貧しく寂しい死という対比を意識しているなら良いのだが、下巻でどうなることか。 物語の中盤までは「どんな場所だろうか」と思っていた結晶林も神秘性も大した広さもないただの森。なんだか少し拍子抜けしてしまう。「そんな大層な名前をつけなきゃいいのに」とまで思ってしまった。 戦争獣『蚩尤』が誕生した際の描写は画面の裏側が見えてしまったように感じて落ち着かない思いをした。この場面は戦争獣の様子や生態を描いているのだが、「現代SFの巨大生物の動きをガワだけ変えたもの(モーションやモデルは同じでテクスチャを変えただけの感じ)」に見えて仕方がなかった。 本来は、それまで全く不明だった戦争獣の姿が垣間見える心踊る場面のはずなのだが、悪い意味で既視感のある記述に楽しむことができなかった。また、生物の描写に既視感を感じるのはこれまで読んだSF作品、ファンタジー作品を通して初めての経験ということもあって、「つまらないな」と感じるだけでなく、盗作部分を見つけてしまったような非常に居心地の悪い気持ちにもなった。 良かったなと印象に残っているのは、175ページのジェン・ドゥーが歌い始める場面で、夢の中にいるような艶かしさがよく表現されている。それまでの異人は特別惹かれる印象は受けなかったが、この場面は周囲の客と同じように夢心地で目を奪われていく過程がよくわかった。 この場面前後から異人の非人間性が前面に表れ始めるのだが、その特徴の一つである「異常に目を引く」様子が良く現れている。 余談だが、華麗島には著者の注か、「今は台湾と呼ばれているが・・」のような劇中の人物に注を付けさせるようにした方が良かったのではないかと思った。

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    投稿日: 2025.07.01
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    使用済み核燃料プールに戦争獣がいるという最初は良かったのだけど、過去に話が戻ってからはあまりワクワクしない展開。

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    投稿日: 2022.10.11