
総合評価
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powered by ブクログ金原ひとみさんばかり読んでしまう。 こんな作品も書けるんだ! これまでに読んだ2作品ほどグロくないし、すごく好き。 歳をとるとそつなくこなせることが増えるから傲慢になるけれど、本当はできることは限られていて、その限られた中で何が1番大切か考えなくちゃいけない。と気づける人は自由になれるのかも。 子供の頃できていたのだから、きっと私たちにもできる。 結婚してようがしてまいが、30近い女は反省ばかりしてるんですね。 自分のことが客観的に見えているくせに感情に流される人たちを見るのが気持ちよくて気持ち悪くて癖になる。 最初に読んだのが憂鬱たち、だからはまったのかも。 憂鬱を気怠げでかっこいい音楽に昇華するビリーアイリッシュやチリビーンズのように好きになってしまった。 どの作品の主人公たちもみんな真面目で勤勉で、努力の方向性が間違っていてもがむしゃらに走り続けるから苦しんでいる。大体の人はここまで頑張れないから正気を保っていられるんじゃなかろうか。 金原さんは恋愛の描き方も独特で、少女漫画くらい夢見がちかと思いきや、昔のフィールヤングより病んでいて、全部刹那的で永遠なんて存在しない。 他人の恋愛はうまくいくかいかないかの2択でどうでもいいのでこれまで読まなかったのだけど、執着が愛に変わる時、それはもともと自分の中にあったんだと気づく爽やかさがすごく好きでもっと読みたくなった。 自分の価値観を信じて間違えたから世間の価値観に合わせていたけれど、やっぱり素直に生きるしかないのだ。本当に素直になればきっとうまくいく。だって世間の価値観に合わせているうちに大切なものを失くすかもしれないでしょう?そんなことに気付ければこの世はきっと楽園に変わる。 無くしたものより欲しいものより今持っているものをいかに愛せるか。 執着を手放し自由になれそう。 カナが他の主人公たちと違ったのは体が健康だったこと。だから体と心の声がちゃんと聞こえたのかも。だって拒食症や蕁麻疹に苦しんでいる時に正常な判断ができるわけない。 憂鬱な人は常に最悪の事態を想定しているから雑でいられる海外暮らしと相性がいいんだろうな。可能性を排除して諦めるしかないから自由になれる。 サリンジャーはいつか無くしてしまう子供の純粋さを讃えていたから、8歳の子供に対してまだこんなものか、という表現にどきっとした。 カナの感情はカナだけのもので、誰にも文句言う権利はないし、秘密を守る権利があるけれど。 家族だから気が合うとは限らない、という至極当然のことを日本人は見ないふりをするから怖い。 『好きではないし、行きたいとも思わない。でも 行ってしまえばすぐ馴染む。でもここに居続けるには、常にルールを厳守する必要がある』 カナが感じているのは憂鬱ではなく苛立ちだ。 世間の期待に応え続けているのに世間は心を満たしてくれない苛立ち。こんなに頑張っているんだからもっと満たされるべきなのに、が拭えない。 日本で暮らすことの違和感や息苦しさ、 海外で暮らすことの自由や不安の表現が上手で、わかる、と思う。 でもコミュニティの中の人間を平等に扱うために他者を排除する時代にはいったので、やっぱり楽な逃げ道は簡単に使えない。抱えすぎているものを手放して不自由になる、ことが同じなのかもしれない。私はもう、一人で憂鬱でいることに疲れたのだ。
0投稿日: 2025.11.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
『軽 薄』 お久しぶりです♪ 金原ひとみ さん♡ この作品を読む前は… タイトルが『軽薄』だもん 誠実さなんて皆無で ただただ軽い ちょっぴり【ちゃらんぽらん】を添えた そんな 主人公のお話かと思っていたの 裏表紙に書かれている「あらすじ」には 18歳の頃、カナは元恋人に刺されるも一命を取り留めた。29歳の今、仕事も夫と幼い息子との家庭も充実しているが、空虚な傷跡は残ったままだ。その頃、米国から姉一家が帰国しカナは甥の弘斗と再会。19歳になった彼に激しい愛情を寄せられ、一線を超えてしまう。カナに妄執する弘斗は危うげで、そしてある過去を隠していたーー。 二人を繋いでしまった、それぞれの罪と罰。 喪失と再生の純愛小説。 こう書かれていたんです 〈えっ、ちゃうやん…全然 ちゃうやん……〉 そうですよね♡ ちょっぴり安心?して読み始めました 金原さん 12番目の作品 甥と関係を持つカナ… 甥と不倫って 普通に考えられないでしょう? だから この作品に嫌悪感を抱く人も 多いかもしれない でも、繊細で流れるような金原さんの文章に ドキドキさせられてしまう 甥との会話の中で… 旦那と息子を失っても、感情は動かないのか?という問いに 「それは、世界が変わるよ。泣き暮すと思う。もし俊を助けられるなら死んでもいいと思う。でも、二人が死んでも後を追おうとは思わないと思う。苦しみながら、私はまた日常に戻っていくと思う。でも弘斗だって、両親が同時に死んだとしても、後追いをしようとは思わないよね?」 「そうだね。カナさんが心中を持ちかけてきたら考えるだろうけど」 やめてよと苦笑すると、本気だよと弘斗も 笑った。 …という 場面があるのだけど ゾクゾクしちゃったの 溜息しかでない 「喪失と再生の純愛小説」 本当…言い得て妙だわ♡♡ 不思議なんだけど… 金原さんを読み続けていると お腹いっぱい になって 「ちょっと お休みしようかしら♪」 に なるんだけど 休んだら休んだで 我慢できなくなるくらいに 読みたくなってしまう そして "どっぷり"と余韻に浸るの♡
49投稿日: 2025.09.23
powered by ブクログ甥との恋ということで、恋愛には興味のない自分にとって響くものはあるのだろうかと心配でした。でも主人公の満たされない心にフォーカスされており、とても面白かったです。超おすすめです。
0投稿日: 2025.09.18
powered by ブクログ危うい関係が秘密の状態までは目が離せないが、やはりこういうのは露見しないと話が終わらないし、面白くもないんだけど、露見するともういいかな、と思ったりする。人は安定と不安定どちらを望むのかね。。。
0投稿日: 2025.09.02
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今まで読んだ金原ひとみさんの作品は、言葉のチョイスや会話が破天荒で振り切れてるイメージがあったけど、今作は雰囲気がちょっと違う。 甥との不倫なんて重いテーマだけど、恋愛小説というよりはカナの人生観もろもろの変化や気付きについてといった感じ。 単純に子供がほっとかれていて可哀想だったな。
5投稿日: 2025.06.11
powered by ブクログ私は誰も愛していない夫も彼も__ 心に開いた穴を埋めるため、許されざる恋をした。 お互いの感情が静かに強く摩擦し合い、文章から伝わるヒリヒリ感に読む手止まらずでした。 この狂気を殺意をそして愛を野放しにしてはならない。
9投稿日: 2025.04.30
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ある意味ダークファンタジーなのかも 現実味は薄いのに、自分の中にもカナがいるような気がして、身につまされるセリフが多かった。 恋愛ってそもそも正常ではないし、愛情は狂気なのかもしれない。と思うと2人の辿った道と結末はなんかとても自然な気がする。 最後のまとめ方が綺麗で好きだった。
0投稿日: 2025.01.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
この人はとにかく許されない恋愛もの 最後は無難に元サヤに戻るのかと思いきや、甥の方へ 彼女刺したりそれを示談にしたりパーティーで変なもの飲まされたり…
0投稿日: 2024.10.22
powered by ブクログタイトルの「軽薄」が何を表しているのか気になりながら読み進めた。 意味は意外にも中盤で、主人公カナの告白により明らかになる。 カナの生い立ちや結婚の経緯、甥である弘斗との関係。それらには一切共感できないのに、物語の中で触れられる小さなエピソードとそれに対するカナの感覚にはいちいち頷けてしまい、この「軽薄」の意味を知って、秘密を暴かれたような居心地の悪さを感じた。 しかも「マザーズ」から続けざまに読んだせいか、カナの母親の部分に拘って読んでしまった。
1投稿日: 2024.03.11
powered by ブクログ「失えるものの数だけ、人は魅力を携えるのかもしれない」人の魅力はその人が失えるものの数に比例する?前に読んだ『死ぬこと以外かすり傷』を思い出した。
3投稿日: 2024.03.03
powered by ブクログ私は強烈な過去をもってるわけではないけど カナに共感する部分が多かった これを読んで私が軽薄な人間であることが なんかわかってしまった感がある。 けどそれを知っても揺るがない感じが それもまた軽薄というか。 態度や行動っていうか感情が軽薄。 不倫をしてしまうところが軽薄というよりかは、 それ自体をなんとも思ってないところが軽薄。 その感情がめっちゃ似てた。 不倫はしてないけど。 最後が何がとは言葉で表せんけど あんま好きじゃなかったな。 なんやろ。 選んだ道は全然肯定するねんけど。
0投稿日: 2023.06.05
powered by ブクログ過去のトラウマから理性的だった恋愛観が、段々とタガが外れていく小説。 一生懸命取り繕っていた体裁を、あれよこれよと剝がしていき、最後は本能一択で結末を迎えます。 本能で突き進めばそりゃそういう最後になるだろうな、と失笑してしまうような最後でした。 これだけ正直に生きられたらある意味幸せで、羨ましいなと思いました。 なんだかんだで相思相愛ってましたからね。
1投稿日: 2023.03.30
powered by ブクログ [捨てる薄い本] [ #300ページ以下で捨てる本 ] __________________ 家が狭いこともあり 捨てる本/残す本 を感想を添えて紹介してます☺︎ #軽薄 #金原ひとみ 刊行年:2018 / ページ数:297ページ/ジャンル:文芸作品、純文学 / 国:日本 / 価格:550円 __________________ この本を読んだ時の感想がちっとも思い出せないので、不倫の本について書きます。 不倫の本を読むと、大学受験の帰りを思い出します。 受験終わり、しなのに乗って、家から適当に持ってきた本を開いたら不倫の本でした。 当時、大人の女の人が書く小説はあまりにも不倫が多い気がして、これは現実に不倫が当たり前だからなのか、それとも永遠の憧れだから物語でやるのか、いつも気になっていました。 大人になった今では、前者な気がしています。 なんとなく女子って、永遠に女子同士、恋バナで盛り上がれるような恋愛がしたくて、結婚してからは不倫をしてみるのかもしれないな、とも思ったりします。もっと切実なのかな。わからないけど。 あの日のしなので読んだ本は、みんな不倫の話だな、以外の記憶がなくて、ぼーっとしていたようで、家についてからマフラーがないことに気がつきました。 JRに問い合わせたら見つかったうえに、わざわざ郵送で送ってくれて、人って優しい、と思ったのです。(日記) #読了 #読書 #読書記録 #本棚 #book #本のある暮らし #断捨離 #残す本
0投稿日: 2022.12.15
powered by ブクログ『アタラクシア』に続いて、金原ひとみ作品を読了。こちらも傑作。どちらかといえば本作の方が好みか。 甥との不倫関係を描く物語だけれども、ラストまで読んで読者が得られるのは、主人公カナの再生の物語。後半も終わりに差し掛かると、これをどう終わらせるのかと残りのページを気にしながら読んだが、たいへん美しく、肯定的な物語として幕を下ろす。甥との行く先が幸せになるかではなく、そのカナが至った納得そのものに、わたしは信を置くのだ。
0投稿日: 2022.11.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
なかなか読み終わることができず、2時に一気読みをした。以前の彼がしたことと、弘斗がしたことを許せてしまうほどカナは愛していたのかと思った。
1投稿日: 2022.10.15
powered by ブクログ私は本に希望も未来も愛も勇気も求めていなくて、ただただ現実から引き離してほしくて、たまに芯を食った言葉を聞かせてくれたらいいと思っていて、これはまさにそういう本だった。 主人公の世界が狭くて、作品の世界に閉じ込められる感覚が強かった。現実世界の思想が入り込む隙を与えない。あ〜好き。
2投稿日: 2022.08.30
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愛とは何か。 人生に感じる違和感は何か。 この難しい問いに対して全精力を投下し書き上げた作品なのだろう。 ページをめくる手が止まってくれなかった。 血縁関係の恋愛は世界が定めた倫理に反する。 それを乗り越え止められないのが愛なのか……。 考えるきっかけを与えて貰った。いい出会いだった。
1投稿日: 2022.06.04
powered by ブクログ生きていることに覚える違和感をこうまで言語化出来ることに驚愕した。 ここにいるのにここにいない。そのふわふわとした現実ではない誰かの人生を生きている感覚が、カナと弘斗が出会うことにより、自分の人生になる。 すごい!この世界観は。 そして、カナの勇気にエールを送りたい。
0投稿日: 2022.04.21
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関係性はドロドロしていたが読み終わったらカナと弘斗の恋愛自体は綺麗だと思ったしカナがあまり芯がぶれない女性だったのが良かった。 恋愛はどの夫婦、カップル、不倫関係においてもその当事者にしか分からない世界やルールが存在するしそれを他者が理解しようとするのは無理があると改めて感じた。人の恋愛に口を出さない方がいい、分かるわけがない、そんなことをひしひしと感じさせられる本なのではないか。
0投稿日: 2022.01.22
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そうきて、そこを通って、最終的にそうなるの!?え!?というストーリー展開だった。もうちょっと現実的なサスペンス的な展開かと思ったら(浮気がばれて破滅する、みたいな)、純愛小説的な終末へ…。 10歳も年下の甥と不倫するという身もふたもない話。主人公の「カナ」も、甥っ子も、ちょっと強烈な過去を持つ。カナは「恋愛じゃない」と思いながらもなんとなく甥っ子に惹かれていく。終盤まで、過去を引きずっているカナが、甥と関係を持ちながら、自分について、相手について、夫について、人生について、ダラダラダラダラと思いに耽る…っていう展開でなんだかなぁ…と飽きてきたが、最後に冷たかったカナの心の奥底で何かが動く感じが、読んでいる方にもぐらぐらと伝わってくるようで、深かった。 それから、カナが「日本の社会は生きづらい」というようなことを思っている部分には、ふかーーーーーく共感した! 5年ぶりに仕事に復帰して、うまく仕事がこなせていない今の私の不安感は、イギリスから帰ってきて、日本社会に違和感を感じるカナの感じていることと似ていると思う。日本社会は、「今よりも良くしよう、もっと良くなろう、改善改善、カイゼン(製造業では世界共通語になっているらしいKAIZEN)」、といって努力し続けることを強いられる。努力していない人は無能とみなされる。 常に常に、努力しつづけて、毎日が充実していないとダメな感じがする。仕事でも評価されないし、人からもそう見られるし、なぜか自分でもそう思ってしまうカラクリにはめられてしまう。 ただ何となく、平穏に日々のことをこなして、平和だなぁ、幸せだなぁなんて思っていることが許されない雰囲気。 本当に、まさに。努力しても努力しても、決して「ここまでで良し」というゴールはない。また新たな課題を設定されるだけだ。 という、前半の部分もけっこう心に残りました…。
0投稿日: 2021.07.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「家事と育児だけをして息子の成長と今晩の夕飯だけを楽しみに生きていると、この日常は自分が死ぬまで続いていくのだと感じた。そしてそれは私にうっすらとした絶望と不能感をもたらした。でも同時に思う。仕事をする事で薄れてはいるけれど、着実にその絶望は継続してもいるのだ。」(誤字脱字ありそう) 123ページの全てがかなりわかりみ深いと思いました。 人生の虚無を感じている。自分も当たり前な世の中の歯車の1つになって、なんでもなく死んでいくんだなぁと。 そう思うなんてことを言うとあんまり理解して貰えないことが多いけど、同じ思いを言語化してくれる小説を読めて良かった。 仕事をしてることで何となく日々に焦りと緊迫感が出て、絶望が薄れるのいうのもよくわかる。 毎日イージーに生きることが幸せなのに幸せと思えない。毎日同じことの繰り返しでそれはもはや地獄なんじゃないかと思ってしまう。 っていうのは確かに愛に溺れていた後から感じるようになったから、恋愛とはこわいものだと思う。 そこから時間が経って冷静になれた部分もあるし幸せだと思える時間は増えた。 けどまだあのときみたいな感情を味わいたい、という気持ちは奥底にある気持ちもする。幸せか幸せじゃないかというとわからないけど。今だと体力が持たない気もする。だから今のそこそこの幸せで人生を終えてもいいかなと思う。 作品として最後にかけてハラハラとした気持ちにさせてくれるのは非常に面白かった。主人公が選んだ選択肢は今の私からすると選ばないものだったからあぁ小説の世界だなぁとも思ったけど、それでこそ物語だとも思った。子ども大好きお母さんが読んだらありえない!って発狂しちゃいそう。私も本当はそういうお母さんになりたいな。
0投稿日: 2021.07.06
powered by ブクログ読むのは2冊目の金原ひとみ作品。1冊目だった「アミービック」は1人の女性の極端な愛情からくる不安定さのようなものを描いていたけれど、この作品もまたそのような要素があったように思う。不安定さというよりは、無感動と身勝手さのような要素が強めだったけれど。 スタイリストのカナは29歳。10代の頃にした恋愛の果てに、カナに執着する相手から包丁で刺された経験を持つ。 その後その記憶から逃れるようにして留学からの海外生活を経て、15歳上の夫と結婚して一男を得、日本に居を移してからも安定した暮らしをしていた。 そんなある日、海外で暮らしていた姉家族が帰国する。19歳になった甥っ子はすっかり男になっていて、カナを愛し、執着し始める。 10歳下の甥っ子との恋愛。小説としてはありそうなテーマだし、もしかしたら現実にもあるのかも知れない。 だけどこの小説は一筋縄ではいかず、美しい恋愛の世界ではなく、肉欲にまみれたドロドロとしたもので、それが愛なのかただの欲望なのかが初めは分からない。禁じられた関係だからこそ燃えるのか、それとも…。 最初はさらっとカナの身体だけを求めているように見えた甥の弘斗の、奥底に隠された強い執着と過去が明かされた瞬間に背筋がぞわっとした。 カナが元々無感動な人間で心から人を愛することも無いからこそ、かつての恋人や甥の弘斗のような男から執着されて一緒に堕ちてしまうのだろうかと考えたりした。 愛さなくてもともに生きていける相手(カナからするとカナの夫)となら平穏にうまくやっていけるのに、愛してしまうと何もかもが狂い始めてしまう。 カナの心情は過去のことも含め解るところもあるのだけど、最後に出した答えは理解はしきれなかった。例えば親しい友人がそういう結論を出したとしたら、本当に?と何回か聞いたあとに恐らく一度は止めるだろうと思う(止めても意味がないと分かりながらも)。 という部分も含め、解るけれど解らない、置いていかれたような感覚に陥る作品だった。 性描写が非常にいやらしい作品でもありました(褒め言葉です)。
0投稿日: 2021.04.14
powered by ブクログ面白かった。 いきなり19歳の甥に押し倒されるところから始まってびっくりした。 結構事件性があるストーリーなので、ハラハラしながら読んだ。 ストーリーもイイけど、やっぱり私は金原さんの世の中の見方が結構好き。 たまに、本当に些細なところで「あっそれわかる」ってなるのが楽しい。 今回だと「私は我が子がゴールを決めると狂喜乱舞する教に入信していないだけで、それと愛情は全く関係ないものだ」って一節に爆笑しながら「わかるよ!」ってなった。 人生の教訓とか教養を求めて読むというよりも、心地よくASMR動画を見ているような感覚というか…… そんな感じ。 好き。
0投稿日: 2021.03.14
powered by ブクログ救いがないと思った。 頭を鈍器で殴られたようなショックを受けた。 たとえ、自らの軽薄さが招いた事態だとしても、カナがなぜここまで弘斗に寄り添うのか? ここまで全てを失わなければならないのか? ひどく気分が落ち込んだ。 が、しかし… 愛があるなら、この結末はありなのか。 金原さん、すごいな。 圧倒的に心を揺さぶってくる。 キレキレで「ぼーっと生きてんじゃねぇよ。お前生温いよ」って、説教されている気分です。 ・叔姪婚(しゅくてつこん)って言葉を初めて知った。日本では叔母と甥は結婚できない…って知らなかった。従兄弟同士は結婚できるのに。 ー 人生とはただの暇つぶしでしかなく、人が生まれてから死ぬまでにする全ての事が暇つぶしであるという事実から目を逸らすための現実逃避の手段が、人生に意味や目標を見いだすという行為なのではないかと思ってしまう。 ー 小説などで目にした事のある行為、母親が乳幼児の性器を口に含むといった行為 ←この小説って、コインロッカー・ベイビーズ(村上龍)の出だしだ!高校生の時読んで衝撃的だったから覚えている。 やっぱり金原さんは龍さんの影響受けているよね。 ー 結局、不倫なんてヤレる状況でヤリたいと思ったら最後、ヤルしかないのだ。そしてヤッたが最後、よっぽど状況が大きく変わったり、周囲にばれたりしない限り、だらだらとヤリ続けるしかないのだ。 ←すごいリアル。そんなものなんだろうね。 若いひとは受け入れたくないかもしれないけど。
32投稿日: 2021.02.21
powered by ブクログすごくよかった。 狂気に満ちている世界がどれほどの精力を持っているかがよくわかる。 一度あんな狂った恋愛をしたら何もかもつまらなくなるだろう。 2人の中の「ただしい」を全うすると法の下で罰される。 2人の中の世界だと、刺される方が罰されるべきだから刺されたのだ。 俗に言う「正義とは」みたいなものか。そんな簡単に片付けて欲しくないけど。 人間誰しも狂ったように何かに熱中していないとおかしくなるんだろう、生き続けることが辛くなるだろう。楽しさとか幸せを重ねて退屈に暮らしているのだ。変なの。 それにしても全て成功しているのに満たされずに感じない姿は、少しわかる。私が大人になったからかな。 全てを擲ってでも捧げたいと思えるものに出会うと言うことの尊さを知った。 正しい愛ってなんだ・?
0投稿日: 2021.02.06
powered by ブクログ既婚子持ちの女性が甥と情事に落ちる物語。 以下は小説を読んだ気付き。 倫理的に駄目な人を好きになる人は本能的にそれを繰り返してしまう。 それで自己嫌悪に落ちるようでは元も子もないのだが、その事実を受け入れることが出来るのであれば、器用に生きることが出来る。 どんな人を好きにならなければならないかという悩みは、結果として被る不利益(死ぬことさえ含む)をそれと感じないことで昇華させられる。 以下は2作品を読んだ著者に対する印象。 アングラな世界を織り交ぜてくるが、アングラに違和感を感じさせない、むしろ織り交ぜることで描く世界のバランスを絶妙に保っている。そしてそれを人の心の脆く儚い部分を婉曲的かつ精緻に描く手段に使っている。
0投稿日: 2021.01.24
powered by ブクログ最初は金原ひとみらしくない進み方で進んでいくなあと思ったけど、やっぱり金原ひとみは金原ひとみだった、狂気に満ちていた でも最後にはそんな狂気が世界で一番美しく正しいものとして存在していて、自分の信じている模範とやらものに恥ずかしさすら感じました にしても読み疲れた…
0投稿日: 2021.01.15
powered by ブクログ破滅的。 主人公が不倫をしたとか誰が好きなのかとかの筋が軸ではもちろんない。精神世界の話。共感できないのはこの際別にいいんだけど、結局どこに向かうのかわからないという点で主人公の生き方から何も得ないまま終わった。
0投稿日: 2020.12.29
powered by ブクログはじめての金原ひとみ。 様々境遇が異なり、年は30歳と近いのに主人公カナには共感し難い部分が多かった。酒、男、薬がアイデンテティの柱。10代からそういうものに触れ、19で男に刺され、その後海外に渡り、才能が花開き仕事も成熟。稼げるまともな男と結婚し家庭を築く。ここまででも情報の洪水なのに、8歳の息子を抱えながら、10歳下の甥と不倫。あまりに私にとっては非現実的で入りこめない。 しかし、この物語の本質はそういった主人公の波乱万丈なアレコレについてではない。言葉にしてしまうと、イメージやネタ性が先回って情報洪水を起こすし、実際にも読みながら戸惑い、混乱していたが。 あとがきを読んで、それまで続いたモヤモヤがスッと消化され始めた気がした。カナは他人からは理解され難い、違う世界、つまり海底を生きていたのだ。たぶん、誰かに心から愛されたい、それ以上に、誰かを心から愛したい。しかし過去の傷や、地上でのしがらみ、モラルなどから、なかなか人と本気で向き合えない、愛せない。身体的な性愛によってやっと呼吸をする。常識がないから、ビッチだから、タブーを犯した女だから、と曇ったメガネ越しに彼女を軽蔑することは簡単だが、この境遇でしか発達し得ない彼女の思考に一度寄り添ってみると面白い。 同様のテーマの他の小説と異なる部分は、カナには度胸があり、強い意思を持って、愛を貫こうとする姿勢に見られるのではないかと思った。つまり、ただもののメンヘラではないのだ。 刺す男はおかしいし、刺される女もおかしい。だけどそこには彼らなりの関係性、秩序があり、一般常識では理解し難いストーリーがある。刺されるべくして刺される。精神的異常では片付けられない。 また、男性の持つ執着性、暴力性、それらは犯罪として明るみにでることで他人の注目を集めるが、実際には多くの世のカップルにいびつな関係性をもたらしているのかもしれない。
1投稿日: 2019.08.18
powered by ブクログアメリカから帰国し久々に会った10歳下の甥っ子に求められ始まった関係。背徳的で魅力的。10歳下の男というだけじゃなくて、甥っ子ってところに背徳感が満ち満ちる。その背徳が蜜の味で、そんな描写のところばかりを読んでいた気がする。会話がダラダラ続くこともなく、三人称で描写がしっかり書かれているちゃんとした小説。 主人公には息子もいて、そこかしこに叔母や息子をもつ母の心情が描かれていたりして、そこがまたムードをあおる。それだけでも十分だと思うけど、甥っ子には実は影があり……。 「軽薄」とは何をいっているのだろう。どことなく何事にも一枚膜を隔てているような主人公のスタンスをいうのか、それとも社会のモラルや何となくステレオタイプに反応してしまう一般的なものに対して軽薄ということじゃないかと思った。後者だとしたら、そういう軽薄はそれでいい。そういったものへのなじまなさが二人を近づけたようにも思う。
1投稿日: 2019.03.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
29歳のカナと19歳の甥との不倫の物語。 カナは過去に恋人にストーカーされ刺されている。一方甥は、過去に想いを寄せていた人に暴力事件を起こしていた。(甥の出来事については終盤で明かされる) 被害者と加害者という立場で表すなら、被害者凹、加害者凸という感じであろう。 「何か、心にぽっかり穴が開いている感じがするの。だからそれを埋められるような何かが欲しいかな」 こう、カナは甥に対して話していた。 甥は暴力事件に関して、なぜ殺そうと思ったのかと問われれば、「そうしなきゃいけなかったんだ」「カナさんも、刺されなきゃいけなかったんでしょ」とお互いに過去の出来事に必然性を感じているのだと思った。(ここの引用は甥の発言のみであるが) カナはある時期から自発的な感情を持たずに生きていた。 友達からは「あらゆるものに支配的に関わっているように見えるよ。」と言われている。 支配するということは、少し高みにいるのではないだろうか。高みにいれば、自分の感情を揺さぶられることはないだろう。 あらゆるものに支配的というのは、あらゆるものに対等に向き合っていないとも捉えられると思う。 向き合わない軽薄さの上に築きあげた日常や人間関係で上手くやりすごしていたが、甥の登場で軽薄という根底と向き合うこととなった。 終盤で小学校低学年の頃の夏祭りの回想が入る。 甥が風鈴をプレゼントしてくれたときに、夏祭りで心惹かれた風鈴を何故か両親に欲しいと言い出せなかったという過去を思い出したのだ。 「あの風鈴を手に入れられなかったあの夜からずっと、何かを喪失し続けてきたのかもしれない。」と語る。 風鈴に関してはあの夏祭り以来欲しいと思うことがなく、プレゼントされたことにより急に思い出されたため、甥が時を超えてプレゼントをしてくれたと考えるのはすこし薄っぺらい気もするが。 欲しいという欲求は自発的な感情であり、その感情を時を超えて満たしてくれる人が現れたと考えるとおもしろいなと思った。
1投稿日: 2019.03.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
金原さんが学生の頃、受賞した頃から作品を読んでいて。 今風の言い方をすれば、かなりクセの強い作家さんだなーという印象を持って、その後に出される作品も、かなり人を選ぶ作品だよなーと思っていたけれど、「マザーズ」あたりから、彼女特有の世界観を大切にしながらも、より多くの人に受け入れられる作品が増えてきたんじゃないかと思う。読者である自分の変化もあるかもしれないけれど、金原さん自身が、結婚して子どもを持ったことが大きいんじゃないかな。 この作品は、文体もまどろっこしくなくて、読みやすくなったように感じたし、そのためか、生きるということに対する彼女なりの価値観が、理解できたかどうかは別として、ひしひしと伝わってきました。 作品の背景には、高校時代の同棲相手がずーっといて、解説ではそれを「毒」と表現してます。わたしは、解説の「毒」とはもう少し異なるものを「毒」と捉えていて。それを説明すると、以下のような感じになります。 この本のタイトルになっている軽薄さ、それが彼女の人間性であって、けれどそれがストーカーによって形成されたものなのか、生まれつきのものなのか、そこまで深くは言及されていません。 おそらく、ストーカー事件以前に、ストーカー気質の男性を愛してしまうという、彼女の中にある根深さが、本当の「毒」なのではないかと思います。 きっと誰もが持っているその毒を、どう処理していくのか。彼女はいったん、結婚という方法で解毒しようとしたけれど、結局それは封印にしかなっていなくて、封印はきっと、大切に取って置いてるのと変わらないのだろう。これからは、弘斗がきっと、解毒してくれるだろう。いや、中和かな?個人的には、心の穴を埋める(=この作品で言うと解毒)なんてことは不可能だと思っているので、彼女に巣食っていたその毒を少しでもなくしてあげること(=中和)が、現在の彼女の救いになる気がしました。
19投稿日: 2018.12.31
powered by ブクログ主人公の恋愛模様がだらだらと続いていく。あまり変化がなく先に進まない感じ。 後半は少し動く感じがあり楽しい。軽薄ってタイトルがじわじわとくる。
0投稿日: 2018.12.15
powered by ブクログ感性豊かだからこそ感じてしまう不幸せと、狭い視野や了見の中で鈍感な幸せのどちらが人生豊かと言えるか。 題名通り軽薄なのは主人公なのかそれとも平凡な我々なのか?読者に対するアンチテーゼを投げかけているようにさえ思えた。 官能小説のような表現が強すぎ。そんな必要があったのかちょっと違和感を覚えるが…
1投稿日: 2018.10.13
powered by ブクログはたから見ると、仕事もプライベートも充実しているように見える主人公。心の中はいつもクールで冷めている。いつもクールに自分自身を見つめる主人公の思考回路に共感を覚えた。
0投稿日: 2018.09.24
