
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
文庫版を読了。 1. ペニスに夢中 惚け老人と看做されたくない「わし」が周りに騒動を起こしてゆく。しかしこの「わし」は相当のインテリで裕福に見える。途中ではメタ小説になってしまう。 2. 不在 5つの章で構成されていて、2章と5章はストーリーが繋がっているけれど、1章と3章はほんの少しだけ繋がりがあり、4章はどうも他の章とつながらない。モヤモヤ。 3. 教授の戦利品 冒頭蛇嫌いな人の3つのエピソードが語られる。この3つをとにかく書いた後で、ひとつのストーリーを作ってこの3つを繋いだような作りになっている。ストーリーに筒井流のドタバタが組み込まれてはいるけど、最終的にひとつのストーリーになっていることの必然は希薄。途中の会話部分を読んでいて、誰が話者なのか混乱したり。 4. アニメ的リアリズム カウンターバーに「おれ」がいる。次々と動物たちが出てくるが、いや、この小説はそこではない。最初からあちこち周囲の物が曲がりくねって動いている。これは酩酊だ。多幸感。これ、すごくリアル。あ、記述が小説の最初に戻った。いつの間にか寝ていたのか。でもちょっと違う。周りが全て白一色になっていく。 5. 小説に関する十一夜 2ページほどの短い話が脈絡もなくパラパラと並ぶ。全体としては、主人公たる七十七歳、老作家の「おれ」が、長編小説を書こうとしているのだが、これらは夢の断片、いや、切り取る前に、元々短い夢が完結もせずに11編が並んでいる。ちらほらと駄洒落が散りばめられていて、自ら夢なればこその駄洒落だとも書かれている。「十一夜でなく十二夜か十三夜にしてください」のココロが分からなかったが、ググると、十二夜はシェークスピア、十三夜は樋口一葉、と出た。どちらも知らないので分からないんだけど。 6 三字熟語の奇 タイトル通り三字熟語だけが延々と並んでいる。バブリング創世記の手法。 漢数字の一を含む物から、二を含む物、三を含む物と続く。十の次に百、千、万と続き、ふと気付く。六十路、八十路があって七十路が無いぞ。億や兆には三字熟語がないらしく、どうなることかと思い、よく眺めてみると、政治の話題に移った。熟語同士の並び方の謎解き。混沌の中にさえ何らかの法則を見出そうとしてしまう人の性を操る。今度は医学用語になってきた。あ、もしかすると作者は実在しない熟語を紛れ込ませて、語学力を試されているのではないか? あ、確かに怪しい熟語が混じっている。今度は法学方面の熟語になっている。女性を連想させる熟語が多くなってきた。次は食べ物か?、文芸か?、金融か?あ、かなりの熟語が軍事用語。陽電子?さっき陽電気もあったよな。次は生物学だな。また混沌としてきた。あれれ、あれ?この熟語おかしいだろ。あ、あれも、これも。ついに作者が本性を現して読者をたぶらかしにかかっている。熟語が当て字だらけになってるではないか。しかもブラックな筒井が満載だ。ぎゃはは。 7. 世界はゴ冗談 太陽の黒点極大による太陽嵐が引き起こす通信機器、飛行機・船舶の故障、さらに鯨の方位感覚の錯乱。久しぶりの科学小説の雰囲気からのドタバタ。 かと思えば小説家らしい「おれ」が夢の中で湧き出した王位継承のストーリー中を彷徨う。すると突然話題が変わって、上司から理不尽な扱いを受ける「おれ」が、不調をきたした家電やカーナビの女性音声ガイドから執拗かつ理不尽な命令を次々に下される。「おれ」は楯突いてなじるが、聞く耳を持たない機械に(めずらしく!)屈服し、泣いて許しを懇願する。落語風のオチらしき一言で終わるが、残念、このオチが分からない。 始めと終わりの話題は、太陽嵐による通信機械、クジラ、家電の故障へとつながるのだが、真ん中のストーリーは何? その先のストーリーの展開が見えないまま中断したように見える。一つの短編に短い話がぶちこまれて惑わされる。うーむ、わからん。 8. 奔馬菌 「おれ」はすりこぎを持ち、3匹の猫を連れて「四時半」を征伐するため探しに出かけるが、すぐに猫たちは惨殺される。ここで筆が止まった作者(筒井康隆自身)が唐突に登場してメタフィクションになり、福島原発事故から自身の旧作に考えを巡らせる。 唐突にストーリーが戻り、主人公は(「四時半」征伐を完全に忘れて)自宅でテレビドラマを見ていると、政府関係者が来訪し、政府の内密事案として、主人公の高気圧発生装置の設置運用への協力を求める。 すると、政府関係者が執筆中の作者の家に来て、近隣国との諍いを誘発しかねない高気圧発生装置を登場させたことを詰問する。 ストーリーは再び主人公の家に戻るが、故障したトイレの修理工が来る、さらに寿司の出前が届く、脳を患いながら元気溌剌な九十歳のじいさんが起きだして尖閣諸島と戦争を論じる、といったカオスなドタバタがエスカレートする。 ここで「おれ」が登場人物たちに、彼らは既に死んでいるはずというプロットの矛盾を指摘すると、彼等は退場して幕となる。短編内に複数ストーリー、そしてメタフィクション。 9. メタパラの七・五人 伊川谷兆治の四十九日法事で応接室に親族が集まって会話している。なぜか死んだはずの兆治もいる。挿絵画家だった兆治が幼かった二人の娘を描いた児童図書の話題となり、出版社の編集者も加わる。著作は大人気となり8篇にもなる成功譚とありがちな家族関係の話題に会話が弾む。 しかし数十ページ後にはついに兆治が作者に重なりメタフィクションに移ると、改行のない怒涛の数ページに突入する。それまでの自身の著作の技法について解説しつつ、ストーリーに読書を巻き込む佐々木敦の「パラフィクション」の技法に言及、「虚人たち」と「虚構船団」の批評について話題が進む。 短編内に複数ストーリー、そしてメタフィクション、さらにパラフィクション。 10. 附・ウクライナ幻想 1972年にウクライナを訪問した際の平和な風景や「美しかったイリーナ」(現地の案内と通訳)の思い出とともに、自身の著作「イリヤ・ムウロメツ」の筋書きを辿るエッセイ。 この旧作はロシアの伝説に基くジュブナイル英雄冒険譚だったはずと思うが、作者は小学生で読んだ漫画の「勇士イリヤ」を所有していた手塚治虫に見せてもらって執筆。上梓にあたっては挿絵も手塚治虫に依頼し、3年かけて完成したそう。 エッセイの本作は1994年、マイダン革命とロシアのクリミア侵攻が起った第一次ロシア・ウクライナ戦争のタイミングで書かれているが、作者は政治的立場での発言をしないことを作中で明言する。穏健な態度になったのは、ロシア軍がキーウに侵入して政府の転覆を図った2021年に始まるウクライナ戦争と比べると、EUをはじめとして世界がロシアの武力行使をほとんど黙認してしまったこともあったと思うが多少の残念を感じる。 11.解説 本短編集の中の「メタパラの七・五人」にも登場する、「メタフィクション」の限界を超えた「パラフィクション」の提唱者である思考家(!?)佐々木敦が執筆。佐々木が「文句なしの傑作」と評する、本短編集の7か月後に発表された「モナドの領域」(作者自身は「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長編」と予告)のパラフィクション至る足がかりとなっていることに触れる(が、詳しくは述べていない)。
0投稿日: 2025.11.29
powered by ブクログ・6/26 読了.2010年代の短編集なだけに往年の作品とまるっきり違う作品群でいつまでもこの作家は変化し続けるんだなあと感心した.ついていくのは大変だと感じたけど.
0投稿日: 2025.06.26
powered by ブクログ面白かったが難しかった。短編集なんだが、冒頭のペニスに命中がかなら、ドラスティックな内容で、お、この方向性の作品かな?と思ったが、後の話は千変万化。難しかった。読んでるうちに、いつのまにか作者の話になっているのが楽しい。油断すると、すぐに自分の話をする筒井康隆の作品は大好きだ。それにしてもこの作品の三字熟語の奇をちゃんと、読む人はいるのだろうか?いるんだろうけど。
6投稿日: 2024.08.07
powered by ブクログ著者の作品を久しぶりに読みました。 全てにおいて言えることだけど、掴みどころのない内容になっているように思えた。 ナビのエラーは少しクスッと笑えました。
1投稿日: 2024.07.14
powered by ブクログ精神病は主観で見れば案外楽しいものなのかもしれない。 脈絡なくオチのない話が並ぶ為、夢を見ているような気分になる本だった。
1投稿日: 2024.02.23
powered by ブクログ感想 なぜどうしては無粋。言葉が編み出す世界にただ揺られるのみ。今ある世界は本当に信用できるのか。神様がナンセンス小説にハマったら。
0投稿日: 2023.01.09
powered by ブクログこの歳でこのキレキレっぷり。さすがというしか。 どの短編も面白くて引き込まれる。 実験的且つブラックユーモアたっぷり。好物だらけで筒井康隆作品、何読んでも最高と思ってしまう自分が悔しいというか。こちらにもうちょっと考えさせる余裕くれよな、という感じ。 メタパラフィクション面白かったな、、 最後のウクライナは今思うと辛い
0投稿日: 2022.08.13
powered by ブクログ面白かった。御歳でこれらを書いたのはすごい。やはり筒井氏の短編は読み進められさせるというか、アイデアに圧倒されて表現方法にも圧倒されることが多い。一番面白かったのは『ペニスに命中』、最も印象に残ったのは『メタパラの七・五人』。メタパラ、は本当に凄かったというか、突然自身の足場がなくなったような不安感とフィクションに入り込んでいく不思議さ、ワクワクさがあった。ペニスに命中は単純に面白かった。ただただ文を読んでいるだけで楽しい。飽きなかった。
0投稿日: 2022.06.02
powered by ブクログわかるようなわからないような世界観。 途中止めしそうになったのを無理やり。 慣れてしまえば面白い世界観なのかもしれない。 三字熟語の奇がお気に入り。
4投稿日: 2022.05.20
powered by ブクログ筒井康隆は日本SF第一世代メンバーであり、現在も旺盛な執筆活動を維持している。勿論、新刊書は全て購入しており、月刊文芸誌のチェックも必ず行っている。 元々、純粋なSF作家だったが、一時期より純文学の方向性が加わり、更に実験小説的なものにも手を染めて行った。極めて危ない直接的な性的表現も使用する等、その時代時代において物議を醸しだしてきた。そういえば、断筆宣言をしても程なくして復活した。 最近では短編ばかりで、アイディアのみ先行している感はある。そのためか、せっかく買っても積読率が高くなってきている。時々大化けする作品も爆発的に表れるのだが、殆どが言わば不発弾、爆発しても燻るか小規模爆発。そんな中、久々に本書を読んでみたが、これは不発弾だな。 一つだけ、「附・ウクライナ幻想」のみしっかり読んだ。作者がソ連観光した時の話だが、何度と読み直しても実に生々しい。12世紀頃はウクライナの一部・近辺がウラジーミル公国と呼ばれていたなんて、運命みたいなものも考えさせられる。ロシア正教みたいな歪んだキリスト教もあるし、本当にソ連というのは変な共同体だった。ああ、ロシアが大敗して気分が良くなったら「イリヤ・ムウロメツ」でも再読しようかな。
0投稿日: 2022.05.18
powered by ブクログ筒井は久しぶりだけど、やっぱり異常に面白い。よくわからないところも含めて面白いのはなぜなのか。どれも好きだけど、「不在」と「小説に関する夢十一夜」が好き。昔の筒井っぽい「教授の戦利品」も。最後のウクライナのエッセイでしみじみ。
0投稿日: 2022.05.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「筒井調」満載の短編集。メタ・パラフィクションもあって、堪能した。 ひとつ不思議なのが、エッセイの「ウクライナ幻想」が「付録」として掲載されていること。著者がその昔、旧ソ連を訪れたときの思い出を、イリヤ・ムロウメツの物語とともに書いている。 ただ、その中身はと言うと、「今はただ、不幸な戦いの中にあるウクライナの首都、あの伝統の町キエフに戦禍が及ばぬことを(後略・文中ママ)」とか、「日本贔屓のお嬢さんを持つプーチンに、自国民の大多数と欧米諸国との板挟み状態に立つ苦境を乗り越えて平和への道を探ってほしい(略)」などと書かれてあってザワザワさせられ、思わず奥付を何度も確かめた(文庫発行日は令和3年6月1日)。 「もしかして、内容を自動的に最新にする技術が使われてるのか?」などという妄想も抱いてしまったり……(紙の文庫です!)。 実は、単行本の発行が2015年。 つまり、ここに書かれているウクライナとロシアの争いは、2014年から始まったウクライナ紛争を受けてのもの。しかし、偶然とは言え、こんなところでまた、「筒井康隆の先見性」について考えてしまった。
0投稿日: 2022.05.13
powered by ブクログナンセンス/シュールな作品を集めた短編集。刊行時筒井は80歳とのこと。 表題作はコンピューターの反乱の一形態と言えるドタバタSFで、往年の筒井康隆で面白かった。他の作品のうちナンセンス/シュールなもので、作者が出てきたり、読者を巻き込もうとしたりはなかなか難しかった。
3投稿日: 2021.08.04
powered by ブクログ表題作の「世界はゴ冗談」は面白かった。 男と音声案内の女の声とのやりとり?が笑えた。 他に気になったのは、「三字熟語の奇」と「メタパラの七・五人」だな。
0投稿日: 2021.07.12
